FacebookのInstant Gamesについて知っておくべき6つのこと

Chatterbox GamesのAdam Telfer氏がFacebookのInstant Gamesのようなプラットフォームが直面する課題とチャンスについて解説する。

 Facebookが初めてInstant Gamesのプラットフォームをスタートしてからわずか1年強しか経っていないが,物事は急速に変化している。

※Instant Gamesは,Facebook Messenger上で動作するHTML5ベースのゲーム

 そのプラットフォームはすぐに新規開発のための苗床となり,多くのデベロッパがこの機会に飛びついている。モバイルが成熟するつれ,アプリストアで目立つことが一層厳しくなっていることに多くのデベロッパが気付いたこともあり,このメッセンジャーゲームは事業成長を促す新しいプラットフォームとなっている。

Chatterbox GamesのAdam Telfer氏
 FacebookのInstant Gamesがローンチされて以来,多くのゲームがめざましい成長を見せている。Game ClosureによるEverwingのようなゲームでは,現在,毎月1000万人のアクティブユーザーがいる。プラットフォームにおけるバイラルという特性と数十億人のプレイヤーへのアクセスにより(Facebookによれば13億MAU)ゲームは急速に成長することができる。

 だかしかし,メッセンジャーゲームのデベロッパにとって,いい話ばかりではない。「モバイルとほぼ同じプラットフォーム」だと思ってやっていると痛い目にあうことが,多くのデベロッパによって証明されている。そこで今回は,メッセンジャーゲームが直面する三つの大きな課題と,デベロッパが活用できる三つのチャンスについて話したいと思う。


三つの課題


リテンションの低さ
 まず,Instant Gamesのリテンションはモバイルよりも低いことは注記したい。モバイルよりもFacebook Canvasのゲームに似ている。低いと思えるだろうが,それがこのプラットフォームの性質を反映している。

 また,Instant Gamesは「アプリ内のアプリ」であり,モバイルと同じではない。プレイヤーに戻ってくることを促すきっかけとなるプッシュ通知やホーム画面上のアイコンはないのだ。

FacebookのInstant Gamesについて知っておくべき6つのこと
 プラットフォーム上のリテンションは,プレイヤーのホーム画面上にゲームがあって,すぐにアクセスできることに起因するものではない。代わりに,デベロッパはほかのチャネルを使ってプレイヤーにゲームに戻ってくるようリマインドし,すぐにアクセスさせる手段を提供する必要がある。友人からのメッセージ,またはFacebook Bot(Facebook Messenger内のゲーム専用チャネル)からのメッセージでプレイヤーをゲームへと促すことができるだろう。
 デベロッパは,スパムと感じさせることなく,プレイヤーが直近使用したチャネルリストの上位に常にいられるようにしなければならない。そうでなければプレイヤーはアプリをミュートし,リテンションはもはや不可能だ。

テクノロジー
 次の課題はテクノロジーだ。HTML5は大きな発展を遂げた。プラットフォーム上でMystery ManorやGolden Bootのようなゲームをプレイすると,HTML5は(※ネイティブ)モバイルゲームのパフォーマンスに急速に近づきつつあることが分かる。しかし,3Dを実行したり,派手な画面切り替えを表示できることは,この技術の第一歩にすぎない。

 もう一つの重要な側面は,考えうる限り多くの種類のデバイスで素早くダウンロードできることだ。メッセンジャーは多くの国で選ばれているチャットアプリであり,誰もがトップエンドのデバイスを利用しているわけではない。つまり,HTML5自体は最高レベルの技術を実行できるものであるが,Instant Gamesとしては必ずしも(※そういった機能は)必要ではないということだ。より重要なのは,接続が遅い環境でも素早く起動できるということなのだ。

