エヴァの「あの書体」が一般向けパッケージ発売へ
エヴァンゲリオンで多用されていた,黒地にL字配置された太い明朝体のテキスト表現は,市川 崑監督作品のオマージュであることは広く知られている。ただ,エヴァンゲリオンでは市川監督が愛した見出明朝体MA1(モリサワ)ではなく,マティスEB(フォントワークス)が初回放映から現在に至るまで一貫して使われている。
マティスEBは,フォントワークスが発売するアウトラインフォントで,マティスファミリーでは2番めに太い書体となる。タイプフェイスデザイナーは佐藤俊泰氏だ。見る人が見ればすぐに書体が分かるので,同書体を使用したエヴァンゲリオンをオマージュした作例が枚挙に暇がないのは皆さんもご存じだろう。
普通に販売されている書体ではあるものの,一般人が購入するのはちょっとハードルが高かった。エヴァンゲリオン放映当時にマティスEBについての個人からの問い合わせがフォントワークスで相次いでいたとのことだが,当時は1書体十数万円していたはずで,ちょっと買ってみようかと手が出る値段ではなかったのだ。現在発売されているフォントパッケージは1書体1万8000円と,そこまで高価ではなくなったものの,普通の人が「パワポでちょっとウケを狙うか」くらいだと微妙な値段だろう。それがついに個人向けパッケージとして発売されることになったわけだ。
製品パッケージには,新世紀エヴァンゲリオンテレビ版などで使用されたマティスEBクラシックと新劇場版で使用されたマティスEBスタンダードの2つのバージョンがともに収録されている。アドビのフォントフォーマット変更に伴って,デザインに影響が出た部分が多少あったとのことだが,ちょうど「使徒」の「使」の文字で目立つ変更が行われているため,ファンの間では2種類のバージョンは有名な話かもしれない。
このパッケージには特別冊子が付属しており,そこではエヴァンゲリオンとマティスの出合いやアニメでのデジタルフォントの用例紹介,さらにはマティスEBを使ってエヴァ風のデザインを行う際のテクニックについても解説されている。これらを含めて,WindowsとMacに対応し,価格は4600円(税別)。販売はEVANGELION STOREやAmazonなどで行われる模様だ。
基本的に個人向けライセンスの商品であるので商用利用は禁止だ。ただし,有償無償は問わず,同人誌や個人制作の映像ではOKというスタンスだそうだ。この「同人」という括りの判断が難しいところだが,「自身で作って自身で販売する範囲においてはOK」とのこと。同人ソフトについては,ゲーム中に画像として使用する形式の使用はOKだ。
なお,商用のゲームで使いたいという場合は,同社のLETSゲーム業界向けプランが断然お得なので,未導入の企業であればそちらをおすすめしておこう。