E3座談会(その2):サプライズ不足の1日はPlayStationに失望

ソニーとUbisoftのカンファレンスでは既知のものが大半だったが,Beyond Good & Evil 2とGhost of Tsushimaはまだ喜ばれていた

 E3の月曜日は,一般に期待されているものと,大手パブリッシャが合理的に提供できるものとの間の深い溝が浮き彫りになった。

 日曜には,MicrosoftとBethesdaが大規模な買収の話題とある程度大きなタイトルで大衆の注目を集めていた。それらの発表は,そのは果実が実るのがたとえ18か月先だとしてもうまくいっていた。昨日のUbisoftとソニーのカンファレンスは来年中に手に入るソフトにフォーカスを絞ったものだったが,多くの人に釣銭詐欺のような印象を与えていた。これがE3での勝者と敗者の違いである。そしておそらくは業界をリードするものと目立つ人気コンテストで勝つことの違いでもある。

 GamesIndustry.bizスタッフによる完全に主観的な分析をご覧いただきたい。そして明日はE3 3日めのまとめをお届けする予定だ。


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E3座談会(その3):E3 2018は変化の間際にある業界を示していた


James Batchelor

 今日は,E3への期待というのはどうしようもなく少ししか叶えられないことを強く思い起こさせられた。

 私はこの原稿を,唐突で不明瞭な終わり方をした,ソニーの困惑に満ちた不満足なプレスカンファレンスから1時間以内に書いている。ソニーのために公平を期すと,それは正確には4つのキータイトルの詳細に加えてその他のタイトルをぞんざいに紹介していた。そして2,3のサプライズもあった。―仁王2とRemedyの新IPとなるControl,カプコンのバイオハザード2のリメイクだ。

「Spider-ManとGhost of Tsushimaは,ソニーの混乱に満ちたブリーフィングでは間違いなくハイライトになるものだった」

 それでも,抜けが目立つと思わずにはいられない。ソニーはいまだMedia MoleculeのDreamsを見せていない。ゲームから撮られたアニメーションシーンが公開されているにもかかわらずだ。スクウェア・エニックスは当日早くに自社のライブストリームに出していたAvengersプロジェクトを公開しなかった。ファンを熱狂させたFinal Fantasy VIIのリメイクのアップデート情報もなかった。噂ではSplinter Cellの新作とWatch Dogs 3が出るとのことだったが,Ubisoftのショーケースには現れなかった(噂になったものがすべて出てくるわけではないのだが)。

 私は自分が奇妙なほど失望しているのに気づいた。我々はいくつかの有望なゲームを目にしている。Spider-ManとGhost of Tsushimaは,ソニーの混乱に満ちたブリーフィングでは間違いなくハイライトになるものだった。後者は衝撃的なデモを見るまで私のレーダーに引っかかっていなかった。Assassin's Creed Odysseyは,まだクリアしていないOriginから私を引き離すに足るくらい素晴らしく見えた。そしてBeyond Good & Evil 2は待つ価値があるように思われた(出てくればだが)。しかし昨日(とくにBethesdaの広範囲にわたるラインナップ)と比べると,今日出てきてものは無難で華がないように思われた。

 部分的に,これはいくつかの会社はまだ過去の発表内容に追いついていないという事実を示している。それでも,E3に期待されるのはサプライズだ。過去には,未知のゲームや予測もしていなかった既知の多くのタイトルからもの凄い発表があったものだ。今日はどちらもほとんどなかった。

Sucker PunchのGhost of Tsushimaは寒々としたPlayStationブリーフィングのハイライトだった


Brendan Sinclair

 E3はサプライズのためにあるとJamesは言っているが,今日はなにもないことがサプライズだった。UbisoftはBeyond Good & Evil 2とAssassin's Creed: Odysseyで会場を沸かせていた。そしてStar Foxが玩具連動型ゲームStarlinkでデビューした。スクウェア・エニックスはプラチナゲームズの新作Babylon's Fallを発表した。ソニーに関しては,1か月前にショーの期待値を下げていた(関連英文記事)。しかし衝撃的なことに,引き下げたハードルすら越えられなかったのだ。

 そう,我々は発表されるという4つのゲームを見た。しかし,とくに目新しいものはなかった。どのタイトルも発売間近というわけでもないのにだ。ソニーが「Deep dives」というからには,私は詳細な情報を満載したウォークスルー(※手順などを細かに説明するデモ)のようなものを想像していた。任天堂やUbisoftのカンファレンスで慣れ親しんできたタイプのものだ。実際のゲームプレイとスクリプトによるカットシーンの境界をごまかすことに全力を尽くしたゲームプレイデモがいくつかついた4本の自賛トレイラーなどではいない(お世辞ではなくE3のごまかしの意味で言っている)。正直言って,Spider-Manは面白そうだったが,ムービーはガイドツアーのように感じられた。敵との格闘シーンからQTEによる追跡シーン,また格闘シーンそして戻るといった感じだが,これは私がこのゲームに期待していたものではない。

 ソニーのサードパーティによる発表に関しては,いくぶんかマシだった。仁王2とRemedyのControlは興味深い。バイオハザード2のリメイク(と発売日)はちょっとしたサプライズだった。しかし,ソニーはRed Dead Redemption 2をショーに出したくないんだろうか? もしくは,MicrosoftがCyberpunk 2077,Sekiro: Shadows Die Twice,ないしDevil May Cry 5をハイライトしていたようにできないんだろうか?

