Tim Sweeney氏に聞くEpic Games Storeが料率以外でも魅力的な理由

フリーゲーム,顧客へのダイレクトアクセス,MODサポートなど,Tim Sweeney氏はEpic Games Storeの計画を明らかにした。

 Epic GamesはSteamのライバルをローンチした。同社は12月4日にまもなくEpic Games Storeをオープンすると発表したのだ。新たなデジタル配信プラットフォームはSteamの利益配分である70:30を避け,デベロッパにゲーム収益の88%を渡すものとなっている。

 Epic Games Storeは「手作業で選別されたPCとMacのゲーム」でスタートする。しかし同社は来年中により多くのゲームとプラットフォームでの開店を予定している。このストアではいろいろなゲームエンジンによるゲームが提供される予定だ。また,Epic Games StoreはUnreal Engineを使ったゲームにはちょっとした特典をつけている。店頭での売り上げでかかるはずだったUnreal Engineのロイヤリティを放棄しているのだ。

 Epic Games Storeは,デベロッパのゲームを取り上げたYouTubeとTwitchのコンテンツに対して報酬を支払う「クリエイターサポート」プログラムも展開する予定だ。

 GamesIndustry.bizはEpic Gamesの創設者兼CEOであるTim Sweeney氏に同社のストアに対する予定を聞く機会を得た。

GamesIndustry.biz:
 なぜ業界標準と思われている70:30の利益配分がここでは適切でないとされているのでしょうか?

Tim Sweeney氏:
 Fortniteを運営している途中で,我々は,PCでのデジタルストアの運営費用について多くのことを学びました。計算はまったく簡単です。主要な決済手段を使って決済するために,だいたい2.5%支払います。CDNのコストは1.5%以下です(すべてのゲームがFortniteと同じ頻度でアップデートしたと仮定してですが)。そして1〜2%がさまざまなカスタマーサポートの運営コストになります。大規模なシステムではプラットフォームの開発とサポートの固定費は無視できます。我々の分析では,ストア課金の30%は,コストの300〜400%に上ります。しかし,デベロッパが収益の88%を受け取って,Epic Gamesが12%を受け取る,このようなストアでも収益が上がるビジネスになるのです。

Epic Gamesは,さまざまなゲームとストアとの組み合わせで,利益配分を比較したこのグラフを提供している
Tim Sweeney氏に聞くEpic Games Storeが料率以外でも魅力的な理由

GamesIndustry.biz:
 より有利な利益配分以外で,デベロッパにとってEpic Games Storeがより魅力的になるように,デベロッパサポートでやっていることはありますか?

Tim Sweeney氏:
 Epic Gamesのクリエイターサポートプログラムは,デベロッパがゲーマーにリーチするのと助ける鍵となるものです。YouTubeのビデオ作成者やTwitch配信者のようなコをテンツクリエイター,コスプレイヤー,コミュニティ運営者,そしてブロガーはゲーム業界では主要なインフルエンサーです。

 以前は,ほとんどのクリエイターは作品をデベロッパから補償されておらず,代わりに寄付に頼らざるをえませんでした。デベロッパとクリエイターのマッチメイキングによって,Epic Games Storeはプレイヤーにゲームを見つけやすくするとともに,コンテンツクリエイターに彼らの作品に対して報酬を与えます。

 我々は,ローンチャのニュースフィードを通じてデベロッパに顧客へダイレクトアクセスする方法も提供する予定です。ユーザーの同意があれば直接eメールでも。アップデートや新機能の情報を共有するためにも,続編のリリースを顧客に伝えるためにも,顧客へのダイレクトアクセスはデベロッパには非常に重要です。Epic Gamesが2013年にシングルプレイヤーのリテールゲーム開発を中止した重要な理由として,新作を出すごとに我々の以前の作品の購入者にリーチするのに膨大なマーケティングキャンペーンの費用が要求されることがあります。

 それからちょっとしたことですが,ゲームのストアページに競合ゲームの広告は入りません。必須の売り上げもありません。クロスプラットフォームでの運用にも制限はありません。

GamesIndustry.biz:
 消費者にとってEpic Games Storeがより魅力的なるようにやっていることはありますか?

Tim Sweeney氏:
 とくに大きなものは,このストアは2019年中は2週間に1本のフリーゲームをフィーチャーすることですね。Epic Gamesはこれらのフリーゲームをリリースするために投資しており,プレイヤーは今後利用可能になる幅広い創作物を体験できます。

GamesIndustry.biz:
 2019年にはより多くのゲームを展開していく予定だとしていますが,どれくらいの量をEpic Games Storeで展開していきたいのでしょうか?

Tim Sweeney氏:
 タイトルリリースに向けた新規デベロッパのための承認プロセスを作っています。これは主に技術的な問題とクオリティ全般にフォーカスしたものです。成人向けコンテンツを除いて,我々はデベロッパの創造物ないしアーティスティックな表現をもとに評価することはありません。

GamesIndustry.biz:
 ストア内にフォーラムやコミュニティ主導のコンテンツなどを設置する予定はありますか? もしあるなら,どうやって荒らし行為やレビュー爆弾などを軽減していくのでしょうか?

Tim Sweeney氏:
 フォーラムの設置は予定していません。ユーザーは一般的にRedditやDiscord,Twitter,Facebookグループなどのソーシャルメディアからやってきます。デベロッパが自身のフォーラムやソーシャルメディアを開いて,Epic Games Storeのページからリンクするのは自由に行えます。

 我々はプレイヤーがデベロッパとプライベートにコミュニケートできるようなツールを開発しています。これはバグレポートや質問のための発券システムのようなもので,ネイティブな通信システムだけにすることでレビューの毒性を緩和するものになります。

 ユーザーレビューはまだ開発中ですが,デベロッパのOpt-Inで利用できるものになります。現在は,バランスを取るためのアイデアをいろいろとテストしているところです。

GamesIndustry.biz:
 MODはサポートしますか? Free-to-Playのゲームは? 非営利のゲームはどうでしょうか?

Tim Sweeney氏:
 我々は,MODやFree-to-Playのゲーム,非営利のゲームをサポートするつもりです。

GamesIndustry.biz:
 返金ポリシーはありますか?

Tim Sweeney氏:
 はい。最初はプレイヤーサポートの手動による返金でスタートしますが,すぐに自動化する予定です。我々はユーザーに,「理由を問わない」返金トークンをゲーム購入後14日間使えるようにしたいと考えています。

GamesIndustry.biz:
 Epic Games Storeはどの国で運営されますか?

Tim Sweeney氏:
 Epic Games Storeは世界中のほとんどの国で利用可能になる予定です。中国と米国法で禁止された北朝鮮やイランなどを除いてですが。
 韓国のような特定の地域では,その地域で配信するために法令への準拠が要求されることがあるかもしれません。

GamesIndustry.biz:
 ゲームがストアに並ぶために基準となる要求項目はありますか? たとえば,レーティングを受けているとか,特定の言語をサポートするとか,字幕とか,コントローラサポートといったもので。

Tim Sweeney氏:
 現時点では,我々はストアに並べるゲームを手作業で選別しています。ですので,公式なプロセスはありません。2019年にもっと幅広くストアを展開するために,我々の作業に関する詳細を発表する予定です。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら