【ACADEMY】リモートスタジオを成功に導き,長続きさせる方法

Roll7の人材部門責任者であるNisha Minhas氏は,スタジオで働かない人が,強いスタジオ文化を築くための,OlliOlliスタジオの秘訣を語った

【ACADEMY】リモートスタジオを成功に導き,長続きさせる方法

 Roll7は7年前からリモートワークのスタジオであり,「OlliOlli」と「ローラードローム」の開発者は,それをうまく機能させる方法について,ほかの人より少し経験があるかもしれない。

 先月開催されたGamesIndustry.biz HR Summitのプレゼンテーションで,Roll7の人材・運営責任者であるNisha Minhas氏は,長期的にリモートワークを導入する方法について,スタジオの知見を共有した。Minhas氏は人事部門で15年のキャリアがあるが,パンデミックのときに初めてリモートワークを経験し,それが彼女の個人的な状況に合っていた。

 「より多くの人々にとって,リモートワークは1日の副次的なイベントになりつつあります」とMinhas氏は語った。「人事担当者としては,4人に1人の割合にシフトしていることを認識し,自分たちに合った働き方を模索することが重要です」

 では,Roll7のモデルが彼女にとって,どのように機能したのかを紹介しよう。



出勤初日に舞台を整える


 Minhas氏は,良いリモートワークを実現するためにはオンボーディングプロセスが重要だと強調し,Roll7のおかげでリモートワークの導入がかなりスムーズになったと語った。

 彼女は,バーチャルワーク向けの,さまざまなスタジオのプロセスの一部について説明を受けられたのだ。

Nisha Minhas氏
【ACADEMY】リモートスタジオを成功に導き,長続きさせる方法
 ひとつは,Roll7の規定始業時間は9:00であり,スタッフ全員が少なくとも重なるように出勤しなければならないこと。7:00から19:00までというスタジオの勤務時間内であれば,従業員は自由に勤務時間を設定できる。早出で午後には終わる人,遅出で夜までいる人,朝から夜まで働きつつも,子どもの放課後活動や,ほかの仕事のために途中で休憩を取る人などさまざまだ。

 時間の融通がきくことは,自分がいるときに同僚がいるとは限らないことを意味するので,Roll7ではSlackにバーチャルドアを設け,社員が自分の出勤・退勤をすぐに伝えられるようにしている。また,オフィスと同じく定期的に休憩を取ることが推奨されており,Slackのドアはそのためにも役立っている。

 また,スタジオは従業員に文章による会話の曖昧さを印象づけ,大小の事柄について明確な意思疎通を図るため,互いに電話することをためらわせないようにしている。

 最後に,ロジスティックな対策として,Minhas氏が最初にログインしたとき,すべての導入ミーティングとスタッフの集まりがカレンダーにあらかじめ予約されており,彼女は最初の週にどこにいるべきか,何を準備すべきか迷うことはなかった。

 「このような明瞭さがあったことで,私はひたすら仕事に打ち込めるようになったのです」とMinhas氏は語った。「私はすぐに考え方を適応させることができ,人事は初日から責任を持って概要を説明してくれました。これが初日に起こることは,とても重要であり,成功するための最良の機会が得られます」


リモートで人間関係を築くには


 優れたコミュニケーションツールを持つことは,リモートワークにとって重要だが,それをどのように使うかを考えることも重要だとMinhas氏は言う。

 Roll7では,社内メールによるコミュニケーションを一切行っていないと,彼女は説明する。その代わりに,Slackのチームアナウンス用チャンネルで全社的なメッセージを共有し,特定の分野やプロジェクトについて共有する専用チャンネルがあり,仕事と関係ない話については,おすすめの食べ物やペットの写真,毎日の新しい会話のきっかけとなるトピックのためのランダムチャットを用意している。

「コミュニケーションツールは,企業としてのあり方を真に反映する必要があるので,その成長と発展のために,人事が時間を費やすことはとても重要です」

 「私がすぐに気づいたのは,私たちがここでやっているのは,私たちをひとつにするバーチャルな空間を作り出すことだということです」とMinhas氏は会社のアプローチについて語った。「リモートワークがもたらす孤立感を解消し,人々の好きなもの,嫌いなもの,人々が苦難やお祝いの時を過ごしていることを発見しています。9月にクリスマスを指折り数えているクレイジーな人は,私だけではないと分かったのです」

 会社が使うコミュニケーションツールは,それ自体がバーチャルオフィスであり,企業文化を創造する場所なのだ。

 「ここは,人々が初めて交流し,共通点があるかどうかを確かめる場所なのです」とMinhas氏は言う。「ここで人々は個人的なつながりを築き,人間関係を構築できます」

 「コミュニケーションツールは,企業としてのあり方を真に反映する必要があるので,その成長と発展のために,人事が時間を費やすことはとても重要です。それは,使いやすく感じられる必要があります。そうでなければ,コミュニケーションツールは支持を得られず,人々は会社とのつながりを感じなくなるでしょう」

 Slackを使い,オンラインですべてをこなすだけでは不十分だとMinhas氏は語る。人事部は,人間関係を維持・構築するためにできる,小さいながらも意味のある仕事についても考える必要がある。

 例えば,Roll7は独自のアプローチでお祝いをしている。社員の誕生日にはSlackで「パーティパロット」を放ち,そのことを社内に発表し,社員にギフト券を送り,四半期の誕生日ごとにグループランチで祝うのだ。

 「私たちがここで求めているのは,そのような考え方の転換なのです」とMinhas氏は言う。「クリエイティブで,とてもまとまった状態に向けて準備し,些細なことも忘れないことです」


リモートで信頼を築くには


 これはプレゼンテーションの短い部分だったが,Minhas氏は信頼を築くことがおそらく最も重要な部分だと強調した。

「何よりもまず,私たちは人々に各自のプロセスを任せるのです」

 「何よりもまず,私たちは人々に各自のプロセスを任せるのです」と彼女は言う。「これは,手綱を手放し,AからBへの道筋を描くことを心から信頼するということです。私たちは,彼らに探求の場を与え,失敗することもありますが,そこから学んで成長させます」

 「これはおそらく,リモートで効果的に仕事をする方法において,学ぶのが最も難しいレッスンのひとつでしょう。私たちは社員に自主性を与えています。つまり,1日を自分で管理し,好きな仕事を好きな順番で好きなペースでできるように,社員を信頼しているのです」

 しかし,社員に働きたいように働く力を与えることは,社員が仕事について責任を持つことと両立しなければならない。

 だからこそ,初日から全員の役割と責任を明確にすることが重要なのだ。「そうすれば,誰が何を所有し,どこに境界線があるのかを全員が理解し,信頼して仕事を任せられるようになります」


リモート環境で生産的に働く方法


 リモートで生産性を上げるには,Minhas氏がまず話したふたつのこと,つまりチーム内の人間関係と信頼関係を築くことができるかどうかにかかっている。

 それ以外にも,Roll7には月に1回,人事部が企画するオフィスデイがある。

 「私たちはここで生産性を効率化します」とMinhas氏は言う。「ディスカッションをしたり,座談会を開いたり,さまざまな方法でお互いを刺激し合ったり,ときには直接会って行わなければならないような重要な共同作業をしています」

 それ以外にも,同社は過度のコミュニケーションを望ましいこととして実践しようとしている。Minhas氏が言及したように,テキストメッセージを読み違える方法は101通りあるので,人々にとって最適なチャネルを通じて,さまざまな方法で情報を提供することは,メッセージを適切かつ明確に伝える有用な方法だ。

「優れたプロジェクト管理ツールは,私たちを成功に導きます。それは,全社的なToDoリストなのです」

 彼女はまた,NotionやJiraのようなプロジェクト管理ツールの重要性を強調した。Roll7では部署によって使い分けている。

 「優れたプロジェクト管理ツールは,私たちを成功に導きます」と彼女は語る。「それによって,プロジェクトの進捗を把握できます。そうすることで,社員に仕事への責任を持たせることができます。全社的なToDoリストなのです」

 出張費や宿泊費の管理も,完全なリモート企業にとっては第一の重要事項である。

 「最低でも月に2回は世界中から来てもらいます」と彼女は語る。「だから,あっという間に増えてしまうんです。そして綿密に追跡し,計画しなければ,すぐにできることが制限され,人々は興味を失い,組織化されたものにコミットしなくなります」

 Minhas氏は,Roll7におけるリモートワークの成功に不可欠なもののひとつは,予測不可能な状況への適応能力だと語った。

 「私たちは進化することを恐れません。成長マインドを持って取り組み,適応していくのです」と彼女は言う。「何かが少し古臭くなり,現在の状況にそぐわない場合,私たちはそれを恐れず,そこから学び,物事を切り替えて成長していきます。私たちは自分たちがやっていることや,その方法に満足することはありません。なぜなら,リモートワークの秩序をどのように構築してきたかを見直さざるを得ない外的要因があるからです」

「ノークランチ戦略に取り組むことは,非常に大きな発想の転換ですが,可能だと思います」

 彼女はまた,リモート環境における人事担当者の盲点について警告し,メンタルヘルス上の闘いの増加について考える必要性を説明した。Roll7は,この点に関して多くの取り組みを行っており,とくにノークランチ(修羅場ゼロ)のポリシーを掲げている。

 「私たちは明確な境界線を設定しています」とMinhas氏は語る。「人々は自宅で仕事をしているので,生活のための時間を作ることは奨励され,疑問視されることはありません。ノークランチ戦略に取り組むことは,非常に大きな発想の転換ですが,可能だと思います」

 最後に,リモートワークへの移行で失われがちな,個人や会社全体の成功を祝うことの重要性を彼女は指摘した。

 Roll7は,Slack上に「バーチャルチームシャウトアウトルーム」を設け,社員がお互いの成功を全社的に把握できるようにした。また,長期的な業績を表彰するために,年1回の社内表彰式も設置した。

 「リモートワークとは,人々の個人的なライフスタイルに合った労働文化を創造する方法を見つけることです」と彼女は言う。「私の考えでは,リモートワークのモデルを長続きさせ,幸せな労働力を生み出すには,人に逆らわず,人と一緒に働くことが最善の方法です」

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