PlayStation「我社のライブサービスゲームは,さまざまなジャンル,発売スケジュール,視聴者をターゲットにしています」

ソニーの最新のライブサービススタジオ買収について,PlayStation,Firewalk,ProbablyMonstersに話を聞いた。


 この1年半の間に,PlayStationは3つのスタジオの買収を発表したが,いずれもライブサービスゲームに特化したものだった。

 これは,昨年1月にDestinyの開発元であるBungieの買収したことから始まった(関連英文記事)。その後,3月にHaven Studiosを買収し(関連英文記事),そして先週,Firewalk Studiosを買収することを明らかにした(関連英文記事)。

 これはすべて,ソニーが最もよく知られているシングルプレイヤーで物語を楽しませるアドベンチャーゲームから手を広げるという目的の一部だ(ただし,心配しないでほしい,これらもまだ作られている)。実際,同社は現在10本のライブサービスゲームを制作中であるという。

 しかし,通常,ライブサービスゲームでは膨大な時間と注意を払う必要がある。ソニーは,10本すべてが成功するとは思っていないはずだ。私の中の皮肉屋は,この10本のうち大半は成功しないと分かっていながら,1本か2本が大成功することを期待して,会社が賭けに出ているように思えてならないのだ。

 だが,PlayStation Studiosの責任者であるHermen Hulst氏は,「ライブサービスをするということが自動的に10本のFortniteやDestinyを作ることを意味するわけではありません」と私に強く念を押してきた。

 「我々は,世の中の競争環境と,ライブサービスが提供するプレイヤーの時間的な投資を理解しています」とHulst氏は語る。「そして,我々は最高品質のゲームをお届けしたいのです」

 「ライブサービスを1つのジャンル,あるいは1つのビジネスモデルであるかのように,一般的な用語で語ってしまうのは危険です。PlayStation Studiosは,さまざまなジャンル,さまざまなリリーススケジュール,さまざまな規模をターゲットに,『ライブサービス』と呼べるようなさまざまなゲームを作っています。また,PlayStationファンの皆様に愛される世界や物語を作り上げてきた実績に自信を持っており,さまざまなオーディエンスに向けてゲームを作っています」

PlayStation「我社のライブサービスゲームは,さまざまなジャンル,発売スケジュール,視聴者をターゲットにしています」

ライブサービス "について,あたかも単一のジャンル,あるいは単一のビジネスモデルであるかのように,一般的な用語で語ってしまうのは危険です -Hermen Hulst氏,PlayStation

 Hulst氏はFirewalk Studiosを買収するというニュースの直後に話してくれた。PlayStationは2021年4月に,Firewalkと最初のゲームで提携すると発表している。しかし,昨年のHaven Studiosと同様に,PlayStationはゲームをリリースする前にもかかわらず,このチームを買収することを決定している。

 「すべての(スタジオとの)関係にはそれぞれの経過があり(SIEに参画する前に,外部パートナーとして何年も一緒に仕事をしていたケースもある),他の例では買収がより迅速に行われました」Hulst氏はこう説明する。「これはスタジオが成長し成功するために何が必要か,双方にとって何が理にかなっているかによって決まります。我々は,ここしばらくFirewalkと密接に協力していました。我々両社は,そのプロセスをとても楽しんでおり,彼らが作るものには大きな信頼を寄せています。ですから,これはとても自然な流れだと感じたのです」

 では,PlayStationが提供できるものは何なのか。Firewalkのスタジオ責任者であるTony Hsu氏は,同社は150人の従業員を超えて大きく拡大する予定はないと語る。しかし,PlayStationの一員であることのメリットはほかにもある。

 「各スタジオの優先順位は,自分たちのプロジェクトを実現すること,つまり最高のゲームを作ることです」とHulst氏は続ける。

 「しかし,PlayStation Studioは,スタジオと中央の技術・サービスチームからなるグローバルネットワークとして機能しています。ゲームデザイン,オーディオ,アニメーションなど,あらゆる分野でコラボレーションが可能な環境を提供するために,我々は努力しています。ライブサービスには,新しく複雑な課題がつきものです。ですので,そのような経験をしてきた個人やチームが,他の人に助けやアドバイスを提供できることは,非常に貴重なことなのです」

 もちろんそれらのチームの1つにはBungieも含まれており,Firewalkの創業者の多くが実はBungieの元従業員であるということはとても重要なことだ。Tony Hsu氏は,実はActivisionでDestinyのゼネラルマネージャー兼シニアバイスプレジデントを務めていた。

PlayStation「我社のライブサービスゲームは,さまざまなジャンル,発売スケジュール,視聴者をターゲットにしています」

我々はBungieと個人的にも仕事上でも密接な関係があり,同じファミリーの一員となることに興奮しています -Tony Hsu氏,Firewalk

 「我々のチームでは,Bungieと個人的にも仕事上でも密接な関係があり,同じスタジオのファミリーの一員になれることに興奮しています」とHsu氏は語る。「PlayStation Studioの一員になることのメリットの1つは,ベルビューやシアトルの友人や近隣の人々などといった,驚くほど才能豊かなデベロッパネットワークと知識を交換する機会を得られることです。彼らやHaven InteractiveのようなPlayStation Studiosのチームと一緒に,革新的なマルチプレイヤーエクスペリエンスを創造し,発展させることができることをうれしく思います」

 Firewalkが作っているゲームについて興味深い余談だが,このゲームはPC向けにも同時開発されているため,厳密にはPS5独占にはならないようだ。ライブサービスのタイトルを複数のプラットフォームで展開することは,より大きな市場を獲得できるため,ビジネス的に理にかなっている。ソニーは,このようなアプローチを,すべてのサービスベースのタイトルで行う可能性があるのだろうか?

 Hulst氏は,まだ沈黙を守っている: 「近年,PCでのゲーム配信は大きく前進しており,ゲームやスタジオにとって意味のあるものであれば,素晴らしい選択肢となります。しかし,それは個々のゲームごとに決定されるものです」

 FirewalkがPlayStationに参加するということは,他と違うことをすることにこだわっていたAAAスタジオの集合体であるProbablyMonstersに別れを告げるということだ。このチームのCEO兼社長であるHarold Ryan氏は,「デベロッパが生き生きと働ける職場を作り,彼らが愛し,誇りに思うゲームを作るという生涯のキャリアを手に入れる」ことを目指していたという。

PlayStation「我社のライブサービスゲームは,さまざまなジャンル,発売スケジュール,視聴者をターゲットにしています」

我々はゲームが作られる環境を改善しながら,新しいAAAチームを作るための投資を続けていきます -Harold Ryan氏,ProbablyMonsters

 FirewalkをPlayStationに売却するという決断は,それと矛盾するものではない,とRyan氏は語る。新規IPに投資しつつ,ポジティブな文化を持つチームを作るという点で,Hulst氏は自分の考えと一致するという。

 「FirewalkがPlayStationファミリーに加わることは,新しいAAAゲームチームと新しいAAA IPを世に送り出すという我々のミッションの大きな一歩であり,カルチャーに焦点を当てた才能あるチームを『まとめ上げ,導き,そして権限を与えれば』成功するという証明になります。ほかにも2つの発表済みチームがあり,もちろん未発表のプロジェクトも進行中です。すべてのチームとゲームに最適な市場投入の道を見つけるという我々の目標において,ProbablyMonstersで達成しようとしていることは軌道に乗っています」

 さらに氏は付け加えて: 「我々は,業界におけるポジティブな影響を高めるために,ゲームが作られる環境を改善しながら,新しいAAA開発チームの構築に投資を続けていきます」と語っている。

 Hsu氏は,ProbablyMonstersを離れて,(2年以上一緒に仕事をしてきた)PlayStationの一員になった現在でも,スタジオのあり方は変わっていないと結論付けている。

 「我々は幸運にも,ProbablyMonstersとPlayStationの両方のパートナーのサポートのおかげで,独自の独立した文化と開発哲学を確立することができました」と氏は語る。「当初から,HermenをはじめとするPlayStationのリーダーグループは,我々のチーム,文化,そして我々のビジョンに対しての素晴らしい支持者でした。PlayStation Studiosに参加することで,我々のゲーム作りに対するユニークなアプローチがさらに強化されることでしょう」

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら