世界各国のゲームが京都に集う! 「A 5th of BitSummit」ブースレポート
2017年5月20日〜21日,インディーズゲームのイベント「A 5th of BitSummit」が京都で開催中だ。会場は昨年(2016年)と同様,「みやこめっせ」だが,5周年ということで,1.5倍ほど大きなフロアに移動しての実施となった。大小さまざまな開発チームが自慢のタイトルを世界に向けてアピールした会場の様子をお届けしよう。
BitSummitには,個人や小規模チーム向けのブースのほか,企業向けの中型〜大型ブースが用意されている。昨年,初めてBitSummitにブース出展を行った任天堂は今年,Nintendo Switchのタイトルを全面的にプッシュしており,パンフレットの形もNintendo Switch風だ。
3月3日のローンチ以来,公式サイトやニンテンドーeショップのラインナップにインディーズタイトルが次第に増えており,「神巫女 -カミコ-」のスマッシュヒットも記憶に新しいところ。
デベロッパのブースでもNintendo Switch向けのタイトルを展示するところが多く見られ,任天堂のインディーズへの期待と,インディーズデベロッパの任天堂に対する期待感の両方を見ることができた。
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下,SIE)のブースには,PlayStation 4を使ったインディーズタイトルの試遊台が多数並んでいた。大きな面積のブースでは,日本での展開がアナウンスされたばかりの「ABZU」や「RiME」など,数十タイトルの試遊が可能だ。
ゲームフリークは横長のブースを構えて,Steamで現在配信中の「GIGA WRECKER」を出展していた。
「ポケモン」シリーズで世界的に有名なゲームフリークだが,「GIGA WRECKER」は同社の「ギアプロジェクト」という制度から生まれた作品だ。これは,作りたいゲームを社員の誰でも提案できるという社内ベンチャー的なシステムで,数多くの社内コンペが繰り広げられているという。「GIGA WRECKER」は,そんなギアプロジェクトで生まれた4つめの作品で,最近はギアプロジェクトへ参加したいという理由で,学生が入社を希望してくるようになったそうだ。
またサンソフトは,「Nightmare Project」シリーズを出展していた。スマートフォンで展開してきたホラーシリーズだが,最新作の「My Little RED(仮題)」はNintendo Switch版を先行配信するとのこと。
このほか,BitSummitではおなじみの顔となったインティ・クリエイツやヘキサドライブも,オリジナルタイトルを展示している。受託開発などを手掛けつつ,オリジナルのスマートフォン向けタイトルやダウンロード専用タイトルのラインも走らせる開発会社が,年を追うごとに目立ってきたと感じる。
言うまでもなく,個人や小規模ゲーム開発チームのブースは盛況だ。「Kyoto x Unity 合同ブース」では,新作として「サムライ地獄〜九天魔城の謎〜」が出展。開発者の2人が数種類のTシャツを販売していたが,合わせてユニークなキャンペーンを行っていた。
これは,Tシャツを購入すると,買った人の似顔絵が敵キャラに貼り付けられ,ゲームに登場できるというものだ。Tシャツの価格は基本3000円だが,さらに5000円,1万円,5万円……と払う金額を増やすごとに,似顔絵を付けてもらえる敵キャラクターが強くなっていくという仕掛けだ。こうしてキャンペーンによってSNSなどで注目を集め,ファンにリワードを返す,プチクラウドファンデングといえそうなキャンペーンだ。
HZ3 Softwareブースでは,「Strange Telephone」に関連した各種グッズを販売していた。Tシャツ,アクリルフィギュア,シールと種類が多いが,開発したyuta氏は「グッズの代金には今後の開発と活動費が含まれています」と述べる。
先日開催された「TOKYO SANDBOX 2017」内のイベント「PUSH」でも「グッズ販売は,ファンにSNSなどで名前を広めてもらえるチャンスになる」という話が挙がっていた。個人や小規模な開発チームにとって,長期にわたる開発期間を資金的にどう乗り越えるかが難しく,その答えの1つとして,グッズ販売という手法が広まりつつあるようだ。グッズ購入によってファンが開発者を支え,作品が完成するという流れが生まれてくるかもしれない。
数々のタイトルが並ぶ会場で,ひときわ独特な雰囲気を放っていた作品が「29」だ。「29」はポイント&クリック型アドベンチャーで,内容は「小さなアパートの一室で,みんなでゲームをプレイする」というもので,それをプレイするメタゲーム的な設定がユニークな作品だ。
開発には「Unity」を使用し,テクスチャを使わないベクターカラーで構成された優しい質感のグラフィックスが目をひく。
本作は,ロンドンに住むプログラマーと東京に住むデザイナーの2人が共同で開発をするというスタイルをとっている。スポット参加を含めて総勢5人で作っているのだそうだ。
サブジャンルとしては“ナラティブアドベンチャー”であり,「Gone Home」や「Kentucky Route Zero」に影響を受けたという。ちなみに「29」とは,開発者の1人が実際に住んでいたアパートの部屋番号で,ゲーム中のイベントや小物なども開発者達の思い出を集めて作っている。
ロンドンにはこうしたナラティブアドベンチャーの開発者とファンのコミュティがあり,「Adventure X: The Narrative Games Convention」というジャンル限定のイベントも開催されているとのこと。ナラティブアドベンチャーを開発している人は,一度参加してもいいだろう。
「29」は2017年内にSteamでの配信を予定しており,いずれはスマートフォンでの展開も考えている。
5年目を迎えてますます規模が大きくなったBitSummit。個人や小規模な開発チームだけでなく,大手ゲームメーカーやプラットフォームホルダーの参加も増え,今年は,出展者の約3分1が海外の開発チームで,メディアの注目度も上がってきた。
BitSummitは,新しいゲームを発見できる場所として機能する貴重なイベントだが,Tokyo Indie FestやIndie Stream,デジゲー博など,BitSummitのほかにも個人や小規模デベロッパの出展機会は増えている。BitSummitどのような方向に進むのか,今後も注目していたい。
プラットフォーマーブース
BitSummitには,個人や小規模チーム向けのブースのほか,企業向けの中型〜大型ブースが用意されている。昨年,初めてBitSummitにブース出展を行った任天堂は今年,Nintendo Switchのタイトルを全面的にプッシュしており,パンフレットの形もNintendo Switch風だ。
3月3日のローンチ以来,公式サイトやニンテンドーeショップのラインナップにインディーズタイトルが次第に増えており,「神巫女 -カミコ-」のスマッシュヒットも記憶に新しいところ。
デベロッパのブースでもNintendo Switch向けのタイトルを展示するところが多く見られ,任天堂のインディーズへの期待と,インディーズデベロッパの任天堂に対する期待感の両方を見ることができた。
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下,SIE)のブースには,PlayStation 4を使ったインディーズタイトルの試遊台が多数並んでいた。大きな面積のブースでは,日本での展開がアナウンスされたばかりの「ABZU」や「RiME」など,数十タイトルの試遊が可能だ。
社内ベンチャー的プロジェクトの出展が増加
ゲームフリークは横長のブースを構えて,Steamで現在配信中の「GIGA WRECKER」を出展していた。
「ポケモン」シリーズで世界的に有名なゲームフリークだが,「GIGA WRECKER」は同社の「ギアプロジェクト」という制度から生まれた作品だ。これは,作りたいゲームを社員の誰でも提案できるという社内ベンチャー的なシステムで,数多くの社内コンペが繰り広げられているという。「GIGA WRECKER」は,そんなギアプロジェクトで生まれた4つめの作品で,最近はギアプロジェクトへ参加したいという理由で,学生が入社を希望してくるようになったそうだ。
このほか,BitSummitではおなじみの顔となったインティ・クリエイツやヘキサドライブも,オリジナルタイトルを展示している。受託開発などを手掛けつつ,オリジナルのスマートフォン向けタイトルやダウンロード専用タイトルのラインも走らせる開発会社が,年を追うごとに目立ってきたと感じる。
インディーズゲームを支えるグッズ販売
言うまでもなく,個人や小規模ゲーム開発チームのブースは盛況だ。「Kyoto x Unity 合同ブース」では,新作として「サムライ地獄〜九天魔城の謎〜」が出展。開発者の2人が数種類のTシャツを販売していたが,合わせてユニークなキャンペーンを行っていた。
HZ3 Softwareブースでは,「Strange Telephone」に関連した各種グッズを販売していた。Tシャツ,アクリルフィギュア,シールと種類が多いが,開発したyuta氏は「グッズの代金には今後の開発と活動費が含まれています」と述べる。
先日開催された「TOKYO SANDBOX 2017」内のイベント「PUSH」でも「グッズ販売は,ファンにSNSなどで名前を広めてもらえるチャンスになる」という話が挙がっていた。個人や小規模な開発チームにとって,長期にわたる開発期間を資金的にどう乗り越えるかが難しく,その答えの1つとして,グッズ販売という手法が広まりつつあるようだ。グッズ購入によってファンが開発者を支え,作品が完成するという流れが生まれてくるかもしれない。
ロンドン―東京間で紡がれるナラティブアドベンチャー「29」
数々のタイトルが並ぶ会場で,ひときわ独特な雰囲気を放っていた作品が「29」だ。「29」はポイント&クリック型アドベンチャーで,内容は「小さなアパートの一室で,みんなでゲームをプレイする」というもので,それをプレイするメタゲーム的な設定がユニークな作品だ。
開発には「Unity」を使用し,テクスチャを使わないベクターカラーで構成された優しい質感のグラフィックスが目をひく。
本作は,ロンドンに住むプログラマーと東京に住むデザイナーの2人が共同で開発をするというスタイルをとっている。スポット参加を含めて総勢5人で作っているのだそうだ。
サブジャンルとしては“ナラティブアドベンチャー”であり,「Gone Home」や「Kentucky Route Zero」に影響を受けたという。ちなみに「29」とは,開発者の1人が実際に住んでいたアパートの部屋番号で,ゲーム中のイベントや小物なども開発者達の思い出を集めて作っている。
ロンドンにはこうしたナラティブアドベンチャーの開発者とファンのコミュティがあり,「Adventure X: The Narrative Games Convention」というジャンル限定のイベントも開催されているとのこと。ナラティブアドベンチャーを開発している人は,一度参加してもいいだろう。
「29」は2017年内にSteamでの配信を予定しており,いずれはスマートフォンでの展開も考えている。
5回目を迎え,変わりつつあるBitSummit
5年目を迎えてますます規模が大きくなったBitSummit。個人や小規模な開発チームだけでなく,大手ゲームメーカーやプラットフォームホルダーの参加も増え,今年は,出展者の約3分1が海外の開発チームで,メディアの注目度も上がってきた。
ozumikan氏の「インダーク」 |
ところにょり氏の「あめのふるほし」 |
Winter Crown WORKSの「Merkava Avalanche」 |
kass-stwa氏の「HEADS RUN」 |
BitSummitは,新しいゲームを発見できる場所として機能する貴重なイベントだが,Tokyo Indie FestやIndie Stream,デジゲー博など,BitSummitのほかにも個人や小規模デベロッパの出展機会は増えている。BitSummitどのような方向に進むのか,今後も注目していたい。