新進気鋭のゲーム開発ツール「SMILE GAME BUILDER」について聞く。デジゲー博展示レポート

 2016年11月13日,同人・インディーズゲームイベント「デジゲー博」が都内で開催された。今年で開催は4回めとなる,すべてのゲームクリエイターのための一大ゲームイベントだ。
 主な出展者は個人のゲームクリエイターだが,企業やゲーム開発のためのツール・サービス事業者の出展も可能だ。特徴は会場スポンサー制をとらず,ゲームクリエイターと等しく机を並べるシステムにある。

 そんな中,今回はデジゲー博へ初出展となったスマイルブームが展示した新進のゲーム開発ツール「SMILE GAME BUILDER」について紹介する。同社はニンテンドー3DS向けに「プチコン3号」で,プレイヤーがゲームやツールを作れるソフトウェアを提供しているが,その新たな一手として登場したのがSMILE GAME BUILDERになる。

SMILE GAME BUILDER公式サイト

製品ページ(Steam)


杉内賢次氏
 これは,2016年4月末にSteamのプレイヤー投票式審査であるSteam Greenlightを通過し,9月8日に全世界向けに配信開始になったばかりの新ツールだ。このツールを簡単に紹介しておくと,いわゆる「RPGツクール」を3D対応にしたものというのがいちばん分かりやすいだろう。もちろん,ツクールそのものではないが,多くの部分でツクールの作法を踏襲しており,「あんな感じで3DマップのスクロールRPGが簡単に作れる」と思っておけばだいたい間違いはない。
 今回はスマイルブームのSMILE GAME BUILDERプロダクトマネージャを務める杉内賢次氏に話を聞いてみた。

GamesIndustry:
 SMILE GAME BUILDERの概要について教えてください。

杉内氏:
 SMILE GAME BUILDERは,ゲーム開発の経験が一切なくてもRPGの制作が楽しめるようにと開発したWindows用のゲーム制作ツールです。


 特徴は大きく三つあります。一つは「プログラムの知識がなくてもゲーム制作が楽しめる」ということ。代表的なものとして,ツールの強力な機能に“イベントテンプレート”というものがあります。これは,「話しかけるとアイテムをくれる村人」や,「悪者が決め台詞のあとにバトルシーンに突入!」といった,RPGあるあるな演出を,数回のマウスクリックで簡単に作ることができる機能です。
 イベントテンプレートは138種類以上用意されていますが,これは”イベントパネル”という小さな命令の組み合わせで作られており,プレイヤーがこれをゼロから組み上げていくことで,独自の表現を作り上げることもできます。

 二つめは,「3Dモデリングの知識がなくても,ゲーム感覚で立体的なマップを作れる」ことです。まず,草原,砂漠,雪など地形を構成する種類を選択し,大まかな地図を描いていきます。この地図に高さを設定し,建物,オブジェといった上物を設置していくだけで,3Dマップが完成します。

 三つめは,カメラアングルの自由設定,プレイヤー視点変更,パーティクルエフェクトといった3D映像表現です。これにより三人称視点のRPGはもちろん,一人称視点のダンジョンRPG,またはこの二つを組み合わせた作品を制作することができます。カメラワークを駆使して,ドラマティックなシーンを効果的に演出することだって可能です。

GamesIndustry:
 デジゲー博では「VR対応」をフィーチャーしていますよね。VR対応を実装した理由は何でしょうか?

杉内氏:
 今,VRがはやってるからというのもありますが,直接のきっかけは,学校関係者から聞いた悩みでした。学校でUnityを使ってVRコンテンツを作る授業をしているんだけど,学生がなかなかカタチにすることができなくて困ってる……という話を小耳に挟んだのです。それならば,我々のSMILE GAME BUILDERをVR対応して,お手軽にVRコンテンツを開発できるようにしてやろうと。

会場では「VRテストバージョン」の,HTC Viveを使用したデモ展示が行われていた。デモはFPS視点と,箱庭的な視点で見下ろすTPS視点の2種類が用意されていた。FPS視点では,コープスパーティのDLCを使用したコンテンツになっていた
新進気鋭のゲーム開発ツール「SMILE GAME BUILDER」について聞く。デジゲー博展示レポート

 今回は展示として皆様に体験いただきましたが,まだ調整事項が山積しているので,すぐにリリースすることはできませんが,使えるようになったら自由に使ってほしいと思っています。

GamesIndustry:
 最近の新機能について教えてください。

杉内氏:
 11月8日のアップデート(関連URL)で追加された,「並列処理」「カメラアングルの自由設定」「高度な変数ボックスの操作」の三つでしょうか。この3種類が追加されたことで,SMILE GAME BUILDERで表現できるゲームの幅がぐっと広がりました。

 また,建物やオブジェを追加するDLCについては,チームグリグリの「コープスパーティ」の世界観をモチーフにしたDLCは近日中に発売する予定です。このほか,海外のCGデザイナーとも一緒に今後のDLCの企画を進めており,DLCを定期的にリリースできるようにいろいろと仕込み中です。

新進気鋭のゲーム開発ツール「SMILE GAME BUILDER」について聞く。デジゲー博展示レポート
新進気鋭のゲーム開発ツール「SMILE GAME BUILDER」について聞く。デジゲー博展示レポート

GamesIndustry:
 およそ2か月前に発売したばかりですが,プレイヤー作品はすでにリリースされていますか?

杉内氏:
 私の知る限りでは,YouTubeで実験的な作品を公開されている方が多数いらっしゃいます。
ただ,完成系となるとまだまだ少ないのが現状です。今まさに一生懸命作られている感じかな,と思っています。

 ショート作品ですが,「魔王の城とキアラ姫」(作:みすてぃれいん)と「私はここにいます」(関連URL)(作:Giggle Game)は完成度が高くて,メチャ面白いです。
 海外の事例では,「Hollow Bliss」「Town of Night」という2作品がSteam Greenlightにエントリーしていずれも審査を通過しています。こちらも配信が楽しみです。

 SMILE GAME BUILDERの公式ウェブサイトには,プレイヤー作品の紹介場所として「プレイヤーズゲーム」(関連URL)というページを設けています。
 こちらはまだ一作品しか取り上げておりませんが,今後SMILE GAME BUILDERを使った作品で目につく物があれば,取り上げていきたいと思っています。
作品ができて公開になったら, @smileboom_sgb 宛てに情報を送っていただければ幸いです。

 プレイヤーが作るゲームの内容については,一切こちらでは制限を設けてません。その代わりに,当社で責任も持たないというスタンスにしております。例えば二次創作のゲームでも利用はできますが,該当する作品の原著作者への許諾は,作者自身で行ってもらう必要がありますので,こちらは関知しないという考え方です。

GamesIndustry:
 プチコン3号の作品をまとめた「プチコンマガジン」の配信のような,プレイヤー作品配信の支援などは計画されていますか?

杉内氏:
 また具体的なことは何も決まってませんが,なんらかの形態で作品配信支援はしたいなと思っています。まずはSMILE GAME BUILDERを使ったゲームのコンテストを計画中です。まだ具体的なことは言えませんが,楽しみにしてもらえればと思います。

GamesIndustry:
 プレイヤーがプラグインを開発することはできますか? また,その予定はありますか?

杉内氏:
 SMILE GAME BUILDERはプログラミングなしでゲーム制作が楽しめることが“最大の特徴”なので,プレイヤーがコードを書いて機能拡張ができるようにはしない方針です。もし,やるなら違うコンセプトの別バージョンを作ると思います,Smile Basicを搭載版とか(笑)。

GamesIndustry:
 これから取り組むこと,取り組みたいことがあれば教えてください。

杉内氏:
 直近では「3Dバトル」の実装を行う予定です。その他,プレイヤーの要望に耳を傾けながら,細かいところもコツコツとバージョンアップを重ねてよりよいツールに仕上げていければな,と思っています。

 また,作ったゲームの出力をWindows向けだけでなく,スマートデバイスやコンシューマゲーム機向けにも出力できるようにする計画もロードマップ上にあります。早く実現して,プレイヤー作品が注目を浴びることができるような状態にしたいですね。


3DRPGを手軽に作れてしまう新世界を提案するSMILE GAME BUILDER


 インタビューを通じて,「難しいことはなしに簡単にゲームが作れること」というコアコンセプトをもって,クリエイターの創作意欲を応援したい,という杉内氏の熱意が伝わってきた。
 昨今はさまざまなゲーム制作ツールがひしめき合い,にわかに熱い分野になっている。デジゲー博でも,本職がデザイナーやイラストレーターだという方がツールを通じて自分オリジナルの作品を展示している例も多かった。
 ツールの恩恵でゲームクリエイターの層が徐々に厚くなっていく中,SMILE GAME BUILDERは,プログラミング経験はないものの,3DのRPGを作ってみたい……というニーズに応えてくれる制作ツールである。

 ノベルや2DRPG,格闘,シューターなどさまざまなジャンル向けのゲーム制作ツールが存在するが,著者の知る限りでは3Dマップ・キャラクターのRPG開発ツールは史上初だ。公式の動画チュートリアルも充実しており,思い描いたストーリーをゲームに落とし込みたい欲求を満たすときには,魅力的な選択肢になっている。来年のデジゲー博では,プレイヤー作品が多く見られることになりそうだ。

 Steamでは初回起動から30日間使うことができる体験版が配信中(関連URL)だ。いくつかの機能制限があるものの,体験版で作ったデータはそのまま製品版に引き継ぐことが可能なため,気になったらまずは触ってみることをオススメしたい。

デジゲー博公式サイト