 現時点でハードウェアレースのトップに立っていることを考えると,ソニーは今年のE3でホームランを狙う必要はない。しかし少なくとも私は空振り三振するまではそれを期待していた。


Haydn Taylor

 PlayStationプレスカンファレンスは私が業界をリードするコンソールプラットフォームに期待していたものとはかけ離れていたが,それでも失望したとはいえない。

 ソニーのステージで見ることを期待していたゲームの多く(Seiko: Shadows Die TwiceとRed Dead Redemption 2)は別の場所にあるのか具体化に失敗したかのどちらかだ。たとえ過去に我々が見てきたような爆発的な興奮を生み出すことに失敗していたとしても,4つのメインタイトルを詳しく紹介するという決定は健全なものだった。なにより,私はInFamousシリーズの素晴らしい大団円に続いてSucker PunchがGhost of Tsushimaで価値のあるものを引き出しているのを見れたことを喜んでいる。

「ゲームは,これまでにないくらい美しく高精細だが,すぐに認識できる顔は,単に不気味の谷の効果を強めるだけだ」

 しかしながら,このところ増えている有名俳優をビデオゲームに出演させるというトレンドは,私がまったく支持できない類のものだ。Norman Reedusのお化けハイキングの休日(Death Stranding)は私にはまったく好きになれそうにない。ゲームは,これまでにないくらい美しく高精細だが,すぐに認識できる顔(とくに実在の人物と比較できる場合)は,単に不気味の谷の効果を強めるだけだ。

 スクウェア・エニックスは展示が一番少ないように感じた。2,3の期待通りの詳報と奇妙なあれこれはあったが,Final Fantasy VIIのリメイク版の情報提供に完全に失敗している。そしてUbisoftはもっとうまくやっていない。Assassin's Creed Odyssey大きく頼っていたが,Originsの直後でまだ時期が早いように感じられた。

 Beyond Good & Evil 2はプリレンダーのカットシーンは美しいものの,全体的に前作とはかなり異なっており,ファンにどれだけ受け入れられるかは未知数だ。15年を経ているにもかかわらず,最も興味深いのだが,実際に起こっているように見えるのは,この作品の成果であろう。

Death Strandingで小島秀夫氏は不気味の谷を突き進んでいる


Christopher Dring

 E3に出展するには2つの方向性がある。ひとつは話題づくりのためにE3に行くことで,観客に驚きや畏敬の声を上げさせるのだ。もうひとつは素直に「ここにもうじき発売されるゲームがあります。試してみませんか?」と誘う方向である。

 どちらも正当な戦略だ。そしてベストなプレスカンファレンスは両者のバランスが取れている。しかし,両者のスタイルを我々がどう感じるかは時とともに変わっているかもしれない。私はソニーがShenmue 3とFinal Fantasy VIIのリメイク版を発表したときのことを覚えている。ああ,ざわめきと涙……それは純粋にまじりっ気のないE3そのものだった。2か月後,それらのゲームは我々の心の奥底にしまわれた。それらはすぐには登場しなかった(いまだに出ていない)のだ。

「現時点ではPlayStationによる残念な展示に思えるものが,8月になればそうは感じられないかもしれない」

 私はまた,2016年のことも思い出す。ジャーナリストでいっぱいの部屋に座ってただ1本のゲームThe Legend of Zelda: Breath of Wildしか見せないという任天堂の「傲慢」について議論していたのだ。見たところ,任天堂はその年のE3では「負け組」だった。事実として,Switchはショーに間に合わなかったのだ。そして任天堂にはゼルダしかなかった。とはいえそれは完成寸前であり,本当にとんでもなくよくできていた。9か月後,それはゲーム機で効果的にローンチした。

 ポイントになるのは,現時点ではPlayStationによる残念な展示に思えるものが,8月になればそうは感じられないかもしれないということだ。個人的に,私はちょっと失望した。バイオハザード2のリメイク発表は私が望んでいたものだ。しかし私が見たいと思っていたのはMediEvilのリメイクであり,これが意味するのは今年はないということだ。そしておそらくはRatchet & Clankの新作も。私はまだ逆張りをするつもりだが,ソニーのE3ショーケースは気落ちさせるようなものではなかったことも示唆しておこう。

 日曜にはXboxが,すぐに発売されるわけではない一連の大作シリーズを発表していた。Halo Infinite ―これは次世代機用だろうか? Gears of War ―おそらく2019年末? スタジオを獲得してから新作を目にするまでどれくらい時間がかかるのだろうか? E3 2018はXboxの物語を変えた年になるのかもしれない。しかし現実的に考えて,中期的にはなにも完成しないだろう。次の12か月間,Xbox Oneでは依然としてCrackdown 3とForza Horizon 4が主力となる。それに対してソニーはかなり綺麗に仕上げられたゲームにフォーカスしている。それらのひとつは今後3か月以内に発売される。

 それでも昨日は新作タイトルにとって最高の日であったということにも注意する価値がある。UbisoftはTransference,Skull & BonesそしてStarlinkにかなりの時間を割いていた。スクウェア・エニックスの唯一の新発表The Quiet Man,ソニーのプレスカンファレンスではDeath Stranding,Ghost of Tsushima,Control,Trover Saves the UniverseそしてDeracineにフォーカスを当てていた。

 たしかに続編やリメイクはファンが見たいと思っているものではある。しかし,昨日私が見たのは,コンシューマゲーム業界(絶えず危険を嫌うと批判されている分野だが)が新しいものに大きな投資をしている姿だった。これはエキサイティングだ。たとえ現時点ではそう感じられなくても。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら