【月間総括】躍進を見せる「ドラゴンクエストウォーク」とSwitch Lite

【月間総括】躍進を見せる「ドラゴンクエストウォーク」とSwitch Lite
 9月は,いろいろな動きが出た月となった。まずは,「ドラゴンクエストウォーク」(以下,ウォーク。配信:スクウェア・エニックス,開発:コロプラ)の大ヒットだ。
 リリース直後から継続して,AppStoreセールスランキングで1位,2位を維持しており,久々の大型ヒットとなった。とくに,スクウェア・エニックスのスマートフォンゲームは停滞感が強まっていたため,朗報となっただろう。

 下のグラフはAppStoreの売り上げランキングの推移である。同じく位置情報ゲームの先駆けである「ポケモンGO」の推移と合わせてプロットしたものだが,ウォークのリリース直前から顕著に順位が上がっているのである。
 まだ,断定するのは早いと思うが,このランキングの推移から両者のプレイヤーが一定程度重複している可能性があると考えている。そして,課金単価はガチャがあるウォークのほうが国内では高くなっていると思われる。

●国内AppStoreランキングの推移
(出所)appgraphy,なお,ドラゴンクエストウォークの初日は96位であるが,グラフでは省略してある
【月間総括】躍進を見せる「ドラゴンクエストウォーク」とSwitch Lite

 おそらく,ウォークのヒットはFGOなどとは違い,プレイヤー層の裾野の広さに加えて,ゲーマーがポケモンGOに続くタイトルを望んでいたことが表れたのだ思われる。
 初期のスマートフォンゲームであれば,短期間でフォロワータイトルを作ることが可能であったが,現在は知名度,開発費の増大で登場まで相当時間が掛かってしまったということであろう。

 先月,「馬場社長(コロプラ)は,新しい遊びを実現するとしているが,エース経済研究所では,コンシューマゲームと違い,スマートフォンはI/O(インプット・アウトプット)インタフェースを簡単に変えることはできないため,かなり困難なチャレンジだと見ている」と指摘したばかりだが(関連記事),コロプラがこのようなヒットを産み出せたのはIPの力だけでなく,馬場社長が推し進める戦術が適切だったからだと言えるだろう。
 この成功が続くことを期待したい。

 続いて,東京ゲームショウ(TGS)である。今回は,5Gが大きなテーマとなっており,NTTドコモがブースを出展していた。ただ,プレサービスの開始がTGS後だったため,ブースでは5Gをほとんど体験することができなかった。
 通信事業者や計測器メーカーなどにヒアリングしても,5Gは最初の段階では4GLTEと仕様面の差異は小さいようで,おそらく最初の段階では体感できる優位性は小さいだろう。
 目玉の低レンテンシも,トラフィックが増えると逆に基地局からクラウドデータセンターまでの遅延が増大する可能性が指摘されており,「ゲームを変える」という表題とは裏腹に,問題の大きさが浮き上がったと,エース経済研究所では考えている。
 5Gがゲームで本領を発揮するためには,日本中に5Gが普及する必要があるが,ミリ波帯の28GHzを日本中に張り巡らすことは簡単ではない。多くの人が5Gの恩恵を受けたと感じるには相当の時間を要するだろう。

 今年は,次世代のPlayStationなどが登場する前ということもあり,TGSの発表にはサプライズが少なかったように思う。来年こそは次世代のPSによる一段の盛り上がりを期待したい。

【月間総括】躍進を見せる「ドラゴンクエストウォーク」とSwitch Lite
 最後に,Switch Liteである。詳細は次回以降に譲るが,9月25日に発表された初動の数字を基に少しお話ししたい。
 ファミ通の発表によると,初週の推定販売台数は約17万8000台であった(下表参照)。Switch Liteは派生品なので類似事例を探すのは難しいが,初週販売の例をいくつか取り上げるとPS4PRO約6万5000台,3DSLL約19万3000台,New3DS約6万1000台,New3DSLL約17万2000台,DSiLL約10万3000台,DSi約17万台,PSP-2000が約25万台となり,ここ15年の推移で考えるとかなり高い水準であることが分かる。

 しかも,二つ留意すべき点がある。一つは,今回のSwitch Liteは「Nintendo Switch:以下Switch」を置き変える製品ではないということである。実際,Switchは約6万2000台の実売で,前週よりも大きく増えているのである。Switch LiteとSwitchは競合せず,相互に補完する関係にあると考えられる。合計で24万台近くになっており,この水準はクリスマス期に匹敵する規模である。

 もう一点は,11月に発売する予定のポケモンデザインのSwitch Liteでは,予約がSwitch Liteよりも先に始まっており,一部の需要はこちらにシフトしたと見られる点である。これがどの程度の数量かは分からないが,実際の需要はもう少し強かった可能性があることは考慮しておく必要があるだろう。

 エース経済研究所では,Switch Liteの今年度販売(着荷)台数予想を400万台としている。このうち190万台程度が国内分で,10%弱が初週だったということはほぼ想定どおりという感触である。
 問題は以前指摘したとおり,販売トレンドが変わるかどうかである(下図)。第2四半期決算では,任天堂から何らかの発表があると見ているので,今後さらに解説したい。

●発売から250週のゲームハード販売推移
(出所)ファミ通
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