 これまでのところ,このプラットフォームのために構築されたPixi.JS,Phaser,Constructのようないくつかの偉大なエンジンがあった。だが,それ以外のほとんどは非常に軽量なもので,あまりツールがない。Unityのようなエンジンで作業するときの開発の容易さに慣れたデベロッパは,質の高いゲームを作成するためにはエンジンに多額の投資をする必要がある。モバイルのデベロッパがこのプラットフォーム上のリーダーの地位を譲り,現在はほぼHTML5の開発スタジオが取って代わった理由これだ。開発を容易にする確立されたプラットフォーム上のエンジンが登場するまでは,技術に重点を置いたデベロッパが優位となる。


見つけられやすさ
 最後の課題は,必ずしも大きな問題ではない……今のところ。2018年2月16日現在,プラットフォームにあるゲームは200以下だ。これは今のところ多くはない。しかし問題は,Facebookがプラットフォーム上でゲームを処理する方法にある。

 今のところゲームは「ゲーム」タブにある長いリストに表示されている。リストの順番は極めて単純で,より大きなゲームが上,新しいゲームは一時的に上位に挙げられる。これまでのところ,Facebookはデベロッパにほかの方法でプレイヤーを獲得するためのツールを公開していない。だから今のところ,デベロッパは成長のための初期の「火花」を上げる方法を非常に制限されている。素晴らしいゲームを構築し,可能な限りリストの上位に押し上げられるようにし,上位にいる間に成長してくれることを願おう。


三つのチャンス


ユーザーの増加
 見つけられやすさの裏を返せば,正しいリテンションを獲得し,ゲームがリスト上で上昇したときには,前例のない成長が期待できるということだ。


 例えば,麻雀FRVRを考えてみよう。今年の1月16日以来,アクティブプレイヤーは32万人(/月)から150万人以上に増えたが,これは自然流入とバイラリティ(口コミ)によるものだ。これはモバイルでは起こりえない。マージャンのバイラリティは極めて小さく(マージャンゲームに友人と遊ぼうと思わせる要素はあまりない),そして,ゲーム自体かなり単純だ。このようなゲームが,最初からバイラリティを意識して作られたと想像できるだろうか?

ソーシャルコネクション
 2番目のチャンスはソーシャルの仕組みだ。モバイルでは,Facebookに接続したいプレイヤーの割合は時間の経過と共に減少している。自分の友人に情報をばらまきたくない,モバイルでのゲームプレイ状況を共有したくないのだ。モバイルゲームは,友人ではなくその時々で適当な見知らぬ人と遊ぶようにプレイヤーを誘導する方向にシフトしている。
 しかし,Facebookとモバイルゲーム分野で10年以上働いている経験を踏まえると,Facebookへの接続率がプレイヤーに与える影響ははっきりしている。それは単にバイラリティに関してだけでなく,リテンションとも関わるエンゲージメントについてでもある。ゲーム内に実際の友人がいるとプレイヤーは即座にもっと積極的に関与しようとする。スコアボード上ではリアルの友人を倒すほうが,はるかに満足度が高いのだ。
 メッセンジャーゲームは,Facebookへのコネクトが経験に埋め込まれているため,より多くのエンゲージメントとリテンションの機会を提供する。ゲームは即座にゲーム内にプレイヤーのソーシャルグラフを持つことになる。友人と遊ぶのは当然だと感じる。そのようなソーシャルな側面がメッセンジャーゲームに内在しているのだ。

プレイヤーがいる場所こそ
 最後の重要な機会は,モバイル上でプレイヤーの行動が変化する特性によるものだ。ComScoreのレポートにある最近のデータによれば(参考URL),スマートフォンプレイヤーの過半数は月に1本もアプリをダウンロードしていない。他方,モバイルのチャットアプリ内のエンゲージメントおよびアクティブプレイヤーのベースは,記録的なレベルまで急上昇している。モバイル上でゲームがインストールされるのは極めて難しくなる一方,プレイヤーはメッセージのアプリをどんどん利用している。メッセンジャーゲームに望みがあるとすれば,新しいプラットフォームを作り,プレイヤーにそれを使うように求めるのではなく,彼らがすでに最も関わっている(エンゲージ)しているところで満足させることだ。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら