Facebookの新型VR HMD「Oculus Quest」は,比較的低価格なVR機器とは思えない出来映えだ

 既報のとおり,北米時間2019年4月30日,Facebookは,独自の開発者向けイベント「Facebook Developer Conference」で,ゲーム向けを謳う新しいスタンドアロン型VRヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)Oculus Quest」の発売日と価格を発表した。内蔵ストレージ容量が64GBと128GBの2モデルがラインナップされており,価格は順に399ドル(税別,国内では税込4万9800円),499ドル(税別,国内では税込6万2800円)で,発売日は5月21日となっている。
 発表に先駆けて,編集部でOculus Questと対応ゲームを短時間ながらテストする機会を得たので,簡単にレポートしたい。

Oculus Quest
Facebookの新型VR HMD「Oculus Quest」は,比較的低価格なVR機器とは思えない出来映えだ


ケーブルレスで6DoF対応,モーションコントローラも2つ付属でゲーム向けを訴求


Oculus Go
 Oculus Questは,2018年に発売となったスタンドアロン型VR HMD「Oculus Go」の上位機種的な製品であるが,Facebookは,「Oculus GoはVRビデオ,Oculus QuestはVRゲーム用である」と用途を明確に分けてアピールしている。
 違いを示す大きなポイントは,動き検知のスペックで,Oculus Goは内蔵センサーによる3DoF(Degrees of Freedom)対応であったのに対して,Oculus Questは,内蔵センサーとカメラを用いたインサイドアウト方式の動き検出を組み合わせた6DoF対応だ。外部に設置するセンサーやケーブルが不要で,既存の6DoF対応VR HMDと同様のことを体験できるのが強みと言えよう。
 それに加えて,2つのモーションコントローラ「Touch Controller」(以下,Touch)を製品ボックスに付属しているのも大きな違いである。

Oculus Questと付属のTouch
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 また,Facebookは,2018年9月に行われた開発者向けイベント「Oculus Connect 5」で,これまではVR向きではないとされていた空間においてもVRゲームを実現する「アリーナスケール」を提案していた。Oculus Questは,アリーナスケールに対応するVR HMDとしても訴求されており,発表時点から気にしていた読者もいるだろう。

 実際,ケーブルレスのVR HMDはやはり快適だ。Oculus Go以上にVRへの入口となる製品であることを示しつつ,既存の3〜6DoF対応のスタンドアロン型VR HMDからのステップアップといった位置付けも実感できる。サードパーティーとしても,VRアプリケーションの開発しがいがあるデバイスではないだろうか。


Oculus Questの外観をチェック。メガネを着用したままでも違和感なく装着できる


Oculus Questと同梱物。左からTouchが2つ,本体,充電用のUSB Type-Cケーブル,メガネ着用時にはめ込むスペーサー「Glasses Spacer」,USB ACアダプターになる。充電しながら遊ぶことも想定してかUSBケーブルは長めだ
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 体験へと進む前に,まずは外観から見ていこう。
 Oculus Questの外観は,いわゆるオーソドックスなVR HMDのそれである。公称本体サイズは,193(W)×222(D)×105(H)mmで,公称本体重量は,Oculus GoやPC用のVR HMDである「Rift」よりも重い約571gとなっている。といっても,装着した限りでは重いと感じることはなく,重量が気になる人は少ないだろう。

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 頭部への固定は,3つのストラップを使用するというRiftから継続して使われている仕組みだ。マジックテープ部分は布製で,それ以外は柔らかい樹脂製の構造だ。そのため,多少なら引っぱって伸ばすことができるので,頭部にジャストのサイズよりも少しキツめにセッティングすると,激しく動いてもずれにくい。この部分だけでも,価格以上のものを感じるのだが,VR環境の普及を前提としてコストギリギリまで構造を煮詰めていると思われる。

ベルトは,本体につながる部分が布製,側頭部から後頭部を支える部分が樹脂製だ(左)。重心が前にあるため,前方にずれ落ちないように考慮したベルトデザインのようだ(右)
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左側面(左)と上側面(右)のマジックテープをはがした状態。調整範囲は広い
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 ゴーグルの正面四隅にあるレンズが「Oculus Insight tracking system」(以下,Insight)で,インサイドアウト方式の動き検出を実現するセンサーだ。

Oculus Questの前面。Insight用レンズの配置がよく分かる。Oculusロゴの上にある小さな孔はマイクだ
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 主なインタフェース類は左右側面に並んでおり,左側面にUSB Type-Cポートと,3.5mmミニピンヘッドフォン端子,右側面には同じくヘッドフォン端子と,[電源/スリープ]ボタンという配置だ。
 なお,下側面にはIPD(瞳孔間距離)調整用のスライダーと音量調整ボタンがある。

左側面(左)。ゴーグルの前側にUSB Type-Cポートがあり,ヘッドフォン端子はバンドの下にある。右側面は,ゴーグル前側に[電源/スリープ]ボタンがあり,ヘッドフォン端子は左側面と対になる位置となっていた(右)
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下側面には,左側にIPD調整用スライダー,右側に音量調整ボタンが並ぶ(左)。ゴーグル内側にあるレンズの間には,装着状態を検出するセンサーの窓があった(右)
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 VR HMDと言えば,メガネを着用したままでの装着感が気になるところ。今回は付属のスペーサーを取り付けたうえで,やや大型の花粉症対策用メガネでテストしてみたが,窮屈になることもなく,かけたままOculus Questを装着できた。多くのメガネユーザーにとってやさしいVR HMDと言えよう。
 もちろん,着用したまま汗をかくとメガネ側が曇る可能性は高まるので,曇り止めなどの対策は必要だ。VR用に小さめのメガネを用意しているのであれば,より快適に使えるだろう。

左写真の中央にあるものがメガネ用スペーサー,本体にはめ込まれたソフトカバーを一旦外して,スペーサーを本体にはめ込んだうえで,さらにソフトカバーを取り付ける仕組み。ほんの数mmだが,レンズとメガネの距離を離せるわけだ。右は花粉症対策用メガネをセットした状態。ちょうどいい収まりだった
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 モーションコントローラのTouchは,左右の手用に2つが付属している。
 3つのボタンと押し込み可能なアナログスティック,トリガーボタンとグリップボタンなどがある基本構成は左右で同じだ。しかし,左手側はアナログスティック横のボタンが[X/Y]ボタンで,アナログスティックの下にあるのは[Menu]ボタンとなっているのに対して,右手用は[A/B]ボタンと[Oculus]ボタンになっているといった違いもあった。
 なお,左右で一部のボタンが異なる構成は,PC用のTouchと同じである。

Touch。左手用と右手用で,ボタンやスティック配置は左右対称だが,ボタンの機能は異なる
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右手用のTouchを握ってみたところ
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電源は単3形乾電池1本。電池ボックスのカバーは,ストラップ側にスライドさせるだけで開く
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 Touchの電源は,1基ごとに単3形乾電池を1本使用する。重量は約105g(※乾電池含まず)と軽く,ボタンの見た目や感触も良好で,安っぽさはあまり感じない。
 いくつかのボタン表面には静電容量式センサーがあるので,ボタンに触れている状態を認識して,ゲーム内で表示された手の形が変わる。たとえば,トリガーボタンに指を触れていない場合は人さし指が伸びた状態,押した場合は曲げた状態といった具合だ。これはチュートリアルで体験できるようになっている。


スペックは2017年のハイエンドスマートフォン並み


レンズ部分を接写してみた。よくあるフレネルレンズである
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 スペックも確認してみよう。
 まずディスプレイ部分だが,片目あたり解像度1440×1600ドットの有機ELパネルを使用しており,レンズは一般的なフレネルレンズを採用している。視野角は約70度で,ディスプレイのリフレッシュレートは72Hz。Oculus Goは,片目あたり解像度1280×1440ドットの液晶パネルを採用していたので,ディスプレイパネルは異なるものの,視野角とリフレッシュレートはOculus Questでも変わっていない。

 ディスプレイパネルのドットは,ある程度認識できてしまうのだが,細い線でも識別可能なので,精細感は良好だ。90Hzが基本のPC用のVR HMDに比べるとリフレッシュレートの数値は低いので,VR酔いを心配する人がいる思うのだが,ケーブルレスのおかげか,体での動きとVR画面が連動しやすいようで,Oculus Goでわりと酔い気味だった筆者も,Oculus Questで体験した限りでは,VR酔いを起こすことはなかった。

 搭載SoC(System-on-a-Chip)は,2017年登場のQualcomm製ハイエンドSoCである「Snapdragon 835 Mobile Platform」で,メインメモリ容量は4GBとなっている。2017年のハイエンドスマートフォン並みのスペックと言ってよかろう。
 バッテリー容量は明らかになっていないのだが,公称ではメディア視聴で3時間,ゲームプレイで2時間程度とのこと。いくつかのアプリケーションで遊んでみた限りでは,30分で20%ほど減っていた。

Oculus Questの前面は,写真のようにヒートシンクを取り付けにくい形状となっている
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 プレイ中の発熱は,Oculus Goに比べるとマイルドだと感じた。前面カバーが厚い樹脂製なので,Oculus Goよりも放熱は厳しそうに思えるのだが,体験した限りでは支障がないようだ。30分〜1時間程度の連続使用を想定するなら,熱に関してはあまり心配する必要はなさそうである。
 ただ長時間の使用,たとえばOculus Quest対応を謳っている「VRChat」の使用を検討している読者もいるだろうが,正直なところ,この点は実際に使用してみないとなんとも言えない。Oculus Goの場合は,前面カバーが平面だったので,放熱促進用にヒートシンクを貼り付けるのも容易で,実際に効果的だった。しかしOculus Questは,前面カバーが曲面であることに加えて,カメラモジュール周辺の形状はセンシングに関わるので,下手に手を付けないほうがよさそうである。


ガーディアン境界設定時の外界表示はMR的

分かりやすいチュートリアルは○


まずはスマートフォンとのペアリングから
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 外観やスペックのチェックに続いて,セットアップに進もう。
 Oculus Questの初期設定は,スマートフォン用の「Oculus」アプリとペアリングするところから始まる。初期設定中の映像は,キャプチャする手段がなかったので(※内蔵のキャプチャ機能は使えないし,外部への映像出力手段もない),画像で見せられないのは残念だが,初めてのVR HMDという人でも問題がないようによく配慮されたイントロとなっていた。

 ペアリングが済むと,まずは2m×2mのルームスケールで使うか,座ったまま,あるいは立ったままでプレイする「Stationary」(静止)モードのどちらかを選択する。いずれの場合も,4つのカメラで周辺のデータを取得したモノクロの周辺映像を見ながら進められるので,VR HMDを外すことなく設定を進められるのは楽でいい。

Oculus Questを装着したまま見える周囲の映像をイメージした再現画像。オブジェクトだけでなく,人の顔もある程度判別可能だった
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 なお,設定中の画面は,白黒映像で周囲を見回す上にセットアップ機能の画面がカラーで表示されるというMR的な映像世界で進めることになり,大変カッコイイのだが,外部出力もスクリーンショットもできなかったので,実機で体験してもらうほかない。筆者の頭に浮かんだのは,「これ,装着したまま生活できそうだな」だった。

 以下に掲載した動画は,Oculus Questを装着したまま,外部の映像を見ながら椅子に座ったり,テーブルの上から物を持ち上げたりする様子だ。表示に遅延はあるものの,画角が肉眼のそれに近いこともあってズレはほとんどないことが分かると思う。
 実空間にマーカーを貼り付けて行うOculus Quest用のMRゲームは確実に登場するだろうし(関連記事),室内のオブジェクトにテクスチャを貼り付けて,ゲーム空間にするようなVRゲームの登場も期待できそうだ。


 ルームスケールを選んだ場合,Touchでルームスケールとして定義する境界線(ガーディアン境界)をなぞっていく。2×2mに多少満たない程度でもルームスケールとして定義できたので,微妙に足りない環境でもプレイは可能だ。
 部屋の広さと合わせて確認しておきたいのが部屋の明るさで,一般的な室内照明程度の明るさが推奨であるとのこと。Insightでのセンシングには,多少の明るさが必要なためである。真っ暗では動作検知の精度が有意に低下したが,カーテン越しの程度の採光状態でも,取り立てて挙動に支障を感じることはなかった。

VR映像上のTouch先端から伸びた白線の先にガーディアンが表示されているのだが,スクリーンショットでは撮影できなかった。なお,ユーザーが境界から30cmほどまで接近すると,画面上にガーディアンの警告が出てくる仕組みだ
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 ルームスケールの境界線を定義して,そのギリギリまで近づくと,ガーディアンと呼ばれる格子がVR映像上に表示される。これにより,壁や机にぶつかるような物理的接触や,範囲外から出てしまうフィールドアウトを回避できるわけだ。
 余談気味だが,Insightで捉えた外部の風景と同様に,ガーディアン表示はOculus Quest組み込みのスクリーンショット機能では取れず,ワイヤレスで映像をスマートフォンやChromecastに飛ばす「キャスト」機能にも出力されなかった。

 さて,Oculus Questのチュートリアル「First Steps」は,人さし指を伸ばした状態からトリガーボタンを押したり,VR空間上の物体を持ったりといった流れで基本操作を覚えていくものだ。
 先述したとおり,Touchの操作は,一部のボタンに触れた,あるいは離した状態の判定と,それを使ったアクションもあるので,操作系統としてはやや複雑である。ただ,現実における指の動きと連動しているため,覚えにくいと感じる人は少ないだろう。

Touchの操作でハンドサイン的なことも可能だ。なお,編集部のキャプチャデバイスの調子が悪かったので,一部画面はキャスト先の画面直撮りである
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チュートリアルでは,実際に手を動かして操作を覚えていける
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Oculus Homeの画面。手前に見えるメニューの上段には,ルームスケールと静止モードの切り換えがある。ルームスケールの再設定を行うと,前掲のイメージ写真で示した白黒映像に切り替わるので,たとえば休憩時にOculus Questを装着したまま動きたいときに便利だ
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 チュートリアルを終えると,ホーム画面となる「Oculus Home」に遷移する。これはOculus Goと同じもので,アプリケーションのインストールやギャラリー表示,Facebookのサービスなどにアクセスできるものだ。
 ちなみに,Oculus Quest組み込みのスクリーンショット機能は,スクリーンショットを選択後,一定時間経過で撮影という方式なので,狙った瞬間を撮るのには適さない。画面のキャスト機能を利用して,キャスト側で録画したり,スクリーンショットを撮影したりするほうが無難だろう。

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 今回は製品発売前の評価であったため,テストを行えるOculus Quest対応ゲームは10タイトルだけだった。そのうち,比較的6DoFの対応具合がよくわかり,ゲームそのものの動作動作に支障もなかったタイトルとして,「Beat Saber」を取り上げてみたい。
 Beat Saber自体は,PC用のVR HMDやPlayStation VRでもプレイできるタイトルなので,実際にプレイしたことがある人もいるだろう。Oculus Questでのプレイフィールも,それら既存VR HMDの場合と大差はなかった。

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 ただ,ターゲットが視界端ギリギリの位置にある場合,それに顔を向けないでカットしようとすると,Touchが反応しないことがあった。Insightの範囲を出てしまったのだろう。大雑把なイメージでは,正面から半球状の180度くらいが反応範囲だろうか。しかし,反応することもあったため,180度を超える範囲のトラッキングは苦手,という程度だろう。
 ともあれBeat Saberでは,「ケーブルがないVR HMDは素晴らしい!」ことを改めて体感できた。


アプリケーションがルームスケールと静止モードのどれに対応するかは,「対応プレイヤーモード」で確認できる
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 なお,Oculus Questは,左右のヘッドバンド根元にステレオスピーカーを内蔵している。Oculus Goよりも音質は向上しているのだが,低音はやや弱く,ゲームのサウンドという点では物足りない面もあった。以前に筆者が4Gamerで紹介したハプティクス(触感フィードバック)デバイス「Hapbeat」のようなウェラブルタイプのサウンドデバイスが人気を呼びそうである。

 「CREED: Rise to Glory」は,ボクシング映画「クリード チャンプを継ぐ男」を題材にしたタイトルだ。2×2mのルームスケールであれば,インファイトの体験にうってつけである。だが,基本的には静止モードでのプレイを想定しているのか,その場でダッキングやスウェーは可能であるものの,移動ができなかった。また,動作がときおり不安定になることもあり,まだOculus Questに対する最適化が完了していないようである。
 余談気味だが,それぞれ微妙に射程が異なるジャブ,肩入れジャブ,腰を入れたジャブを放ってみたものの,ゲーム側に識別されなかった。

CREED: Rise to Gloryの1シーン(左)。Touchを握った両手で戦うボクシングゲームである。ジャブ,もしくはジャブからフックとスパー時の速度でやってみたが,たまにトラッキングに失敗していた(右)。いわゆる手打ちは誰でもけっこうな速度が出るのでテストしてみるといいだろう
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 Insightのカメラ機能を積極的に使用したアプリケーションが,今回のテストにはなかったのが少々残念だ。製品版の発売以降に,VRゲームスタジオから登場すると期待できるので,VR空間にいたまま過ごしたい人や,室内にマーカーを設置して遊びたいといった人は,そうしたタイトルが登場するまで様子見してもいいだろう。

Facebookの新型VR HMD「Oculus Quest」は,比較的低価格なVR機器とは思えない出来映えだ
 まとめに入ろう。
 Oculus Goに続く2製品めのスタンドアロン型VR HMDとして,積極的に普及を狙うOculus Quest。途中で触れたように,ファーストインプレッションで「装着したまま生活できそう」と思わせられるほどの能力を持つことが分かった。
 PC向けVR HMDでは,ケーブルが邪魔だとか,PCのスペックが足りないとか,ルームスケールを確保できないとか,そもそも高価といった導入における障害が多かった。そうしたハードルになる要素を見事に排除しつつ,399ドルという価格を実現したのは大したものだ。これまではVR HMDに尻込みしていた人を呼び込むデバイスとなる可能性は高いのではないか。

 また,既存のVR HMDユーザーからすると,ケーブルレスによる新しい体験は大きなポイントになるし,アリーナスケールを利用した施設におけるVRゲームへの期待も高まる。以上を踏まえて,「とりあえず買おう」と素直に言えるお勧めの製品だ。

OculusのOculus Quest製品情報ページ

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