「Oculus Game Day」開催,12月のTouchと同時に発売される国産タイトルを紹介

 2016年11月17日,Oculus VRは都内の同社オフィスでプレス向けイベント「Oculus Game Day」を開催した。これは同社が12月6日に発売を予定している「Touch」用の日本国内で開発されたタイトルの紹介などを目的としたもので,同社が日本で行う単独イベントとしては初のものとなる。

 イベントの冒頭では,来日したJason Holtman氏によるプレゼンテーションが行われた。氏はPublishing部門の長となる人物で世界中のデベロッパとコンタクトを取っている。今回は日本のデベロッパの紹介に先立って,Touch自体について改めて解説してくれた。
 氏は,2016年は「Big Year」だったと振り返り,Riftを発売した同社だけでなく,他社からもVRに関する製品が相次いだ。これまで夢物語だったものが,一気に現実になったのだ。Holtman氏は「未来を使う時代になった」と表現していた。

 そして12月6日には,Oculus待望の周辺機器Touchが発売される。Touchは単なるインプットデバイス以上のものだと氏は語る。それは「ハンドプレゼンス」を実現してくれるからだ。氏は,デモセッションでは,ぜひ最初に手を見てほしいと訴えていた。
 確かに,握ったり開いたりして「手」がどれくらいVR空間内で再現されているかを確認することは,ゲームで直接遊ぶことよりももしかしたら重要かもしれない。Moveを擁するSIEやViveコントローラを付属していたHTCと比べ,VR空間でのインプットデバイスはOculusが一番遅れていた部分でもあるのだ。そのあたりが不十分なままRiftが発売されてしまったのも,Touchがある意味新しすぎたからとも言えるだろう。これでようやく半身不随状態から抜け出せると表現してもよいくらいだ。

 Touchは本当に素晴らしいコントローラだとHoltman氏は語る。しかしどんなにコントローラが素晴らしくてもコンテンツがなければ話にならない。氏は,Touchと同時発売されるゲームのトレイラーを提示しつつ,同社がコンテンツとゲーム制作のエコシステムを重視していることを強調して締めくくった。
 なお,Holtman氏は前日に行われた「Japan VR Summit 2」にも登壇している(関連記事)。かなり余談だが,JVRS2ではなかなかOculus VRの参加そのものが発表されなかった。主催者は,当初は違う人を招聘したいと思っていたようだが,いろいろあってかなわなかったようだ。勝ったんだから問題ないだろうという気はするのだが。

 続いて,国内のデベロッパからTouch用ゲームの紹介が行われた。

●エニグマ・スフィア
 最初に登壇したのはよむネコ代表の新 清士氏だ。ゲームジャーナリストかつ前IGDA日本代表としても知られる氏だが,昨年の東京ゲームショウでTouchのデモを体験したときに,どうしてもVR用のゲームを作りたくなったのだという。
 それまでどちらかというとVR懐疑派だった氏を一瞬で転ばせたのは,一度体験すると戻れなくなるくらいの「手」のプレゼンスだった。それをどう表現していくのがよいのかと考えた末にたどり着いたのが,ハンマーを投げて壁などを壊しながらスフィアを探していくというものだったという。

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 かつてTGSで行われたTouchデモはコミュニケーション要素のインパクトも強かったのだが,当然のようにこのゲームでもVRコミュニケーションの要素は取り入れられている。協力プレイでチャットしながらゲームを進行可能だ。

 VRゲームはあまり長時間できないというのが定説であり,1回あたりのプレイ時間を短めにするようなデザインガイドが示されることも多いのだが,エニグマ・スフィアは1プレイ2時間,2人協力プレイで90分というボリュームで設計されている。
 テストプレイではVRゲームに馴染みのないテスターを使って検証していたそうだが,評判は上々で,1時間半のテストプレイなのにテスターの体感では40分くらいに感じられたと熱中度も高かったようだ。
 このとき新氏は,テスターのにやついた口元を見て自信を深めたとのこと。VRゲームに熱中している人は必ずこんな感じの口元になるのだそうだ。
 前日のJVRS2に出展されていたのだが,バグが見つかったそうで,Game Dayでの体験プレイは見送られた。ジョイポリスでロケテストが行われるとのことなので,気になる人は情報をチェックしておこう。

こんな口元。よく見ると,向こうの人も同じような口元になっている
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●PLANESS
 今年の春にできたばかりだというトリコルがTouch用にリリースするのは「PLANESS」だ。3D空間に設置された通路状のコートでボールを打ち合うゲームである。「無重力テニス」と表現していたが,内容的にはスカッシュのほうが近いかもしれない。
 Touchを使って飛んでくるボールをラケットで打ち返すという,分かりやすいルールだ。周りを壁で囲まれているので前方方向であればどっちに向いて打ち返しても大丈夫で,後ろに逃すとクリスタルを一つ失い,なくなると負けになる。ステージは50種類用意されており,それぞれで違ったギミックが用意されているとのこと。

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 面白いのは両手にラケットを持つ点だ。試合に勝つとポイントがもらえ,それを使ってさまざまなラケットを購入できるようになっている。打つとボールが曲がるもの,ボールの速度が上がるもの,打ち返し面積の大きいものなど,いろいろな種類があり,左右にどういう組み合わせでラケットを持って試合に臨むかなども重要になってくるだろう。
 対戦機能も用意されているが通信対戦ではなく,Rift+Touchを着用したプレイヤーと通常のディスプレイにゲームパッドを使ったプレイヤーが対戦するという非対称な形式となっている。内容的には通信対戦が適していると思うので,ここは少し残念な点だ。
 トリコルは設立から半年と非常に若い会社だが,3人の社員ですでに2本のVRタイトルをリリースしている。日本では珍しいタイプの会社だが,この勢いを維持していってほしいものである。

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●Pro Fishing Challenge VR
オーパス 代表取締役 鈴木隆志氏
 Opus StudioによるVRの釣りゲームだ。Touchを究極の釣りコントローラとして使い,美しい大自然の中で,自然な動作でロッドを振るいリールを巻くという,釣り体験をそのままVR化したゲームとなっている。
 本策は,Xbox用に発売されていた「Pro Fishing Challenge」のVR版といった建てつけのゲームだが,VR化されたことでなにもかもが変わったと言っても過言ではないだろう。とくにTouchによって,実際の釣竿を扱うのとほとんど変わらない操作が実現できていることは非常に大きい。会場では「丸を連打じゃないんです」とインタフェースの重要性が強調されていた。

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 Riftの登場で視覚をバーチャルなものと置き換えることができるようになった。Touchが置き換える部分は遥かに大きいという。目に続いて両手がバーチャル空間に移行することでゲームへの没入感はさらに大きくなる。釣竿とリールという両手を使う操作をVRに完全に持ち込んでおり,Touchを釣りコンとして成立させるための地道な研究が行われているという。

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 渓流や湖沼などに出かけていくこと自体がアウトドアレジャーの楽しみの一つかもしれないが,ちょっと試すにしてもハードルは高い。VRと相性のよいコンテンツに旅行系が挙げられることも多いので,釣りというのは悪くない。一人で釣るのもどうかという向きにはソーシャル要素もあり,チャットしながら釣りを楽しめる。釣りというのはあまり動かなくていいので,VR酔いになりにくいというのもメリットとして挙げられていた。

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 そのほか,会場ではとくに言及されてはいなかったが,Touchには振動機能が搭載されており,本作では手で魚を取り込むときのビチビチと跳ね回る感じが素晴らしいとCEDEC 2016のOculusセッションでも紹介されていたことがあった。

 VRゲームというと,短時間の体験を提供するだけのものがほとんどだ。現在はもの珍しさからなんとかなっているが,単なるVR体験しか提供できないようでは未来はない。Opusでは継続してプレイできるVRゲームに真剣に取り組んでいる。その第1弾に注目したい。


●Fly to KUMA MAKER
 今年はVR元年と呼ばれ,VRの歴史自体が浅いのではあるが,コロプラは日本で一番VRに熱心なゲームメーカーと言ってもよいほど実績を持つようになっている。同社の「Fly to KUMA」は,直進していくクマたちをギミックで誘導して救出するというレミングス風のゲームだが,Rift発売と同時にリリースされたゲームでもあり,多くの人に親しまれている。自分でステージを作ってみたいという要望が多く寄せられたのだという。それに応えたのが本作となる。
 タイトル自体はすでにSteamで公開されているのだが,Touch用に完成度を高めて,Touch発売と同時にOculus Storeで発売される予定だ。


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 このゲームは体験コーナーで実際にTouchを使って体験可能だったので,プレイフィールを含めて紹介しておこう。まずは,Touchを使ったゲームプレイのほうだが,Touchを使って,手でパーツをつかんで動かせるということで,ゲーム部分の手触りも相当変わってきている。とくにつかんで運ぶ操作は格段にやりやすい。半面,回す操作はちょっとやりにくい感じだった。ブロックを両手で回そうとすると,つかんで放してが少し難しい。
 もう一つ難を感じたのが,ゲームのステージが結構広いことだ。Riftでの可動スペースはあまり広くないのだが,見た感じのステージの長さはそれより長いのではないだろうか。左端にあるスタートボタンはほとんど境界の向こう側になっていた。もしかしたら,すでに発売されているVive版に合わせた大きさなのかもしれない。一応,左スティックで位置の移動は可能だったが,動ける状況であればそういう操作を嫌う人のほうが多いだろう。ステージ全体を拡大/縮小できればいろいろと捗るようにも思われた。

 ステージを作っていくほうは,メニューから部品を選んで好きなところに配置するという分かりやすい内容だ。エディット部分では,ブロックをつかんだまま手を動かして直線的にコピーする操作が直感的だ。そのままMineCracft風のサンドボックスにしてほしいくらいだ。実に豊富なギミックパーツがあるので,工夫をこらした難関ステージを作ってみるのもいいだろうが,単純にステージに入り込んでゲームを作れるというのは楽しいと感じられる。ブロックを積んでいくだけの積み木遊び自体が結構楽しめる。ゲームエンジンのUnreal EngineやUnityもそういった方向でのVR活用を進めているのだが,VR空間でいろいろ作り込めるというのは,仮想世界そのものに対して究極のインタラクトができるということでもある。

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●Dead Hungry
キュー・ゲームス 代表取締役 ディラン カスバート氏(左)
 キューゲームスはインディーズ系のイベントなどでお馴染みの人も多いかもしれない京都ゲーム制作会社だ。同社では社内でGame Jamを行うことがあり,本作もそういった流れでできた作品をベースにしているのだという。普段の同社の芸風とはちょっと違う「お馬鹿」な感じで社内でも評判がよかったゲームで,近くにあったハンバーガー屋さんとコラボしたりなどもしていたそうなのだが,Touchなど,手を使ったVRバージョンにした途端に大きく化けたそうで,まさかの商品化にこぎつけたのだという。

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 ゲーム内容は,ハンバーガーの屋台に迫り来るゾンビたちを,満腹にさせることで人間に戻していくといったものとなっている。なせか島田に結ったゾンビが続々と詰め掛けてくるので,手早くハンバーガーなどを作って投げつけると,ゾンビは立ち止まってキャッチしつつ食べ始めるといった感じだ。このあたりはムービーを見てもらうのがいちばん分かりやすいだろう。
 食べ物以外にいろんなものを挟み込むことができ,ゾンビ側もなにが入っていても気にせず食べてくれる。


 これも体験コーナーでプレイできたのでプレイフィールを紹介しておこう。
 ゲームが始まると正面にカウンターとハンバーガー作成用の台があり,4個まで同時に作っていけるようになっている。左手側にはハンバーグや野菜・チーズなどが並ぶ。右手側に鉄板があり,ハンバーグを焼いていくのだが,焼きあがるまでには時間がかかり,焼きすぎると炭になってしまう。手で材料を取って,土台となるパンズ上に積み上げていき,最後にフタになるパンズを乗せて出来上がりだ。

 おそらくなんらかの組み合わせで満腹度が上がるような仕組みも入っているのだろうとは思うのだが,基本的になにを挟んだハンバーガーでも問題ないようだ。そんなものを挟んで大丈夫なのかと心配になるようなものでもどうやら大丈夫らしい。ムービーでは消火器を挟んだハンバーガーが出てきていたので,もうなんでもアリなのは間違いない。
 できそうなことはすべてできるように作ったとのことで,狭い屋台内ながら,できることは非常に多いゲームになっている。“セガ的なノリ”とのことだったが,たぶん悪い意味ではないだろう。
 で,プレイしてみると,序盤のステージはまだまだ手加減してもらっているのだろうが,なかなかに急がしい。周りを見渡す余裕もあまりない。もっといろんなことができるのだろうが,やっている余裕がない。
 プレイしていてちょっと「あれ?」と思ったのはハンバーガーを持ち上げても,パンズの下半分が残っているように見えることだ。上だけ取ってしまったのかと見ると,ちゃんとハンバーガー丸ごとを持っているようだったので,台になる部分の再表示が早すぎるのだろう。
 VRである必然性はともかく,Touchとの相性はバツグンのゲームではあった。


 そのほか,とくにプレゼンはなかったものの,Touchでデモ体験ができたタイトルも紹介しておこう。

●Robo Recall
 Epic Gamesの「Robo Recall」はSF調のFPSである。かなりリアルな街並みの中で,襲いくるアンドロイドたちを撃退していくという内容だが,デモということもあってか,敵の攻撃や体力設定はかなりぬるい。
 しかし,両手で操作する銃の精度はかなりシビアで,通常のVRゲームだとなんとなく向けてもだいたい当たるような射撃がかなり難しいものとなっている。
 銃は手を放すと落ちてしまうが,腰の辺りに手を持っていって握ると新しい銃が手に入る。これをもってリロードに代えるという使い捨て方式になっている。そのほか,手づかみでアンドロイドをバラバラに引きちぎることもできるのだが,あまりに重さがなさすぎて興ざめなので,これはやらないほうがいいかもしれない。

 移動は行き先を決めてのワープ式だ。目標方向に矢印が出るので,左スティックで操作する。その場所で一定の敵を倒すと違う場所に移動という感じでステージを進んでいく。
 飛んでくる銃弾はとてもスローな動きで,楽々と避けたり手や銃で払ったりできる。空中を飛ぶ敵や大きめなロボも登場してきて楽しめる。ロボに乗って,ビームで敵をなぎ払うなど,楽しみ方はいろいろ用意されているようだ。
 グラフィックスクオリティなどはVRゲームでは最高峰であり,VRゲームの今後を占ううえでも必見のゲームといえる作品だ。

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●Medium
 最後はOculusによるVRグラフィックスツール「Medium」だ。空間に粘土で絵を描いていくような感じのツールになっている。絵画というよりは彫刻系になるだろう。一時はクリエイター向けで一般公開はしないようなことが言われていたのだが,普通に公開されるとのことだった。
 操作は左手のボタンでメニューを開き,ツールを指定する。右手では筆の太さや色,動作モードなどを決定する。右手にどれかのツールを持ち,オブジェクトに操作を加える感じだ。
 単に線を描いたり削ったりするだけでもかなりのことができそうなのだが,表現力をさらに高める便利なツールがいろいろと揃っている。筆に相当するツール,かき混ぜるツール,切り取るツール,滑らかにするツール,揺れを与えるツールなどさまざまだ。使用頻度の高そうなものと一発芸的なものが混ざっている気はするが,多彩な表現ができるというのは間違いない。

 両手のトリガーを押して手を開くとオブジェクト全体が拡大され,狭めると縮小される。頭上にそびえるほどの大きさにして内側から細部をいじっていくようなこともできる。ただし,拡大率が大きいときには目の前のオブジェクトを構成するポリゴンがかなり粗くなるので意図したような動作になるとは限らないが。
 このツールは日々新しいバージョンが開発されているそうで,リリース時にはまた少し違う仕様になっている可能性もある。今後も楽しみなツールだ。

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 なお,MedeiumはOculus VR社内の特別なテストルームで体験したのだが,壁が全面クッション張りの部屋となっていた。センサーユニットを2個使って広めの行動範囲をサポートしていたが,Viveのルームスケールよりは狭めな感じだろうか。ルーム名が「KIRITO」「ASUNA」などとなっていたのはご愛嬌だろう。Palmer Luckey氏によるVRのイメージが「ソードアート・オンライン」そのものなので,ある意味,この会社の方向性には安心できると思っているのは私だけだろうか。