【ACADEMY】プレイヤーをよりよく理解する方法を見つける
あなたは自分が好きなゲームを知っている。しかし,それを好きな理由を知っているだろうか。なぜ,あるものはクールで,ほかのものは自分には合わないのか説明できるだろうか。
ほとんどの人はできないし,それはゲーム開発者にとっても厄介な課題だ。プレイヤーはしばしば,色,パズル,キャラクターなど,自分の好きな要素を特定できるが,なぜその要素が魅力的なのかを詳しく説明できる人はめったにいない。ゲーム開発者としては,プレイヤーが何を好むかだけでなく,その理由も理解する必要がある。
この2つの質問に答えるには,さまざまな方法がある。プレイテスト,プレイヤー調査,市場調査,ゲーム内分析など,より伝統的で明白な方法は,人々が何を楽しんでプレイしているかを理解するのに役立つ。2つ目の質問,「なぜオーディエンスは楽しんでいるのか」はより厄介だ。個人の本質的な動機について洞察しなければならない。
幸いなことに,これは新しい分野ではない。「マイヤーズ・ブリッグス」「ヒューリスティック」「性格診断」といった言葉を聞いたことがあるかもしれない。ゲームであれ,小売業であれ,職場であれ,人間関係であれ,何が人を動かすのかを理解しようとすることだ。とくにゲームにおいては「プレイヤーペルソナ」「プレイヤーアーキタイプ」「バートルのプレイヤータイプ」といった言葉に聞き覚えがあるかもしれない。
しかし,それは実際には何を意味し,どのように開発に統合できるのだろうか。ここでは,ゲーム開発者がプレイヤー心理をゲーム開発に取り入れ,プレイヤーの心に響く体験を生み出すための3つのステップを紹介する。では詳しく見ていこう!
1. ゲームを見つける前にオーディエンスを見つける
Metacoreではプレイヤーは最もボスに近い存在だ。本当にプレイヤーの心に響くゲームを作るには,詳細なゲームデザインに入る前にオーディエンスを特定することが重要である。新しいゲームコンセプトを作る際に,私たちは2つの方法でこれに取り組む。
アイデアファースト:ゲームの仕組みや世界観,ジャンルのアイデアからスタートし,そのコンセプトを楽しめるプレイヤーを特定する。
オーディエンスファースト:あるいは,アイデアからオーディエンスを見つけるのではなく,特定のオーディエンスのために新しいゲームを作りたい場合もある。オーディエンスを理解することで,彼らの好みに合わせてゲームを作り始められる。
どちらのアプローチも有効であり,最初のステップとすべきである。早急に詳細を詰め込みすぎるのは避けよう。代わりに,GameRefineryのような強力な市場調査ツールを使って,潜在的なオーディエンスや彼らが喜びそうなゲームプレイを発見することに集中しよう。このプラットフォームは,何百万ものモバイルゲームのデータポイントを分析し,プレイヤーの行動を12のモチベーションと8のプレイヤーアーキタイプに分類したクラスターを形成する。
新しいマージゲームのアイデアがあれば,GameRefineryを使って人気のあるマージゲームのプレイヤーのモチベーションの内訳を調べられる。
例えば,私たちのゲーム「マージマンション」について,GameRefineryはプレイヤーのモチベーションに「マイルストーンの達成」「パズルの解決」「逃避」などが含まれ,戦略や競争への関心が低いことを示している。これを知っていれば,PvPモード(競争モチベーション)ではなく,段階的な報酬システム(マイルストーンの達成モチベーション)を強調するようにゲームをデザインできる。
デザイナーのありがちな落とし穴は,オーディエンスが同意するかどうかを確認せずに,自分が楽しいと思う機能の構築に時間を費やしてしまうことだ。GameRefineryのようなツールは,プレイヤーがどこに楽しさを見出すかを特定するのに役立ち,あなたのゲームの売り文句のあらゆる部分がオーディエンスの嗜好に合っていることを確実にする。あなたのゲームデザインの決定が,単に楽しそうなものを作るのではなく,オーディエンスが好きなものによって行われていることを確認しよう(しかし,できれば両方であってほしいものだ)。
2. プレイヤー調査データでオーディエンスのモチベーションを明らかにする
ライブゲームさえあれば,本物のプレイヤーにアクセスできるようになり,競合他社の市場データだけに頼ってゲームを改善する必要はなくなる。実際のプレイヤーのデータは,実用的な洞察のための最も貴重なリソースとなる。
データ分析を通じて,ゲームのどの部分がプレイヤーの心に最も響くのかを特定できる。同様に重要なのは,あまり楽しめない部分を特定し,その理由を調査することだ。これらの洞察は,ゲーム開発の指針として「何を強化し,何を再評価すべきか」を浮き彫りにするうえで非常に貴重だ。
好き嫌いに基づいてプレイヤーの行動を分類することで,オーディエンスに固有のアーキタイプまたはプレイヤーペルソナが生まれる。この行動区分に基づいたプレイヤーインタビューによって,各グループのモチベーションのパターンが明らかになる。ここで,「何」に加えて「なぜ」にも光を当て始めるのだ。
独自のプレイヤーペルソナモデルを作成することもできるし,サードパーティのフレームワークを利用することもできる。「マジック:ザ・ギャザリング」の「ティミー,ジョニー,スパイク」モデルが最初のアプローチの一例であり,これは3つのペルソナに基づいたプレイヤーの行動分類で,それぞれが独自のモチベーションを持っている。
「スパイク」はどんな手段を使ってでも勝ちたいというモチベーションを持っている。彼らはルールを曲げることをいとわず,勝利を確保するためにはどんな戦術でも用いる。
「ジョニー」は創造的で革新的なプレイヤーであり,レアカードをユニークな方法で使うことを楽しむ。彼らはゲームの伝承を解明し,コレクションを完成させることを好む。ジョニーは「未開の地を探検しているときが一番幸せ」なのだ。
そして,「ティミー」もまた大きく勝って対戦相手を打ち負かしたい。ティミーのモチベーションを知るまでは,スパイクのように聞こえるだろう。彼らのモチベーションは,ただ勝つことよりも,参加すること,そしてスタイリッシュに勝つことにある。確かにティミーは勝つことを楽しんでいるが,彼らをマジックに引き戻すのはソーシャルな側面と熟練だ。
マジックでは,新機能や新カードがこれらのプレイヤータイプの少なくとも1つに合っていることを確認しており,そうでないなら再考される。
3. ゲーム開発の枠を超え,プレイヤー観を活用する
独自のモデルは,あなたのゲームの実際のアクティブプレイヤーのみを考慮するので素晴らしいものだ。しかし,あなたのゲームをプレイしていない人を考えることはないし,ゲーム外の人間としてのプレイヤーを理解する助けにもならない。
オーディエンスを拡大したい,あるいは既存のオーディエンスとのつながりを深めたいのなら,Solstenのような新しいデータ駆動型プラットフォームの利用を検討してみてはどうだろうか。Solstenは認知科学とAIを使って詳細な心理プロファイルを作成し,ビッグファイブのようなモデルを活用してプレイヤーの行動と嗜好を分析する。さらに,固定されたゲーム環境以外の,人間としてのプレイヤーを明らかにすることもできる。
私たちはSolstenの「Traits」プラットフォームを使って,ゲームにおける,そして人生におけるプレイヤーのモチベーションについての洞察を得ている。例えば,プレイヤーが「マスタリー」と「マイルストーンの完了」に価値を置いていると理解することが,私たちのデザインとマーケティング戦略に反映されている。Solstenは,プレイヤーがほかのゲームメカニクスとどのような親和性を持っているか(新機能の考案に役立つ),ほかのメディアの嗜好(キャラクターや世界観の構築に応用できる),マーケティングメッセージ(人目を引く新しい広告クリエイティブやキャッチコピーを作成する際に最適)など,これらのモチベーションが現実世界にどのように反映されるかを理解するのに役立つ。
多くの場合,人はゲームでも人生と似たようなことに動機づけられるものだが,これには懐疑的な見方もある。このようなアプローチを探る際には,行動心理学に詳しい人がいると便利だろう。
プレイヤーも開発者も人間だ
誰が,なぜプレイヤーを駆り立てるのかを理解することは,ゲーム開発を進めるうえで欠かせない北極星だ。
サイコグラフィック・フレームワークをゲーム開発に応用することは,とくに新しいことではない。「バートルのプレイヤータイプ」以来,私たちは長い道のりを歩んできた。私たちは今,ゲームデータやAIとともに,学術的かつ科学的な方法論を活用し,プレイヤーについてかつてないほど多くを学べる。視聴者を人間として駆り立てるものが,ゲーム開発の原動力となるはずだ。
プレイヤー観,モチベーション,サイコグラフィック・フレームワークを統合することで,プレイヤーのモチベーションに共鳴するゲームを設計し,エンゲージメントとリテンションを高められる。適切な質問を投げかけ,プレイヤーの心理を理解し,関連するフレームワークを活用することで,すべてのプレイヤーペルソナが自分の心に響く何かを見つけ,何年にもわたってプレイヤーを魅了し,楽しませ続けるゲームを作れる。
最後に,もしあなたがプレイヤーのペルソナやサイコグラフィックの世界に慣れていないのであれば,ぜひ自分でも性格やゲームのモチベーションに関するクイズに挑戦してみてほしい。プレイヤーとしてのモチベーションと,人間としてのモチベーションの間にパターンがあるかどうか試してみよう。きっと驚くだろう。
このトピックについてもっと深く知りたい人は,以下のリンクから素晴らしい講演,プロジェクト,テスト,プラットフォームを確認してほしい。
参考資料
動画:
How Your Personality Affects What You Play, Daryl Talks Games
5 Domains of Play, 2012, 2018, Jason VandenBerghe
モデル&レポート:
Bartle Player Types
Who Plays Mobile Games (Google)
GameRefinery Archetypes
Solsten
Big 5 / OCEAN (Wikipedia)
9 Quantric Gamer Types
Magic the Gathering: Timmys, Jimmys, and Spikes (Fandom)
書籍:
Robert Cialdini, "Influence: The Psychology of Persuasion"
Daniel Kahneman, "Thinking, Fast and Slow"
Dan Ariely, "Predictably Irrational: The Hidden Forces that Shape our Decisions"
Tim Shepherd氏はMetacore Gamesのプロダクトマネージャーだ。Activision,Wooga,Metacoreなどの会社で15年間にわたってゲーム業界で働いている。プロダクトマネージャー,デザイナー,開発者,創業者,投資家としての専門知識を持つ。
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