【月間総括】SwitchとSwitch Lite,どちらを買えばよいのか

 今月はなんといっても「Switch Lite」だろう。
 先月のこの連載でも触れたが,Switch Liteはやはり,小型軽量化の方向であった。PSP-2000が薄型化で販売を伸ばした例があることから,Switch Liteでは薄型化も個人的には期待していたが,子供も触るということを考えると難しかったのであろう。

●発売から250週のゲームハード販売推移
(出所)G'zブレイン
【月間総括】SwitchとSwitch Lite,どちらを買えばよいのか

 Switch Liteがどのような結果を生み出すのか,現時点で正確な予測をすることは難しい。実際,「PlayStation 4」も「Switch」も発売前の資本市場での評価は,決して良いものではなかった。とくにSwitchは前世代の「Wii U」が極端な販売不振だったこともあり,発売前に年間1000万台以上の販売を予想していた雰囲気はまったくなかったように記憶している。しかし,企業評価を行ううえでは,それでも予想を行う必要がある。

 Switch Liteの予想が難しい理由は主に2つ。1つはデザイン面,もう1つはスタイルである。

 現時点でSwitch Liteでは,

  1. デザインの変更
  2. 大幅な機能削除
  3. 価格の引き下げ

の3つが行われている。
 実に興味深いことだが,1.のデザイン変更は,ゲームをよく遊ぶ人ほど違いが分からないように感じているようだ。色やサイズなど明らかに現行のSwitchとは違うように見えるのだが,ゲーム愛好家に話を聞くとSwitchと同じものと見えているようである。
 その結果,「買いたい」と「買わない」が比較的はっきり分かれているように感じている。これはとても重要なことである。SwitchとSwitch Liteのどちらを買えばよいか分からないという状態が一番問題といえるからである。

 エース経済研究所では,視覚情報で過半のユーザーは購買を決定していると考えている。それゆえ,先月もトレンドの変化がどのような局面で行われているかということを検証した。Switch Liteは「買う」「買わない」がはっきりしているのは,視覚的には少なくとも差別化が浸透している証左だと思われる。しかし,ゲーム愛好家に話を聞くと違いが判らないという評価もある。ここをどう見るかは難しいが,エース経済研究所では,色も含めて変化したという立場である。

 機能削除と価格はおそらく決定的な要因ではないと見ている。機能削除は,2DSやPS1,2,3でも行われたが,販売に影響はなかった。価格についてはこの連載でも述べたが,ゲーム機は安ければ売れるわけではない。1万9980円という価格設定はかなりアグレッシブだが,売れるかどうかは分からない。

 では,もう1つのスタイルはどうだろうか? Switch Liteは,以前指摘したようにSwitch販売好調の要因に「いつでもどこでも」があると指摘した。Switch Liteはテレビには繋げない。これが「いつでも」「どこでも」を阻害するだろうか?である。
 これは,実際に発売して見ないとわからないところだ。エース経済研究所では,Switch Liteについては,今期中に400万台程度の販売を想定している。
 9月の発売以降にここで再度触れたいと思う。

 最後に,米中の貿易摩擦についてもコメントしておきたい。読者におかれては,米中の貿易摩擦は,ゲーム業界に影響は乏しいのではないか? と思われるかもしれない。中国のゲーム専用機市場は規制もあって,それほど大きな市場となっていないからだ。

 しかし,業績に対する影響は実は大きい。ゲームハードは,任天堂も,ソニーも大半を中国で生産しているためだ。今後,制裁関税が実施されると米国向け価格は大幅に値上がりする懸念がある。ゲームハードは原価率が高く,両社とも25%もの関税を被ることがとても難しいためだ。

 回避するためには,中国以外での生産比率を上げる方策があると思われるかもしれないが,ことはそう単純ではないのである。調達部品,工場,組み立てにかかわる人員,そして電気・水などのインフラが整っていないと,大量生産は難しい。とくに物流にかかわるインフラは道路,海運,飛行場,倉庫など多岐にわたる。
 教育水準が高く,インフラも整っている中国外への生産移管は,すぐ行うというわけにはいかないのである。
 任天堂は貿易摩擦の影響ではなく,ビジネスリスク上の問題からとしつつも,Nintendo Switch生産の一部をベトナムに移管した。逆に言えば,とてもすべてを移管するというわけにはいかないということでもあると言える。

 トランプ大統領は米国への生産回帰を行うように求めているが,簡単には難しい。急激な関税引き上げは,任天堂,ソニーともに米国でのゲーム機販売に影響を及ぼす可能性がありそうだ。