People of the Year 2019:鈴木 裕氏

Shenmue IIIは,その前身の18年後に登場し,中断したところから正確に再開している。

 鈴木 裕氏は,シェンムーIIIが存在するという事実だけで,今年のPeople of the Yearの1人となった。これがいかにありえないことかを説明するのは困難だ。

※People of the Yearは,GamesIndustry.bizが毎年年末に選定して発表している,ゲーム業界でその年を代表する話題を呼んだ人物・団体を取り上げるもので,今年の発表はJeffrey Rosen氏とJohn Graham氏,Playing for the Planet Alliance,Remedy Entertainment,Sam Barlow氏に続くものとなる。

 もともと1999年にリリースされたシェンムーは,ドリームキャストを擁するセガの鈴木氏にとっては,大きな販促タイトルであった。初代PlayStationとNintendo 64が3Dコンソールタイトルに期待を寄せていた当時に,昼夜サイクルとさまざまな天候効果を備えたモダンな設定に基づいた3Dオープンワールドは,まさに先駆者だった。

 シェンムーは,RPG,戦闘,および主人公のリョウの復讐の物語を伝えるアドベンチャーゲームの要素を組み合わせたものだったが,それはアーケードゲームやカプセル玩具の収集などのオプション要素によって頻繁に中断される傾向があった(ある意味では,これらは憂さ晴らしというよりも時間つぶし的なものだ。次の主要なプロットポイントが水曜日の午後2時に特定の場所で人と会うことだった場合,プレイヤーはそこに着く前にゲーム内で数時間または数日間をつぶすことができ,通常の夜間の睡眠をスキップする方法はなかった)。

シェンムーは革命的で影響力があり,愛されていたが,商業的には成功しなかった

 シェンムーは革命的で影響力があり,ファンに愛されていた。かつては最も高価なゲームとして宣伝されており,鈴木氏は開発とマーケティングに4700万ドルの費用がかかったと語っていた。デベロッパが「我々は常にこの新しいIPを3部作と考えていました」と書き出すずっと前,オリジナルがリリースされるまでに,鈴木氏はシェンムーについて,少なくとも5ゲームが必要な話だと語っていた(参考URL)。

 しかし,販売するはずだったプラットフォームと同様,シェンムーはその重要な称賛に匹敵する商業的成功を享受することはできなかった。それでも,セガが続編を進めようと思うくらいには成功していた。しかし,シェンムーIIがまだ開発中だった頃に,セガは爆弾を投下し,ハードウェア市場から完全に撤退して,サードパーティパブリッシャになることを発表したのだ(参考URL)。シェンムーIIが2001年後半にリリースされた頃には,ドリームキャストは死んでおり,セガは北米でリリースすることさえせず,代わりにXboxに移植するのに丸1年かかっている。

 リョウの物語はまだたくさん残っていたが,シェンムーIIIは発売されなかった。代わりに,セガは外部スタジオJC Entertainmentと協力して,鈴木氏監督のシリーズのMMOバージョンであるシェンムーOnlineを共同開発した(参考URL)。そのプロジェクトはバラバラになり,鈴木氏は2009年に正式に退職するまで(参考URL),セガのアーケードゲームの開発に注力している。鈴木氏が現在のスタジオYs Netを2008年に設立したため,セガでの氏の在職期間は,かなり早く終わったように思われる,そしてセガオブアメリカの社長,Simon Jeffery氏は,鈴木氏はその1年前に従業員ではなくなったという印象を受けていたという(報告された直後に彼は自分自身で修正している:関連英文記事)。

 鈴木氏がセガを正式に辞任したとき,シェンムーIIのデビューから8年が経過していた。Shemue IIIの実現は,とてもありそうにないと思われていた。同シリーズのライター/ディレクター/プロデューサーとそれを所有する会社が別れたため,シェンムーIIIの実現は不可能に思われたのだ。

シェンムーIII:どうぶつの森と比較される復讐ストーリー
People of the Year 2019:鈴木 裕氏

 しかし,鈴木氏は実現を諦めなかった。2011年にシェンムーIIIについて尋ねられたとき(関連英文記事),鈴木氏は「200人くらいは買ってくれるだろう」と冗談を言ったが,氏はまだそれを作りたいと語り,セガは氏に再び同シリーズを使わせてくれることを確認したと語っている。唯一の問題は資金だった。1年後,Double Fine Productionsが古風なPCアドベンチャーゲームのKickstarterキャンペーンを開始した。それ以降,突然に人々はかつて大ヒットを作ったすべてのベテラン開発者が続編をクラウドファンディングすることを望むようになったのだ(参考URL)。

 それでも,シェンムーIIIのKickstarterプロジェクトがSonyのE3 2015記者会見で発表されたときには(関連英文記事),あまりに衝撃的で,おそらく私がE3でこれまでに見た最大の驚きだった。630万ドルを超える資金を集めたビデオゲームプロジェクトとしてKickstarterの記録を塗り替えたときも(関連英文記事),さほど驚きはなかった。

 現在,シェンムーIIIはリリースされている。あらゆる意味において,前作に信じられないほど忠実だ。しかし,1999年に最初のシェンムーが発表されたときに革命的だったものは,2019年にはほとんど復古的なものとなった。シェンムーのアイデアの多く―とくに日常活動のシミュレーションとその展開するプロットのゆるやかなペース ― は,ゲームの目的を明確に理解しているレビュアーからさえも「ありきたり」「退屈」といった言葉を引き出していた(関連英文記事)。

 Dia Lancia氏がPasteの10点中9.9点のレビューで書いているように(参考URL),「シェンムーIIIは復讐そのものではなく,その目標を達成するために必要なすべてのことを意味します。『父を殺した男を捕まえる』ことを人生の業績に置き換えるのは簡単です。我々の人生は,目標と障害,気晴らし,気晴らしといった,我々がしなければならないこと,我々がやり続けたいことで満たされています」

 「仕事。食べ物。家。娯楽。睡眠。これらのニーズと欲求を満たすために我々がしなければならないすべての選択がここに示されています。すべてが重要ですが,すべてが時代遅れです」

 我々にとって,これはシェンムーIIIの完璧な結論のように聞こえる。鈴木 裕氏は,18年間の障害,回り道,攪乱にもかかわらず,この目標を達成した。我々の年間最優秀者の一人だ。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら