アプリストアはデベロッパを食い物にしているのか?
Devcomでのコメントに続き,Epic GamesのCEO,Tim Sweeney氏とモバイルの有数のデベロッパがAppleとGoogleの30%取り分について話し合う。
Tim Sweeney氏は,デベロッパにとって十分にオープンでないプラットフォームを糾弾する存在として知られているが,今週(※欧州時間2017年8月4週目),はモバイル業界の主要マーケットプレイスに照準を定めた。
ドイツのケルンで行われたDevcomの基調講演で,デベロッパがモバイル上で生み出す売上からAppleやGoogle,ほかのアプリストアが30%を抜くことが「不公平」であると主張した(関連記事)。彼はゲームスタジオ各社に対して,これらのマーケットプレイスはゲームから「巨額の着服をしている」と警告し,より良い条件を追求すべきだと促した。「我々はこれに腹を立てるべきであり,我々は常に別のソリューションやゲーマーにリーチする新しい方法に目を光らせるべきです」と語った。
その日の後半に我々GamesIndustry.bizのインタビューに応えたSweeney氏は,そのスタンスを変えることなく,モバイルのデベロッパに対し,ゲームを販売するマーケットプレイスに対してより良いものを要求すべきだと奨励した。またアプリストアが,氏が必要と考える変更を行うまで,より納得できるプラットフォームだけに集中することを提案した。
「今はまだ,ほかのアプリストアやWebサイトからサイドローディングできるので,PCや,ある意味ではAndroidといったオープンプラットフォームの状況を改善できる絶好の機会です。私たちデベロッパは本当に,すべてのアプリストアとアグレッシブに交渉するべきですし,彼ら同士の競争を促すためにできる限り多くのアプリストアにコンタクトすべきです。Steamに加えて,GOG.com,Itch.ioなど,興味深く説得力のある契約条件を提示してくれるところがあります。私たちが協力して多くのアプリストアにコンタクトしようとすれば,ストア同士の競争が起こり,それが私たちに課される手数料を押し下げることになります」
「iOSのような完全に閉鎖されたプラットフォームでは,一層懸念が大きいのです。私は,こういうプラットフォームはクローズドなものであってはならないと思います。何億ものプレイヤーにリーチし,あらゆるタイプの一般的なプログラムを実行できる一般的なコンピューティング・プラットフォームは,Webを含むあらゆるソースからのソフトウェアのインストールができるようにオープンであるべきです。彼らがオープンなものになるまで,商業的独占とプラットフォームから上がるわずかな売上から多額の取り分を抜いていくだけでなく,どのようなタイプのアプリを載せるかについてまで自分たちの検閲制度を押し付ける一社独占型アプリストアが跋扈する,マーケットとしての大規模な機能障害が続くのです」
「私たちデベロッパは本当に,すべてのアプリストアとアグレッシブに交渉するべきですし,彼ら同士の競争を促すためにできる限り多くのアプリストアにコンタクトすべきです」
「Unreal Engine 4の開発の非常に早い段階で決めたことの一つは,そのエンジンで構築されたプロジェクトに対してEpicはクリエイティブな部分のコントロールを一切しないということでした。誰でも使えるそのエンジンには,合法であれば私たちの許可なしにいかなるコンテンツを作成しそれを出荷してもよい,という私たちのライセンスがついています。私はそれがすべてのプラットフォームで標準であるべきだと感じています。そのようにオープンであるべきです」
売上から多くを抜き取らずにデベロッパにより役立つというプラットフォームに賛成するのはよいことだが,実際,最も多くのアドレス可能なオーディエンスはモバイルにいる。何十億ものスマートデバイスが市場に出ていて,マックスな数のプレイヤーにリーチすることを意味するならAppleやGoogleなどが30%の取り分を抜くのは,多くのスタジオが理解できることだろうし,おそらく避けられないことでもあろう。しかしこれが,Sweeney氏が信じるところによる,アプリストアがそれほど多くの料金を請求することを可能にしたという考え方だ。
「実はゲームデベロッパたる私たちがこの状況を作り出しました」とSweeney氏は語る。「そういう条件を受け入れることを決めた10万のデベロッパ,すなわち私たちが,今トラップにはまっており,売上の30%を奪うこのモンスターを作り上げたのです。私たちは常に長期的な視点でものを見つつ,将来どうしたいかを決めなければなりません」
「見回せば,多くの素晴らしいPCゲームビジネスがあります。一つはEAでしょう。彼らが配信するのはほとんどEAのゲームですが,Originは素晴らしいサービスです。Battle.netは素晴らしいサービスですが,Blizzardのゲームのみを配信しています。Riot Gamesも優れたサービスを提供していますが,League of Legendsだけを配信しています。これらはそれぞれサードパーティのゲームを配信する可能性のあるベクトルです。ぜひ彼らがオープンになってソフトウェアの売買ができる場所が増えるのを見たいものです」
我々の最初の記事を載せたところ,Vlambeerの共同設立者Rami Ismail氏はSweeney氏のコメントに対して「反論の余地なし」とツイート,その後,GamesIndustry.bizに詳しく語った。
「論拠は非常に明白だと考えます」とIsmail氏は話す。「どのような方法でもいいのですが,もしそのサービスが利益を上げるチャンスを確実に提供してくれるのであれば,売上の30%という数字には正当性があります。しかし,商売を続けられるかも怪しいようなサービスで,さらにコンテンツをストアに並べるだけで30%も中抜きされているようではまったく意味がありません」
「ストアはサーバーの容量を提供しているじゃないかという議論は非常にフェアであり,彼らはそれ以上のサービスを提供していると理解していますが,30%ならば,もっと多くを提供する必要があると思います。itch.ioのようなサービスが,それが可能であることを証明しています。30%が当たり前という議論を超えて,なぜ彼らの30%以下の手数料がユニークな状態であるのか疑問に思うのは当然でしょう。
イギリスのモバイルスタジオSpace Ape Gamesの創設者でCOOであるSimon Hade氏は,Sweeney氏によるAppleやGoogleなどと,Visaのような支払処理業者の比較については「誤った同等物」だと疑問を呈している。代わりに,とくに,いかに若く,しかし広範囲にリーチしているかという点で,彼は彼らが作ったマーケットプレイスを賞賛している。
「実家の地下で孤独に開発するベトナムのデベロッパのゲームが,149か国に届き,世界中の何百万人もの人々につながる力を持っています。素晴らしいことです。小規模のチームやインディデベロッパが30%の取り分を最大限度と感じていることは認めますし,場合によってはゲームが財政的に可能かどうかを判断することもあるでしょう。しかし,多くのスタジオにとって,30%カットは問題ではありません。デベロッパに対する参入障壁が取り除かれたことで,消費者は麻痺するほど膨大な選択肢に直面しているという厳しい現実があります。
「プラットフォームは良くなると信じています。例えば,デベロッパが革新的になり,実験ができるようにインセンティブを与えて,次の画期的なエンターテイメント・エクスペリエンスの実現に必要な開発のチャンスを掴めるようにすることに力を入れるべきです。多くのゲーム会社にとって,ゲームにおける最大のコストはプラットフォームの取り分ではなく,スタジオを次のレベルに引き上げるようなゲームに取り組めないことによる機会損失のコストなのです」
一方,Inkleの共同設立者であるJon Ingold氏は,30%について,Sweeney氏が言う "寄生損失"ではなく,モバイルでビジネスを遂行するためのコストであると見る。80 Days スタジオにとっては税金を支払うことと変わりはない。
「価格設定と原価計算では,ほかの業界で付加価値税を除いて考えるのと同じように,『Apple税制の税引後』の収益を考えています。つまり,消費者にコストを上乗せし,その30%は私たちのお金がなくなったのではないと見なします」とIngold氏は説明する。
「より一般的には,App Storeは進化し続けるマーケットであり,Appleは ― 彼らの不透明な方法で ― 一貫してプレミアムゲームとインディーゲームを活性化させるための実験を行っており,非常に大きくて忠実な顧客基盤を持っています。(※一方Googleは)キュレーションをしておらず,インディーズをサポートしていないので,私はPlay Storeに30%を支払うことに満足していません。しかし,Androidのプレイヤーはプレミアムゲームが好きではないようです」
「30%が『正しい』率であるかどうかは,そこに競争がないため断じることはできません。料率が下がることはもちろん歓迎ですが,例えば20%まで落としても,気づかれずに消えていくようなインディーズのタイトルを救うことも,プレミアムゲームや予算が少ないタイトルのプレイヤー獲得のための予算を使うこともできません」
Sweeney氏との対談をまとめるべく,モバイル業界の変化を奨励し,多額の手数料に対して反撃を開始するために個々のデベロッパが,何ができるか尋ねた。
「より多くのストアをサポートし,すべてのストアと交渉し,何か不満なことをするのを余儀なくされたら『NO』と言うことです」と氏は述べた。「そういったことに私たちは皆,オープンに意見を述べるべきであり,現状をそのまま『OK』と受け入れるべきではありません。それが現状ですが,私たちがそれを良しと受け入れたら,覆すことはできません」
Tim Sweeney氏は,デベロッパにとって十分にオープンでないプラットフォームを糾弾する存在として知られているが,今週(※欧州時間2017年8月4週目),はモバイル業界の主要マーケットプレイスに照準を定めた。
その日の後半に我々GamesIndustry.bizのインタビューに応えたSweeney氏は,そのスタンスを変えることなく,モバイルのデベロッパに対し,ゲームを販売するマーケットプレイスに対してより良いものを要求すべきだと奨励した。またアプリストアが,氏が必要と考える変更を行うまで,より納得できるプラットフォームだけに集中することを提案した。
「今はまだ,ほかのアプリストアやWebサイトからサイドローディングできるので,PCや,ある意味ではAndroidといったオープンプラットフォームの状況を改善できる絶好の機会です。私たちデベロッパは本当に,すべてのアプリストアとアグレッシブに交渉するべきですし,彼ら同士の競争を促すためにできる限り多くのアプリストアにコンタクトすべきです。Steamに加えて,GOG.com,Itch.ioなど,興味深く説得力のある契約条件を提示してくれるところがあります。私たちが協力して多くのアプリストアにコンタクトしようとすれば,ストア同士の競争が起こり,それが私たちに課される手数料を押し下げることになります」
「iOSのような完全に閉鎖されたプラットフォームでは,一層懸念が大きいのです。私は,こういうプラットフォームはクローズドなものであってはならないと思います。何億ものプレイヤーにリーチし,あらゆるタイプの一般的なプログラムを実行できる一般的なコンピューティング・プラットフォームは,Webを含むあらゆるソースからのソフトウェアのインストールができるようにオープンであるべきです。彼らがオープンなものになるまで,商業的独占とプラットフォームから上がるわずかな売上から多額の取り分を抜いていくだけでなく,どのようなタイプのアプリを載せるかについてまで自分たちの検閲制度を押し付ける一社独占型アプリストアが跋扈する,マーケットとしての大規模な機能障害が続くのです」
「私たちデベロッパは本当に,すべてのアプリストアとアグレッシブに交渉するべきですし,彼ら同士の競争を促すためにできる限り多くのアプリストアにコンタクトすべきです」
-Tim Sweeney, Epic Games
「Unreal Engine 4の開発の非常に早い段階で決めたことの一つは,そのエンジンで構築されたプロジェクトに対してEpicはクリエイティブな部分のコントロールを一切しないということでした。誰でも使えるそのエンジンには,合法であれば私たちの許可なしにいかなるコンテンツを作成しそれを出荷してもよい,という私たちのライセンスがついています。私はそれがすべてのプラットフォームで標準であるべきだと感じています。そのようにオープンであるべきです」売上から多くを抜き取らずにデベロッパにより役立つというプラットフォームに賛成するのはよいことだが,実際,最も多くのアドレス可能なオーディエンスはモバイルにいる。何十億ものスマートデバイスが市場に出ていて,マックスな数のプレイヤーにリーチすることを意味するならAppleやGoogleなどが30%の取り分を抜くのは,多くのスタジオが理解できることだろうし,おそらく避けられないことでもあろう。しかしこれが,Sweeney氏が信じるところによる,アプリストアがそれほど多くの料金を請求することを可能にしたという考え方だ。
「実はゲームデベロッパたる私たちがこの状況を作り出しました」とSweeney氏は語る。「そういう条件を受け入れることを決めた10万のデベロッパ,すなわち私たちが,今トラップにはまっており,売上の30%を奪うこのモンスターを作り上げたのです。私たちは常に長期的な視点でものを見つつ,将来どうしたいかを決めなければなりません」
「見回せば,多くの素晴らしいPCゲームビジネスがあります。一つはEAでしょう。彼らが配信するのはほとんどEAのゲームですが,Originは素晴らしいサービスです。Battle.netは素晴らしいサービスですが,Blizzardのゲームのみを配信しています。Riot Gamesも優れたサービスを提供していますが,League of Legendsだけを配信しています。これらはそれぞれサードパーティのゲームを配信する可能性のあるベクトルです。ぜひ彼らがオープンになってソフトウェアの売買ができる場所が増えるのを見たいものです」
「論拠は非常に明白だと考えます」とIsmail氏は話す。「どのような方法でもいいのですが,もしそのサービスが利益を上げるチャンスを確実に提供してくれるのであれば,売上の30%という数字には正当性があります。しかし,商売を続けられるかも怪しいようなサービスで,さらにコンテンツをストアに並べるだけで30%も中抜きされているようではまったく意味がありません」
「ストアはサーバーの容量を提供しているじゃないかという議論は非常にフェアであり,彼らはそれ以上のサービスを提供していると理解していますが,30%ならば,もっと多くを提供する必要があると思います。itch.ioのようなサービスが,それが可能であることを証明しています。30%が当たり前という議論を超えて,なぜ彼らの30%以下の手数料がユニークな状態であるのか疑問に思うのは当然でしょう。
「実家の地下で孤独に開発するベトナムのデベロッパのゲームが,149か国に届き,世界中の何百万人もの人々につながる力を持っています。素晴らしいことです。小規模のチームやインディデベロッパが30%の取り分を最大限度と感じていることは認めますし,場合によってはゲームが財政的に可能かどうかを判断することもあるでしょう。しかし,多くのスタジオにとって,30%カットは問題ではありません。デベロッパに対する参入障壁が取り除かれたことで,消費者は麻痺するほど膨大な選択肢に直面しているという厳しい現実があります。
「プラットフォームは良くなると信じています。例えば,デベロッパが革新的になり,実験ができるようにインセンティブを与えて,次の画期的なエンターテイメント・エクスペリエンスの実現に必要な開発のチャンスを掴めるようにすることに力を入れるべきです。多くのゲーム会社にとって,ゲームにおける最大のコストはプラットフォームの取り分ではなく,スタジオを次のレベルに引き上げるようなゲームに取り組めないことによる機会損失のコストなのです」
「価格設定と原価計算では,ほかの業界で付加価値税を除いて考えるのと同じように,『Apple税制の税引後』の収益を考えています。つまり,消費者にコストを上乗せし,その30%は私たちのお金がなくなったのではないと見なします」とIngold氏は説明する。
「より一般的には,App Storeは進化し続けるマーケットであり,Appleは ― 彼らの不透明な方法で ― 一貫してプレミアムゲームとインディーゲームを活性化させるための実験を行っており,非常に大きくて忠実な顧客基盤を持っています。(※一方Googleは)キュレーションをしておらず,インディーズをサポートしていないので,私はPlay Storeに30%を支払うことに満足していません。しかし,Androidのプレイヤーはプレミアムゲームが好きではないようです」
「30%が『正しい』率であるかどうかは,そこに競争がないため断じることはできません。料率が下がることはもちろん歓迎ですが,例えば20%まで落としても,気づかれずに消えていくようなインディーズのタイトルを救うことも,プレミアムゲームや予算が少ないタイトルのプレイヤー獲得のための予算を使うこともできません」
Sweeney氏との対談をまとめるべく,モバイル業界の変化を奨励し,多額の手数料に対して反撃を開始するために個々のデベロッパが,何ができるか尋ねた。
「より多くのストアをサポートし,すべてのストアと交渉し,何か不満なことをするのを余儀なくされたら『NO』と言うことです」と氏は述べた。「そういったことに私たちは皆,オープンに意見を述べるべきであり,現状をそのまま『OK』と受け入れるべきではありません。それが現状ですが,私たちがそれを良しと受け入れたら,覆すことはできません」
※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)