【ACADEMY】Steamで成功したインディーズF2Pゲームを分析する

GameDiscoverCoは,Slapshot: Reboundがいかにしてカスタマイズのマイクロトランザクションとゲーム内広告でトップレベルになったのかを探る。

GameDiscoverCoのゲームディスカバリーニュースレター(参考URL)は,「人々があなたのゲームを見つける方法」の専門家であり,GameDiscoverCoの創業者であるSimon Carless氏が執筆しており,2020年代に人々がどのようにビデオゲームを発見し,購入するかを定期的に紹介している。


Slapshot: Rebound ― 成功の裏にあるデータとは?


 Steamの無料プレイゲームのデベロッパが詳細なデータを公開していることはほとんどない。しかし,そこにはインディーズであっても良いチャンスがあることは間違いない。

 そこでGameDiscoverCoは,3月にSteam(およびモバイル)のF2PバトルロイヤルKing Of Crabsを深く掘り下げた(関連記事)。そして今回は再び,かなり人気のあるマルチプレイヤーアイスホッケーゲームSlapshot: Rebound(参考URL)を取り上げてみた。Oddshot Gamesの創設者であるGilles/Erveon氏の協力に感謝する。


 Slapshot: ReboundはF2Pのスポーツゲームで,リアルな物理現象と深いゲーム戦術を備えているが,キャラクターは比較的キュートな外見をしている(上のYouTube動画で確認できる!)。

 そして,このゲームがプレイヤーの共感を得たことは,以下のSteamの数字からも分かる。正確な収益は不明だが,2020年12月以降,65万件以上の「無料ライセンス」を獲得していることが見て取れる。

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 Gilles氏に,この特別な方向性を決めた理由を尋ねたところ,こう説明してくれた。「ホッケーというテーマは,趣味で開発されていた最初のSlapshotの開発を引き継いだときに受け継いだものです。人々はPCでのホッケーゲームを求めていました。プロトタイプと言っても過言ではない最初のSlapshot(参考URL)が人気を博したことで,製品市場への適合性が証明され,私は喜んでさらなる調査を行うことにしたのです」

 また,Slapshotの毎日のSteamフリーダウンロード数も見ることができる。下のグラフは,Slapshot: Reboundの1日のSteamフリーダウンロード数を示している。

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 ローンチ時の急上昇は明らかだが,ダウンロードグラフのその他の急上昇はすべて,インフルエンサーがやや「ランダムに」このゲームを手に取ったことによるものだ。

 これは,本作がテーマに沿った大規模なアップデートを行うタイトルではなく,いつでも発見できる継続的なeスポーツであることからも納得できる(6月のダウンロードの落ち込みは,Steamのサマーセールで,F2PゲームがSteamのUIで強調されなくなる時期だからで,すべてのF2Pゲームに起こることのよだ)。

 最大のスパイクは,2021年8月下旬にSlapshotのTwitterアカウントで公に感謝され(参考URL),ポーランド語圏のインフルエンサーであるXayoo Industries氏(参考URL)によるものであることが明らかになった。彼らのプレイセッションは,ピーク時には約64000人のTwitch同時視聴者数(!)を記録し,ポーランド人のゲームプレイヤーを大きく盛り上げたのだ。

 関連して,SlapshotのCCUとデイリーアクティブユーザーへの影響をここで見ることができ,バンプ後のデイリーアクティブユーザーは最大で約1万5000人となった。

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 また,Gilles氏には,これまでのSlapshotの成功で最も驚いた良い点と悪い点についても聞いてみた。氏はこう説明する。

 「最も驚いたことは,コミュニティの大きさです。発売時の予想を上回る規模で,発売後1年近く経っても安定しているのです。ここまで来るには確かに多くの作業が必要でしたが,ゲームと我々を維持するのに十分な大きさのコミュニティを作ることができて,本当に嬉しく思っています」

 ちなみに,このゲームは発売時に有料マーケティングに費やしたのは0ドルをであり,それにもかかわらず繁栄している。

 しかし,悪い面もある。それは,大規模な競技志向のマルチプレイヤーコミュニティで,「……少数だが声の大きい一部のプレイヤーが,仲間のプレイヤーの体験を台なしにしようとしたり,我々の開発チームに嫌がらせをしたりすることです。我々は,この有害性に対抗するためのツールやコミュニティシステムの開発に,予想以上に多くの時間を費やしました。Slapshotを可能な限り安全な空間に保つために協力してくれる人たちには非常に感謝しています」


SteamでのSlapshotのマネタイズは?


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 Oddshotはここで正確なマネタイズの数字を明らかにしていないが,ゲームのマネタイズ全体の約50%がSteamのDLCやSteam Walletでの購入によるものだとしている。

 IAP(アプリ内課金)は,ゲーム内のSteam Walletのアバターアイテムで,アイスホッケー選手のための衣装や装飾品の形をしている。また,15ドルの「Lifetime」プレミアムDLCもあり(参考URL),これにはプレミアムな逸品のアバターアイテムが含まれており,経験値やゲーム内通貨の獲得量もアップする。

 アバターアイテムの購入には,5ドルから50ドルのゲーム内通貨が必要で,50ドルが最も多くのゲーム内通貨を購入できることになる。Gilles氏は,アバターアイテムがSteamの収益の大半を占めていると語る。「最高のパフォーマンスを発揮するものは,たいてい季節限定のアイテムです。たとえば,サンタ帽は,ショップに一度しか並んでいないにもかかわらず,いまだに一番売れたコスメです」

 また,氏はこうも語っている。「シーズンパスを含む,より多くのマネタイズ方法を評価していますが,これはまだほんの初期段階です」 インディーズゲームでは,このような複雑なマネタイズに挑戦することは,潜在的なストレスになるかもしれない。F2PのマルチプレイヤーゲームでIAPを導入するには,よほどの成功を収めなければ金銭的な価値はない。しかし,それがうまくいくこともある。


PCゲームの意外な収益源。ディスプレイ広告!


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 じゃあ,Slapshot: Reboundの現在のマネタイズ総額の残り50%は? 意外にも,それはゲーム内広告だ! Oddshotは,たくさんのスポンサーと協力して,ホッケーリンクのボードにシームレスなゲーム内広告を出している。

 Gilles氏は「スポーツ競技場では,人々は広告を美学の一部として見ることにすでに慣れています。Slapshotの最初のバージョンでは,ボードにジョークのグラフィックスを載せました。そして,コミュニティのメンバーが,自分たちのチームやライブストリームを宣伝するために,小額の料金で画像を掲載したいと言い出すまでに時間はかかりませんでした。Slapshot: Reboundに取り組んだときに我々はこれをさらに追求したいと思っていました。システムを自動化して,実際のブランドを掲載したかったのです」と語っている。

 Oddshotが広告契約のレバレッジをかけるのに役立っているのは,ゲームをプレイする国が分かれていることだ。ロシア,中国,タイ,ベトナムから多くのプレイヤーが参加していたKing Of Crabs(参考URL)とは異なり(そこで収益化できるなら何の問題もないが),このゲームでは,欧米やGDPの高い国が中心となっている。

 Gilles氏は続ける。「調べてみると,ブランドとゲームを仲介して販売を自動化している会社がいくつかあることが分かりました。これにより,素晴らしいブランドがSlapshotに広告を出してくれるようになったのです。Lexus,Pizza Hut,Energizer,Microsoftなどの素晴らしいブランドがSlapshot: Reboundに広告を出してくれました」


ボーナス:eスポーツのチャンス?


 最後に,我々はeスポーツが一斉に誇大広告することに少しうんざりしているが,Slapshot: Reboundがeスポーツと非常に相性が良いことは明らかだ。小さなインディーズゲームであっても,多くの人に愛されている既存の競技スポーツを,魅力的なデジタル版として表現している。

 そこで,この方向への第一歩として,本稿掲載前にOddshotはMicrosoftとIntelとのキャンペーンを発表し(参考URL),Slapshot: Reboundの対戦シーンにコミットするために,コミュニティで組織された取り組みに5000ドル以上を拠出することを発表した。

 Gilles氏はこう語る。「これまでSlapshot: Reboundのイベントには賞金がありませんでしたから,これは大きな変化をもたらすかもしれません。それに加えて,我々が立ち上げた新しいゲーム内の "eスポーツ hub "機能も相まって,ライブストリームの視聴者数は3倍になっています」

 また,Oddshotは複数のメジャーなeスポーツリーグとトーナメントを開催するプロセスを開始しており,今回のプレッジは賞金やプロダクションバリューの向上など,シーンを支援するための資金となる。

 言い換えれば,ゲームのための良いマーケティングであると同時に,コミュニティのための素晴らしいエンゲージメントでもあるのだ。


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※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら