玩具連動型ゲームの問題点は浸透度ではない。飽きられていることだ

 JumoのCCO,Chris Ezaki氏は,困難に直面した「Skylanders」や「Disney Infinity」のあがきは,イノベーションの欠如に起因しており,ゲーマーと一緒に成長していくことを拒否していると語る。

 “トイズ・トゥ・ライフ”(アクションフィギュアなどの玩具をデジタルゲームと連動させるタイプのゲーム)ジャンルは,ここしばらく困難な道のりを歩んでいる。「Skylanders」と「Disney Infinity」が,昨年度の年末商戦のセールスで低迷したことによって,Activision Blizzardは関連するメーカーのスタッフの削減に踏み切り,Disneyは続編の開発を見合わせることを決定したのだ。

 それにもかかわらず,インディーズのスタートアップであるJumoは,次期発売予定の「Infinite Arms」で,この“トイズ・トゥ・ライフ”ジャンルに参入しようとしている。先月開催されたGame Developers ConferenceにおいてGameIndustriy.bizと会見した同社のChief Creative Offcer,Chris Ezaki氏は,既存の“トイズ・トゥ・ライフ”のプレイヤーが直面している問題についてはそれほど心配していないと語る。

「このジャンルの中で現在起こっている問題は,イノベーションがないということなのです。ゲームの内容はほとんど変わっていないのが問題でしょう。プレイヤーは,何も変わらないことに疲れているのです」

 「このジャンルで現在起こっている問題は,イノベーションがないということなのです」というEzaki氏。「ゲーム内容がほとんど変わっていないのが問題でしょう。プレイヤーとして見れば,何も変わっていないことに疲れているのです。このジャンルが市場に浸透できているのかどうかは分かりませんが,飽きられてしまっているのだ思います」と続ける。

 Ezaki氏が指摘するように,“トイズ・トゥ・ライフ”ジャンルの主要な参入メーカーのすべてが,彼らのターゲットとする市場として,8〜10歳児を設定している。しかし,「Skylanders」がリリースされてからほぼ5年も経っている状況では,多くの子どもたちがターゲット外に成長してしまっているにも関わらず,同じ内容のゲームを提供しており,彼らの興味にアピールし続けることを参入メーカーは怠っている。Jumoは,「Infinite Arms」のチャンスが,そこにあると見ているのだ。

 Ezaki氏は,「私たちは,さらに成長したターゲットに向けて,ゲーム体験や玩具の見た目を合わせることにフィーカスさせています。すべてが,より年上のゲーマーにアピールするようデザインしているのです。ターゲットとするのは14歳以上であり,「Skylanders」のようなゲームよりも,もっと洗練された体験を提供できるのは間違いありません」と説明する。

 彼が“トイズ・トゥ・ライフ”の問題点であると見ているのは,このジャンルが近年,人口統計上では市場の縮小が見られる玩具メーカーから輸入されたものであるということだ。子供たちの興味がタブレットや家庭用ゲーム機,そのほかのエンターテイメントに広がっていく中,玩具メーカーは8~10歳以外の顧客層で成功することができずに苦労している。これは,「年齢圧縮」という現象だ。

 Ezaki氏は,「玩具メーカーの市場は完全に縮小しきっています。8〜10歳から上の年齢層に合わせた玩具を作れないと考えているようです」と語る。「これは,我々が玩具メーカーの人たちと話すうえで,何度も何度も痛感してきたことなのです。彼らは,『この玩具は誰も買わない,誰も手を出すことはない,14〜17歳の消費者に玩具市場なんて存在しないので,新しいIPを作ることはできるはずない』なんて言うわけです。玩具は古臭いもんだと信じきっちゃてるんですよ,土曜の朝に放送されている再放送のアニメみたいに」とEzaki氏は言う。

「ほとんど全員が同じマネタイゼーションモデルを追いかけていると,自分のゲームもほかと同じノイズになってしまいます」

 Jumoがこの年齢圧縮を回避するために考えているのは,まず「Infinite Arms」をタブレット向けのサードパーソンシューティングというゲームにフォーカスさせ,その中のゲームキャラクターを現実世界に持ち出すという方法だ。これまで同社が行ってきた市場実験は,このモデルが正しいものであるとする。14歳以上のティーンエイジャーが“トイズ・トゥ・ライフ”が子供向けであることを拒否し,「Infinite Arms」をゲーム体験の延長線上にあるもとだと好感的な反応を示すとEzaki氏は言う。

 彼は,同じような問題と,同じような解決策を,モバイルゲーム市場にも見ている。

 Ezaki氏は,「1月の統計を見るだけでも,AppleのAppStoreには毎日500もの新作ゲームアプリが出ています」と語り,「それは信じられないようなことです。どのようにして,そのノイズの中から突出できるのでしょうか? そのためには,何か違うことをしなければなりません。そして,ほとんど全員が同じマネタイゼーションモデルを追いかけていると,自分のゲームも他と同じノイズになってしまうのです」と続ける。
 さらに,「『ボクらのテーマはスチームパンクなので,ほかのゲームと違いますよ。まあ,ちょうどスチームパンクをテーマにしたクラッシュ・オブ・クランみたいなものなんです』なんてゲームばかりがアプストアに並んでいます。マネタイゼーションモデルが確実であると信じて複製ゲームを作ってしまうことが,モバイルゲームのゲームデザインを定義させてしまっているのです。色を塗り直し,テーマを変えたあとは,マーケティング用のお金をつぎ込んでいく。そんなことをしていれば,我々のゲームも500個のアプリの海の中で沈んで行ってしまうのです」と語った。

 Ezaki氏は,(「Infinite Arms」は)新しいゲーマー層に向けた最初の“トイズ・トゥ・ライフ”ジャンル参入作品であることから,“ディスカバラビリティ”(発見されやすさ)という問題に対処できるとみているようだ。そして,Jumoは「Infinite Arms」のためにマーケティングキャンペーンを大きく打って出ることも付け加えた。それは,アメリカとカナダでリリースされる今夏が近づくとともに,より鮮明な形になって表れてくるはずだ。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら