ローカルマルチプレイヤーゲームは,オンラインVRに変換可能か?

Boneloafの乱闘アクションゲーム「Gang Beasts」はソファに座ってみんなと楽しめるゲームであるが,Coatsink SoftwareはVRヘッドセットを介して同じ楽しさをオンラインで再現することができるだろうか?

 この数年,ローカルマルチプレイヤーモードを擁したゲームの成功例がいくつか見られる。「Towerfall」や「Nidhogg」のようなゲームは隣に座った友人(もしくはこの場合は敵といったほうが妥当な相手)とプレイしたときの楽しさは格別だ。
 イギリスのシェフィールドを拠点とするBoneloafが開発した「Gang Beasts」も,そんな独立系のローカルマルチプレイヤーゲームのサクセスストーリーの一つで,プロシージャルなアニメーションで表現されたキャラクターたちを使って,ときには奇妙で時には危険なマップの中でお互いを蹴落とし合うような,気軽に楽しめる“ユルい乱闘アクションゲームとして,アーリーアクセス版がリリースされている。

 BoneloafのMichaelおよびJames Brown氏は,あくまでも実験的なマルチプレイヤーゲームを作ることを信条としているという。本誌のインタビューにおいてはゲーム市場における復活傾向を読み取って,計算づくで「Gang Beasts」を開発したのではないと念を押す。「僕らはそんなに頭が良くないからね」とはMichael氏。

 「Boneloafには,そのようなビジネス戦略に関するインテリジェンスは存在しませんよ」とJames氏は続け,「我々はプログラミングのスキルや経験もそんなに高いわけではありませんので,ゲームを作るというだけでもアップアップな状態なのです。5人の開発メンバーのうち4人が美術やイラストレーションを専門にするといういびつな状態で,ゲームデザインや開発の訓練を受けたことはなかったのですから。専門学校を出たばかりのMichaelが,唯一プロと呼べる人材なんですよ」と説明する。

「オンライン化したことで,4度めのゲームの作り直しとなりました。機能を加えるためにはシステムレベルでインパクトが強かったからです」

 James氏は,Michaelともう一人のメンバーであるJonとともにBrown家の三兄弟として,ローカルマルチプレイヤーゲームをプレイして幼少期を過ごし,いつかそんなゲームを作りたいという願望を持っていたという。初めてゲームジャムに参加してみたとき,自然とその方向のゲームを作り始めていたというわけだ。
 しかし,2014年8月にGang Beastsのアーリーアクセス版がリリースされて以降,その評価がうなぎ上りになるにつれて,オンラインモードのないことが弱点として明るみに出てきたのである。

 James氏は,「ネガティブなレビューのほとんどは,オンラインゲームに馴れたゲーマーがGang Beastsを購入し,オンライン機能がないことを知って期待外れだったという場合ですね」と話す。

 Boneloafは,遊んで楽しいプロトタイプを生み出すことでその能力を証明してみせたとはいえ,まだゲームをリリースさせることができず,オンライン対戦モードは存在しないままだ。Boneloafのメンバーは,より経験のある開発者の協力が必要であることを身に染みて感じていたのである。

 James氏は,「オンライン化で,4度めのゲームの作り直しとなりました。機能を加えるためにはシステムレベルでインパクトが強かったからです。ですから,なにがGang Beastsを楽しいゲームにしているのか,なにが問題点なのかを理解し,解決できる開発経験の高いチームと作業を進めることは不可欠だったのです」と語る。

 もちろん,ローカルマルチプレヤーゲームの持つソーシャル性は,オンラインゲームとして昇華できるだけでなく,VRヘッドセットを装着してプレイすることも可能になるだろう。しかし,Boneloafと協力提携したCoatsinkのCOO,Simon Launder氏は,「VRモードは,ゲーム体験を少し向上させると思います。ボイスチャットモードを加えることで,相手のプレイヤーとインタラクトしていくことが可能だからです。オンラインマルチプレイヤーモードでは同じ部屋にいる相手とプレイするということはほとんどないですが,VRヘッドセットはソーシャルな体験を付加できるのです」と強調する。

 James氏は,移植によってゲーム体験の質が失われることはないだろうと考えており,実際に今のところは良い結果が出ているとのことだ。VRヘッドセットを使ったオンラインプレイは,先日ロンドンで開催されたゲームイベントEGX Rezzedで一度だけ実験されたのみとはいえ,Riftを装着してプレイしたイベント参加者たちは,ローカルマルチプレイヤーモードと変わらない様子でチャットしてしたという。

「IMAXシアターの巨大スクリーンを使ったイベントで,Gang Beastsをプレイしてみましたし,スイミングプールの水を抜いて底の部分にプロジェクタを使ってゲームを表示させてみたこともあります」

 「まったくチャットに参加しようとしなかった人でも,ほかの人の会話を聞いて笑ったりしていましたから,VRを使ったオンラインプレイはローカルマルチプレイヤーゲームと似たゲーム体験を提供してくれるのは間違いないようです」というJames氏は,「どのマルチプレイヤーモードでも同じ体験ができるよう調整を続けています」と語った。

 Gang Beastsはオンラインマルチプレイヤーゲームとしてしっかり対応できているとはいえ,Boneloafはローカルマルチプレイヤーゲームとしての潜在能力をさらに引き出そうとしている。

 James氏は,「IMAXシアターの巨大スクリーンを使ったイベントで,Gang Beastsをプレイしてみましたし,スイミングプールの水を抜いて底部分にプロジェクタを使ってゲームを表示させてみたこともあります。それぞれに異なるコンテキストがあり,世界各地から自分たちがプレイしている様子の映像を我々に送ってくれるのです。このような,“イベント型ゲーム”はさらに需要が高まっていくかもしれません」と話し,「我々は自分たちの持つテクノロジーの限界を超えようと悪戦苦闘しており,ハイエンドコンピュータを使って30人によるバトルロワイヤルモードに挑戦してみたり,22人によるサッカーをゲームの中でプレイしてみたこともあるのです」と語る。

 Gang Beastsは,年内にもPC向けのアーリーアクセス版を終了し,PlayStation 4 向けにも正式ローンチする予定になっている。先に挙げたVRモードや,ストーリーキャンペーンも発売後のアップデートとして計画されている。その後,プレイヤーたちがソファの上で熱狂するか,サーバーを超えてその熱狂が広がっていくのかは誰にも分からないが,Boneloafはプレイヤーたちが一つの部屋でプレイしていくことを選ぶだろうと自信を持っているようだ。

 「ローカルマルチプレイヤーは,常に我々が優先させるべきことだと思います」というJames氏は,「おそらく,Gang Beastは直接相手のプレイヤーとふざけ合うことで最大限に面白さが引き出されるゲームであるのでしょう。しかし,オンラインやVRモードも楽しいゲームになると信じています。ただ,少し違った形でのゲーム体験になるということだけですね」と結んだ。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら