【ACADEMY】新しいゲーム用語のA-Z

過去10年のゲームを形作った30の単語とフレーズについて。

 新しい造語は,世界が変化する様子や,変化する世界を我々がどう捉えるかを表現するものだ。

 このリストを作成するにあたり,多くの言葉やフレーズ,コンセプトが,まるで昔から存在していたかのように感じられたのが印象的だった。しかし,Google Trendsやその他の検索結果から判断すると,これらの言葉はすべて,この10年未満で使われているか,2012年以前のゲーム業界ではほとんど使われていないようだ。

 私は,約100の単語やフレーズをGoogleトレンド(2004年まで遡る)と照合し,タイムウィンドウを使用して通常のGoogleもチェックした。Gameindustry.bizの読者が興味を持ちそうな分野を念頭に置きつつ,リストを30に絞った(たとえば,オンラインゲームの多彩な侮辱の束は却下した)。

このリストを集めてみて,いかに多くの言葉,フレーズ,コンセプトが,我々とずっと一緒にいるように感じられるかに驚かされた

 2012年以降に顕著に増加したものを目安にしている。なお,私は以下の単語やフレーズが,2012年以前には存在せず,ゲームの世界でかすかに存在していたものが,現在になって常用されるようになったと主張するものではない。また,ブランド名については,より広い意味でのトレンドを示す場合にのみ使用した。

 私のリスト記事作成の経験からすると,いくつか良いものを見逃している可能性があるので,以下のコメント欄で意見を寄せほしい。我々の基準を満たす単語があれば,今後の補足記事で取り上げることも検討したい。私はとくに,ゲームデザインや開発の分野で顕著な人気を博している言葉に興味を持っている。

 全体として,このリストが,とくに社会的認知,消費者パワー,マネタイズ,創造的拡張性,テクノロジーの分野における過去10年間のゲーム業界の進歩を描き出すことを期待している。


アクセシビリティ


 この10年のゲーム界で最も歓迎すべき変化は,ゲームデベロッパが遅ればせながら,人は皆異なり,皆求めるものも異なり,そして皆同じように重要であることを認識したことだ。これは,ゲームのデザインやマーケティングが,しばしば非常に特殊な人たちを対象としていた以前とは,まったく異なるものだ。

 アクセシビリティ,つまり身体的,精神的,感情的な差異を考慮したゲームデザインは,かつてないほど飛躍している。ゲーム会社は,さまざまな課題,欲求,嗜好を抱えた人々のニーズを理解するアドバイザーを採用し,その意見に耳を傾けている。その結果,ゲームの選択肢は以前よりはるかに増えている。アクセシビリティの向上により,より多くの人がゲームの遊び方を選択できるようになったのだ。

Naughty DogのThe Last of Us Part 2には,約60種類のアクセシビリティ機能が搭載されている
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バトルパス


 バトルパスは,間違いなく過去10年で最大のマネタイズイノベーションである。数か月に及ぶゲーム内の「シーズン」という形で,あるゲームのプレイヤーに新しいコンテンツやチャレンジ,報酬を提供する。バトルパスの価格設定は,低額のプレイヤーは無料でプレイし続け,高額プレイヤーはゲームプレイのチャレンジを通じてスキン,エモート,ダンスムーブなどの獲得に挑戦することで,収益化されるというように段階的に設定されていることが多い。

 バトルパスは2013年頃にMOBA向けに導入されたが,2018年にEpicがFortnite向けに最初のバトルパスを開始したことで,この検索キーワードは爆発的に普及した。現在では,games-as-a-serviceに普遍的に使用されている。


バトルロワイヤル


 急速に縮小するマップの中で大勢のプレイヤーが殺し合いをするインスタデスゲームの亜流で,ここ数年シューティング界を席巻している。バトルロワイヤルの漫画シリーズとハンガーゲームの成功に触発されたこのフォーマットは,MODの世界,とくにArma 3とDayZにおけるBrendan Greene氏の作品から生まれ,2017年にはついにスタンドアロンのPlayerUnknown's Battlegroundsが登場した。

 Epicは,このフォーマットを使って,Fortniteを並み居るサバイバルCo-opから世界的な文化的試金石に昇華させた。バトルロイヤルは今やCall of DutyやBattlefieldのようなシューターの定番モードであり,Apex Legendsのようなヒットゲームのベースフォーマットでもある。2020年のメジャーヒット作Fall Guysは,シューティングマップではなく,突撃コースで同様の形式を採用している。


ブロックチェーン


 消費者が購入したり作ったりしたゲーム内のデジタル製品を実際に所有し,それを他の消費者に販売することを可能にする(という夢もある)暗号通貨技術。理論的には,ブロックチェーンは,ゲームパブリッシャによって緩やかに管理されているだけのデジタル商品(別名NFT)で新しい経済を創出できる。現在,ゲーム業界では現実的というよりもバズワード的な存在だが,この夢はゲームのエコシステムを大きく変えうるものであり,革命的なレベルに達する可能性がある。メタバースも参照。


クラウドゲーム


 ゲームは,ローカルデバイスでプレイして保存するものから,データはすべて遠隔地のサーバーファームで保持しストリーミングするものへと徐々にシフトしてきている。XboxやPlayStationなどのプラットフォームは,ゲームをホストする個々のデバイスの販売を目指すのではなく,中央サーバーからゲームのポートフォリオをホストし,それをさまざまなデバイスに配信することに主眼を置いたビジネスモデルへと移行している。Googleは2019年にクラウドシステムStadiaを立ち上げたが,ほとんど受け入れられていないことが分かった。

Googleは,2019年にそのクラウドシステムStadiaを立ち上げたが,ほとんど受け入れられなかった
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コンパルジョンループ


 2010年代初頭,過剰なプレイや強迫的なプレイという一般的な習慣を説明する方法として,「中毒」に代わって「コンパルジョンループ」という概念が広く使われるようになった(※Compulsion:強い欲望)。これは,農作業ゲームやテトリスのような高速パズルゲームに見られるような,快楽的で反復的な行動によってもたらされるドーパミンの放出を説明するものだ。モバイルゲームやソーシャルメディアゲームは,繰り返しと報酬を中心に設計されることが多いが,この言葉はデザイン界では一般に軽蔑的なものとして嫌われている。


ダンス


 ダンス・ダンス・レボリューション(1999年)の登場以来,キネティックダンスゲームはゲームの一部となっていたが,2000年代末にカメラ付きのEyeToy,Wii,Kinectが登場すると,さらに前面に押し出された。技術の進歩とともにゲームも進歩し,UbisoftのJust Danceシリーズは,ここ10年,毎年恒例の定番ゲームとなっている。しかし,ダンスはFortniteなどのゲームでアニメーション化されたエモートを通じてゲームにも進出しており,そこから遊び場にまで広がって,子供たちはスクリーンで見た動きを再現して大喜びしている。

 イングランドのサッカー選手Jesse Lingardは,2018年ワールドカップの試合中,パナマ戦でゴールを決め,Fortniteのダンスで祝って世界的な話題になった(参考URL)。しかし,Epicなどのゲームメーカーは,ストリーマーやソーシャルメディアのインフルエンサーが考案した人気のダンスを,正当な支払いやクレジットなしに盗用していると非難されてもいる(関連英文記事)。


多様性(ダイバーシティ)


 2010年以前の10年間に行われたさまざまな調査では,ゲーム内の女性キャラクターや主人公は10%を超えることはなく,男性は35%を下回ることはほとんどなく,たくさん登場していたことが実証されている(残りはプレイヤーが選択するか性別が不明なもの)。しかし,状況は変わった。Statisticaによると,2020年の数字は女性18%,男性22%となっている(参考URL)。また,有色人種が登場するゲームもはるかに多くなり,セクシュアリティ,能力,年齢もより多様になっている。

ゲームにおけるダイバーシティはまだ進行中だが,最近になって本格的に始まったものだ

 その背景には,ゲームのモノカルチャーに対する批判が説得力をもって広く共有され,一部の企業が従業員の多様化を徐々に進めようとしたことがある。また,独立系スタジオや個人のデベロッパも,多様性の向上に大きく貢献している。ゲームにおけるダイバーシティは,まさに現在進行形だが,最近になって本格的に始まったものなのだ。


エモート


 インターネットや携帯電話の登場以来,エモート(ハート,怒り顔,サムズアップなど)は人間のコミュニケーションの一部となりつつある。しかし,Googleトレンドによると,この言葉は2004年から2018年にかけて横ばいで推移しており,2018年に急激な上昇が起こっている。これは,ユーザーの感情的な反応を伝えるためにエモートを活用したFortniteとTwitchが同様に上昇していることと対応している。Twitchのユーザーは,それ自体が複雑な言語に相当する膨大な種類のエモーションを利用している。Fortniteでは,キャラクターアニメーションが使用されており,とくにダンスは,バトルパスを通じて収益化されることもある。


eスポーツ


 対戦型プロフェッショナルゲームは,MOBAヒーローシューターバトルロワイアルを中心に,すでに成長していた分野にストリーミングサービスがアフターバーナーを加えたことで,過去10年の中頃から本格的に普及した。2015年,eスポーツの世界の観客数は約1億1500万人だった(参考URL)。現在ではその5倍の規模になり,年間12億ドルの価値があるとされるまったく新しいゲーム産業を切り開いており,その勢いは衰える気配がない。

Epicは,バトルロワイヤルフォーマットを利用して,Fortniteを下位のサバイバル協力プレイから世界的な文化的試金石に育て上げた
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ガチャゲーム


 日本からきたガチャゲームは,おもちゃの自動販売機のような金融モデルで,プレイヤーにお金を使わせて,ゲーム内のキャラクターやカードなど,プレイヤーのコレクションを充実させる貴重なアイテムを獲得することを目的としている。賭博の一種だが,この仕組みは無料プレイのモバイルゲームで広く使われており,原神のようなヒット作もある。また,Forza Horizonシリーズなど,ガチャのために課金しないゲームでも,ガチャ形式の仕組みはよく見られる。


賭博


 この10年間,ビデオゲームが子どもに与える悪影響についての主流は,暴力から賭博へと変化していった。ガチャLoot Boxなどを使って,プレイヤーを誘惑し,投機的な購買に走らせるゲームが増えたからだ。米国では,是正措置が取られたため,ゲーム会社は最も悪質な行為から手を引いたが,Pay-to-Winなゲームはまだよく見かける。


Games-as-a-service


 GaaSは最新の収益モデルである。World of WarcraftのようなMMOに触発され,GaaSは今や複数のジャンルを網羅するようになった。かつては,プレイヤーはゲームを買って終わりで,最初の売上を収益化するには続編がベストと考えられていた。デジタルストアの登場により,発売後のDLCが普及して,予約特典の比重が高まっている。

パブリッシャにとって,ゲームソフトの初回購入は,続編を販売するための最初のステップにすぎないと見なされるようになった

 Civilization 6などのゲームでは,発売から何年も経ってから新しいマップ,キャラクター,チャレンジが提供され続け,Fortniteなどの無料オンラインゲームのヒット作では,ほぼアップデートのみに依存している(バトルパスを参照)。パブリッシャにとって,ゲームの初回購入は,後続のゲームを販売するための最初のステップにすぎず,主要なゲームではしばしば大幅な値引きをして誘惑している。その結果,ビデオゲームの賞味期限は以前よりはるかに長くなっている。


Z世代


 1997年から2010年にかけて生まれた新しい世代が生まれつつある。社会の専門家によると,Z世代はこれまでのどの世代よりもデジタルに精通しているとのことだ。彼らは,流行りのモバイルゲームで多くの時間を過ごし,短期間ではあるが,Minecraftのようなクリエイティブな世界にも何年もどっぷりと浸かっている。彼らは完全に機能するインターネット・エンターテインメント複合体の中で育つ最初の世代だが,これまでの世代がそうであったように,彼らは歴史の重荷を拒否し,自分自身のニーズと欲望を大切にしようと努力するだろう。幸運を祈る。


ヒーローシューター


 1人称または3人称視点のシューティングアクションと,キャラクター選択による戦略性を重視したMOBA的な要素を融合させた新しいGaaSのサブジャンルだ。Overwatch(2014),Apex Legends(2019),Valorant(2020)などのゲームは,新しいキャラクターの導入に大きな価値を置いているため,物語が重要な役割を果たし,プレイヤーが自分のお気に入りを楽しむスーパーヒーローフランチャイズのような形を取っている。

ヒーローシューティングゲームは,Overwatchのようなゲームにより,ここ10年で顕著になっている
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Loot Box


 戦利品(Loot)は,武器やアップグレード,キャラクターなどの形で,長い間ゲームの一部であり,一般的にボスを倒したり,レベルをクリアするなどの報酬として「ドロップ」される。Loot Boxはガチャの一種だが,一般的にはゲームやフランチャイズに追加されるもので,その中核的な仕組みというよりは,むしろガチャの仕組みだ。

 Electronic Artsは2009年,FIFAのエグゼクティブプロデューサーであるAndrew Wilson氏の指揮の下,FIFAのUltimate Teamモードを開始した。プレイヤーは,現実世界のサッカー選手を獲得したり,現実世界のスポーツスターカードのパックを模したランダムパックで選手を購入したりすることができた。これは大ヒットとなった。

 Wilson氏はすぐにEA Sportsのトップとなり,その後,会社全体を経営することになった。他のゲーム会社もこれに注目し,ゲームからの副収入を上げるために,Loot Boxを導入し始めた。しかし,いつものように,ゲーム会社は,プレイヤーが反旗を翻すまで強引に攻め続け,その結果,Loot Boxの導入は後退した。ただ,さまざまな政府が関心を持ち始め,この行為が賭博に似ていると結論づけて初めてTそうなったのだ。


マゾコア


 マゾヒストとハードコアの合成語であるマゾコアは,大きなチャレンジを提供するゲーム,そのチャレンジを楽しむプレイヤー,そしてスピードランやあり得ないゲーム内トリック,その他の優れた技を含む難しいチャレンジを賞賛するゲームのサブカルチャー(ときには有害ゲーマーも含まれるが,常にではない)の3現象を説明するものだ。


メタバース


 人間のアバターが社会活動,ゲーム,消費を行う未来のデジタル世界(または複数の世界)。現在,億万長者や大企業のハニーポットとなっている。最も可能性の高いシナリオは,これまで見てきたような超資本主義的なファンタジーとはまったく異なるものになるというものだ。

ゲーム業界は依然として男性中心の文化であり,しばしば変化に対して非常に抵抗力のある男性によって支配されている

#MeToo

 世界を変えた2017年のハッシュタグは,ゲームにも波及した。あらゆる分野の女性たちが,性差別や性的虐待の話をソーシャルメディアや主流メディアを通じて共有し始め,それ以来,男性優位のゲーム業界は,変化への痛みを伴うプロセスを開始した。MeToo以前は,ゲームで虐待を行った男性が立ち向かったり罰せられたりすることはほとんどなかったのだ。

 今,我々はときに,連続した犯罪者の「辞職」や「解雇」を目にする。しかし,より重要なのは,企業がその文化を改善するために行動を起こすか,活動家や従業員の怒りと非難に直面するかということだ。多くの進歩的な運動と同様に,変化は苛立たしいほど遅い。ゲーム業界は依然として男性中心の文化であり,変化に強い抵抗感を持つ男性が支配していることが多いのだ。


ナラティブゲーム


 2010年頃までは,プロットやキャラクター,テーマが美しく描かれたゲームの発売本数はゼロに近い状態だった。しかし,デジタル配信,クラウドファンディング,ソーシャルメディア,安価な開発ツールの登場がそれを一変させた。

 主にインディーズチームが発表するナラティブゲームは,今やゲームの定番となった。その多くは,悲しみ,幻滅,孤独,人種差別といった現実世界の問題に影響を与える物語を伝えようとするものだ。一般的なゲームの仕組みで物語を紡ぐものもあれば,最小限のアクションで,没入感たっぷりにプレイヤーを物語に引き込んでいくものもある。

物語性のあるゲームは,今やゲームの定番となっている(写真:2015年に発売されたDontnodのLife is Strange)
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NFTs


 この略語については,すでに多くの説明書きを読んでいると思うが,流行,あるいは詐欺の特徴をすべて備えている。ゲームでは,コスチュームや武器など,個々のコンテンツに価値を与えたり,失わせたりすることを指す。個人的な,消費者が生成したマネタイズ可能なゲームコンテンツは,おそらくやってくるだろう。もっと良い名前で登場することを期待しよう。メタバースブロックチェーンも参照のこと。


Nintendo Direct


 2011年末に開始されたNintendo Directは,任天堂が新しいゲームやアップデートについてファンに伝える,定期的で消費者に直接届くマーケティングおよびメッセージングビデオである。これらは従来のメディアでも報道されるものではあるが,Nintendo Directは,支配的で有名な任天堂(とその模倣企業)が,メディアによる選別や,E3のようなショーのコスト,手間,混乱なしにメッセージを伝えることを可能にする。これらの出来事は,ゲームメディアの力が弱まったことを意味する。

これらの出来事は,ゲームメディアの力が弱まったことを意味する

ストリーマー


 ストリーマーは,主にTwitchを通じて,カリスマ的なゲームプレイのライブ映像を提供することで競い合い,過去10年の中頃から,ゲームYouTubeの影響力を本格的に食い荒らし始めた。ストリーマーたちは,自分が配信するゲームや視聴者と密接につながっている。

 ストリーミング配信は誰でも行うことができ,多くの人が自分の娯楽として,あるいは友人とつながるための手段として行っている。プロのストリーマーは,名声と富を得るために,魅力と知性から衝撃的な戦術と下品さまで,本に書いてあるあらゆる手口を駆使して懸命に働いている。最も有名なストリーマーは何百万人ものフォロワーを持ち,Z世代にアプローチしようとするブランドから熱心に誘われている。


サブスクリプションサービス


 10年前,ほとんどのゲーマーは,月に数ドル払えば好きなゲームが遊べるというアイデアに飛びついたことだろう。現在では,ゲームを利用する一般的な方法となっているが,注意点がある。これらのビュッフェサービスの実態は,企業のさまざまな思惑によって,価値観の大きく異なるサービスがバラバラに提供されていることだ。

 Microsoftは Xbox Game Pass をプラットフォームに囚われない配信の1本釣りと見ており,任天堂は Switch Online を特定のオンラインサービスやレトロコレクションを収益化するための気の利いた方法と見ている。PlayStation Plus,Humble Choice,Apple Arcade,EA Play,Ubisoft Plusは,音楽やテレビの消費では優勢だが,ゲームの世界では先行き不透明なビジネスモデルに傾倒しており,いずれも進行中のものである。


テレメトリー


 データ分析はこの10年で著しく進歩した。とくにデジタル配信やGaaSの時代には顕著だ。パブリッシャは,かつてないほどプレイヤーの行動を観察し,単純なアバターアイテムのA/B比較からレベル全体のレイアウトに至るまで,将来のデザイン決定に情報を提供するためのデータを収集している。10年前でも,大手ゲーム会社は,プレイヤーの統計情報を監視するために1人か2人を雇っていたかもしれない。しかし現在では,部門全体やサードパーティの専門組織が,数字を計算し,その結果に基づいて行動するよう開発チームに通知したり,圧力をかけたりすることに専念している。

Nintendo Directsのようなイベントは,ゲームメディアの力の弱体化を示している
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Tencent


 この世界的な巨大企業は,ゲーム業界の3つのトレンドを象徴している。すなわち,ゲーム利益のポートフォリオを拡大する大規模な持株会社,ゲームにおける中国の力の増大,そしてゲームに多額の投資を行うソーシャルメディア企業だ。

 2011年以来,10億人のユーザー(そのほとんどが中国)を抱えるWeChatの運営会社は,Riot,Epic,Turtle Rockなどの大手ゲーム会社や,Dontnod,Sumo,Paradoxなどの開発会社を買収し,その株式を大量に保有するようになったのだ。中国には6億人以上のゲーマーがおり,その市場規模は年間約500億ドルにも上る。


有害ゲーマー


 2014年のGamergate論争は,右翼活動家,そして真のゲーム信仰を守る自称活動家たちの反動的な毒が短期間で猛烈に噴出したものだった。それは,ゲームにおける表現の向上やアクセシビリティの改善など,このリストで言及した進歩の多くに対する意地の悪い反乱だった。GamerGateは有害ゲーマーの概念を主流にしたが,彼らは常にオンラインゲームのロビーに潜み,憎悪と罵詈雑言を吐いていたのである。

 ゲーム会社やストリーミングサービスは,遅ればせながら,AI学習ツールや報告メカニズムを通じて,オンライン集会所を浄化する方法を考え出そうとしているが,毒性は障壁をかいくぐってしまうものなのだ。戦いは続くいている。


組合化


つい最近まで,労働組合の欠如は,企業が優秀な人材を採用するために互いに競争することで,個人の才能が常に報われるという考え方によって理由づけされていた。これは,今では馬鹿げたことだと認識されている

 ゲーム業界は,クランチ,略奪的な契約,雇用の不安定さなど,虐待的な慣習が蔓延している。最近まで,労働組合がないことは,企業が互いに競い合って優秀な人材を採用することで,個人の才能は常に報われるという考え方で,理由づけされてきた。しかし,この考え方は,現在では馬鹿げたものだと認識されている。Activision Blizzardのような悪名高い雇用主の従業員が,特定の虐待に対して集団行動を起こすことで,組合結成が急速に具体化してきている。


Unityゲーム


 インディーズブームが花開いた2012年,ゲーム開発エンジンUnityは月間30万人という驚異的なユーザー数を誇っていた。2020年の上場時には,月間ユーザー数150万人,現在の時価総額は340億ドル(約3兆円)を謳っている。

 Unityは,コアエンジンと膨大な数のアセット,プラグイン,ツールを提供しており,あらゆる経験レベルのデベロッパが低コストでゲーム制作に利用できる。消費者への還元は,Valheim,Fall Guys,Outer Wilds,Totally Accurate Battlegrounds,Return of the Obra Dinnといった予想外の商業的・批判的ヒットを含むUnityで作られた膨大なゲームライブラリである。


Zoom


 ビデオ会議やボイスチャットのアプリは,目新しいものから必須の仕事ツールになった。Zoomすることは会議をすることであり(Discord,Microsoft Teams,Google Meetなどを利用している企業もある),とくに2020年のパンデミックの到来以降は,その傾向が顕著になっている。これにより,ゲーム業界では,リモートワーク,タイムキーピングに対する考え方の緩和,QOLの重視など,働き方や採用のあり方が抜本的に見直されているのだ。


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※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら