[GTMF2016]ゲームツールとミドルウェアの最新動向を探る。GTMF2016東京会場展示ブースレポート
ここでは東京会場の展示ブースの模様を紹介してみたい。なお,大阪会場の展示ブースについては,一條氏のレポートを参照していただきたい。さらに昨年のレポートは4Gamer.netに上がっているので,そちらと見比べてみるのもよいだろう。
GTMF 2016大阪会場展示ブースレポート
GTMF 2015東京会場展示ブースレポート
●モノビット
最近はリアルタイム通信エンジンで幅広い製品展開を行っているモノビット。今回は,中嶋謙互氏のCTO就任時に製品展開が予告されていたVR対応クラウドのイメージデモが公開された。このデモ,通信機能はないので本来の動作ではないのだが,その実装イメージを示すものとなっていた。形式としては,箱庭タイプのRTS仕立てで,マルチプレイヤーで艦隊を指揮して戦うといった感じのものとなっていた。配置モードと戦闘モードがあり,配置モードでは戦艦を掴んで細部を眺めたり,好きな位置に置いたりといった操作が可能で,戦闘モードではさまざまに視点を変えて自動戦闘の様子を観察できた。残念ながら戦闘はフルオートだ。
画面内にはシルエット風の3Dモデルで他プレイヤーが表示され,本来ならば会話なども可能になる模様。なお,モノビットでは現在テキストチャットのシステムを提供しているが,ボイスチャットのシステムも投入予定とのこと。VRで使われるボイスチャットは,声の位置情報も必要になる。普通のボイスチャットであれば,N対Nの会話でもサーバー側でストリームを合成すれば,それぞれのプレイヤーには上り下りで1ストリームずつで足りたのだが,VRのN対Nチャットでは人数分のストリームが必要になる。そのあたりどうするのか聞いてみたものの,まだはっきりとした答えは出ていない模様。
「VRで重要になるのはコミュニケーションだ」ということで需要を先取りしたVRクラウドだが,どのような体験を実現してくれるのか楽しみにしておこう。
モノビットエンジン公式サイト
●CRI・ミドルウェア
反響をたずねてみると,振動のON/OFFくらいしかできないのではないかと思っている人が多いようで,振動の表現力がまだまだ知られていないことがうかがえる。モバイルゲームだと,電車内などでプレイする際には音声がカットされることも多いのだが,音声を切って振動をONにするという選択肢で,静かなままリッチな体験を実現することもできそうだ。
そのほかでは,Sofdecによる4K動画ではPSVRによるデモを行っていた。一條氏による大阪会場レポートでは,H2の動画再生ミドルウェアが絶賛されていたのだが,性能としてはH.264によるα付き4K動画再生をサポートするSofdecのほうが優れていると思われる(一條氏は百も承知のことであろうが)。インディーズライセンスが新設されることを祈ろう。
CRI・ミドルウェア公式サイト
●ダイキン工業
このAutoModellerがどんなツールなのかというと,「3Dオブジェクトをテクスチャとして貼り付けられる」プラグインなのだ。言葉の意味としては不正確なのだが,実態を適切に表現するとこうなると思ってほしい。これだけじゃ意味が分からないという人は,下の動画を見てみるのがいいだろう。
ペイントツールのような感じで,オブジェクトに模様を塗るようにディテールオブジェクトが生成されていることが分かる。ノーマルマッピングといった次元の処理ではない。きっと,球体にさっと塗ればあっという間にデススターができる。
感心するのは細部まできちんと処理されていることだ。塗っていくオブジェクトの形によって自動的に断面が生成されるのだが,その断面にもバンプマッピングなどはちゃんと施されており,自然な外見に仕上げていることが分かる。
やはりゲーム関係だと「Mayaにもほしい」という声は多いようだ。Maya版は出てくるかもしれないとのことではあったが,残念ながら少なくともすぐに出る気配はなさそうだった。
ダイキン工業COMTEC公式サイト
●東陽テクニカ
PERFORCEをメインに展示していた東陽テクニカだが,今年持ち込んだ新製品は「Black Duck Hub」と「CHECKMARKS」だ。Black Duck Hubは,オープンソースソフトウェア(OSS)に含まれる既知の脆弱性を警告してくれるというツールだ。ソースコード,バイナリコードともに対応しており,どのOSSを使っているかなどのハッシュ値をサイトに登録しておくと,脆弱性が発見されたときに警告してくれるなどのサービスもあるそうだ。
CHECKMARKSは,ソースコード中に含まれるセキュリティホールになりかねない記述を検出してくれるというツールである。ソースコードを解析して数百種類の脆弱性を未然に検知するという。チラシだけの展示だったので会場に行っても見落としていた人もいるかもしれない。
現時点で,Java,JavaScript,PHP,Python,Groovy,Ruby,Android,iOS,HTML5,Windows Mobile,C#.net,C++,ASP.net,VB.net,VB6.0,PL/SQL,Perl,Apexという非常に多くの言語とシステムに対応しているのも特徴だ。ゲーム開発で使う言語はほぼ網羅されている。バッファオーバーラン対策などは,気を付けていても抜けてしまうところがあるかもしれない。人力でチェックするのも大変なので,機械的に検出できるツールは有用だろう。クローズドな環境であったコンシューマゲームと異なり,モバイルゲームやオンラインゲームではセキュリティ対策が必要になってくる。専門的な知識が必要な対策処理をサポートしてくれるツール群だ。
東陽テクニカ公式サイト
●日本シノプシス
コードの静的解析による最適化ツール「Coverity」で知られるシノプシスは,今年もブースでデバッグクイズを展開していた。表立ってアピールはしていないが,ここも今年の主力はセキュリティ製品のようである。
「Protecode」は上で紹介したBlack Duck Hubと同じようにOSS(に限らないようだが)の脆弱性を検知してくれるシステムである。機能はだいたい同じで,ソースコード,バイナリコードの双方で検出できる点も同じだ。手軽に使えることもあって,OSSはあらゆる分野で多用されるようになっている。自社開発でないライブラリなど,中身が見えないものに関してはバイナリベースの検出ツールが有効であるとのこと。また,ライセンス関連も気をつけなければならないポイントである。ライブラリを調べてみると,GPLとLGPL,個別ライセンスが混在していているといった事態も珍しくはないだろう。そういったものもバイナリ解析で分析してくれる。
そのほか,普通には試しにくいセキュリティテスト関連のツールとして「Seeker」「Defensics」なども紹介されていた。Coverityでコードの性能は確保できるので,さらなる品質向上の方向としてセキュリティに注視した展開が行われているという。
日本シノプシス公式サイト
●ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン
Unity 5.4の新機能デモの展示やPSVRによるVR体験コーナーを開設していたユニティ・テクノロジーズ・ジャパン。右写真で,左のディスプレイに映っているUnityちゃんはWebGLで動いており,その横はスクリーンスペースリフレクションの例,中央のディスプレイではGPUインスタンシングを使ったAdamデモ,右のディスプレイはちょっと分かりにくいがVRデモの画面が映っている。
Unity公式サイト
●アクセル
H2MD公式サイト
●アトミテック
具体的には,クライアントとサーバーで開発言語を同じにするところから始まっている。ゲーム開発で使われそうな言語すべてに対応したサーバー側の開発環境が用意されている。なお,Swiftには対応していないのだが,iOS用ゲームとは言っても開発にはゲームエンジンを使う人がほとんどなので,ほぼ必要ないからだそうだ。
C#,JavaScriptなどはUnity 5のようにC++のコードに変換されて,最終的にはC++のシステムとして実行されるとのことなのでパフォーマンスは高そうだ。
KiQ公式サイト
●Umbra
オクルージョンカリングのツール「Umbra」によるデモ出展。オクルージョンカリングとは,膨大なオブジェクト数の3Dシーンで視点から見えているポリゴンだけを処理する手法のことで,Umbraはその代表的なミドルウェアである。Unityに搭載されているほか,Unreal Engine用にももちろんプラグインが用意されている。
独自の空間データベースを作成することで高速に処理を行うが,速度と精度を選択することもできるという。
Umbra公式サイト
●インディーゾーン
Houdimi製品サイト
●ウェブテクノロジ
ウェブテクノロジのブースでは,「OPTPiX SpriteStudio」を中心に展示がされていた。
最新版はエフェクト関連が凄いということなのらしいのだが,あまりその辺はアピールされていなかったように思う。今回が初出ではないのだが,目を引くのは「キャラ半分回ってるじゃないですか。これツール関係なくないですか?」と言いたくなるような映像だ(参考URL)。A4フルカラー50ページのビギナー向け小冊子が配布されていたのもなかなか凄い。そこでは前述の映像の作り方なども解説されているのだが,手法を説明されてもマネできるものではない気はする。
そのほか,ヤマハの遊技機用グラフィックスチップGP3に対応したSpriteStudioのランタイムがデモされており,インタラクティブな表現をアピールしていた。
ウェブテクノロジ公式サイト
●エピック・ゲームズ・ジャパン
GTMFのプラチナスポンサーでもあるエピック・ゲームズ・ジャパンでは,Unreal Engine 4によるVR関連を中心に展示を行っていた。写真のように人だかりは非常に多かったのが印象的だ。Bullet TrainのVRデモでは,おそらく場内のVRデモで一番長蛇の列ができていた。
エピック・ゲームズ・ジャパン公式サイト
●Geomerics
Geomerics公式サイト
●Audiokinetic
Audiokinetic公式サイト
●Wise
Go Proを6台組み合わせた機器で全周を撮影し,合成することで6000×2000ドットの映像を作り,その全天画像からIBLを作成して3DCGにライティングを施すという流れだ。足元などの影については,地形などは無視して合成してなじませている模様。
取材したときにVRヘッドセットがなかったため体験はできなかったのだが,背景は非立体視映像になるはずなので,立体視CGが乗るとどんな感じなのかは少し興味深い。
画面のとおり,デモ映像は海岸に恐竜(?)が佇むというものである。波の部分は綺麗にループ映像に編集されている。こういったことが可能な撮影・編集のプロと3DCGのプロが存在することが同社の強みだとのこと。PSVR用タイトルも開発中とのことなので,映像に注目しておこう。
Google Clode Platform公式サイト
●GMOクラウド
リアルタイム通信エンジンPhotonやMarmaladeなど各種ミドルウェアを扱うGMOクラウドだが,展示ではPlayCanvasが中心となっていた。PlayCanvasは,WebGLベースのゲームエンジンで,ぱっと見た感じの画面構成はUnityにかなり似ている。WebGLで,本格的な3Dブラウザゲームが手軽に作れるほか,ツール自体がWebブラウザ上で動作するのも特徴だ。
GMOクラウド公式サイト
●SHIFT
SHIFT公式サイト
●シリコンスタジオ
シリコンスタジオでは,Mizuchiの新シェーダ機能を使った「YURI」やHDRデモなどが展示されていた。これらについての詳細は,「こちら」と「こちら」の記事を参照してほしい。国内ではあまり紹介されることのないPopcone FXという海外製の物理エンジンもデモされていたのも目を引いた。
シリコンスタジオ公式サイト
●マッチロック
左右の目で扱うジオメトリ情報が異なった場合,歪み方などで両目画像をうまく合成できなくなるケースもありそうな気はするのだが,両目画像をうまく合成できないほうが板っぽさがはっきり出なくていいのかもしれない。うーむ微妙だ。
従来,両眼立体視でのビジュアルエフェクトは「ビルボード感」が露骨に分かるので没入感を阻害する要因となることも多々あった。VR時代に向けたエフェクトテクニックも確立する必要はありそうだ。
マッチロック公式サイト
●ヤマハ
ぱちんこやパチスロなどの遊技機で使われるグラフィックスチップ「GP3」を展示するハマハブース。今年は,「かんたん3D」というソリューションが提案されていた。
遊技機で利用されているのはほとんどがプリレンダーのムービーなのだそうで,インタラクティブ性に乏しいのが難だったという。そこで,ムービー再生に対して3Dでのエフェクトを乗せるなど,新しい表現方法が提案されている。デモでは,ガラスのような質感の髑髏(?)がムービー画面の下から飛び出すような処理が行われていた。もちろん,屈折処理付きで表現されている。ヤマハとしては,せっかく内蔵されている3D機能をもっと有効に使ってほしいということなのだろうか。
ヤマハGraphic Controller公式サイト
●Live2D
Live2D公式サイト
●ラクス
ラクス公式サイト
●ハートビーツ
ハートビーツ公式サイト
●MaturalMotion
NaturalMotion公式サイト
●オートデスク
Stingray製品情報ページ
●MUGENUP
Save Point公式サイト
●デジカ
デジカ公式サイト
●Too
Autodesk系のツールがの名前が展示されていたのだが,実際のところはVRデモ中心だったTOOのブース。ViveによるデモではGoogleの「Tilt Brush」などが好評だったようだ。
また,低価格モーションキャプチャデバイスとして知られるNoitomの「Perception Neuron」の実演デモも行われていた。低価格ながら,指の動きまで取れるデバイスだ。
実際のところ指の動きはどれくらい取れるのか聞いたところ,グー・チョキ・パーはいけるが,バルカン星人の挨拶は無理とのこと。また,長時間使っていると位置ずれを起こすので,マメにリセットするのがコツとのこと。
TOO公式サイト
●日本マイクロソフト
Windows 10用アプリを推す日本マイクロソフトブース。最近のVisual Studioにはグラフィックスツールや3Dモデリングツールも付属している。ブースではUnityちゃんのモデリングデータを読み込んでいた。
Unity 5でVisual StudioのCommunity Editionがそのままインストールできるようになったため,コードのエディットで活用している人は増えているかもしれない。実はコード以外でも,MIP-MAP対応のテクスチャファイルを生成したり,モデリングデータを作成したりできるので活用してみよう。
Visual Studio公式サイト
●RAD Game Tools