Steamで生き残るにはパブリッシャが必要になる?
SteamでのDiscoverability(見つけられやすさ)の問題は,インディーズや小規模デベロッパがパブリッシング契約を模索する段階に達している。
Bulkhead InteractiveのプロデューサーJoe Brammer氏は,gamescomでGamesIndustry.bizインディーズのパブリッシャに対する態度やこれは氏の最初のいくつかのリリースで学んだ教訓,そしてますます過密化するPC市場について語ってくれた。
昨年12月,2016年だけで4200本以上のゲームがリリースされていたことが明らかになった(関連記事)。市場の38%は完全に旧作で占められており,今年になってから新作リリースが不足するという事態はまったくなかった。このプラットフォームがセルフパブリッシングのインディーズにとって頼れる目的地になっていたとはいえ,Brammer氏はこの方法でまともな売り上げを立てるのはこれまで以上に難しくなっていると語った。
「近頃では,あなた方は大いにインディパブリッシャを必要としています。もしくは誰もが驚くようなゲームを持っている必要があります」と氏は我々に語った。「それは信じられないようなものでなくてはならないでしょう。これは"十分良い"ゲームではダメで,なにか本当に特別で素のままで選ばれるような要素がなくてはなりません。そう,PUBGのように」
「市場は変化しています。インディパブリッシャはもはやインディパブリッシャらしさを潜め,小規模パブリッシャに似てきています。しかし小規模パブリッシャは受け入れ可能なものです。これは彼らが現在悪い方向に行っているという意味ではないのです」
Brammer氏自身のゲーム,発売目前の第二次世界大戦のマルチプレイヤーFPSである「Battalion 1944」は,Square Enix Collectiveから発売される。これは「The Turing Test」での両者間のパートナーシップ成功に続くものである。
「彼らは私たちの話を聞いてくれます」と氏は言う。ほかのどのインディパブリッシャもスクエニのような超巨大企業が持つパワーを与えつつ,インディーズとしてのメンタリティの妙を維持させてくれることはありません。もちろん,私たちはスーパー・インディではありませんが」
しかし,いったい全体なぜパブリッシャに向かうのだろうか? パブリッシャは貪欲で,弱小なインディデベロッパを搾取するという根強い認識があるようだ。このため,多くの新しいインディデベロッパは自分たちをレーベルと呼ぶ。
「インディパブリッシャはもはやインディパブリッシャらしさを潜め,小規模パブリッシャに似てきています。しかし小規模パブリッシャは受け入れ可能なものです」
Brammer氏がパブリッシャに望むことは,彼のチームが最初にリリースした「Pneuma:The Breath of Life」の経験から生まれている。このローンチはまた,Steamのマーケットがいかに挑戦的で難しいものかを痛感させた。一部のインディーズはまだパブリッシャに対して不安を感じているものの,「業界が大規模に変化している」のでパブリッシャの存在は必要であると断言する。Pneumaは酷評されることも商業的なヒットにもならなかったが,同社がゲーム開発を継続し,The Turing Testに取り組むのに十分な売り上げを上げることができた。そのパズルゲームのローンチに際して,Brammer氏とそのチームはPneumaのパフォーマンスを再検討したところ,XboxとPlayStationでは大きく売上を伸ばしたものの,Steamでは目標に達していないことが分かった。
「Steam上で何かをしようとする場合は,パブリッシャが必要だと私たちは結論づけました」とBramme氏は語る。「Steam側とやり取りし,多少なりとも私たちをヘルプし,必要なアドバイスをくれる人が必要です。Square Enixに行ったとき,資金は不要なので,Steamにゲームを載せる手助けだけしてほしいと言ったので,彼らはSteamバージョンのみを手伝ってくれました。その後,我々はXbox Oneバージョンもやってほしいと思いました。彼らが素晴らしい仕事をしてくれたからです」
Brammer氏は,過去にもっと多くのお金をパブリッシャに要求しなかったこと,ゲームの価格が安ければクオリティも低いという考え方を植え付けてしまったことで,彼のチームは「自分自身を低く見積もって」しまっていることはおそらく罪だろうと認めた。
前述のDiscoverabilityの問題の数々のおかげで,新しいデベロッパが頭角を現すには,Steamは難しいマーケットであることはすでに認識されている。Steamの開発および運営を行うValveは以前の「Stean Gleenlight」システムをやめ,ゲームをマーケットプレイスに出すデベロッパに100ドル(約1万1000円)を課す「Steam Direct」を奨励することでゲームリリースのプロセスを改良しようとしている。
しかし,Directが6月にリリースされたのち,ゲームの提出量は1週間で213,4週間では730と急増した。Valveは,新しいシステムは必ずしもゲーム提出の数を減らそうとしているのではなく,そこを通過するものは面白い,ホンモノのゲームであることを保証するように設計されていると述べている。
Brammer氏は,Discoverabilityの問題は,Valveが能動的に取り組もうと思っていることではないとする。「以前,あるプラットフォームホルダーとミーティングをし,アプリストアについて『あれはひどい,プレイヤーから見つけられるなんてことはほとんどない』と冗談を言うと,彼らはぜひともアプリストアを持ちたいと言いました。彼らは数百万ものゲームが出てきて,良いものがほぼ自然にトップになるようなものを歓迎しているのです」
「コミュニティ側はDiscoverabilityを問題視しており,Steamは改良すると言っていますが,実際にするのは焼き直しにすぎません」
「率直に言えば,Steamはそれを問題だと思っていないようです。しかしコミュニティ側は問題視しており,Steamは改良すると言っていますが,実際にするのは焼き直しにすぎません。彼らがGreenlightを止めるとき,なぜあのような変更を行ったのか分かりません。彼らは何も止めておらず,物事をさらにオープンにしただけです。それが2017年のマーケット市場なのです。すなわち,参入障壁を取り払い,より多くのコンテンツが作られ,良質なものはトップに上り詰める,ということです。ただし,これは非常に難しいことです」代わりに,PCのマーケットプレイスに溢れかえるゲームの数を減らすこと(そしてその延長線上で,発見されることと成功の可能性を高めること)は,部分的にデベロッパにも及ぶ。Brammer氏は,ゲームスタジオに対して,「自分たちや自分たちが作るゲームの品質についてより正直になる」こと,そしてゲームがスタートラインに立てないならスクラップにすることを提言する。彼のチームは,Pneumaを開発を始める前にロボットサッカーゲームでまさにそれをやった。
「3週間,私たちはUnityで取り組んでいました。そしてある日,冗談交じりにこう言ったのです。『Unreal Engineに切り替えたようがよくない?』私たちは互いを見やりました。『このゲームちょっとダメかも』と。私たちはそれを投げ捨てました。でもそれはPneuma,Turing Test,そして今日のBattalion 1944に導いてくれるもので,私のキャリアの中で最も重要な3週間だったと言えます」とBrammer氏は振り返った。
「ですから,デベロッパは『俺のゲームはゴミだ,もっとうまくやらねば』と,いい意味で気が狂っている必要があるのです。マーケットも今や大きく変わっていますから,その読み解き方を学んでください。なんでもリリースできるわけではないのです」
Brammer氏は,たとえゲームが高品質であっても,ゲームスタジオはPlayerUnknownレベルの驚きの成功を期待するのではなく,パブリッシャを活用すべきだと奨励する。我々はパブリッシャに求めるべきもの,また,期待や要求すべきことを問うた。
「パブリッシャに何かを要求しなければならないのであれば,そして,それがパブリッシャの応えたくないものなら,それは悪いリレーションシップの始まりです」と氏は語った。「イギリスのゲームデベロッパTeam 17の創立者でCEOのDebbie (Bestwick)女史は,両者がハッピーになるフェアな取引をすれば,より良い条件を得ることができると言います。多少の駆け引きは常にあるものですが,もし相手があげたくないと思う何かを望むのならば,それはおそらく相性がよくないのでしょう」
「すべてのパブリッシャに話をする。全員の意見を聞く。しかし,もし一緒にやっていけそうな相手を見つけたのなら(それがキーポイント)……なぜならあなたはゲームを託していかねばなりませんから。私にとっては,信頼性は最も重要なことの一つです。信頼できると思う人を見つけたら,その人と一緒にやるべきです」
「あなたと同じくらいにあなたのゲームを心に留める人はいません。ですから,十分に関心を持ってくれると思える人たちを見つけなければなりません」
※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)