主要ゲームパブリッシャはアテンション上昇の影響を感じている

MIDiA ResearchのKarol Severin氏は,なぜパブリッシャがFortniteへの非難をやめ,より広いエンタテイメントの世界で戦う必要があるのかを説明する。

 先週,Electronic Artsは残念な四半期決算を発表し(関連英文記事),現時点でActivisionは800人近いスタッフのレイオフを行った(関連英文記事)。ほとんどがマーケティングと販売部門のスタッフだ。

 MIDiAが過去何度もレポートしているように(参考URL),この分野全体でのエンゲージメントが低下している。これはアテンションエコノミー(※ネット上での注目度の高さが生み出す価値)がピークを迎えたことを示唆している。消費者はもはやデジタルエンタテイメント分野でこれ以上新しい話題に割く自由時間を持っていない。これは彼らが話題の優先順位付けを始めなければならなくなったことを意味する。

 このようなエンゲージメントの下降傾向はここしばらく続いている。主要パブリッシャの最新四半期の決算は,収益の減速が完全に消費者行動に従っていることを証明している。これは間違いなく,ゲーム業界のほとんどの人が考えていたよりも早く進行している。

減速の原因はFortniteを超えていく
 パブリッシャはすぐにエンゲージメントと収益の低下をFortniteのせいにしようとする。同タイトルがゲーマー間でのアテンションエコノミーのダイナミクスで頂点を極めていたのに対して,今後来るであろう減速は,遥かに大きな挑戦となる。― しだいに注目が薄れゆく状況で,いかにして注目を集めるかだ。

ゲーマーの行動の浸透(2018年Q4米英加豪)
主要ゲームパブリッシャはアテンション上昇の影響を感じている

 トップパブリッシャは同時に逆風に晒されている。Fortniteはそのうちの一つにすぎず,長い目でゲーム業界を見れば,間違いなくさほど有害なものではない。

Fortniteモデルはアテンションエコノミーのダイナミクスを利用している
 高品位なゲーム体験ができFree-to-Playである。これは消費者にとって,有料の競合ゲームよりも注意を向けやすい要素だ。もちろん,ほかのパブリッシャの収益とエンゲージメントを食い合っていることは間違いないだろうが,Fortniteのエンゲージメントは世界的なゲーム業界の底上げに貢献している。

Fortniteより多くのゲーマーがゲームビデオとイベントにエンゲージしている
 モバイル全体でエンゲージメントが低下しているのみならず,PCとゲーム機でも同様のことが起きているのに対して,ビデオはPCのような多目的デバイスで注目を集めるレースの勝者となっている。2018年のQ1からQ4にかけて,ゲーマー間でのPCによるゲームの減速は,PCで視聴されるテレビショウのり急速だった。

 皆の目がFortniteに向いている間に,ゲーム関連ビデオコンテンツとe-Sportsは継続的な減速にとって,同じくらい,もしくは遥かに罪深いことになっている。家庭用ゲーム機に関連したビデオを視聴するゲーマーが31%(月単位)なのに対して,Fortniteを毎週プレイする家庭用ゲーマーは5%だけだ。さらに,e-Sportsの参加者は,Fortniteの週間アクティブユーザーと同じ観客を奪っている。

Fortniteを敵視しすぎるのは近視眼的だ
 伝統的に孤立した業界では,各社はその市場内で成功した競合にフォーカスするのが一般的だ。ゲーム業界は,現在の競争がエンタテイメント一般にわたって展開されていることと,ゲーム自体の競争力は,エンゲージメントと収益減速での最重要な要因ではない可能性に早く気づくべきである。

 残念ながら,パブリッシャはこれまでのところ,業界内で競争を非難してきた(大部分はFortniteとRed Dead Redemption 2)。今度はそれが,すでにあるシリーズでのミニゲーム仕様や,EAのApex Legendsのような本格的なゲームとして,Fortniteの類似品のリリースにつながっている。しかしながら,エンタテイメント分野全体での注目という意味では,まだゲーム業者間の競争でたいしたことは起きていない。

 問題をいくぶん緊急度の高いものにしているのは,伝統的な宣伝手法ではゲーマーをターゲットにすることが難しくなっていることだ。なぜなら,多くの消費者が会員制コンテンツで日々をすごしており,そこでは広告がないことがほとんどだからだ。そして彼らは往々にして最もエンゲージされ最もお金を使う観衆でもある。いくらかのアテンションを勝ち取るには,ゲーム会社はペイウォール(※会員でないとアクセスできないコンテンツ)の向こうにいるゲーマーをターゲットにする必要がある。それは商品を配置したり,ビデオストリーミングでのオリジナルコンテンツや,ポッドキャストないし音楽配信サービスのプレイリストを通して行われるべきだ。

 パブリッシャたちが自分たちの間で争っている間に,ビデオストリーミングやデジタルニュース,ポッドキャスト,音楽配信,ソーシャルメディア,eコマースなどの外部からの提案が消費者のアテンションを食い散らかしており,ゲームのエンゲージメント(と収益)はますます希薄になっていくだろう。

 ゲーム会社が,(単にほかのゲームだけでなく)全エンタテイメント分野でのアテンションエコノミーの競争を理解し,目を向けるべきときは今しかない。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら