The Elder Scrolls Onlineは2015年中に“数百万人の新規プレイヤー”が参加

コンシューマ向け「The Elder Scrolls Online: Tamriel Unlimited」は大ヒットになったと語るMatt Firor氏は,「Free-to-Playに移行しなかったからこそ成功した」と話す。

 昔,ZeniMax Online StudiosのMatt Firor氏がベルリンを訪問したとき,ある特別なことが起こった。それは1989年のこと。オクトーバーフェストを楽しんだ彼とその友人らは,たまたま大きな祝いごとが行われているのに出くわしたという。“ベルリンの壁崩壊”だ。

 「催涙弾にやられちゃってさ」とFiror氏。「暴漢たちが殴り合っててさ。もう無茶苦茶だったけど,何か楽しかった」と笑いながら回想する。

 Firor氏は,今も久々に美酒に酔っているようだ。先ごろベルリンで開催されたQuo Vadis Game Developer Conferenceで行われたトークセッションにおいて,「The Elder Scrolls Online」のゲーム・ディレクターである彼が,2015年にどれだけの成果があったかを集まった観衆に質問されて答えた。
 ZeniMax Online Studiosは,当初は月額でローンチされていた本作で,2015年の3月になってArenaNetの「Guild Wars」に似た新しいビジネスモデルを導入した。月々支払いたいプレイヤーは継続したサービスを受けられるが,一括で支払いたいというプレイヤー向けのオプションも追加したのだ。

 「我々にとって,ビジネスモデルの変更はプレイヤーの求めているものを見つけるということにほかなりません」と話すFiror氏。「The Elder Scrolls Online」は,MMOであると同時にロールプレイングゲームなのですから,月額制というのは半分のプレイヤーだけを見ているようなものです。古くからRPGのプレイヤーにとって,あまり馴染みのあるものではなかったのです。月額制に興味はないし,理解しようとしません。そうしたビジネスモデルに関わりたくないとさえ思っているのでしょう」と続ける。

「月額制というのは半分のプレイヤーだけを見ているようなものです。古くからRPGのプレイヤーにとって,あまり馴染みのあるものではなかったのです」

 結局,月額制というのは,「The Elder Scrolls Online」の明確なファン層である,OblivionやSkyrim,そのほかのBethesda SoftworksのRPG作品のファンたちを排除するようなものであったのかもしれない。ZeniMax Online Studiosが2015年に行った変更は,月額制に馴れたMMOプレイヤー以外も,The Elder Scrollsシリーズの製品版をパッケージで買うことを好むプレイヤーも対象にするという意思を表示する試みでもあった。こうしてリローンチされた「The Elder Scrolls Online: Tamriel Unlimited」が,Firor氏の言葉でいう「既存のプレイヤーにも新参加のプレイヤーにも一様に肯定的」であったのは,一括払いだけに再編するだけでなく,月額制のビジネスモデルも保持したからであろう。

 「ファンからの支持が得られたのは,Free-to-Playにしなかったからでしょうゲームを購入した価格以上を費やすことなく,パッケージを開けてプレイし始められることで,これまでのシリーズのファンにも受けたのだと思います」

 2015年におけるThe Elder Scrolls Onlineの成功の大きな要素と言えるのは,OblivionやSkyrimのファンの多くが慣れ親しんでいる,Xbox OneとPlayStation 4プラットフォーム向けのローンチであることだった。Firor氏は,コンシューマ機におけるデジタルセールスは一般的に高めであるとのことだが,コンシューマ機向けゲームそのものもオンラインで購入できるようになったという利便性によるところも多いとのことだ。こうした「The Elder Scrolls Online: Tamriel Unlimited」とコンシューマ機向けのローンチが合わさったことで,「数百万のプレイヤーに門戸を開いた」という。

 「皆,新しいプレイヤーたちです」というFiror氏は続けて,「非常に大きい成果でした。Bethesda Softworksは販売本数などの詳細はリリースしませんが,予想以上に大きな成果だったのは事実です。このプレイヤーたちはこれまでOblivionやSkyrimで遊んでくれていたプレイヤーなのです。多くのプレイヤーは,The Elder Scrolls Onlineが以前から運営されていたことさえ知りませんでした」

 ZeniMax Online Studiosの現在の目標は,この勢いをどうやってキープしていくかということだ。MMOゲームの熱狂的なファンと,Bethesda Softworksの作品群の愛好家たちの双方を満足させるだけのコンテンツをうまく導入していかなければならない。私を含む多くのプレイヤーにとって,シーフのギルドやダークブラザーフッドに絡むミッションはシリーズの大きな魅力の一つであり,実際にThe Elder Scrolls Onlineの2016年度の戦略における焦点となっている。シーフギルドのDLCはあ3月にリリースされたが,同じようなパフォーマンスがダーク・ブラザーフッドのDLCの年内リリースでも見られるはずだとFiror氏は見る。

 「とくにシーフギルドのDLCで分かったことは,以前The Elder Scrollsシリーズをプレイしていたファンの,すでにプレイを止めてしまっていたゲーマーたちが再びプレイし始めてくれたということでした。多くのゲーマーたちが,同じような体験ができるのを待っていたようです。ダーク・ブラザーフッドに関しても同じことが言えるでしょうね」

「MMOは現在,ゲームデザインではなくゲームテクノロジーの一つと考えられることが一般的になっています。何百万にものプレイヤーを一度にプレイさせる環境はすべてMMOゲームなのです」

 また,Firor氏は「MMOは現在,ゲームデザインではなくゲームテクノロジーの一つと考えられることが一般的になっています。何百万にものプレイヤーを一度にプレイさせる環境はすべてMMOゲームなのです。しかしThe Elder Scrolls Onlineは,本来の意味でのMMORPGであるのかどうか。MMOゲームとしての一般的なフィーチャーを持っていますが,MMORPGというカテゴリーにはないように思えます。ほかとは異なるフィーリングを持っているのです」と解説する。

 「ようやく成果が出てきましたから,さらに成功したいというのが我々の思いです」とFiror氏。「次の作品のことを考えて時間を無駄にせず,良いコンテンツを周期的にリリースしていくことを心がけています。リリースされてから1年が経っていますが,一つのゲームサービスとしてのサイクルと見ればまだまだです。とくに新たに参加したばかりのコンシューマ機版のプレイヤーにとっては,本当に始まったばかりなのですから」と抱負を語り,「次の作品というのもいずれは開発されるでしょうが,今はThe Elder Scrolls Onlineが軌道に乗っているということが本当にありがたいのです」と締めくくった。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら