[CJ2018]12個の小型慣性センサーでモーショントラッキングするMotionbitとは

[CJ2018]12個の小型慣性センサーでモーショントラッキングするMotionbitとは
 2018年8月3日から中国・上海で開催されている中国最大のゲームショウ「ChinaJoy 2018」のスマートデバイス展示会eSmart会場でのVRが不作だというのはすでに書いているとおりだが,ここでは数少ないVR(近辺の)ネタを紹介しておこう。

 Motionbitが展示していたのは,身体の各部にセンサーを取り付けるタイプのモーショントラッキングシステム「Motionbit」である。外部のカメラやレーザーなどを使わないため,手軽に利用できるのがウリだという。現在開発中で,2か月後くらいの製品化を目指しているとのこと。

[CJ2018]12個の小型慣性センサーでモーショントラッキングするMotionbitとは

 どのようにトラッキングを行うかというと,IMU(慣性計測装置)つまりジャイロ,加速度,“Eキャンバス”を利用しているという。“Eキャンバス"は,並びからすると地磁気センサーではないかと思うのだが,調べてもちょっとよく分からなかった。これらを使ってセンサーの移動量や角度を算定するのだという。誤差は2度以内であるとのこと。動いているうちに誤差が蓄積されたりしないのかと聞いてみたが,それはないとのことだった。動き回っても誤差は2度の範囲であるそうだ。

 ただし,身体が移動した場合の胴体の位置については検出できない,体の各部は胴体との相対位置でちゃんと表示されているみたいなので完全に3DOFというわけではないようだが,基本的に3DOF+αくらいのものと思えばいいのだろうか。
 位置のトラッキングまでやろうと思ったら,やはり外部のセンサーかインサイドアウトのカメラシステムなどは必須になるのだろう。一応,脚の動きは取れるので概算は出せなくはないとのことだったが……。

[CJ2018]12個の小型慣性センサーでモーショントラッキングするMotionbitとは
 さて,このデバイスのセンサーユニットはSDカードを一回り大きくしたくらいのサイズで,ベルトに装着して身体に取り付けるようになっている。標準セットでセンサーは10個,さらに指輪型のオプションもあり,最大12個のセンサーで身体の動きを検出できる(全部使う必要はない)。
 これらのセンサーで手足の関節の動きと,さらに指輪まで使うと手首から先の動きもある程度取れるので,非常に忠実度の高いモーションが再現できる。カメラを使ったトラッキングとは違い,背中側に手を回しても破綻は生じないと同社では説明していた。

左はセンサーとベルトのソケット,右は充電器
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 さて,用途だが,かつてのKinectに代わる全身の手軽に動きを取れるデバイスになれば需要はあるだろうか。最近は,VRデバイスの普及で,頭の位置と手の位置・角度を取得することは簡単になり,それをもってある程度の身体運動を表現することはできるようになっている。しかし,実際の身体の動きそのものを使えるわけではない。とくにVRでは身体の動きと表示の違和感は少ないほうが望ましい。そういう意味では需要はあるのだろうが,10個もあると装着の手間もかかるため,センサーポケットのついた服などを用意するのがいいのかもしれない。

 この製品は,最終的にはコンシューマ向け製品を目指しているとのことだが,現状は開発向けのものとして位置づけられているという。問題は,価格が2万〜3万元になると見られることだ(36万〜50万円程度)。それこそV-Tuver用にでも簡易モーションキャプチャデバイスとして使えれば少しは普及が進みそうなのだが,その値段だと確実に別のデバイスが選ばれるだろう。シンプルさが価格に反映されていないのはちょっと残念だ。

Motionbit公式サイト