PUBG「プレイヤーを愚か者として扱ってはいけません」

BlueholeのBrendan Greene氏はPlayerUnknown's Battlegroundsのアーリーアクセスコミュニティで誠実さと透明性を保っている。

 ゲームのアーリーアクセスライブコミュニティで活動することは難しい仕事になるかもしれない。PlayerUnknown's Battlegroundsの周りに集まったものと同じくらい巨大なライブコミュニティではまったくもって困難なものだ。同作のクリエイティブディレクターであるBrendan Greene氏にとっての秘訣は,開発初期に打ち出した原則に固執することだった。業界で最も多く語られるゲームに急成長したあとでもそれは同じだ。

 昨日(※欧州時間2017年8月21日)のDevcom(※gamescomと併催されているゲーム開発者会議)でGreene氏はプレイヤーと連絡をとり続けることの重要性を議論していた。たとえそれが4か月で800万本を販売し(関連英文記事),Steamで同時接続プレイヤー数が安定して70万人を突破するようになり(参考URL),さらに重要なこととして,プレイヤーたちがあなたが注意を払っていることさえ信じなかったとしてもだ。

 「我々は実に強大なコミュニティを持っています」とGreene氏は語る。「我々はDiscord(※チャットツール)やフォーラム,ストリーミング時にTwitterなどを介して大量のフィードバックを受け取っています」

「私がやっているのは,日曜日にDiscordにログインし,人々と2時間チャットしてコミュニティと接触を持つことです ― みんな喜んでいます」

 「ハックレポートであろうとバグレポートであろうと,それらはすべてチームのもとに届きます。ときには,あなたがちゃんとすべてのことを聞いているのにみんながあなたを信用していないような集団とコミュニケートすることは大変になります。私がやっているのは,日曜日にDiscordにログインし,人々と2時間チャットしてコミュニティと接触を持つことです ― みんな喜んでいます」

 「私はプレイヤーです。私は業界出身ではありませんでした。だいたい1年前まで私はゲームをプレイしていました。そしていま私はクリエイティブディレクターになっています。私は自分がプレイヤーの一員であり,コミュニティとつながることができれば,彼らに本当にゲーム内での発言権があるように感じさせることができると思っています」

 Greene氏の辿った道は,最も権威のある講演者の一人として90分間Devcomの聴衆を楽しませた彼の現在の地位では決して普通とはいえない。氏は,ArmaシリーズやH1Z1といったゲーム用のMODを通して「バトルロイヤル」というコンセプトを開発した。その過程でプレイヤーと直接コンタクトを取って,コア機能やメカニクスを改善している。実際のところ,Greene氏はもし著名な実況者Lirik氏の協力がなかったら「ここに座っていなかっただろう」と認めている。「彼の3年間にわたる私のゲームのプレイがH1Z1につながりました。そしてそこからBattlegroundsにつながったのです」と氏は語った。

 Greene氏は現在Bluehole ―彼をクリエイティブディレクターとして雇った韓国のゲームスタジオ― で100人以上のチームを抱えている。しかし,規模の拡大がBattlegroundsでの実況プレイが変革し変わり続けていた役割を減じることはなかった。Greene氏によると,オフィス内の誰もが毎日ゲーム実況を見ていたという。彼らの作り出したコンテンツは,「最高のデバッグツールのひとつ」でありコミュニティがなにを楽しんでいるのかで重要な洞察をもたらしたと氏は語る。

 BlueholeのプログラマMarek Krasowski氏は,Battlegroundsの「象徴的な」武器のひとつであるフライパンの創造は,ビデオコンテンツの緊密なモニタリングの成果であるという。フライパンの物理演算は弾丸を検知するように改められ,Greene氏の好奇心を満足させた。Krasowski氏は変更を元に戻すのを忘れてしまい,次のパッチでは防弾フライパンが実装されてしまった。


 「我々がそれに気づいたのは,人々がフライパンで銃弾をはたき落としているのをビデオで見てからでした」とKrasowski氏は語った。「ボスは私のところに来て言いました。『Marek,なにをしでかしたんだ?』しかし我々はそれを取り下げることができませんでした。プレイヤーたちはそれをたいそう気に入っていたのです」

 Greene氏は付け加えた。「我々は元々フライパンを(深作欣二監督による2002年の映画 ※日本では2000年)「バトル・ロワイヤル」のオマージュとして取り入れました……そして,いまはちょっと凄いことになっています。我々は内部ではフライパンでグレネード弾を打てるようにしようとさえ話していました。そう,グレネード弾を打ち返すことができるんです」

 これらのメソッドは明らかにBattlegroundsの役に立っている。しかしゲームのローンチスケジュールは今年中であり,Greene氏はバランス調整が必要な部分の多くをデータを使って行う必要があることを認めた。「我々は現在,Lootといったバランスに起因するコミュニティのフィードバックから離れています」と氏は語った。「バランス調整ではときにデータは最良のツールになることを学ぶ必要があります。私にはArma IIIのバランス調整をコミュニティ経由で行った膨大な経験があります。そしていまはそれを純粋にデータ上で行うように切り替える必要があるのです……ええ,データサイエンスチームを信用する必要があります。幸い我々には素晴らしいチームがあります。彼らは本当に我々を助けてくれています」

「あなたがなにかを約束した2か月後にそれを提供できなくなります ― なぜなら,お分かりのように,ゲーム開発はクソ難しいからです」

 これは,3月のアーリーアクセス版ローンチからBattlegroundsがどれくらい成長したかについての話だった。しかし,Greene氏は長期にわたるコミュニティで,ときには困難さを見誤ったと語った。事実上,前例がないくらいのペースでのゲームの盛り上がりに,Blueholeがそのペースを保ち続けることの困難さに直面していたのだ。

 「我々はこの4か月間で大きな成長を遂げました。しかし我々はこの4か月間のためにのみやってきたのです。ときにはコミュニティを納得させることが難しいこともあります。『みんな落ち着いて。我々は拡大中だ。しかしチームにぴったり合って,チームのほかのメンバーとうまくやっていけるエンジニアを探そうというのは本当に難しいことなんだ』これはお金を出すだけで解決するプロセスではありません」

 「これには時間がかかり,その旨をコミュニティに伝えています。これはプレイヤーたちを愚か者のように扱わないというオープンな開発意識を信じているからです。彼らはゲーム開発を理解しています。もしくは理解したいと思っています。なので彼らとコミュニケーションをとれば取るほどあなたは彼らにそれを示すことになります。それはあなたにとってよりよいものです」

 このような透明性のコミットメントは,Blueholeのスピーカーからプレイヤーへ方法を告知する。Greene氏は,その点で氏が間違いを犯してきたことを認めている。しかし彼も彼の会社も,コミュニケーションのチャンネルをオープンにし,誠実にかつできる限りモニターするように保つことを理解している。そして,なにか失敗したときに「PR発言」を避けることはオープン開発の成功のために必須であることも。

 「私がBlueholeで最初にチームに参加したとき,私とエグゼクティブプロデューサーは座ってオープン開発について議論しました」と氏は語った。「もう一度,ゲームがどのように作られているのか知りたがっているプレイヤーに立ち戻り,それを彼らに伝えることで,なにかを発表するときに誤解されることが少なくなったのです」

 「私はインターネット上ではなにも約束しないことを学びました。なぜなら(プレイヤーたちは)覚えているからです。これは私自身のゲーム開発への甘さからくるもので,あなたがなにかを約束した2か月後にそれを提供できなくなります ― なぜなら,お分かりのように,ゲーム開発はクソ難しいからです」

 「我々はできるだけオープンにしようとしています。そして我々の間違いについてもオープンにしています。人々にサーバーに関する問題について説明し,なにが起こったのかを伝えます。ほとんどの人はなにが起きているのかを理解できるくらい賢いのです。PR発言で状況をごまかそうとしているとき,それは最良の方法ではないことがあります」

 「最近ではほとんどの人はそれを見破ってしまいます。だから我々は違った方法を試しているのです」

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら