「Oculus Connect 3」開催,業界リーダーが志向するVRの未来とは
まず,待望のTouchの発売日だ。12月6日(北米時間)に199ドルで発売されることが発表された。予約開始は10月10日からとなる。Touchの発売に合わせて,35本の対応新作ゲームが登場するという。
さらにOculus VRがGear VRやRiftに続き,スタンドアロン型(いわゆるオールインワン)のVRヘッドセットを開発していることが発表された。ケーブルの問題,センサー範囲外では周りが検知できない問題など,現状のVRヘッドセットはあまり動き回ることに適しているとはいえない。
発表会では「Santa Cruz 」と名づけられたプロトタイプのムービーが流された。Riftの後頭部部分にユニットを取り付けたような試作機の様子が示されていたのだが,おそらくRiftに後付けする形態のまま製品化されるというわけではあるまい。スタンドアロンタイプは,VRの新たな一面を切り開いていく存在として期待される。
開発関係では,Epic Gamesとの協力体制により,Oculus関連のVR開発ではUnreal Engine 4の無償使用範囲が大きく拡大されることが発表された。現在は売り上げが四半期で3000ドルを超えるとロイヤリティがかかる仕様だが,これが全体の売り上げで500万ドル(約5億2000万円)を超えるまでは無償と,大幅に拡大されるという。
技術的な部分では,今後のVRコンテンツ開発にも非常に大きな影響を与えそうなVRヘッドセットの新機能が発表された。
さて,Palmer Lackey氏の,レンズの歪曲に合わせたWarping映像をレンダリングするアイデアとともに現在のVR業界を支えている技術にJohn Carmack氏が考案したTimewarpがある。頭の動きを最優先に反映させるアイデアは,Asynchronous Timewarpの実現で完成されたものとなった。これによりコマ落ちなどは50分の1に減ったとされている。その影には,AMDとNVIDIAによる技術開発が大きな位置を占めている。
そのうえで今回発表されたのは「Asynchronous Spacewarp」だ。
これはおそらくSIEのPlayStation VRがやっているテンポラルリプロジェクションとほぼ同じものと思われる。ゲームの動作は45fpsで行うのだが,頭の動きに対する追従は90fpsで行うことで負荷を軽くしつつも,動きに対する遅延は最小限に留めることができる。
PSVRでは60fpsの映像を120fps化するわけだが,Oculusでは45fpsの映像を90fps化するとのことで,映像クオリティ的には少々不安の残る仕様ではある。その分,画像をリッチにできる可能性もあるのだが,これと同時に推奨スペックが引き下げられたため,残念ながら映像をリッチにする方向にはあまり期待できないかもしれない。コンテンツを作る側としては,新しい推奨スペックでも十全に動くものを作らなければならないわけで,手間が増える。
VR Readyのスペックが普及価格帯のグラフィックスカードが潤沢に出てきている状況では旧機種にまで対応を広げることに大きな意味があるようには思えないのだが(そもそもVRヘッドセットをそんなに量産できるわけではないだろうに)。
Touchの使用で2台のセンサーを使うので,センサー1台はTouchに付属するわけだが,ルームスケールで必要になるもう1台は75ドルで別売されることになるという。USB 3.0ポートを追加で2つ確保するのがちょっと大変かもしれない。
VR空間に「手」をもたらすTouchの投入タイミングでルームスケールVRをアピールしたのは,ある意味必然ではあるのだろう。ユニットを3台使うというのも,おそらくはViveの先例を研究した結果だろう。Viveで片側のセンサーが真後ろになっているときに,頭上に手を上げると,腕の影で正面側のセンサーがヘッドセットを見失って画像が乱れるというのは,ままあることなのだ。
今回の基調講演では,Oculus VRのVRへの取り組みが進んでいることが多く示されていた。親会社であるFacebookによるVRコミュニケーションの展望をはじめ,VRの活用については他社の一歩先を見据えた展開をしているように思われる。待望の入力デバイスTouchによって,Riftが実現するVRは大きく進展していくことが期待される。