資金繰りを悪化させているCrytekが,複数の傘下スタジオを閉鎖

世界に名を轟かせてきたゲーム企業が,フランクフルトとキエフ以外のスタジオを閉鎖し,“プレミアムIP“とCryEngine開発部門以外のリストラを断行した。

 ここ1週間にわたって,給料の未払いや雇用者の離職といったレポートが何度も流れていたCrytekがようやく口を開き,経営状態の立て直しを図るために,いくつかのスタジオを閉鎖して規模のスリム化を断行していくことを公式にアナウンスした。

 公式サイトで公開された発表(参考URL)によると,Crytekの計画では“根本にある同社本来の強み”に再び焦点を合わせていくとのことで,その開発はドイツのフランクフルト本部と,ウクライナのキエフにあるスタジオのみに集中させていくという。つまり,そのほかの地域でゲーム開発を行っていたハンガリーのブダペスト,ブルガリアのソフィア,韓国のソウル,そして中国の上海の四つの支部は閉鎖し,“Crytekの一部としては吸収されない”ことになる。残るトルコのイスタンブールにあるCrytek Istanbulについては,ライセンシングなどのビジネス部門のみを取り扱っているため,このリストラには影響されないとのことである。

 現時点では,具体的にCrytekのどの部分を閉鎖したり,知的財産の売却や中止を行うのかといったことは明確ではないものの,Crytekの経営陣は,“より安定した未来のためにも改革をスムーズに行い,残された業務をしっかりと遂行していく”ための計画を練ってきたという。同社に残留した開発メンバーは,今後はおそらく「Crysis」や「Ryse: Son of Rome」の新作,もしくはCryEngine開発部門の強化に従事していくことになると思われる。同社は,CryEngineに絡む事業はCrytekの戦略については中核をなすものであると認識しており,独立系デベロッパから巨大ゲーム企業まで,より頻度の高いゲームエンジンのアップデートに,より傾倒したサポート業務を行っていくと表明している。

 Crytekの設立者の1人であり,マネージングディレクターとして同社の運営を切り盛りしてきたAvni Yerli氏は,「このような改革を行うのは非常に心苦しいことですが,現在から過去にまで遡るチームメンバーら全員が,これまでCrytekのためにハードワークと情熱をもって携わってきてくれたことには,あらためて感謝いたします」と述べるとともに,「今回の構造改革は,Crytekが業界でも最高の能力を持つ開発者を魅了し,同時に育てていくことを可能にするには本質的に必要なステップなのです。このことは,これまでも社内では以前から細かく説明されてきたことでもあります」と話している。

 また,Yerli氏は,「今後は,これまでCrytekを世界最高レベルのテクノロジーやゲーム開発ノウハウを培ってきたデベロッパへと導いてきた中核的な強みだけに,その経営的なフォーカスを当てていくことになり,未来での成功が達成されるときまで,我々Crytekをより俊敏で活気があり,魅力あるスタジオへと発展させていくであろうと信じております」と続けた。

 先週には,GamesIndustry.bizの担当記者であるBrendan Sinclairが,それまでのCrytekの動向についてをまとめた記事を上梓(関連英文記事)しているが,当該記事が掲載されて以降,離職者までを出した給料未払い問題について,Crytekは真摯な姿勢で改善に取り組んでいるという。それでもなお,同社から離れていく開発者は少なくないようだ。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら