Nintendo Switchの成功は本当に我々が考えているほどのものなのか?

Review of the Year:任天堂の12か月を振り返る。

 通常,成功は期待の大きさに依存する。

 どれほどあなたがうまくやろうと思おうと,どのような結果を出すかが我々の反応を決める。これがバイオハザード7が400万本を売り上げたのに「残念」と評される理由だ。それに対して,ストラテジーゲームでは25万本売れれば純然たる成功と呼ばれるだろう。

 その点では,Nintendo Switchは疑いのない勝利である。

 任天堂は最初の1か月の販売予定を200万台に設定していたが,274万台を売り上げる結果に終わった(関連英文記事)。需要に合わせて在庫を空輸しなければならなかったほどだ(多大な追加コストがかかる)。同社は年間生産台数計画を1000万台に引き上げ,そして3か月後に年度の出荷予定を1400万台に再度引き上げた。3月末までに任天堂は全世界で1674万台のゲーム機を出荷すると予測されている(関連英文記事)。

「市場予測では,Switchは効率的にWii Uや3DSといった姉妹機を置き換えるとされています」

 これは自社の予測をまったく粉砕しており,重要なことは,すべての人の予測を超えていたことだ(関連英文記事)。IHSはSwitchが2017年末までに440万台売れると予測していた(これは7月末で達成された)。SuperDataはやや楽観的で500万台という予測を立てていた(これはその直後に達成された)。両社の数字はWii Uの業績より高めに設定されており,両社のアナリストはどちらも楽観的だと感じていた。

 Niko PartnersのDaniel Ahmad氏は,TwitterでSwitchは初年度に1000万台出荷することも不可能ではないと示唆していた。このような楽観的な分析は叩かれがちだった。

 任天堂の戦略と売り込みはうまくいった。初期の貧弱なソフトウェアラインナップと高額な周辺機器とゲームは予測されていたほど悪い影響を与えなかった。これは部分的には,ゼルダの伝説のクオリティのためだろう(関連英文記事)。年間のゲームリリースを拡散させるという決定は素晴らしい結果となった。Switchは,Mario Kart 8 Deluxe,Arms,Splatoon 2,Mario + RabbidsそしてSuper Mario Odysseyといった絶賛されたソフトウェアとともに連続的にニュースに登場した。

 否定する人はいないだろう。Switchは(PUBGと並んで)今年度のサクセスストーリーとなった。

Nintendo Switchはすべての予測を上回った

 2017年の主要な話題に密着するとしても,おそらく逆の視点Nintendo Switchの今後について考えることは無益ではあるまい。

 任天堂はSwitchは家庭用ゲーム機だと言っている。これでなぜ出るゲームが家庭用ゲーム機用のタイトルのように感じられるのかが分かるだろう。任天堂自身のデータによると,ほとんどのゲーマーは少なくともたまにはという頻度でデバイスをテレビにつないで使っている(関連英文記事)。実際のところ,このデータは30%のユーザーは主にハンドヘルドモードでプレイしている。しかし,正確に彼らがどこでプレイしているかは明らかになっていない(なぜなら,彼らが私みたいだとすると,おそらくはソファの上でくつろいでプレイしているだろうから)。

 これは市場とメディアは,Switchと大失敗だったと思われているWii Uを比較しているということを示している。この比較は好ましいように思われる。SwitchはすでにWii Uの初年度の2倍に達しており,2017年末を待たずしてWii Uの総生産台数を抜く勢いだ。

 しかしながら,しばらくの間Switchは任天堂の唯一のゲームハードウェアになり,効率的にWii Uと3DSといった姉妹機の置き換えが進むだろうと市場は予測している(現時点では3DSは小売で存在感も持っているが)。3DSとの比較は,さほど芳しくない。3DSは低価格で,最初の数か月間はトラブルに苦しんでいたが,いまだに販売されており今年末までに1700万台に達する見込みだ。これはNintendo Switchの販売見込みとほぼ同じである。

 実際,WiiU/3DS世代を通じて,任天堂は約8500万台のゲーム機を販売した ― この世代は同社としては残念な結果として広く認識されている(Xbox 360やPlayStation 3がどちらも約8400万台を販売していること比べると)。

 もちろん,Nintendo SwitchをWii Uや3DSと比べるのは,完全に公平というわけではない。この製品は2つのデバイスとはかなり異なっており,ユーザー層はWii Uと3DSにわたって広く重複しており,3DSの価格は飛び抜けて安い。さらに,任天堂のスマートフォンゲームへの投資はやがて従来の携帯型ゲーム機ビジネスを事実上置き換えてしまうかもしれない。

 それにも関わらず,任天堂は今回がより大きな世代になることを望んでおり,それには8500万台必要だ。1億台のSwitch販売台数というのは,任天堂が日常的に経営発表会などで示唆しているものだが,いまでは実質的な販売目標となっている感がある。かなりちゃんとした初年度となったが,その数字に到達するにはまだ長い道のりがある。

 さらに,一つのゲーム機に依存することで,任天堂はユーザーごとの消費が以前より高額化することを望むようになるだろう。これにはソフトウェアと最初の数年以降の製品寿命を延長するアドオンがより磐石な体制になる必要がある。これは任天堂からだけではなくサードパーティも同様だ。

「任天堂はユーザーごとの消費が以前より高額化することを望むようになるだろう」

 これを肯定するような兆候がいくつかある。任天堂のファーストパーティの状態はこれまで良好だった。そして独立系の開発者はeShopで非常によい結果を残してきている。しかしそこには複数の危険信号がある。

 IHSはSwitchのソフトウェアの20%はデジタル配信によるものだと推定している。これはPS4やXbox Oneよりかなり低い数字だ。物理的な小売が脅かされている状況で,これは消費者にリーチするという点で前進することは任天堂にとって本当に大きな課題となるだろう。Switchの小さな内蔵ストレージはダウンロードを好むゲーマにとってもフレンドリーではない。

 さらにカートリッジの値段は高い。これはいくつかのデベロッパが物理的な製品を作ることを妨害している(なぜならゲームの値段を上げざるをえないからだ)。同時にこれは大手サードパーティパブリッシャにとっても製品作りを難しくしている。実際,我々は多くのサードパーティがSwitchに移植する際に,競合のゲーム機よりも非常に高い価格をつけているところを見てきている。これはSwitchがかなりの数のコアゲーマーを魅了するようになったら問題になることが分かるだろう。―その手の消費者はすでにPS4やXbox Oneを持っている ― DoomやSkyrimといったゲームの売り上げに悪影響を与えるかもしれない。

 価格設定に柔軟性が欠けていることは,任天堂がサードパーティサポートを強化仕様とする際に問題となるだろう。

 間違いなく2017年は任天堂にとってよい年だった。Switchは大量に販売され,ミニスーファミといった製品も生産可能な速度よりも速く売れた。任天堂にとってはよい状況だ。

 しかしながら,2018年は本当にきわめて重要な年になる。任天堂にとって,Switchでの大作発売の勢いを維持する必要があり(新たなNintendo Directの登場がほぼ確実視されていたとしても,現状の発売状況には欠けている),ダウンロード販売の大幅なてこ入れが必要だ。さらに,それにはスマートフォン市場との一貫性を持たせたいところだろう。

 そうなって初めて,我々は任天堂が近年のトラブルを完全に抑え込んだと確信することができるのだ。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら