【月間総括】PS4とSwitchのマルチ対応が定着か。東京ゲームショウ2018に見る業界のトレンド
今回は,東京ゲームショウについて述べたいが,その前に,米Epic Gamesの「フォートナイト」について触れておく。
SIEは同タイトルのPS4版でXbox OneやNintendo Switchとのクロスプレイに対応したβテストを開始すると発表した。同タイトルは,すべてのプラットフォーム間でのクロスプレイを目指していたが,これまでPS4版のみ,Xbox OneとNintendo Switchのユーザーとは一緒に遊べないという状況となっていた。また,一度PS4版でプレイしたアカウントはNintendo Switch版で遊べなくなる問題があったが,これで解消することになると思われる。
エース経済研究所では,クロスプレイの問題はPS4の販売に影響を及ぼさないと指摘していた(関連記事)。報道などを見る限り,PS4の今夏の販売に影響はなかったようである。
オープンか,クローズドかというテーマは過去からよくあったが,対戦型ゲームという観点で見た場合,プレイヤーは対戦機会が増えるプラットフォームを好む傾向がある。
PS4はトップハードであり,多くのプレイヤーを抱え込んでいるため,対ライバルメーカーという視点では対戦を開放する必要がまったくなかった。Xbox OneシリーズとNintendo Switchの累計台数よりも,PS4の累計台数が多いので当然である。
ところが,「フォートナイト」はPCだけでなく,iOS,Androidにも対応しており,ゲーム専用機以外でのプレイヤー数も多い。ほかのプラットフォームでも対戦相手に困るということはない。こうなると,PS4とSwitchで相互対戦できないのはプレイヤーの利便性を損なうだけになってしまう。
アカウントがロックされる問題についても,Xbox OneとPS4は性能とプレイスタイルが似通っているため,両方を使うケースは稀だろうが,Switchは携帯性で差別化されており,リビングでは大画面でPS4かXbox One,寝室では気軽にSwitchというように両方を使うプレイヤーからすると理不尽な制約にしか見えなかった。
今回のクロスプラットフォーム実現は,プレイヤーにとってはとても良いことである。批判に弱い面があるにせよ,SIEが対応したことは評価すべきだろう。あらゆる機器がネットにつながる状況下で,クローズドプラットフォームがオープンプラットフォームに勝ることは難しい。SIEは業界をリードするだけの力があるはずだ。顧客目線に立ち,オープン化がさらに拡大することを期待したい。
さて東京ゲームショウである。
昨年と比べての大きな変化はNintendo Switch向けの出展が大きく増えたことである。国内の累計台数は500万台前後となり,PS4と合わせたHD対応機器プラットフォーム総数は1300万台程度と推計される。従来のPS4単独だけでなく,Switch対応を進めると一段と利益率が拡大する水準になってきたことが大きな要因である。
今後も,この動きは強まるだろう。実際,ゲームショウに先立って行われた「PlayStation LineUp Tour」「ニンテンドーダイレクト」でもマルチタイトルが目立つ結果となった。
多くのサードパーティは,任天堂プラットフォームにマルチ対応していなかったことから,タイトル数が相対的に増える要因になっている。
ニンテンドーダイレクトでは,スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーVII,IX,X,XII」のリマスター製品がSwitch向けにリリースされることが発表された。「ファイナルファンタジーXV ポケットエディション」もリリースされ,SIEと任天堂間でのプラットフォーム差異は徐々に小さくなっている。来年には,この動きが一層強まるだろう。
東京ゲームショウでは「eスポーツ」が注目のテーマとなった。多くのメディアで取り上げられたのであえて紹介しないが,現時点では「eスポーツ」はビジネスとしては成り立っていない。業績に大きな影響を及ぼす状況にないため,これまで言及していなかった。
eスポーツが今後,プロ野球のような興行ビジネスに向かうのか,オリンピック的な方向に向かうのか予測はしにくいが,若い世代には動画配信サービスなどを通じて観戦する文化が根付きつつあり,一定の市場を形成していくことになるだろう。
また,大手のゲームソフトメーカーはフォトリアル系タイトルに注力しており,セガは「JUDGE EYES: 死神の遺言」,カプコンは新作「デビルメイクライ5」,リメイク「バイオハザード RE:2」などを展示していた。
現時点では世界的にフォトリアル志向が強いため,大量に売るにはこの方向性が妥当と考えらえているということだろう。
一方でパッケージを発売できないことが多く,これまでは傍流と見なされてきたインディ系タイトルが存在感を増しつつある。
AAAタイトル競争を行うことで,生き残りを目指す大手メーカーの考えは,いずれ変わることになるだろう。
最後にVRである。今年は報道でもほとんど取り上げられることがなくなり,展示も大幅に減った印象が強い。エース経済研究所では以前からVRは普及しないだろうと予測しているが,現時点でも広がりは見られない。
ゲームハードは初動で売れずに挽回したケースはない。PSVRももう挽回は難しいだろう。やはり,プレイヤーは見た目や遊んでいる姿で購買を決めている可能性が高いように思う。
最後に,2018年の東京ゲームショウの来場者数は過去最高となった。ゲーム産業はファミリーコンピューターが標準を確立して以来,拡大傾向が続いている。世界へ,すべての年齢へさらに広がることになるだろう。
SIEは同タイトルのPS4版でXbox OneやNintendo Switchとのクロスプレイに対応したβテストを開始すると発表した。同タイトルは,すべてのプラットフォーム間でのクロスプレイを目指していたが,これまでPS4版のみ,Xbox OneとNintendo Switchのユーザーとは一緒に遊べないという状況となっていた。また,一度PS4版でプレイしたアカウントはNintendo Switch版で遊べなくなる問題があったが,これで解消することになると思われる。
エース経済研究所では,クロスプレイの問題はPS4の販売に影響を及ぼさないと指摘していた(関連記事)。報道などを見る限り,PS4の今夏の販売に影響はなかったようである。
オープンか,クローズドかというテーマは過去からよくあったが,対戦型ゲームという観点で見た場合,プレイヤーは対戦機会が増えるプラットフォームを好む傾向がある。
PS4はトップハードであり,多くのプレイヤーを抱え込んでいるため,対ライバルメーカーという視点では対戦を開放する必要がまったくなかった。Xbox OneシリーズとNintendo Switchの累計台数よりも,PS4の累計台数が多いので当然である。
ところが,「フォートナイト」はPCだけでなく,iOS,Androidにも対応しており,ゲーム専用機以外でのプレイヤー数も多い。ほかのプラットフォームでも対戦相手に困るということはない。こうなると,PS4とSwitchで相互対戦できないのはプレイヤーの利便性を損なうだけになってしまう。
アカウントがロックされる問題についても,Xbox OneとPS4は性能とプレイスタイルが似通っているため,両方を使うケースは稀だろうが,Switchは携帯性で差別化されており,リビングでは大画面でPS4かXbox One,寝室では気軽にSwitchというように両方を使うプレイヤーからすると理不尽な制約にしか見えなかった。
今回のクロスプラットフォーム実現は,プレイヤーにとってはとても良いことである。批判に弱い面があるにせよ,SIEが対応したことは評価すべきだろう。あらゆる機器がネットにつながる状況下で,クローズドプラットフォームがオープンプラットフォームに勝ることは難しい。SIEは業界をリードするだけの力があるはずだ。顧客目線に立ち,オープン化がさらに拡大することを期待したい。
昨年と比べての大きな変化はNintendo Switch向けの出展が大きく増えたことである。国内の累計台数は500万台前後となり,PS4と合わせたHD対応機器プラットフォーム総数は1300万台程度と推計される。従来のPS4単独だけでなく,Switch対応を進めると一段と利益率が拡大する水準になってきたことが大きな要因である。
今後も,この動きは強まるだろう。実際,ゲームショウに先立って行われた「PlayStation LineUp Tour」「ニンテンドーダイレクト」でもマルチタイトルが目立つ結果となった。
多くのサードパーティは,任天堂プラットフォームにマルチ対応していなかったことから,タイトル数が相対的に増える要因になっている。
ニンテンドーダイレクトでは,スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーVII,IX,X,XII」のリマスター製品がSwitch向けにリリースされることが発表された。「ファイナルファンタジーXV ポケットエディション」もリリースされ,SIEと任天堂間でのプラットフォーム差異は徐々に小さくなっている。来年には,この動きが一層強まるだろう。
eスポーツが今後,プロ野球のような興行ビジネスに向かうのか,オリンピック的な方向に向かうのか予測はしにくいが,若い世代には動画配信サービスなどを通じて観戦する文化が根付きつつあり,一定の市場を形成していくことになるだろう。
また,大手のゲームソフトメーカーはフォトリアル系タイトルに注力しており,セガは「JUDGE EYES: 死神の遺言」,カプコンは新作「デビルメイクライ5」,リメイク「バイオハザード RE:2」などを展示していた。
現時点では世界的にフォトリアル志向が強いため,大量に売るにはこの方向性が妥当と考えらえているということだろう。
一方でパッケージを発売できないことが多く,これまでは傍流と見なされてきたインディ系タイトルが存在感を増しつつある。
AAAタイトル競争を行うことで,生き残りを目指す大手メーカーの考えは,いずれ変わることになるだろう。
最後にVRである。今年は報道でもほとんど取り上げられることがなくなり,展示も大幅に減った印象が強い。エース経済研究所では以前からVRは普及しないだろうと予測しているが,現時点でも広がりは見られない。
ゲームハードは初動で売れずに挽回したケースはない。PSVRももう挽回は難しいだろう。やはり,プレイヤーは見た目や遊んでいる姿で購買を決めている可能性が高いように思う。
最後に,2018年の東京ゲームショウの来場者数は過去最高となった。ゲーム産業はファミリーコンピューターが標準を確立して以来,拡大傾向が続いている。世界へ,すべての年齢へさらに広がることになるだろう。
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