[CJ2017]バックパックPCでの多人数VR FPSはここまできた「SO REAL」

 ChinaJoy 2017に併催されているスマートデバイスの展示会「eSmart」は,VR関係が目立つハードウェア展覧会だ。漢字にすると「中国国際知能娯楽硬件展覧会」と,なんとなくAI寄りの展示会っぽい雰囲気もある。
 昨年は怪しげなVRヘッドセットをまとめるだけで大ボリュームになったが,ちょっと残念なことに,今年はそうしたデバイスの展示がなかり減っていた。昨年は,スマホを挟み込むCardboard式のモバイルVRヘッドセットはまだしも,独自仕様のスタンドアロンVRヘッドセットとか,PC用の独自仕様VRヘッドセットなどが乱立していて,ちゃんと市場が成り立つんだろうかという懸念が大いにあったのは確かだ。

 ソフトを十分に供給するには,ある程度標準的な規格に沿った展開が望ましいわけだが,中国でOSVRという単語を見ることは稀であり,Google Daydreamの話もほとんど聞かない。
 Googleといえば,中国ではVPNを使わなければアクセスできないサイトであり,最近はVPNもほぼ全面規制されていて,Google(だけではないが)シャットアウトの傾向はますます強まっている。
 以前から,GoogleのDaydreamって中国ではどうなのか,と気になっていたのだが,会場でDaydreamに対応しますというVRッドセットを見つけたのででそのあたりを聞いてみた。Daydream用のソフトは独自のサイトで,Googleに取りにいくわけではないからセーフ(かなりグレーではあるみたいだが)らしい。
 (Google的に)ちゃんとしたDaydream対応端末かどうかは分からないのだが,少なくとも中国でDaydreamという単語が聞けただけでも収穫だった。

 そんなこんなで,昨年とはまた様相の違っている中国VR事情だが,今回は会場で比較的目立っていた,バックパックPCなどを用いたプレイヤー移動型VRソリューションについて見ていきたい。

 MSIやZOTACがバックパックPCを次々と発表し,VRに新しい展開が見えてきたのが昨年秋のことだ。私も発表されたばかりの製品を東京ゲームショウで背負った覚えがある。大規模なVR施設展開に積極的な中国でこれを取り入れないはずもなく,ChinaJoy会場には多くの出展が見られた。既存のバックパックPCを使うものや,独自のPCを使うものなど,タイプもさまざまだ。

 バックパックPCを使えばVRヘッドセットを動きながら使えるのだが,それだけでは十分ではない。ルームスケールVRができるViveのベースステーションを使っても,広い空間を扱うのは簡単ではなく,より広い空間でより正確に位置を把握するソリューションがないと,多くの人が期待しているであろう,VR空間を多人数で走り回るようなゲームは難しい。

 ということで,ヘッドセットやバックパックPCには既存製品を使いつつ,ポジショントラッキングで独自ソリューションを展開しているところが多かった。その一つとして,ここでは中国でVRのテーマパークを展開しているSO REALを紹介してみたい。

 以下がデモルームの模様だ。

[CJ2017]バックパックPCでの多人数VR FPSはここまできた「SO REAL」
天井部の各所にセンサーユニットが取り付けられている
[CJ2017]バックパックPCでの多人数VR FPSはここまできた「SO REAL」 [CJ2017]バックパックPCでの多人数VR FPSはここまできた「SO REAL」

 まず,VRヘッドセットには動き回りで定番のViveではなく,Riftが使われている。さらに頭の上には,Viveのモーショントラッカーのような物体が取り付けられており,頭上には一定間隔でセンサーが設置されていることが分かる。頭の上の物体を,天井のセンサーで検知するわけだ。
 ついでに写真をよく見ると,短いケーブルの用意されていないRiftのケーブルが背中でぐるぐる巻きになっていたりする。また,手に持った銃にもトラッカーが取り付けてある。

[CJ2017]バックパックPCでの多人数VR FPSはここまできた「SO REAL」

 最大6人でプレイできるとのことだが,安全を鑑みて会場では4人での対戦が行われていた。原理的に扱える空間は無制限とのことで,北京には500m2で展開されている施設もあるそうだ。これは,バスケットボールコートを大きくしたくらいの広さだが,2000m2の施設を作る計画もあるらしい。

 プレイの様子はムービーを見るのが分かりやすいだろう。会場ではゲーム内のモニタはしていなかったので,どんなゲームをやっているのかは分からないが,多人数VR FPSの様子を妄想してみてほしい。


 目隠しされた状態でよくこんなに動けるな,と思うくらい走り回っているのが確認できる。こういったPvPの撃ち合い以外に,PvEコンテンツもあるとのこと。
 広い空間を多人数で走り回れるVRが実現すると,いろいろと夢もふくらんでくる。既存の技術で足りないところは独自の技術を織り交ぜて,中国のVR市場は急速に進化しつつある。広い場所が必要になるアトラクションは日本向きではないのだが,こういう施設ができるとVRゲームの枠もかなり広がっていきそうだ。