任天堂IPの配信が非営利の個人に開放された。ではプロの配信者はどうするのか?

 2018年11月任天堂は,公式サイトで「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」を公開した。その概要については,こちらの記事などを参照してほしいのだが,全体に分かりやすいガイドラインの中で,若干気になる点があった。そちらの記事では触れられていないが,対象が非営利の個人に限られることである。法人は対象としないと明記されているものの,法人の対応法は示されていない。


 いわゆる有名YouTuberなどの大手配信者はなんらかの事務所に所属している場合がほとんどである。一人でやっているように見えても裏には業者がおり,もちろん非営利でも個人でもない。そういったことを把握してか,これ以前に任天堂が行っていた「Nintendo Creators Program」(廃止予定)では,契約対象として「事業者」といった単語があえて明示的に使われていたように思われた。


 それに対し,新たなガイドラインは完全にエンドユーザー向けのものであり,明確に非営利の個人を対象としている(公認のアフィリエイトプログラムなどはあるが)。つまり新ガイドラインはNintendo Creators Programの後継となるものであるにも関わらず,両者には明確な隙間があるのだ。その隙間となるプロの配信者などはどう扱われるのだろうかというのがちょっと疑問になったので任天堂に問い合わせてみた。
 一応,GIJEや4Gamer.netを運営するAetasも当然ながら法人であり,ゲーム内の映像を使ったストリーミング配信などもいくつか行っている。報道を目的とした場合はまた別の話になるが,企画的な番組で任天堂IPを扱うことがあったらこのあたりの話は確認しておく必要のある話でもある。

 ということで,回答をもらったのだが,結論からいうと,ガイドラインはあくまで個人向けのものであり法人では個別対応になるということだった。非常にあっさりで申し訳ない。ここで,法人の人,事務所の人は個別で問い合わせよう……と言いたいところなのだが,現在のところ法人用の問い合わせ窓口は公開されていないとのこと。Nintendo Creators Prograに登録していたところについては,個別での対応を始めているそうだが,それ以外についてはしばらく待ってみるほかないだろう。

 今回のガイドラインの公表で,一般個人の任天堂IPによる映像配信などは非常にやりやすくなった。ただ,忘れてはいけないのが,今回のガイドラインは任天堂IPに関するものに限定されており,任天堂以外の権利がかかわっている部分には適用できない点だ。たとえば「大乱闘スマッシュ ブラザーズSPECIAL」では他社IPからのキャラクター参戦が発表されていたりするので注意が必要になる。もしかしたら「ポケモン」あたりは任天堂のゲームだと思っている人もいるかもしれない。目安としては,任天堂以外の(c)がついていたら気をつけるべきだろう。せっかくのガイドラインなので,そのあたりは遵守して十分に活用してほしいところだ。

 同時に,業界他社の対応が気になるところでもある。ゲーム動画配信はゲーム業界にとってもはや無視できないメディアとなっており,不特定多数から不特定多数へのコミュニケーションは従来のメディアのガイドラインでは対応しにくい性質を持っている。
 動画配信についてのガイドラインではアークシステムワークスのものなどが有名だが,いわゆるネタバレについての規制が課せられているものもある。こういったものはサービス提供者並びにクリエイター側からのお願いでもあり,ゲームを楽しんでもらうための苦肉の策ではあろうが,使う側から見れば制限に感じられることもあるだろう。今回の任天堂のガイドラインでは,(発売日以外は)そのあたりもクリアでとくに制限もないのだが,どちらの方針を取るべきか,ゲーム会社のポリシーが問われることになるだろう。

任天堂:ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン