「株式会社24Frameの内情暴露日誌」第23回:シネマティクスの力学


 さて,会社の内情というか自分の心情を暴露してばかりいる当連載ですが,たまにはどうにもならない自己実現の話とかじゃなくて,もうちょっと役に立ちそうな話をしていきたいものです。

会社の個人発表みたいのでこんなの作ってました
「株式会社24Frameの内情暴露日誌」第23回:シネマティクスの力学
 そういえば会社員時代にスピルバーグのシーン分析みたいなことをやっていたのを思い出したので,そのついでに,映像のカットシーンにおける最低限の僕の考え方,みたいなものを述べていこうかと思います。

 それに向けての前提を配置しておきますと,映像における日々の業務というものは「素晴らしいシーンの創出」ではなく「よくないものをまともにする」という属性のものが主ですので,それにそって話を進めます(逆説的に言えば,「すべてをまともにしていく」中でしか「素晴らしいもの」は生まれません)。

 「よくないものをまともにする」とはどういったことか? それは言い換えれば「見ている人間の集中力を切らさない」というのが主題になってくる,ということです。

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これとて作っている当事者たちには心残りがあるはずなのです
 当たり前ですが開発中のゲームのカットシーンなんかは「よくないもの」の集合体です。これはすべて作りかけのもので構成されますから当然なのですが,人間は「作りかけ」のものを見ても「?」という違和感による集中力の寸断を余儀なくされます。

 なので,作りかけのものをなくしていく,というのがミッションになるわけですが。これはまあ放っておいても各パートのみなさんが仕事をしていけばある程度は履行されます。

 しかし現実にはどんなに予算があろうと各パートの全員が満足いくまでの作り込みを実行することはほぼ不可能であり、そうなると重要度が高いものから先に作っていって全体の見栄えを良くする、おしなべて変なところが目立たないようにする、というのがこういった仕事のひとまずのゴールとなります。

 故に(すべての仕事がそうであるように)「重要度」をどう付けていくかが重要になるわけですが,そこへのガイドラインを述べていくのが今回のテーマ,ということですね。

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偉大な作品の絵コンテが普通に手に入る素晴らしい時代だからこその議論といえます
 我々は第三次産業,いわゆるサービス業(さらに言うならその中でも「実業」でなく「虚業」に属するもの。まあこういう言い方もあまり今っぽくはないですけれども)の従事者ですから「顧客満足度」というものが重要度と直結しており,それすなわち観客が情報を受け取る順番に沿って重要度が決定されていくことになります。

 これはつまり「人間がどういう順番でシネマティクスから情報を受け取るか」という問題ですし,その人間は「大枠と細部を行き来して情報を受け取っていく」生き物ですから我々も「大枠部分」と「細かい部分」を行き来しつつ作業を進行することになります。


 そしてシネマティクスの一番の大枠での役割は「ゲーム体験(映画ならストーリー)の連続性を担保する」というものが最初に来ます。これは「コンティニュイティ」,略して「絵コンテ」と呼ばれることになるコンテの決定が最初にある,というこれまた極めて当たり前の話に帰結します。

 ここでものすごく基本的なこととして気をつけないといけないのは「コンテの絵が上手い」ことと,「それが作品ストーリーのコンティニュイティに寄与している」ことはまったくの別問題だということです。

 「絵が上手いが映像の文法的に間違っている絵コンテ」というのは業界内にも存外多く,まずはそれとは別軸の判断基準を設けることが必要です。

 それは何か? ということを考えるのが上記の「優先順位」とイコールなわけですが,それを決めるには「観客の視線の動き」を知ったうえでそれに沿った分析を行う必要があります。

 観客の視線の動きにはいくつかの動物心理学的なルールがありますので,それをベースに考えていきましょう。


何にでも力学的な,生物学的な論拠があるものです
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 まず観客は「画面全体」を見て,画面内に動くものがいればそれを見ます。いなければその後その画面を左から右に見ていき,人物がいればその顔を見て,人物のポーズを見て,その後人物以外の余白を見て,その後,再び画面全体に視線を戻し,画面の情報が印象として一つにまとまります。

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UIなんかも同じ構造での分析が可能だったりします
 実はこの前段として人間の脳には「音を聞く」というフェイズがあるのですが(これがゲームとか映画を作っているときに現場でよく聞かれる「結局音楽入ったときに全部持っていかれるんだよなー」という幸せなボヤキの原因だったりするのですが),この部分は音楽家がいい曲を作って,それをいい感じの音像で作り込み,それらを適切なタイミングで流す音響監督の領域なので,この場合の現場でできることは「いい曲が来るといいなー」というところまでにとどまります。


 その後の視線の動きなども基本的には音と同じく人間の脳みそや身体の構造にそって本能的に上記のように定義されるわけですが(そして実はシネマティクスのみならずゲーム全体にもこのルールは適用されているわけですが),その根拠と,そういった創作物の各フェイズで気をつけるべきこと,というのを語るには次回を待つ必要がありそうですので,今回はここまでということになります。次回,各フェイズの詳細を見てまいりましょう。続く!


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