John Carmack氏,ZeniMax弁護士による陪審員への“誤った説明”を論破(ZeniMaxによる反論も掲載)

John Carmack氏,ZeniMax弁護士による陪審員への“誤った説明”を論破(ZeniMaxによる反論も掲載)
Oculusの採鉱技術責任者はFacebookで5億ドルという表決に対して不満を書き連ねた。[ZeniMaxによる反論を追記]

 昨日(2017年2月1日),ZeniMaxとOculusの間での法廷闘争は,後者が前者に5億ドルを支払うという形で決着した(関連英文記事)。本日,かつてのid Software重役であるJohn Carmack氏,Oculusの創設者であるPalmer Luckey氏と出会い,かつてNDAにサインしたこの訴訟の中心人物は,彼の感情をFacebookでの訴訟の議事録という形で表現することに決めた。その全文はこちらで読むことができるが,Carmack氏が挙げる問題のキーポイントとなるのは,ZeniMax側の鑑定人による“文字によらないコピー”によって彼がZeniMaxからソースコードを持ち出したと主張についてだ。

 「ZeniMaxとOculusの審理は終わりました。私は彼らの評価や誤誘導,選択的な省略に同意しません。私はいかなる証拠も隠したり消したりしようとしたことはありません。すべてのデータは説明されていますが,反対にいくつかの噂話が広がっています」とCarmack氏は始めている。「訴えられるなんて馬鹿げています。ほとんどの部分で審理は予想通り進んでいました。例外だったのは,原告の証人となった専門家が,Oculusの実装で使われているテクニックで,私が過去にid Softwareで書いたソースコードの“文字によらないコピー”がされていると証言したことでした。これはまったく正しくありません。Oculusのコードを書いた者は,デモから持ってきた小さなプレインテキストのシェーダコード以外,一切Id C++のVRコードにアクセスしていません。私は聞いていて,どうやったらこの雇われ専門家は完全に関係のないコードベースからコードのDNAを紡ぎだすことができるのだろうかと純粋に興味深く思っていました」

 「文字によらないコピーの概念はおそらく大勢の弁護士にとっておいしいものでしょう。十分に抽象化とフィルタリングをされたアプリケーションからはあらゆるものが関係していると示せるでしょうから」と氏は続けた。「本をほかの言語に訳すときなどのように,確かにいくつかのケースではそれが正しいこともあるでしょう。しかし,明らかに著作権はコンセプトやアルゴリズムには適用されません。ですので,比較前の文字によるコピーとたいして違わない抽象化しかできません。多くの法的な疑問から言っても,やってはいけない範囲との明確な線引きはできないのです」

 「その専門化が陪審員に示した類似性というのは,誰かがハリーポッターの名前だけ変えて本を書いたらといったものでした。それはまだ著作権侵害の範囲でしょう。ソースコードをコピーするときに変数名を変えても中身は同じものだというのには同意します。しかしながら,ハリーポッターを抽象化して1段も2段も面白いものにしたとしたら,キャンベルの『Hero's Journey』になるでしょう。これはスター・ウォーズや何百の物語にも変換できます。そこに著作権侵害はありません」

 Carmack氏は,その前の週にOculus側の専門家がZeniMaxからスライドを手に入れて,誰の目にもコードの行が読めて違いが分かるように拡大していたことを書き綴っている。「私はそれで(ZeniMax側の)証言の信憑性は崩れたものと思っていました。しかしその影響を過大評価していたようです」と述べている。

 Luckey氏との出会いのあと,Carmack氏は彼自身のVRソフトウェアに取り掛かっている。実際,私はE3でCarmack氏に会い,布テープを巻かれたVRヘッドセットでDoom 3のテストに立ち会えた幸運な人の一人だ。Carmack氏はVR空間に非常に興奮しており,2013年にOculusに参画することとなった。Facebookは2014年にほぼ30億ドルでOculusを手に入れており,これは法的側面から見ても確かに有用なことであった。財政的に大損害をこうむる可能性のあった小規模なVRスタートアップ企業はZeniMaxから身を守ったのだ。

更新:ZeniMaxの代理人がGamesIndustry.bizにCarmack氏のFacebookへの書き込みに対する返答を送ってきた。それはOculusによる文字的なコピーと文字によらないコピーの両方があったという指摘だ。ZeniMaxはRiftヘッドセットはZeniMaxの技術を基に作られていると主張している。

 声明の全文は以下のとおりである。

 「専門家の証言に付け加えると,文字的なものと文字によらないものの両方のコピーが見つけかっています。Oculusのプログラマ自身がZeniMaxの著作物であるコード(一人はカット&ペーストでOculus SDKに持ってきたと証言しています)を使ったことを認めています。Brendan Iribe氏も書いているように,彼らがOculus Riftに必要な“Carmack氏によって共有されたコード”のライセンスを要求しています。驚くようなことではありませんが,陪審員はZeniMaxのコードの著作権が侵害されていると判断しました。Oculus RiftはZeniMaxの技術を基に作られていたのです」

 「(証拠の)消去の否定についてですが,法廷の独立した専門家はCarmack氏のハードドライブの92%のデータが永久に破棄されていることを発見しました。Carmack氏が訴訟を確認した直後のことです。彼の宣誓供述書は消去を否定していますが間違いです」

 「これが厳しい現実です」

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら