[GTC Japan]Holodeckを使ってみると? 超高精細なVRの未来を体験
Holodeckは,HTC製のVRヘッドセットViveを着用し,両手にViveコントローラを持って操作を行う。歩き回ったりしゃがみ込んだりと行動を許容するためには,ある程度の広さのスペースが必要だ。このあたりはViveによる普通のVR体験ととくに変わらない。
使用されているPCにはQuadro P6000が2枚使われていた。Quadro P6000はCUDAコア3840基を搭載しており,規模的にはTitan Xpと同程度のグラフィックスカードとなる。ただし,グラフィックスメモリは24GBを搭載と,Titan Xpの2倍の量を確保するPascal世代最強のカードだ。CUDAコア数で見ると,GTX 1060の倍がGTX 1080で3倍がP6000となる。性能の目安になるだろうか。
ちなみに表示されていたのは,クルマのデザインに関するデモだが,PVにあったKoenigsegg REGERAではなくトヨタのLEXUS LC500が使われていた。これはアーリーアクセスに申し込んでいたトヨタから3Dデータを提供してもらって,NVIDIAで素材を割り当てていったものだそうだ。
素材は,NVIDIAのVMaterial形式のものが使われている。車体色は赤なのだが,漆のような色調で,マットな質感の上にグロスのコートをかけてあるような感じで,見る角度によって多彩に色を変えるのだそうで,なかなか再現は大変だったようだ。
なお,Holodeck内のクルマのナンバープレートには「LC500h」と書いてあったが,ハイブリッドユニットは入っていないLC500のほうだそうで,LC500の「ほぼ」そのものが再現されていた。
Holodeckで使われるデータは,ゲームなどのモデリングデータとは違って,外から見えている部分だけでなく,クルマを構成するほぼすべての部品が内部に搭載されており,中を透視するように見ると細かなパーツ,エンジンの内部まで作り込まれていることが分かる。
「ほぼ」というのは,トヨタ製でないパーツには内部構造が含まれていないものもあるからだ。内部にはいくつか抜けているパーツがあるようだった。
そのほか,実物と違う部分としては,エンブレムでミスがあったそうだ。Holodeckではリング内に「L」字が入ったエンブレムが金属で作られていたが,LEXUSのエンブレムは金属とガラスの組み合わせでできているのだそうで,LC500の写真をよく見ると,地に黒いガラスが使われていることが分かる。ここは3Dデータだけでは分からなかったようだ(そのうち修正されるのかもしれない)。
データはとにかく高精細で,近づくとカクカクした部分が見えるといったことがまったくない。最近はFORZAやGT SPORTなど,クルマゲーは実写画質が当たり前になってきているので驚きは少ないかもしれないが,塗装の質感などは上ではないだろうか。さらに内装の皮革(合成かもしれないが)の質感なども,近づいて角度を変えて見ると凹凸がしっかり確認でき,その細かさに驚く。
操作方法についてまとめておこう。
丸いタッチパッド部の下部分を押すと放物線の矢印が出てきて,そこに移動できるという,Viveでは一般的なUIを使って移動処理を行う。歩き回れるくらいの広さがあればよいのだが,ルームスケールの最大範囲でも実際にはそれほど広くはない。瞬間移動機能は必須といえるだろう。
あとは近づいて手を伸ばせば,トリガーで物体をつかむことができ,物体は両手でつかむと,手を広げたり縮めたりで拡大/縮小ができるといった具合だ。PVを見るとなんとなく「触っている」感じで,触覚フィードバックがあるようにも見えるのだが,残念ながら触感はない。
たとえばペンのアイコンだったら,色選択の窓が開き,右手のトリガーで空間に絵が描けるようになる。やってみると,立体的なパーツに沿って線を描くといったことが実に自然にできる。もう少し操作とズレたり距離感などで齟齬が出るかとも思ったのだが,立体形状を自然にトレース可能だった。
描いたモノは前述のように拡大/縮小させたり,別の位置に配置したりといったことがつかんで置くだけでできる。全体に体感的に分かりやすいのだが,半面,アバウトな操作だけで数値どおり正確な大きさといったものは無理という感じではあった。
メニュー左下からオレンジ色の球体を作り,それを手に持って車体内を透視できる。単に頭を突っ込むだけでも車体内を見ることはできなくはないのだが,自動車のような込み入った製品では便利な機能だろう。
一番派手なのはパーツをバラして拡散させる機能だろう。VR空間内で右手にコントローラを表示して,そこから指定できる機能の一つだ(残念ながらほかの機能についての説明はなかった)。数千万ポリゴンの処理が行われる重い部分でもあるはずだが,表示は滑らかだ。組み上がり状態では確認しにくい奥まった部品も個別で表示されるので,実用上も意味のある機能といえるだろう。
コラボレーション機能では,空間やモデルデータ上に直接絵を描くことのほかに,ボードに文字や絵を描いて見せるといったことが可能だ。
そのほか,Holodeck内で直接参照はできないようだが,スクリーンショットを取ることもできる。自画撮りのセルフィー機能も搭載されていた。
当日は用意されていなかったが,もちろんボイスチャットによるコミュニケーションも可能だ。HolodeckはSteamで配信されるものとのことで,Steamが提供するボイスチャット機能をそのまま利用しているという。
ちなみに左手側では設定メニューが開いて,背景を変えたりできるようだった。ライティングを変更して色を確認などというのは,グランツーリスモSPORTでもやっていた「Scapes」に通じるものといえるだろう。
これだけのことを実現するには,現状のハイエンドゲームPCでもちょっと無理っぽいスペックが要求されるのだが,次世代,次々世代のGPUであれば一般消費者にも手の届くところにやってくるかもしれない。近未来のVRがどのようなものになるのか,そういった雰囲気を味わわせてくれる体験だった。
※初出時,CADデータをもとに作成されたような記述がありましたが,正しくは3Dデータでした。お詫びして訂正いたします。