中国インディーズゲームへの静かなる要請

Spotlightor Interactiveの創設者であるGao Ming氏はオリジナリティのためにゲーム開発シーンで戦い続けている。

 2年前,私のゲームCandlemanは,350本以上のインディーズゲームが含まれるMicrosoft's ID@Xboxプロジェクトのうちの1本として,Game Developer ConferenceのXboxブースで展示される幸運を得た。これは中国からアメリカのGDCに招待された最初のゲームとなった。それが我々が誇りとするオリジナルの創造物をもってスタジオを世界に紹介した瞬間だった。
(※MicrosoftはGDC 2016のExpo会場に出展していない。GDC 2016のXboxブースというと,South Hallの入り口にあったXboxラウンジだけだった気がする。id@Xboxは毎年GDC会場とは別の場所でイベントを行っているのでそちらのことか)

 その栄光の瞬間も,「あなたのゲームがアジアで著作権侵害を受けたときにするべきこと(What To Do When Your Game's Being Pirated In Asia)」という講演を見たことで吹き飛んだ。海外の人々に我々の作品を紹介したとき,ほかのゲームの盗作か派生品に違いないという決めつけに直面することが少なからずある。これは不公平なので苦痛である。我々の多くはオリジナルのアーティストであり,ユニークなものを提供している。しかし,これは公平なので苦痛でもある。中国の風景は著作権侵害と盗作で支配されており,政治的,経済的,文化的な力で,現在知られているようなゲームの状況を変えていこうとするインディゲームシーンにいる我々のような者に扉が開かれたのはつい最近のことだ。


オリジナリティは高くつく


 もちろん盗作と著作権違反は中国に限ったものではない。しかしいまだに毎年,ある程度派生物だと思えるような中国産ゲームが何千と承認されて世に出ています。こういった慣習は低リスクでハイリターンなため非常に繁栄している。ほとんどの中国企業は模造品を作ることを選択する。なぜなら,オリジナルを作ることにほとんど意味がないからだ。逆に言えば,インディゲームを作ること ―あなた自身のアイデアを磨き上げ,うまくいかなかったら投げ捨てること― は,すべてがリスクである。もちろん,世界中のインディ開発者にとってこれは真実である。しかし我々は中国で孤立しており,そのことが負のフィードバックループを形成している。

Candlemanは成長しつつある中国のオリジナルインディーズゲームの一部だ

 投資が最大の難関だ。教育,社会,産業機関からの投資の適用はほとんどない。結果として,多くのインディ開発チームは投資家に頼ることになる。しかしながら,中国では投資はプロジェクト単位ではなくスタジオ単位で行われる。インディーズゲームのローコストでクリエイティブであるという特徴は,投資家にわずかな掛金で大きな利益を約束している。通常,100万人民元(※約1670万円)の投資は,投資家にインディスタジオの総利益の20〜30%を獲得させるほどのものであり,この数字は複数の投資家が含まれていた場合には50%を超えることもある。

 西洋と比べて中国ではインディーズゲームの露出が限られているため,社会的なセーフティネットなしに彼らと手を組めば,あなたはデベロッパがまっとうな方法で成功を成し遂げることがどれほど難しいかを理解できるだろう。別の方法が遥かに儲かると証明されているのに,どうしてその方法を取るだろうか?

「中国のプレイヤーと世界のプレイヤーの差は小さくなる中,クオリティとオリジナリティへの期待は中国のゲーマーでも高まっている」


 世界の言語と文化格差は,海外からやってきた最高のゲームでさえ中国のゲーマーとの関係でさらなる問題を生じさせている。歴史的ともいえる完全な中国語ローカライズはの欠如は,多くのプレイヤーに不可解なものと感じさせている。たとえばPillars of Eternityのようなストーリーリッチなものを扱っているときにはとくにそうだ。これが盗作屋に機会を与えている。彼らに必要なのは,中国国外で財政的に成功したゲームに注視して,実質的な報酬のために素早くコピーすることだけだ。この壁は,デベロッパが自分たち自身でコントロールできる範囲を超えて広がっている。中国の英語に堪能でないゲーマーは,ごく限られたチャンネルでしか業界のニュースに触れることができない。これは,しばしばそうとは知らずに盗作を遊んでいるという結果になっている。

 これらの多くは時間とともに変化している。中国国外のゲームメーカーは,中国のプレイヤーに手を差し伸べることに新たな重点を置いている。そして,彼らは,言語と文化が消費者の選択に影響を与える独特な手法に対して,より微妙な目を持って対応している。中国のプレイヤーと世界のプレイヤーの差は小さくなる中,クオリティとオリジナリティへの期待は中国のゲーマーでも高まっている.


下から作る


 しかし,変化は内側からも起きなければならない。その変化の種は中国国内のインディーズゲームシーンにある。より大きくより安全な会社に入ってチャンスの多い市場で働く情熱的な開発者の強い影響だ。何年もの間,私くらいの年齢のデベロッパは,PCとモバイルの世界に自分の居場所を作るのに奮闘してきた。

「私のスタジオで起きた最良の事件は,Phil Spencer氏が我々のゲームをクリアしたと人々に告げるTweetでした。これは小さなことですが,我々の出所の正しさを信用していなかった世界に対して,我々の作品が正当なものだと示したのです」

 2014年の中国の家庭用ゲーム機禁止の撤廃はすべてを変えた。ビデオゲーム文化とコミュニティはいま中国で急速に進展している。低予算のスタジオでも,現在では合法的にゲーム機と開発キットの配布ができる。Microsoftとソニーの両社が時間とサービス,リソースを費やして,魅力的なローカルタイトルをサポートしている。ID@Xboxプロジェクトはさまざまなドキュメンタリーを作り,中国のゲームとデベロッパのよりより理解をプレイヤーコミュニティに与えている。

 しかし,小さな方法で中国の孤立を打開しすることでさえ,地表レベルでは大きな影響を持つかもしれない。若手の開発者として,私は第19回のLudum Dareゲームジャムに参加したことがある。ほかのデベロッパの声を聞く貴重な機会である。そこからなにかを得るだけのことを勇気付けられると同時に,若いデベロッパが受け入れる必要のあるレッスンだ。上海で開かれた2017年のWePlayカンファレンスのようなファン主導の集会も同様に,デベロッパにほとんどこれまでアクセスしたこともないようなアイデア,専門知識,リソースを共有する機会を与えている。
 
 私のスタジオで起きた最良の事件は,Phil Spencer氏が我々のゲームをクリアしたと人々に告げるランダムTweetだった。これは小さなことだが,我々の出所の正しさを信用していなかった世界に対して,我々の作品が正当なものだと示したのだ。そしてその思いは長い道のりを経て帰ってきた。現在,ゲームデザインに興味を持っている中国の若者が,どれほど彼ら自身をハードコアゲーマーだと考えているかを十分に強調することができない。そしていま,彼らは自分のデザインがこれらのシステム上でローンチするのを見る機会を持っている。「可能」の領域は爆発した。

 結局のところ,我々は中国をほかの場所と違った扱いをする必要がないというのが真実だ。世界文化の中で最も大きく古いものの一つとして,我々は必然的に1つか2つの方法で世界のほかの部分を聞かせるようにするだろう。そのとき重要なのは,その声がどんな形をとるかだ。

 我々は海賊行為の観点から中国と世界の関係を定義し続けることができる。―それは公平なものになるだろう― もしくは我々は,オリジナルアイデアが非常に高価なものにつくという問題の橋渡しができる。ずっと盗品を作っていたデベロッパでさえ,現在はもっとクオリティを重視した市場で利益をあげるように自身を変える方法を模索している。未来は海賊版の卸売り排除を買い溜めしない。むしろ,我々がどのゲームに注意を払うかを変えることにかかっている。

Gao Minは北京を本拠とするインディゲームスタジオSpotlightor Interactiveの共同設立者である。CandlemanはZodiac Interactiveから発売されている。
※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら