新世代へ引き継がれるドット絵ゲームたち。「Pixel Art Park 3」レポート
会場内は「Music Area 」「Art Area」「Application & Game Area」と三つのパートに別れており,ピクセルアートへの愛を各々の方法で表現していた。そこから,現在の国内ドット絵ゲーム事情について紹介したい。
一風変わったギミックのアドベンチャーゲーム「Strange Telephone」
主人公はふしぎな空間にとじこめられた少女である。傍らにはそのお供らしき,浮遊する「電話」が登場する。
本策は,基本は横スクロールのフィールドを探索しながらアイテムを調べていくプレイスタイルとなっている。電話の「Call」ボタンを押すと架空の電話番号をダイアルするメニューに切り替わるのだが,これがいわゆる自動生成系のシード値に値するものとなっており,プレイヤーが入力した番号に合わせて別のワールドにジャンプする仕掛けだ。
また,電話を何度もかけると徐々に世界が壊れていく演出が入っていき,ついには少女が衝撃的な演出とともに死んでしまう。今回のバージョンでは,4回電話をかけた時点でゲームオーバーになる仕様だった。実際の製品版ではもっと試行回数は多くなるとのことだ。
画面中央にある扉は,ある条件を満たすと手に入る鍵で開く。各ワールドで起こすアクションによってエンディングが変化する,マルチエンディング形式のゲームプレイになるという。
センスの光るアートワークと,触って楽しい電話ギミック。そして「ゆめにっき」を彷彿とさせる不穏な世界観は,いわゆる「懐かし系」のドット絵ゲームとは一線を画す作品といえる。
yuta氏は前回紹介したインディーズゲームイベント「Bit Summit」には2回出展しているが,何度もスクラップ・アンド・ビルドをこなしながら理想に近づけるべく格闘中だという。リリースを何度か見送ってしまっていたが,年内にはリリースしたいと話していた。
yuta氏のTwitterページ
色を変えて解く倉庫番系パズル「Color Finder」
hako氏の「Color Finder」は“色を操るドット絵倉庫番パズルゲーム”と銘打たれたタイトルで,色の付いた箱を目的地まで押していくシンプルなゲームだ。ただし,プレイヤーキャラと箱は同じ色でなくてはならず,色同士を混ぜると別の色を生み出せるシステムをうまく使って,パズルを解いてくようになっている。
ちなみに,先の「Strange Telephone」と「Color Finder」リメイク版は,フリーの2Dゲームフレームワーク「LOVE」(Love 2D:(公式サイト)」を使って開発されている。記述言語はLuaで,こうしたピクセルアート作品を作るのに適しているらしい。興味がある人は一度触ってみてはいかがだろうか。
hako氏のTwitterページ
アラームプレイイングゲーム「dreeps」は3DS展開を発表
「dreeps」はユーティリティとゲームの中間のような不思議な作品だ。
RPG風ではあるが戦闘は自動で,プレイヤーのやるアクションは時計アプリのように,実際に自分が起きる時間にアラームをセットすることだ。現実とゲームの世界がゆるくつながっており,なんともいえない一体感が生まれる。
本タイトルは2015年1月にiOS向けに配信。昨年夏,Indie Stream Awardにて「Best of Art」「Best of Game Design」を受賞した。受賞をきっかけにタイトルへの注目が上がり,開発者同士のつながりからニンテンドー3DSへの移植話へと進んだのだそうだ。
ここ最近,スマートフォンのカジュアルアプリがニンテンドー3DSへ移植展開される事例が増えつつある。今年の7月からは個人ゲーム開発者でも審査なく登録ができる[Nintendo Developer Portal](参考URL)も開設され,アプリクリエイターがゲーム専用機へ作品を広げることがかなり身近になってきた。今回イベントで展示されているようなピクセルアートの作品と,ニンテンドー3DSの相性はとても良さそうだ。今後もこうした展開が増えることを期待したい。
なお,「dreeps」iOS版はAppStoreで販売中で,3DS版は今年冬の発売を予定しているとのことだ。
「dreeps」公式サイト
細部にゲームボーイ愛を感じる「COLORS 失われた記憶」
本作はRPGツクール2000を使って開発されており,ふりーむ!で無償公開されている。
RPGツクールはもともと2Dのドット絵イラストを念頭に置いた開発環境であり,ピクセルアートとの親和性は高い。ドット絵イラストレーターが自らの生み出した絵をプログラミングなしで動かすことができ,またMVからスマートフォンアプリへの書き出しも可能となっている。ツクール利用のアプリはまさにこれから活気づきそうなジャンルだ。
「COLORS」公式サイト
ZK氏のTwitterページ
「ピクセルアート」という共通項で集まったさまざまな面々
また開発への関わり方も専業から副業,あるいはまったくの趣味として行うなど多様であり,偏りは見られなかった。
しばらく前から「ノスタルジー」ではなく「ジャンル」として形成されてきた感のあるピクセルアート。会場には90年代に実際にドットを打っていた開発者もブースを構えていたそうだが,どちらかというと新世代のクリエイターがしっかりとしたファン層をつかんでいる雰囲気を感じた。
最初に触れた家庭用ゲーム機がポリゴン描画可能なものだった世代が,今やメインのゲームクリエイターだ。初期のスマートフォンアプリや携帯ハードなどでの「必要性からのドット絵作り」は徐々に減りつつあるものの,ピクセルアートは表現技法としてしっかり確立されていることをあらためて認識した。この界隈から「古くて新しい」ゲームはまだまだ登場しそうな予感がする。今後も楽しみである。
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