Nintendo Switchにトラブルか?

E3でのわずかなショーケースのあと,投資家やアナリストはSwitchの販売を懸念している。しかし彼らは正しいのか?

 なにか重要なものを公開した直後に任天堂の株価が下落するのは前代未聞というわけではない。実際,それはほぼ常態化している。そして,Smash Brosにフォーカスした昨日のNintendo Directのあと,同社の株価は6%下落し(関連英文記事),今年の最安値を更新した。

 これはあまり重要ではない ―とりあえず今のところは―。しかしこれは単に失望した投資家がいたということではない。あるアナリストは,Niko Partnersの示唆する任天堂の2000万台出荷と年度内の1億本のゲーム売り上げに対しての疑問に懸念を表明している。

 これらの指標を達成するために,任天堂はSwitchの魅力を拡大することが必要だ。それは人気の高いPokemon Let's Goの2作,Super Mario Partyそして Fortniteなどで行われることが望ましい。しかし批評家はまだ懐疑的である。


なぜアナリストは懸念をしているのか?


「Smash Bros.は頑なに任天堂のコアファンを狙ったゲームであり続けているが,それでもなお主流のユーザー層を引き付ける必要がある」

 任天堂はE3 ShowcaseではSuper Smash Brosの25分間にフォーカスしていた。このゲームはたいしたものだ。前5作の類型売り上げは4050万本に達し,(Nintendo 64以降)任天堂のゲーム機でもっとも売れたタイトルとなっている。

 Smash Bros.は頑なに任天堂のコアファンを狙ったゲームであり続けているが,それでもなお主流のユーザー層を引き付ける必要がある。11月初めのリリース日ではクリスマス前の商戦期間は限られており,これは9月に予定されている任天堂のオンラインサブスクリプションサービスには間に合わないことも意味している。

 Showcaseの残りのものは,任天堂の主力商品となるSuper Mario Partyでより主流の料金をフィーチャーしていた。このゲームは10月発売予定で,E3でも評判のよかった作品だ。しかしMario Party20年以上の歴史で見ても一貫性のないシリーズだった。そこでゲーム機の普及度を上げるためのプレッシャーは新しいポケモンにかかっている。

任天堂はE3でSmash Bros.にフォーカスしていた。このシリーズは累計4000万本以上を売り上げている
Nintendo Switchにトラブルか?

 もうひとつの懸念はSwitchの最近の売り上げに関するものだ。多くのヒット作を集めた圧倒的な2017年のあと,今年の任天堂は物静かだ。ベヨネッタ,カービィ,ゼルダ無双,そしてドンキーコングなど,強力な新タイトルラインナップはあったが,これらは主に既存のユーザーをターゲットにしたものだった。任天堂の大きな賭けであったLabo ―子供たちにSwitchテクノロジーでいろんなものを作って遊ばせようとデザインされたエデュテイメント属性の製品― は,絶大な批評家の反応にもかかわらず,製品価格の高さ(そして遊ぶにはゲーム機が必要なこと)が商業的売り上げには悪影響を及ぼした。
 
 最終的に力強い初年度の売り上げにもかかわらず,サードパーティサポートはいまだに欠けている。Fortniteは別として,E3では大手パブリッシャからのSwitchゲームがないことが目立っていた。これには任天堂お気に入りのUbisoftを含む。


アナリストの心配は正しいのか?


ポケモンは第4四半期にマスマーケットのゲーマーをターゲットに投入される
Nintendo Switchにトラブルか?
 アナリスト,投資家そしてメディアは彼らに与えられた情報をもとに予測を行う。それはE3で提供されたものをベースとしており,警戒するには理由がある。

 しかし,パニックになるようなものはなにもない。Smash Bros.やポケモン,Fortniteより大きくなるゲームはなく,このうち最初の2つはクリスマス前(ちょっと遅れたとしても年内には)に出荷されるので,依然として力強いソフトウェア(とハードウェア)の売り上げが期待できる。

 加えて,Microsoftとソニーの両社がE3をこれから12か月から24か月のラインナップのShowcaseとして使いがちなのに対して,任天堂は自社のユーザー層へのコミュニケーションをE3に依存していない。ポケモンの発表も入れると,Switch関連の発表イベントは今年すでに5回行われている。任天堂は競争相手にアイデアを盗まれるという被害妄想になっており,発表から発売までの期間を短縮している。たとえば,Nintendo Laboは1月に発表され4月に発売された。

「軌道修正をする時間と機会はいくらでもある……もちろん必要とあらばだが」

 2018年内に大きなSwitch製品が発表されないとしたら,そのほうが驚きだろう。しかしそれでもサードパーティのゲームは数本で,おそらくいくつかは急いでリリースするためにWii Uからの移植になるだろう。昨年,Doomは9月に発表された。そして発売は11月だ。任天堂は「Available Now」式のサプライズをライブストリームで行うことを好んでいる。我々は,2018年のリリーススケジュールが拡充されるのは,第3四半期の販売期間のちょっと前になるだろうと無理なく予測できるわけだ。

 最終的に,これは新作ゲームのすべてではない。Switchはすでに強力なソフトウェアラインナップを持っている。Splatoon 2,Mario Kart 8 Deluxe,Super Mario OdysseyそしてThe Legend of Zelda: Breath of the Wildなどだ。これらのゲームは売り上げランキングに残り続け,デジタル配信でのアップデートを続けている。

 ゲームの発売があまりにも遅れたWii Uと違って,任天堂ゲーム機の販売に必要なツールをすでに手にしている。必要とあらば,追加利益をシミュレートしつつ人気タイトルをバンドルしたり,さらにハードの本体価格を下げることもできる。SwitchとMario OdysseyまたはSplatoon 2の無料添付は夏季の期間にとても力強い売り上げを示すだろう。

 しかし,まだなにもする必要はない。まだ会計年度の非常に初期段階であり,四半期で大きなゲーム売り上げは知られていない。任天堂は同社の製品を5月中に重点的に販売してきた。今月末に登場するMario Tennis AcesとSplatoon 2やMario + Rabbidsの新拡張がリリースされれば,その評価は改善されることだろう。

 言葉を変えれば,アナリストと投資家たちは当然ながらE3後の任天堂の業績を警戒している。しかし軌道修正をする時間と機会はいくらでもある……もちろん必要とあらばだが。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら