Quest 2はより高精細で軽く低価格に。新世代VR標準機の真価を探る

 FacebookからOculus Quest 2が発表された。スタンドアロンタイプのVRヘッドセットの代表格ともいえるOculus Questの後継機だ。

Oculus Quest 2
Quest 2はより高精細で軽く低価格に。新世代VR標準機の真価を探る

昨年発売されたOculus Quest
Quest 2はより高精細で軽く低価格に。新世代VR標準機の真価を探る
 2019年5月に発売された初代Questは,今後のVRデバイスとして要求される事項を多く満たしており,VR普及の先鋒として業界を上げて期待されたデバイスだった(関連記事)。

  • スタンドアロン
  •  スマホやPCなどを使わず単体でVR体験ができるデバイスとして動作する
  • テザーレス
  •  上記とだいたい同じ意味だが,煩わしいケーブル接続なしで動作する
  • 6DoF
  •  頭の動きに対してXYZ軸方向の回転と移動に対応する
  • ハンドコントローラ
  •  TouchコントローラでVR空間内でインタラクト可能
  • 高性能低価格
  •  Snapdragon 835搭載,64GBモデルで4万9800円

 このようなスペックは当時最先端であり,かなり頑張った価格でまとめた戦略的製品とも言えるものだった。難点は,対応ソフトが少なかったことだが,それでも昨年5月の発売以来,生産する端から売れていって,常に売り切れ状態が続いていた。ソフトウェアについては,Facebookが品質を維持するために企画書段階から一定の線引きを行っていたため,量的にはさほど多くはない。それでも着実に増えており,2020年9月中旬時点でようやく200を超えるくらいだ。審査を経ているので品質もある程度は保証されている。

 発売から1年半,早くもQuestの後継機が登場してきたわけだ。すでに予約受付は始まっており,10月13日に発売されるQuest 2は,Questの特徴を引き継いだ,より戦略的な製品となっている。新たなVRデバイスの標準となるものだと考えていいだろう。

 ここでQuest 2の基本情報をまとめておくと以下のようになる。

Oculus Quest Oculus Quest 2
SoC Snapdragon 835 Snapdragon XR2(865相当)
ディスプレイパネル 有機EL 液晶
画面解像度 1440×1600ドット×2 1832×1920ドット×2
リフレッシュレート 72Hz 72/90Hz
メインメモリ容量 4GB 6GB
バッテリー持続時間 2〜3時間 2〜3時間
重量 571g 503g
税込価格 4万9800円(64GB),6万2800円(128GB) 3万7180円(64GB),4万9280円(256GB)

 スペック的には順当な後継機であり,もともとのQuestが「決定版」的な存在であったこともあって,大きな変更というのはされていない。SoCはSnapdragon 835とからSnapdragon XR2になった。XR2は,Snapdragon 865とをベースとしたものと言われており,VRやARに最適な構成にしたSoCであるという。基本部分は865と変わりないようだが,最大7台のカメラを扱えるのが特徴のようだ。Qualcomm自身が提供しているXR2デバイスのリファレンスデザインでは6台のカメラを制御している。Quest 2が使っているのは前面部4隅の4台だ。この4台のカメラで外界を撮影し,ヘッドセットの動きを検出する仕組みだ。
 なお,Oculus VRは組織的にはFacebookのスタジオに統合されたが,Oculusブランド自体は今後も使われることになるようだ(関連記事:実質あまり変わってないようだ)。

ペッケージ内部。Quest 2本体と2つのコントローラ,眼鏡装着時用のスペーサー,ACアダプタ,USBケーブル,クリーニングクロスとマニュアルが入っている
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 Quest 2のハード自体が,高性能低価格化という優等生な進化ぶりであるのに加えて,とくに大きな変化として挙げられるのが,日本市場での取り組みだ。これまでは公式サイトやAmazonからの通販のみだったのだが,家電量販店などで販売されるようになる。現在,ビックカメラ,ヨドバシカメラ,ヤマダ電機,ゲオでの販売が決定している。店頭でのデモも体験できるので,興味のあった人にはこれまで以上に購入しやすい環境になったと言えるだろう。
 また,マーケティングも世界中で日本だけ独自路線で行くとのことで,日本市場に合わせた展開が行われる予定だ。日本向けのアプリにも力を入れているという。

 本体価格の公式表記は,量販店での販売に合わせて,これまでの税込み送料込みの価格から,税別価格に変更された(記事内はすべて税込み価格)。公式サイトなどで購入しても量販店と価格は変わらない。
 思えば,Oculus Goの64GBモデル(※販売中止)が2万9800円で価格破壊的な存在だったのだが,+7380円でQuest 2の64GBモデルが買えるというのは衝撃的だ。ちなみにTouchコントローラは片手分で8800円だった。

 発売予定のものも含めて周辺機器情報を以下にまとめておく。価格はすべて税別だ。

  • Oculus Linkケーブル 9800円
  •  5mの軽量な光ファイバケーブル。USB Type-C
  • Quest 2携帯用ケース 6100円
  •  本体とコントローラを収納可能。エリートストラップ対応
  • Quest 2エリートストラップ 6200円
  •  硬質なゴム(?)製のヘッドバンド
  • Quest 2エリートストラップ バッテリーおよび携帯用ケース付き 1万6000円
  •  バッテリー内蔵のエリートストラップと携帯用ケースのセット
  • Quest 2フィットパック 4800円
  •  一対の遮光ブロッカーと広めと狭めなフェイスパッド(正式にはフェイシャルインタフェース)2種のセット
Quest 2はより高精細で軽く低価格に。新世代VR標準機の真価を探る
Quest 2エリートストラップ バッテリーおよび携帯用ケース付き
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Quest 2フィットパック


下面。QuestにあったIPDスライダーが廃されている。細長いのは音量ボタンだ。左右の小さい穴はおそらくマイク孔
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●性能
 公称では,初代Questと比較するとCPU,GPUともに倍の性能だという。SoCレベルでの3DMarkなどのベンチ結果では3倍近い差が出ることもあるようだが,厳然たるflops値の比較では2倍ちょっとなので,そちらをあてにしておいたほうが安全だろう。
 それに対して,画面のピクセル数は約5割増し(1.5266...倍)となっている。GPU性能が2倍だと仮定すると,

  2/1.5266...≒1.31

となり,従来のゲームを高解像度で駆動しても31%の余力がある。さらに,従来の72Hz駆動のゲームを90Hzで動かすには,

  90/72=1.25

と,1.25倍のGPUパワーが必要である。

  1.31/1.25=1.048

ということで,Quest 2ならQuestのゲームを高解像度化し,90Hzで動かしても5%ほどの余裕があることになる。実際にはGPU機能の改善やメモリ速度の違いなどでもう少し高い性能になると思われるが,だいたいのところで見て,従来のアプリを高解像度かつ高リフレッシュレートで駆動するのにちょうどよい性能+αくらいになっていることが分かる。 

 CPU部分の性能差を簡単に確認する方法として,起動時間を計測してみた。電源ボタンを押し始めてから,ガーディアン設定のダイアログが表示されるまでの時間を手動で計測した。
 結果は,

  Quest 36.84秒
  Quest 2 18.15秒

となった。倍速という表現が実にしっくりくる数字だ。なお,アップデートが繰り返されているためか,OS自体はQuestのほうが大きいようで,ストレージ上のシステム占有容量は18GB程度であるのに対し,Quest 2は11GB程度だ。これはメモリ上に読み込まれる容量とは異なる。おそらくメモリへの読み込みサイズ自体は大差ないだろうと仮定している。

 SoCが変更されたことで消費電力なども変わっていると思われるが,連続使用可能時間はQuestとほぼ変わりない。ゲームで2時間,ビデオなどで3時間といったところだ。ACアダプタからは2.5時間でフル充電できるとされている。

左:本体左側部。3.5mmヘッドフォン端子とUSB Type-Cコネクタがある。右:本体右側部。電源ボタンと動作ランプがある
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●互換性
 9月中旬時点でOculus Store上でQuest用のアプリは201本があり,基本的にQuest用のアプリはすべてQuest 2で動作可能だ。なにもしなくても高解像度でプレイできる。Facebookによると,発売時点ではほとんどのゲームが72Hzでの動作となるようだが,今後90Hzをサポートしていくとのことだ。ホーム画面などは90Hzである。ハードウェア自体は90Hzで動作可能でも,それに対応するかどうかはソフトウェア次第ということのようだ。上記のように,性能的には問題なさそうなので,Quest 2発売時には72Hz駆動のゲームもアップデートで90Hzに対応していくのだろう。
 メインメモリが増量されたことから,Quest 2のスペックに合わせたゲームというのもありえなくはないのだが,基本的にはQuestとQuest 2では同一のゲームが動き,ものによってはグラフィックスなどがバージョンアップされる(かもしれない)といった形で互換性が取られるようだ。もちろん,すでにQuestで所有しているゲームを買い直す必要はない。

 今後は90Hz駆動が前提となるのかどうかはよく分からない。Facebookの説明では「90Hz駆動も可能」といった感じで,必須というわけではなさそうだ。Questとの互換性を考えれば,Quest用に作成して,それを高解像度&90Hzで駆動するというのが素直なところだろうが,Quest 2でも72Hzで大きな問題はないと考えれば,余分の33%のGPUパワーを画質に振ったようなモードもアリな気はする。


性能以外になにが変わったのか?


 SoCの変更とパネルの変更で,VRヘッドセットとしての基本性能が順当に上がっていることは分かった。それ以外ではなにが変わったのだろうか? 

●ホワイトボディ
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 まず色が変わった。最大の変化といっていい部分だが,写真のようにわずかにグレーがかっているが,ほぼ白色になった。いかにもゲーマー然とした黒よりも,明るい色のほうが一般向けとしてはウケがよいようだ。Oculus Goの灰色もカジュアルに使えるということで好評だったという。Goの系列が中止されたことで,今後Quest 2(とくに64GBモデル)は,一般コンシューマ向けの役割も担うことになる。
 仮に,色の濃さがターゲット市場のコアさを表しているとすると,

Rift(黒)>Quest(濃いグレー)>Go(薄いグレー)>Quest 2(白)

といった感じで,Quest 2はこれまで以上にカジュアルな市場を目指しているのだと推測することもできる。

●少し小さく軽く
 大きさは少しだけ小さくなった。重さも571gから503gに軽くなっている。Oculus製品でいうとCV1よりちょっとだけ重い程度だ。
 材質は,Questがプラスチックベースに胴体部にはファブリックを貼っていたのに対して,Quest 2は胴体部が総プラスチックとなった。質感はQuestのほうが高めな感じか。
 本体部全体が小型化し,カメラも位置も微妙に変わっているが,トラッキングでの差は感じられない。

大きさの比較。Quest(下)よりもQuest 2(上)はひと回り小さいことが分かる。QuestではOculusロゴの上にはっきりLEDランプが見えているが,Quest 2ではプラスチックの下にLEDが隠されており,なにもない部分が動作時に白く点灯する
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●ヘッドバンドが布製に
 Questのヘッドベルトは,ゴム(?)製の硬質なものだったのだが,Quest 2では布製(こちらもゴムは入っているが)のヘッドハンドに変わっている。硬質なベルトは,とくに女性で髪型と干渉して装着しづらいことがあったそうで,Quest 2では扱いやすい布製になったそうだ。硬質なベルトはホールド感では優れた部分もあったのだが,軽量化やコストなども含めて考えると一長一短であろう。
 ただし,従来タイプの硬質なベルトもオプションで用意されている。しかも後部にバッテリーを装着したタイプも用意されており,重量の前後配分を改善するとともに,動作時間を約2倍にできるという。

●IPDはレンズを直接動かす方式に
 IPD(瞳孔間距離)の調整が下面部のスライダーから,直接レンズ部をカチカチと動かす方式になった。これに伴い,無段階だったものが3段階に変わっている(58/63/68mm)。Facebookの説明では,この3種でほとんどの人に対応できるとのことだった。ちなみに日本人男性の平均IPDが64mm,女性が61mm程度だと言われていることからして,Quest 2でIPD中位置の63mm設定はどちらでもだいたい合うポジションだ。分からなかったら真ん中にしておこう。

上からIPD設定58mm,63mm,68mm
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 IPDは左右の目がどれくらい離れているのかを指定する数値で,左右の瞳孔の中心部の距離を示している。VRヘッドセットでは接眼レンズの位置調整で行われるものが多い。しかし,調整機構を持っていてもどう調整すれば分からないというものが大半だ。デバイスはプレイヤーのIPDに従って左右の絵をレンダリングする。IPDが異なっていても立体に見えないといったことはなく,脳内で補正されるのでVR体験自体は可能だ。しかし,補正が必要な分だけ疲れやすくなったり,快適な体験ができにくくなるので,できるだけ合わせることが望ましい。

 その簡略化については,IPDという概念とあわせ,従来方式は一般の人には少し難しかったのだそうだ。Oculus製のデバイスでは,Rift SやGoではハード的なIPD調整機能が省略されており(ソフトウェア側で調整),簡略化される傾向にはあった。Questではハードで調節が可能なのだが,気が付くとスライダーが左右どちらかに極振りになっていることはよくあった。合わせたつもりのIPDが大きくずれていると快適な体験は期待できないので,意図せず動かしてしまいにくい方式にするのは正解かもしれない。

 ただし,Quest 2にはIPDを設定するツールが付属していないので,適当にレンズを動かしてもしかたがない。映像の先鋭度などで合わせることもできなくはないようだが,まあ普通無理だ。正確なIPDを測りたい人は,定規を持って鏡の前に行こう。手元に定規がない人はスマホの定規アプリなどでも十分だ。7cmくらいあれば足りるので,どんな小さなスマホでも大丈夫だろう。計測法については,こちらのページが分かりやすいと思う。

●液晶パネル採用
接写失敗。サブピクセルまでは見えなかった
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 ディスプレイパネルは,有機ELから液晶になった。高解像度化が進む昨今ではVRデバイスはほとんどが液晶になってきており,これは自然な流れと言えるだろう。同時になにかと評判の悪い千鳥配列からRGB配列になっているはずだ(接写を試みたがサブ画素までは見えなかった)。
 液晶で懸念されるのは黒の浮きだが,さすがに皆無というわけではない。起動時の黒背景にOculusロゴが浮かび上がるところなどで,若干黒の浮きが感じられるのはまあしかたないことであろう。液晶を採用した他機種と比べてとくにひどいということもない。
 ドット感はほとんどない。Questの時点でもそこまで目立っていたわけではないが,液晶化とともにRGB配列なったことで,小さな文字が読みやすいというのが分かりやすいメリットであろう。

 ドット感はほとんどなくなったものの,UIのエッジなどでのジャギー感はある。RGB配列なためか,ジャギーも心持ちシャープに感じられる。とくにシステムUIなどはエッジをソフトにできなかったのだろうかとちょっと残念だ。
 VRヘッドセットの高解像度化は進んでおり,PC用ではすでに8K解像度(4K+4k)も存在する。ただ,高解像度化はGPUに大きな負荷をかけ,結果としてリッチな絵が得にくいというジレンマも抱えている。個人的には,解像度はQuest 2くらいでいいので,今後はアンチエイリアスに力を入れてほしいと思っている。クリアであるに越したことはないが,ジャギーさえ感じられなければそこまで不快ではないのだ。

●新型Touchコントローラ
 コントローラは,Oculus伝統のTouchコントローラの新版が同梱されている。Touchコントローラは両手で持って,手の位置と指(上面パネル部とボタンで親指,トリガーで人差し指,側面のボタンで中指)の動きを捉えることができるデバイスだ。単にスイッチを押した離したではなく,スイッチに触れたという中間的な状態を判定できるのも特徴だ。多くの操作では人差し指のトリガーを使い,中指はグリップボタンとしてモノを掴む際に使われる。なお,薬指と小指はほかの指の動きで開いたり閉じたりするようになっている。

Quest 2はより高精細で軽く低価格に。新世代VR標準機の真価を探る

 Quest 2のTouchコントローラは,Questのものと比べるとやや大きくなり,ボタン面は初代Touchコントローラに近い形状になっている。赤外線での位置判定に使われるリング部分の向きはQuestはRift Sと同様に上側だが,ボタン部のパネルが円形の大きなものとなったのだ。ポイントは,親指置き場ができたことだ。元々のToutchコントローラにあった,丸い空白部分が再現されたのだ。Beat Saberなどで親指を置く場所がほしいといった要望があったのだという。
 Oculusボタンも初代と同じような位置になり,親指を自然に引いた位置でちょうど押せる配置となった。GoやQuestではかなり遠い位置に移動されていたので,素直に喜べる改善だろう。

左がQuest,右がQuest 2のコントローラ。ボタン面の形状が変わり,うっすらと円形の親指置き場が追加された
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 そのほか,握り部分が若干長くなると同時に中指トリガーの位置が上がっており,握り比べてみると,Quest版だと薬指と小指が少し窮屈だったんだと気づかされる。初代Touchは3種で最も握りが短いのだが,中指トリガーが上の位置にあるので,意外とコンパクトに握り締めることができる。Quest 2のコントローラは,中指トリガーも上がって握りも長いので,手の大きな人でもしっかりグリップできるようになっている。

微妙なグリップ部の長さの違いで握りやすくなった
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 コントローラの改善点としては,電池の持ちがよくなったことも挙げられる。元々,非常に長持ちしていたTouchコントローラ用の電池だが,さらに4倍長持ちになっているのだという。数日試用していても「まだ100%だ」と軽く引くくらいの長持ちだ。

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 ただ,やや作りが安くなった部分もあり,Questのコントローラでは,指側の握りが細かい凹凸の付いたゴム素材だったものが廃され,全体に同一のプラスチックとなっている(初代Touchもそうだが)。電池部のフタは,歴代のTouchコントローラではマグネットによって,近くにフタを持ってくるだけでカシャっと小気味よく閉まっていたのに対し,プラスチックの爪による固定式に変わっている。


試用してみる:装着感はどうか?


 Quest 2を導入するにはスマートフォンのOculusアプリが必須となる。新規にインストールするか,すでに使っている人は最新版にアップデートすると,Quest 2デバイスを追加できるようになる。もしも一覧に新たなヘッドセットが見当たらない人は,一度アプリを削除して再インストールしてみよう。余談だが,旧Questを含むOculusデバイスで,Fcebook IDでログインしているのにやたらとFacebookでのログインが促されて困っている人は,FacebookでのログインはやめてOculus IDでのログインに変更しよう。

 アプリを立ち上げ,設定でヘッドセットの追加を行い,Quest 2の画面に表示されるコードを入力してヘッドセットをペアリングすればすぐに使用できるようになる。

 なお,動作に必要なスペースは,歩き回る場合,2×2m程度で,動かない場合でも直径1.2mくらいのなにもない空間(ガーディアンスペース)が要求される。最初に設定することになるのであらかじめ部屋を片付けておこう。

 装着すると,鼻のところの隙間がやや小さくなっているかな? と感じたが,相変わらず隙間は存在する。Oculus製品では,鼻の部分にかなり大きめの隙間があり,手元を見るときには便利だったものの,体感上は悪影響を与えるものとなっていた。以前から「平たい顔族」には合わないと少し婉曲に表現していたのだが,多少はマシになったのだろうか(気のせいかもしれない)。ただ,フェイスパッド単体を見る限りでは,QuestとQuest 2でさほど違いはない。他社製品(とくにアジア地域で開発された製品)と比較するとかなり尖ったアウトラインになっていて,スポンジが薄めなのがOculus製品の特徴といってもいいだろう。

上がQuest 2,下がQuestのフェイスパッド。どちらもかなり尖った形状だ
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 この形状は,Rift(CV1)などではまだよかったのだが,Questでは本体重量が増大したことで,顔の特定部分にかかる圧力がかなり上昇し,装着感はかなり損なわれていた。これは顔型にもよるので,個人的な経験に基づく意見として見ておいてほしいのだが,私の場合はどういう付け方をしても長時間の装着はきつかった。交換用フェイスパッドや低反発樹脂などを買い込んで改造しかけていたりもしたものだった。

うちのQuest。大きな改造はしていないが,後頭部のポーチに重石としてモバイルバッテリーを入れて給電する方式にしている。ヘッドバンドなどの調整などはこれがベスト位置
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 アジア人などに対応したQuest用フェイスパッドも開発中という話を聞いていたものの,結局発売はされなかった。一方,Quest 2では,標準のフェイスパッド以外にオプションで広め,狭めな顔に合わせたフェイスパッドが発売予定である。これはまだ入手していないが,期待したい一品だ。

 前述のようにQuest 2は,CV1に近い重さになった。ただ重量バランスは圧倒的にフロントヘビーである。ヘッドバンドは強く締めたほうがズレなどが起きなくていいのだが,長時間強く締め付けると頭が苦しくなるので,できるだけやんわりと締めたほうがよいだろう。それが本体の重さと合わせて顔への圧力になるので,できるだけ減らすように工夫したい。
 右側部にある電源ボタンを2秒以上押すことでデバイスは起動する。起動時のOculusロゴを見て,光のにじみが上下左右どこかに偏っていたら装着位置が適切ではない。位置をずらして調整しよう。左右を合わせたうえで,上下を合わせて頭頂部のベルト長を調整するとよいだろう。

 とはいうものの装着感というのは,評価が難しい。初めて使用するときは,興奮が大きいので多少の不具合はまったく気にならないものだ。慣れてくるとだんだん気になってくる。最終的には,画質やコンテンツなどよりも装着感のほうが重要だと気づくようになる,そういったものである。

 素のQuest 2を装着したときに,Questでいちばん楽に設定したときより楽だったかというと難しいところだが,重量が軽いことで顔の特定部分への圧力は確かに減っているように思われる。ゴムバンドなので,顔への圧力を一定以上にしないと固定は難しい。とくにゲームで動くとヘッドセット本体が下にズレがちである。締め付けすぎると頭痛などの原因になるので注意しよう。
 
 装着感をまとめると,

  軽くなった 〇
  ゴムバンド △
  前後バランス ×

といった感じだ。軽くなったことは文句なしに素晴らしい。ゴムバンドは極度に圧力を下げるのが難しいので,ある程度締め付けなければならないのがやや難点だ。前後バランスは悪く,ある程度以上の締め付けをしないと本体部が下にズレがちになる。

 現状では前後バランスが悪いことが最大の問題だということで,私は後頭部にモバイルバッテリー用のポーチを仮止め(自前機材でないので仮止め)している。約290gのカウンターバランスを付けることで,全体的な装着感は向上した。仮止めなので揺れは大きいが,締め付けを少し緩くしてもスレ落ちにくくなるのだ。

結局,後ろにバッテリーを取り付けて試用した
Quest 2はより高精細で軽く低価格に。新世代VR標準機の真価を探る

 以前のCEDECの講演でも指摘されていたのだが,VRヘッドセットでは全体の重量が重くなっても前後のバランスがよいほうが体感的に楽だというデータが得られている。PSVRなどは,わざわざ後頭部に重石を入れているくらいだ。PSVRのデザインをマネするところは多いのだが,ぜひそういう本質的な部分も見習うようにしてほしいものである。

 発売予定となっている「Quest 2 Eliteストラップ バッテリーおよび形態ケース付き」があれば重量バランスは改善されるものと思われるが,税別1万6000円のオプションは誰にでもお勧めできるものではない(とくに本体が安いと)。布ベルトだと取り回しがよくないので強くお勧めするわけではないが,モバイルバッテリーがあれば,100均でポーチとUSBケーブルを買って針金で固定するだけで,長時間使用と装着感の改善が可能だ。

●ディスプレイパネル
 大きく変わった部分の1つでもあるディスプレイパネルだが,有機ELから液晶に変わって具体的にどうなったのだろうか。
 まず,ディスプレイの輝度をレンズ面で測定してみた。 

・Quest
 黒画像 0.0000cd/m2
 白画像 73.2cd/m2

・Quest 2
 黒画像 0.09cd/m2
 白画像 59.63cd/m2

 Questの黒についてはさすが有機ELといったところ。最大輝度はどちらも低めだが外光の入らない密閉環境で使うということもあり,これくらいでも十分明るい。というか,周りが真っ暗だと明るさに合わせて目のほうが調整してくれるので,室内での輝度と同列で考えてはいけない。ゲームプレイなどでもとくに暗いという印象はない。それだけにQuest 2の最大輝度については計測してみてかなり意外だったのだが,液晶のバックライトは消費電力が厳しいので少し落とし気味にしているのだろうか。こういった機器ではHDRなどにすると熱と眩しすぎで逆に困ったことになるかもしれない。
 液晶の黒浮きは確かにある。0.09cd/m2という非常に小さい値だが,人間の目は暗い部分に敏感なので,真っ暗ではないというのは誰にでも分かるだろう(画面周囲のほうが暗い)。それでも通常のゲームプレイで支障をきたすレベルではない。画面が暗いシーンでは浮きが少し目立ち,Questと使い比べると,改めてQuestの画面が引き締まっていることが確認できる。ただ,それも有機ELと見比べればの話であって,普段液晶ディスプレイを使っていて不満のない人ならまず問題はないだろう。

 解像度が上がったため,装着して映像を見ても,画素がまったく見えないとまではいわないが,ほぼ見えないレベルに達している。Questでわずかに,布に印刷した写真のような風合いだった画面がよりクリアになった感じだ。

 現時点では,ホーム画面などは90Hzで起動されているが,ゲームは72Hzでの動作となる。以下は,ホーム画面とゲーム画面を400fpsで高速度撮影し,コマを連番で切り出して並べたものである。

ホーム画面
ゲーム画面

 これを見ればフレームレートの違いが分かると思う。残像防止のために黒フレーム時間も長めに取られていることが分かる。今後はゲームのアップデートで90Hzに対応するものも出てくるのだろう。

●視野角は同じなのか?
 高い互換性を持つQuest 2ではあるが,視野角は同じなのだろうか。
 以前も使った視野角確認用画像を使って実測してみよう。


●視野角検証用画像

FoV検証用画像ダウンロード

※使い方:ダウンロード後デバイスに転送して,360度写真ビュアで表示。360度画像での測定数値は使用者のIPD,機器のIPD設定,デバイスと顔との密着度(圧力)などによって変化するので注意

 実は視野角は,ちょっと広くなっているかもしれない。左右視野角を実測するとQuestとほぼ同程度だが若干広めだった。Quest 2を(IPD外位置:68mm設定で)普通に装着すると左右視野角は82度くらいだ。普段使っているQuestはIPD:67mm設定なのだが,ここでは条件を揃えてIPD68mmにしておき,軽く当てた状態で計測して左右81度くらいだった。数字はわずかだが80度を超えるか超えないかくらいと,確実に超えるかくらいの差だ。この手の機器ではIPDを広く取ればレンズ位置が離れることで視野角も多少広くはなる。

 上下視野角は,Questが78度程度,Quest 2が82度程度だ。これはおそらくパネルの縦横比が異なっていることによる差だと思われる。左右2個あるパネルはそれぞれQuest 2のほうがやや縦長である。左右視野角がほぼ同じであれば縦長のほうが当然上下視野角は大きくなる。
 パネルの縦横比が異なるので,完全な互換性は取れないわけなのだが,体感を揃えるために左右視野角が同じになるように設計されたのではないかと想像している。こういうものは上下よりも左右のほうが気になるものだから。

 ただ,Questの場合は比較的無理なく(無理やり?)85度くらいの状態で装着できていたのだ。これは目の位置を少し近くできたためだ。Quest 2でもフェイスパッドを思い切り顔に押し付けると90度近くにまでなる。しかし,このあたりはボディの覆いの端がファブリック素材だけだったQuestのほうが無理が利く感じで(思い切り押し広げて使っていたからというのもあるが),Questでは最大100度近くまで出ていたのに対し,総プラスチックのQuest 2ではそこまではいかない。

 なお,視野角のテストでちょっと困ったのが,VR180画像や360度写真の表示だ。権限情報を見ると,従来そういうことに使っていたOculus Galleryはちゃんとインストールされているようなのだが,アプリ一覧には表示されなくなっている。写真が見れそうなカメラロールからだと単なる1枚絵としてしか表示されない。しかし,これはOculus TVで「あなたのメディア」を選ぶことで表示可能だ(もちろんあらかじめデータ転送しておく必要はあるが)。

●ゲームプレイ
 さて,肝心のゲームプレイだ。確認した限りでは,それ以外ではとくに支障なくQuestのアプリのまま動作するようである。
 描画解像度が自動的に上がるとのことなのだが,Quest用のゲームをプレイしても解像度が上がっているように感じられないことがあるかもしれない。多くの場合,これは,UIなどで使われているテクスチャがQuestの解像度で最適化されているためではないかと思われる。もしくはQuestでも元々粗かったかだ。UIが最適化されていなくてもゲームプレイに支障はないのだが,より綺麗な絵を見たい人は今後のアップデートに期待しよう。

●ホーム画面
 基本的なUIが一新されている。以下はQuestとQuest 2のホームを開いたところである。

Quest 2はより高精細で軽く低価格に。新世代VR標準機の真価を探る Quest 2はより高精細で軽く低価格に。新世代VR標準機の真価を探る

 Quest 2では従来ホームにあった「ナビゲーション」が「アプリ」と書かれた中間のウィンドウに移動されており,開くのに1クッション入るようになっている(通常のホーム画面では中間部は開いていない)。だいたいの機能は同じなのだが,配置が変わっているのでちょっと戸惑った。


そのほかの機能


●日本語入力
 Quest 2だけではないのだが,最近になって検索などで日本語入力ができるようになった。標準では50音入力だ。ABCと書かれた部分を押すと英字入力に切り替わるのかなと思ったのだが,キーボード部は英文になっても日本語入力のままだった(ローマ字入力)。英単語を入力するには世界地図(地球?)マークを押して入力したい言語を選択しなければならない。なお,言語選択時には,下に3種類のキーボードマークが出ているのだが,これは仮想キーボードの大きさを選択するもののようだ。

左:入力画面が大きすぎて,すでにある文字列のクリアボタンに手が届かない。右:入力部を小さくした
Quest 2はより高精細で軽く低価格に。新世代VR標準機の真価を探る Quest 2はより高精細で軽く低価格に。新世代VR標準機の真価を探る

 正直,使い方は簡単だが英字との切り替えなどでの使い勝手はあまりよくない。それでも日本語の入力ができるようになったことで,検索などでの自由度は格段に向上する。日本での展開では必須だった機能ではある。

顔文字・絵文字も豊富に揃えられている
Quest 2はより高精細で軽く低価格に。新世代VR標準機の真価を探る

●ハンドトラッキングもサポート
Quest 2はより高精細で軽く低価格に。新世代VR標準機の真価を探る
 これもQuest 2に特化したトピックではないのだが,Questではカメラによるハンドトラッキングがサポートされている。Touchで手の動きは取れていたわけだが,機器なしで5本の指すべてを動かせるのがポイントだ。
 コントローラが見えなくなると,画面に丸いポインタと同時に「手」が表示される。ホーム画面などでは,手を動かすとポインタも移動し,親指と人差し指を打ち合わせることでクリック,そのままホールドしてスクロールといった操作が可能になる。明確なクリック動作を行うには,少し大げさな動作で指を動かすのがコツだ。ただ,親指を迎えに行くとクリック位置がずれるのでそこは注意しよう。

 ただし,現状での使い勝手はTouchコントローラのほうが上だ。しかし,対応ゲームでの直接手を使った操作の快適さも捨てがたいものがある。今後さらに技術は洗練されていくだろうし,特殊なデバイスが必要ないというのも魅力であろう。
 しかし,将来的にはすべてハンドコントロールに変わるのか? というと難しい。トリガーのクリック感やジェスチャーよりボタン操作のほうが簡単だということを考えると,完全に置き換えというのは起こらないように思われる。コントローラの電池が切れても操作ができるとか,対応ゲームではより快適な操作ができるなどの補完関係になるのだろう。今後技術が進んでいけば,ハンドトラキッングが主でボタン付き機器が従になることはあるのかもしれない。


PC用VRゲームも楽しめるOculus Link

 
 これまたQuest 2に特化した話題ではないが,Questと同様にPC(Rift/Rift S)用のVRゲームを表示できるOculus Linkにも対応している。OculusアプリをPCにインストールして(Riftなどの接続が求められるが,それをスキップしてインストール),USB 3.0に対応したケーブルで接続すればQuest 2でOculus Linkを使用できる。

Quest 2はより高精細で軽く低価格に。新世代VR標準機の真価を探る

これが純正のOculus Link ケーブル。Type-C to Type-Cなので少し注意
Quest 2はより高精細で軽く低価格に。新世代VR標準機の真価を探る
 Questより解像度が上がったこと,さらに90Hz駆動できるようになったことで,Oculus LinkでのVR体験はPCでのものと遜色のないものになったとFacebookは主張している。実際,Rift Sの解像度は1280×1440ドット×2で80Hz止まりだったのだから,1832×1920ドット×2で90Hzが出せるQuest 2はPC以上の体験ができるといっても間違いではない(1832×1920ドットでレンダリングされているかどうかはいまいち不明)。
 USBケーブル1本で(もちろんそれなりのPCは必要だが),PC用VRゲームもプレイできるようになるというのは,非常にお得な感じではある。PC用VRヘッドセットとして考えても,コストパフォーマンスはかなり高い。理論上,絶対に遅延はあるはずなのだが,実際に試すととくに気になるほどではない。Quest 2を手に入れたらぜひ試してもらいたい機能といえる。

 接続には純正ケーブルも発売されているので,それを使うのが一番だが,9800円とちょっとお高い。試してみると意外と普通のUSBケーブルでも接続は可能だった。Amazonで購入した得体の知れない5mのケーブル(リピーターケーブル)でも問題なかった。ただ,ケーブルが太くて取り回しが悪そうだった。手持ちのケーブルを適当に試したらAmazon Basicブランドの2.7mのType-A to Type-Cケーブルでも動いた(リピーターなし)。が,よくよく見たらUSB 2.0対応だった。Oculus Linkが公開された当初はかなりケーブルに厳しかったみたいだが,これくらいの距離ならもうなんでもいけるんじゃないかという気もしてきた。動き回らず,ちょっと試す程度ならこの程度でもいけそうだ。

純正ケーブルには固定用の部品も付属する
Quest 2はより高精細で軽く低価格に。新世代VR標準機の真価を探る
 純正以外のUSBケーブルを使う際の注意点だが,コネクタに負荷がかからないようにしよう。直接ケーブルを垂らしてはいけない。純正ケーブルでもヘッドセットに一度固定してから接続するように指導されている。とくにQuest 2では,USBコネクタの向きが横向きになっており,コネクタが縦向きだったQuestよりも重いケーブルによる負荷には弱そうなので要注意だ。

 ただ,ちょっと試すだけではなく,動き回る範囲が広かったり,本格的に使う場合には純正ケーブルが最良だろう。USB 3.0対応で3mを超えるような長さではリピーターが必須となり,手軽に扱える製品はほぼない。純正ケーブルは稀有な存在である。

提供元不明アプリの動作を許可するとSteam VR用アプリも動く
Quest 2はより高精細で軽く低価格に。新世代VR標準機の真価を探る
 とにかく,Half-Life: Alyxなど,PCでしか提供されていないVRゲームも存在するので,対応できるというだけでもありがたいと思う人はいるだろう。ここで,「あれ?」と思った人もいるかもしれないが,Oculus LinkでQuestをPCと接続した状態であれば,Steam VR上のRift対応のゲームもOculus Linkでプレイできてしまうのである。PCのOculusアプリ側で提供元不明のアプリの動作を許可する必要があるが,それでSteam VRも動作する。
 Steam VRではちゃんと,QuestとTouchコントローラ型のアイコンが表示され,画面内では手の位置に白いQuestコントローラ(残念ながらQuest 2コントローラではなかった)が表示される。

起動だけは確認していたのだが,撮影時に使ったVR用PCはメモリ8GBしか積んでなかった……。動かなくはないが,ガタガタの動きになるので動画撮影は時間不足により割愛する。Alyxには12GB以上のメモリが必要だ
Quest 2はより高精細で軽く低価格に。新世代VR標準機の真価を探る

 Half-Life: Alyxは,PCで稼働する多くのVRデバイスに対応しており,多くの人がVRでのキラーアプリと認める作品だ。PC側の動作条件が一般のVRゲームより高めだが,最高峰のVRゲームを知る意味でもぜひ試してほしい一作と言える。
 ちなみに,Steam VRが要求する最低プレイエリアは2×1.5mと,Quest 2の2×2mよりも狭いのだが,ゲームを十分に楽しむには広めのエリアを確保することをお勧めしておく。

 PCならではのVR体験としては,Google Earth VRもお勧めしておきたい。ガリバー気分というか,場合によっては綾波気分で地球上の各地をVR体験できるソフトだ。内容自体は基本的にはGoogle Earthなのだが,フライバイの自由度が違う。個人的にこれはVRでやる価値のある体験だと思う。動き回らなくてすむので,それほど長くないUSBケーブルでも体験でき,なにより無料だ。
 こちらはきちんと動いているので,その模様を動画で紹介したい。VRでの体験とは異なるが,だいたいの雰囲気はつかめると思う。これはPCでQuest 2用にレンダリングした映像をPC側でキャプチャしたものとなる。実際にUSBケーブルで送られる映像の一部だ。



256GBは必要か?


 さて,Quest 2には64GBと256GBの2モデルが用意されている。大は小を兼ねるので256GBを買っておけば間違いないのは確かだが,ストレージ容量以外に差はなく,税別1万1000円という33%ほどの価格差を悩ましく思う人もいるだろう。

 実際にどれくらいの容量が必要なものだろうか?
 個人使用中のQuestで最も容量を食っていたアプリはYouTube VRだったが,これはYouTube Premium登録してファイルをダウンロードしているからなので,普通の使い方をしている範囲ではそこまで容量は食わない(消したダウンロード分の容量が還元されてない気がする……)。

個人使用のQuestとほぼ同じだけのアプリを64GB版のQuest 2にインストールしたところ
Quest 2はより高精細で軽く低価格に。新世代VR標準機の真価を探る

 ゲームではVadar Immortalシリーズが3本合計で10GBくらい,Robo Recallの3.7GBといったもの大きなものもあるが,GB単位のものはそう多くない。そこそこのものでも1GBちょっとという印象だ。
 システムの占める容量が11GBくらいなので,64GB版でも数十本のゲームをインストールできるだろう。今回,64GB版のQuest 2で40本ほどのアプリをインストールしているが,アプリの使用容量は45GB弱だった。上記のものなど大きめのアプリもそこそこ入れてある状態だ。

 ちなみにインストールしきれないゲームもライブラリ上には置いておけるので,使わないゲームをデバイスから削除して使いたいときにダウンロード&インストールをすれば,容量が小さくても多くのゲームを楽しむことは可能だ。また,当然の話だが,Oculus LinkでPC版のゲームを遊ぶ際にはQuest 2側の容量を食うことはない。Half-Life: Alyxなどは50GBも食うのだが気にしなくてもいいのはありがたい。
 ということで,無料アプリをどんどん入れるとすぐに埋まってしまうかもしれず,今後アプリが増えてくるとやり繰りは必須だが,64GB版でもVR体験が大きく削がれるようなことはない。

 256GB版はどうだろうか? 現状ではOculusストアには対応アプリが200本くらいしかないので,256GBあればおそらく全タイトルをインストールできるのではないかと思われる。今後出るであろう大作タイトルもガンガン買っていくぜという人は迷う必要はない。256GBでいこう。
 容量大きめのVR180映像などを閲覧する予定のある紳士諸兄も迷わず256GBにしておいたほうがいいだろう。Questではガタついていた5K以上の動画再生も楽勝であろうと思われるのだが,ちょっとした動画でも軽く数GB単位になるはずだ。
 

Quest 2製品パッケージ
Quest 2はより高精細で軽く低価格に。新世代VR標準機の真価を探る
 以上,Questの新型が,より魅力的になったのは理解していただけただろう。もともと生産即完売を続けていたのに,大々的なプロモーションも開始されるとなると,入手は困難になるのだろうか? 
 正直発売されてみないと分からないことなのだが,Facebookの日本側担当者の話では,今回はかなり大量に用意しているとのことだった。海外のニュース(噂レベルだが)では,FacebookがおそらくQuest 2であろうヘッドセット生産で最大200万台の注文しているとしている。VRデバイスとしては思い切った量が用意されていると思われるので,入手困難になることはないのだろう(たぶん)。

 まとめると,これまでVRに興味はあったものの,なかなか手を出せなかったという人には文句なしにお勧めできるデバイスだ。在宅続きで運動不足だけどリングフィット アドベンチャーなんて手に入らないよという人は,黙ってBeat Saberをやっておけという感じだ。リストウエイトを付けてプレイしていたらムキムキになったという人もいるらしい。

 一方,現在Questを持っている人が買い替えるべきかというのは難しい問題だ。昨年の時点でQuestを買っていたような人なら,なにも言わなくても買い足しを考える人は結構いるだろうが,画質などの体験の質は確実に上がっていても劇的な変化というわけではない。装着感などに不満のない人は買い替えをパスするのもよし,WanderやBeat SaberなどQuestでのマルチプレイができるタイトルもいくつかあるので,そちらを試したい人は買い足しはアリだろう。
 1年半で新機種が出たなら,また来年(か再来年)に新機種が出るのだろうか? スマホと同じ部材だと考えれば,そういった可能性もある。Snapdragon 835から865へのジャンプアップほどの違いは出ないだろうが,着実に性能なり価格なり消費電力なりを改定していくことは考えられる。このあたりはPCやスマホと同じで悩ましいところだ。


 最後に,もしかしたら気づいている人もいるかもしれないが,4Gamer.net/GamesIndustry.biz Japan Editionで多くのVR機器を紹介していた私はQuestのレビュー記事を掲載し損ねていた(林 祐樹氏のレポートが掲載されている)。いや,実はちびちびと詳報を(山ほど)書いていたのだが,未完成のままタイミングを逃してしまっていた。

 決定版として期待されたデバイスは実際に期待どおりの性能だったのだが,個人的には装着感が残念で,前述のように装着法の研究だけでかなりの時間を費やしていた気がする。多くの人にとって待望だったデバイスは,私にとってはちょっと残念な機種だったのだ。

 Quest 2での最大の改善は,重量の軽減であると断言できる。追加されるフェイスパッド次第では,日本人でも本当に快適なVR体験ができるようになるだろう。(後頭部に重石を入れるのは前提として)個人的に感じていた不満点はかなり解消されている。このあたりはQuest 2は店頭販売がされるようになるので,ぜひ体験してみてほしいところだ。

 FacbookがVRにかなり本気で力を入れているというのは,Quest 2の戦略的価格などからもよく分かる。今後コミュニケーション方面でさらに本気な展開を行うことが確定している。その1つがHorizonだ。


 Horizonはソーシャルネットワークに紐づいたオープンサンドボックスであり,プレイヤーがワールドを構築してVRゲームなどを簡単に作れるというプラットフォームだ。昨年発表されて現在テスト中のHorizonがQuest 2の発売とともに公開されて新たなムーブメントを起こそうとしているのだ。
 UGCを中心としたコミュニティの可能性と難しさについては,過去にさまざまな記事で取り上げているが,最大級のコミュニティを持つFacebookが本格的に取り組み,しかもVR対応であるというところに大きな魅力がある。


 単なるQuest 2というデバイスだけでなく,VRを巡る潮流の大きな変化点として今後の動きに注目したいところだ。

Oculus Quest 2製品情報ページ