Free-to-Playが増えてもVRゲームを独占することはありえない
バーチャルリアリティのゲームタイトルでは,消費者の最初の選択は常にプレミアムゲームであるとOskar Burman氏は語る。
Rovioの元統括部長で現在Fast Travel Games のCEO(最高経営責任者)を務めるBurman氏は,先週スウェーデンで開催されたゲームカンファレンス「Nordic Game Conference」に登壇し,VRでもFree-to-Playは一定のプレゼンスを確保するだろうが,モバイル市場を席巻したようにVR市場を支配するとは思わないと述べた 。
「プレイヤーベースの拡大に伴い,Free-to-Playはより一般的になるでしょう。しかし,モバイルにおけるそれと同じくらい支配的になるのではなく,ちょうどよくバランスが取れた共存状態になるのではないかと思います。もし,ゆくゆくは支配的になるとしても,現在のPCゲームのように,プレミアムゲームの市場は残ると思います」
それを念頭に置き,Burman氏はVR開発者に向け,きちんと定価の値札をつけたプレミアムゲームのタイトルを作ってほしいと強調した。マイクロトランザクションや,より実質的なDLCの販売を実験をする余地は十分にあるが,ゲームスタジオは,とくにハイエンドなVR機種のところで,彼らの仕事に課金するのを恐れてはいけないとも語った。
「間違っていません」と氏は主張した。「PCやVRヘッドセットなどの機器に1000ドル以上を費やすのなら,それに見合う良いゲームにもういくばくか支払うことは気にしないでしょう」
バーチャルリアリティへの注目は主にPCや家庭用ゲーム機でのエクスペリエンスを中心としているが,モバイルにおけるオーディエンスのターゲットは間違いなくもっと多く存在し,1000万人に近いとFast Travel Games独自の調査では見積もっている。ただし,これらの潜在的な消費者をひとくくりのターゲットと思ってはいけないとBurman氏は参加者に呼びかけた。
「それらのオーディエンスのことを私たちは"半伝統的なゲーマー"と呼んでいます。その層にゲーマーがいることは間違いありませんが,新しいVR的なものを試してみたいだけの,ゲームには精通していないプレイヤーもいるのです。そういう人たちはゲームを試しつつも,同時にほかの多くのことも試しているかもしれません」
自分たちが作ったVRゲームへの関心を高めようとするスタジオに対する氏からのアドバイスは,伝統的なメディアではなく,まさに今の市場の仕組みであるインフルエンサーにアプローチすること,そしてVRゲームをPCや家庭用ゲーム機のタイトルと同じようにプロモーションするということだった。
Burman氏は,バーチャルリアリティにおいて変化していくゲームジャンルについて熟考した。より短いアクション,シューティングゲーム,パズルゲームといった現在の波は,そのほとんどの背後にある小さなチームの数々と,彼らの限られた予算の組み合わせに起因するが,オーディエンスが成長することにより,さらにこの波は拡大すると考えている。VRについて言えば,まだあまり開拓されていないジャンルであるスポーツゲームはより一般的になるかもしれない,しかしまた,サンドボックス型VRゲームが本当のキラーアプリを生む可能性があると示唆した。
「創作的なジャンルやVRで何が起きているのか,大変興味深く見ています。次の『マインクラフト』になるのは何でしょうか?」
「創作的なジャンルやVRで何が起きているのか,大変興味深く見ています。次の『マインクラフト』になるのは何でしょうか? 私たちは,VR界で間違いなくなにか壮大な出来事が起こるのを確信しています」この講演では,Burman氏自身がモバイルで経験を積み上げて極めて有益だったことをベースに,主にVR開発者がほかのプラットフォームから学べることについて取り上げられた。ある意味,VRタイトルはスマートフォン用のゲームと同じくらいアクセスしやすく,即座に満足させるものでなければならない。
「私たちが学んだことの一つは,モバイルVRでもPC VRでも,VRでは起動時間がきわめて重要であるということです。VRゲームをやろうとしてロードをひたすら待っていると,没入感が減じ,ゲームのエクスペリエンスから遠ざかってしまうからです。実際,この問題があるゲームはかなりあります。モバイルから学びましょう。すなわち,なるべく早く起動しなければなりません。長い時間をかけないようにしてください。この辺は,モバイルがVRを卓越していると言えるでしょう」
「モバイルから学んだもう一つは,短時間の集中プレイです。プレイヤーはログインしてバッとプレイしてすぐにログアウトしてしまうのです。VRはセットアップが大変なので,こういうとてもクイックでバースト的なゲームは馴染まないでしょう」
ゲームセッションの長さについては,Burman氏は,プレイヤーがさまざまなプラットフォームでゲームプレイにどれくらいの時間を費やしているを調べたFast Travel Gamesが行った調査結果を紹介した。従来のPCと家庭用ゲーム機では,1セッションあたり90〜150分,1週間に2?3時間という結果が出た。他方,モバイルでは,予想どおり,約2〜4分の非常に短い単位で1日に複数回プレイしていた。バーチャルリアリティはその中間に位置する。
「我々が行ったプレイヤー調査では,VRゲームではプレイヤーは理想的には1セッションにつき20〜30分費やします。そしてこれは家庭用ゲーム機でもだいたい同じ結果が出ます」とBurman氏は言う。
「ここから学べることは,VRのゲームプレイの深さは,PCや家庭用ゲーム機から引き継げるものであるということです。人々は伝統的なゲームで経験するものと同じ種類の世界に没入したいと思っています。そしてこういった世界観を創り上げることはVRにとってより一層重要になるでしょう」
聴衆の一人は質疑応答の時間を過ぎてもなお,VRが普及することで従来のPCや家庭用ゲーム機に費やされる時間が短くなると思うかとBurman氏に質問した。
「そうですね,その時間に食い込むかもしれません」と氏は答えた。「誰しもゲームに割ける時間は限られていますから,PCや家庭用ゲーム機からVRに移行するプレイヤーも出てくると思います」
「モバイルVRはまた異なる幻獣です。モバイルゲームはトイレにいるときにやるものですが,もしかするとモバイルVRもそうなるかもしれませんね。私はまだ試していませんが」
※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)