結局今年のE3はどうなのか? E3座談会(その1):Microsoftのファーストパーティ強化の目的,EAによるLoot Boxの嘆き

Microsoftによるスタジオ買収の波乱はE3開幕の週末を照らし出した。Bethesdaはすべての手札を切ってきた。そしてEAはもっとうまくやると約束した。

 E3の開幕週末は終わり,同様に6つの大きなプレスブリーフィングも終わった(※E3本体は週明けから開幕だが,開幕前にほぼすべての新情報は公開が完了する)。

 MicrosoftはXboxファーストパーティラインナップの状態や,ユーザーに最高のクオリティのエクスクルーシブゲームを持っているゲーム機はPlayStationだけではないことの再確認の話題がE3の明らかな必要性議論の中心に立った。BethesdaはすでにRage 2とFallout 76の発表で手札の2枚を切っており,これ以上の驚きはもうないのではないかという思いを我々に残した。そしてEA,EAはBattlefieldやスポーツゲーム,Star Wars以外にも同社のポートフォリオはあることを証明しただけだった。

 これらをどうしよう? GamesIndustry.bizチームによる完全に主観的な分析を読んでほしい。明日はE3の2日めについてをお届けする予定だ。


E3座談会(その2):サプライズ不足の1日はPlayStationに失望

E3座談会(その3):E3 2018は変化の間際にある業界を示していた


Brendan Sinclair

 ここしばらくのE3で最高のスタートだった。Bethesdaは同社のファンが求めるものすべて(関連英文記事)を用意していた(StarfieldとThe Elder Scrolls VIは現時点ではそれほど有望というわけではなかったとしても)。Microsoftは新たな5つのファーストパーティスタジオの追加でファーストパーティラインナップをなんとか持ち直したように思われる(関連英文記事)。それにはHalo Infiniteと3つの新しいGears of War作品,まったく望まれていない(が病的に好奇心を刺激する)Gears Popが含まれる。マルチプラットフォームのサードパーティタイトルの大作が発表され,Cyberpunk 2077,Devil May Cry 5,Sekiro: Shadows Die Twiceが私の興味を引いた。―そして私は現在Xbox One Xの購入を検討している。単なる4K Blu-rayプレイヤーやNetflixマシンとしてだけではなくだ。

「私は現在Xbox One Xの購入を検討している。単なる4K Blu-rayプレイヤーやNetflixマシンとしてだけではなくだ」

 EAはこれまでにないほど弱弱しいものだった(関連英文記事)。しかし,RespawnがStar Warsゲームに取り掛かっていることを思い起こさせてくれた。Unravel 2は素晴らしそうに見える。しかしながら,私は,携帯機を除くE3のサプライズローンチがすべての人に好ましいものだとは思わない。少なくとも,これがモバイルかSwitchでのサプライズローンチだったら,ロスアンゼルスに集まったメディアやインフルエンサーはすぐに試遊でき,世界中が注目しているなかでいくらかの価値のあるBuzzを発信できたかもしれない。私にはAnthemが珍品に思えたことも言及しておきたい。BioWareの支持層はなんらかの体験を期待していると思うのだが,これまで見た限りではそのようなものはまったく確認できなかった。

 ついにWAとMicrosoftの両社はストリーミングの時流に乗った。これまでにストリーミング機能を持ったサービスが出ては消えるのを見て以来,私は彼らの事業には正しい技術ないし正しいビジネスモデル,もしくはその両方が欠けているのに気づけばなあと思っていたのだ。



James Batchelor

 我々はおそらくE3 2018のことを,業界をプラットフォーム非依存の方向で軌道に乗せた年だとして思い起こすことになるだろう。確実に,EA,XboxそしてBethesdaはその方向に舵を切っていた。

 EAとMicrosoftの両社は漠然とながら楽観的に,そう遠くない将来にハイエンドゲームがあらゆるデバイスにストリーミングできるだろうと語っていた。次世代Xboxの開発が進行中だというPhil Spencer氏の主張にもかかわらず,SDキャラによるGears of Warモバイルゲームは,同社が可能な限り幅広いユーザー層にリーチしたがっていることを明らかに示している。―それがMicrosoftのデバイスであるかどうかは問わない。
 Bethesdaも2つのElder Scrollsの発表で,同様にそれに準備しているように思われる。携帯版Elder Scrolls Legendsから家庭用ゲーム機版への引継ぎ進行状況などはその端的な例だ。しかし,Elder Scrolls: Bladesはおそらくきたるべきものをより明確に示すものとなるだろう。

「BethesdaはEAやMicrosoftのようにデバイス間の壁を取り去る決定をした」

 Skyrimスタイルの体験はそのコアメカニズムに凝縮され,あらゆるデバイス向けに直された操作法,そしてBladeをモバイルとPC,ゲーム機,そしてVRへ移植する計画は,今後のプラットフォーム非依存なゲームのテンプレートを作ることになるだろう。モバイルユーザーはVRプレイヤー(もしくはあらゆるプラットフォームのプレイヤー)と戦うこともできる。これはBethesdaが他の2者のようにデバイス間の壁を取り去る決定をしたことを示している。

 Fortniteの信じられないような成功は,どこでも体験できるゲームの需要を証明している。そして,EAのCEOである Andrew Wilson氏はマルチデバイス間でエンタテイメントを楽しめる機能は,すでにテレビ、映画,そして本を永遠に変えていると指摘する。

 もちろん,このプラットフォーム非依存の未来では,競争はシステム間ではなく,サービス間で行われるようになるだろう。そういう意味で,カンファレンスの主催者たちは自分の手をテーブルに晒した。EAはOrigin Access Premierの発表(関連英文記事),MicrosoftはXbox Game Passの継続的な推進(関連英文記事),そしてBethesdaは微妙ながら,閲覧者に自社Webサイトのアカウントへのサインアップを頻繁に案内している。

 これは現在進行中のロングテイルなGames-as-a-Seivice製品への移行(こちらも週末にひときわ目立っていた)と並行して進行するだろう。Falloutは何年もかけて計画されオンラインゲームとして登場する。AnthemではBioWareは定義されたストーリーから継続的に展開するものへと認識を移行しているように思われる。詳細は不明ながら,Halo Infiniteの「Infinite」が,進行中または共有されたオンライン体験を指しているのは間違いない。

Elder Scrolls: BladesはBethesdaのできるだけ多くのプラットフォームを抱え込みたいという欲望を示している


Haydn Taylor

 Microsoftは,2013年の発売以来おそらく初めて本当にXbox購入に説得力のある議論を行った。過去5年以上,Microsoftはマルチメディア戦略と10年以上昔の(新作が出てもあまりワクワクしないような)シリーズの作品リストに大きく依存していた。しかしE3 2018では,その歩調に明らかな変化が見られた。

 Halo Infiniteの発表はいつもどおりのことのように思われた。―ほぼ確実に― Destinyの成功をマネしようとするものだ。もちろん,BethesdaとEAはFallout 76でAnthemでそれぞれの得意分野を突き進んでいるが,それらすべてが永続的に濡れ手に粟の市場で満足のいく結果を出すようなことはないだろう。

「EAはあらゆる場面で新作にはそのメカニズムがないことを明確にしていた」

 新たなGears of Warタイトルの発表は,「純粋に前進しようとしているMicrosoft」というイメージをたいして高めるようなことはなかったが,Ninja TheoryとPlayground Gamesの買収ではそれを成し遂げている(関連英文記事)。さらにUndead LabsとCompulsion GamesがMicrosoft Game Studioの一員となった。Ninja Theoryは優れた血統の会社というだけでなく,熱意と忠誠度,そして(巨大ではないとしても)一定のファン層を持った会社だ。また,これはこれまで業界が思っていたよりも,Microsoftが,精彩を欠いていた自社のエクスクルーシブタイトルのラインナップのことをよく認識しているということを周囲に示していた。

 一方で,Xboxステージに登場したフロム・ソフトウェアの新プロジェクト(アクティビジョンから発売予定)は,誰も予測していないものだった。しかし,これもMicrosoftがかき集めた小さなサプライズのひとつだ。それには適度に暴力的で大いに期待されるCyberpunk 2077のトレイラーやKingdom Hearts IIIの新ショット,Metro Exodus,そしてFallout 76のゲームプレイなどが含まれる。

 サードパーティのゲームを一般発売と同時に配信するというXbox Game Passの提供範囲の拡大と合わせて,まるでついにMicrosoftがXbox Oneがゲーム機であることを思い出したかのように感じられた。

 最後に,昨年はコンシューマ市場で荒天に見舞われていたEAは,塗り絵的なカンファレンスでダメージコントロールをしていた。たいして新しいものは発表されていない。しかしLoot Box(もしくはその欠如)は非常に大きくフィーチャーされていた。パブリッシャは,あらゆる場面で新作にはそのメカニズムがないことを明確にしていたのだ。いまだ同社のLoot Boxが賭博を構成することを強く否定している同社にとって,これは,ここ数か月でベルギー(関連英文記事)とオランダ(関連英文記事)で展開されるようになった法定義に対抗するためには,多くのことをやるしかないとEAの首脳陣が理解していることを示しているように思われる。

Ninja TheoryはMicrosoftが買収した一連の印象的な企業の中でも貴重な会社だ


Matthew Handrahan


 E3開幕での一斉プレスブリーフィングには,たくさんの楽しさがあった。その大半は私の同僚によって明らかにされている。これら小さな勝利の影には,失敗の認識や学んだ教訓があった。

 これはほかでもないEAのプレスカンファレンスで色濃く出ていた。同社は大作ゲームを1年中サービスすることにフォーカスしており,E3で最も執拗で意外性のないブリーフィングとレセプションとなっていた。E3 2017では少なくともBiowareのAnthemが公開された。しかし今年最大のサプライズはRespawnによるStar Warsタイトルの奇妙なほど控えめな発表と,頻繁に繰り返されるLoot Box実装の失敗について,そして二度とそんな馬鹿なことはしないという厳粛な誓いだった(関連英文記事)。

 Bethesdaのプレスカンファレンスは遥かに印象的だった。しかし,それもE3 2017でのブリーフィング全体への叱責であるかのように思われた。昨年,同社は近日発売予定のタイトルだけに焦点を絞っていたのだ。対照的に,昨日公開されたゲームのいくつかは,2018年末に入手できるものだった(Fallout 76に限らず)。Bethesdaは2019年(おそらくそれ以降)までにリリースされないゲームのチラ見せも制限していなかった。商業的成功という意味では不均一な年を経て,これは同社のポートフォリオの強力さとBethesda Game Studiosががいまや以前より大きな生産能力を持っていることをよいタイミングで思い起こさせるものとなっていた。

 しかし私にとって,食材の感覚が最も鳴り響いていたのはXboxのブリーフィングだった。そこではMicrosoftはここ数年で最高のショーを作り出しており,同社が現在もファーストパーティでのゲーム開発に大きな投資を行っていることをみんなに思い起こさせていた。Xboxファミリーへの5つの新しいスタジオの追加は当然ながら賞賛された。しかし同社は(その他のスタジオの中で)Lionheadを閉鎖するという理解しがたいこともしている。
たぶん現在Microsoftは,ゲーム制作会社(単にパブリッシャとしてではなく)として目指す道がはっきりしたのであろう。おそらくすべてのスタジオの歴史と文化は,もはや会社の政略を無視するようなことはないであろう。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら