プラチナゲームズはもう二度とパブリッシャと組まないかもしれない

有名デベロッパの自己資金による将来とIPを自社で所有する決断について共同設立者の神谷英樹氏と稲葉敦志氏が語る。

 日本の著名なデベロッパであるプラチナゲームズは,タイトルを市場に出すために第三者に頼らないという新たな門出を迎える。

 設立からの10年間,同社はさまざまなパブリッシャのために評判の高い一連のゲームを制作したが,これらのパートナーシップでは同社に事後のフォローアップのオプションはほとんどなかった。任天堂は「ベヨネッタ 3」の開発で同社をサポートしているが,「MADWORLD」や「VANQUISH」のようなタイトルの権利はセガに残っている。

 2017年,同社は劇的な戦略転換を発表した(関連英文記事)。もはや1年に1タイトル制作することを目指すのではなく,完全に権利を所有するゲームを作ることに焦点を当てていくという。2018年1月までに,開発のヘッドである稲葉敦志氏はプラチナゲームズが実際に二つの新しいIPに取り組んでいることを明らかにした(関連英文記事)。ゲーム界に大きな影響を与えたNinja Theoryの「Hellblade: Senua’s Sacrifice」に似た小規模プロジェクトだ。

「ベヨネッタを作っているときでさえフラストレーションがありました。100%自分たちのゲームを作れる自信とそうしたいという思いがありました」―神谷氏

 我々はReboot Develop 2018で稲葉氏と,共同設立者である神谷英樹氏になぜこのような体制移行が必要なのかを聞いた。

 「パブリッシャがゲーム全体に資金を提供する場合,紐付きとなっていて,続編を作ることができない場合があります」と稲葉氏は語る。「すべては資金の出し手が決めることになるので,自分たちで作ったものを自分たちで完全にコントロールするなら,自分たちで資金を調達して制作しなければなりません。そうすれば,大いなる自由とたくさんの選択肢を得ることができます。だからこそ,私たちくらいの規模のデベロッパのみなさんは自分たちでパブリッシュし,自分たちで資金調達をしたいと思うのです」

 神谷氏はこう付け加える。「独自のコンテンツ,独自のIPを作りたいと思っています。『ベヨネッタ』1作目を作っているときでさえ,資金提供を受けてやっているということと,一定の部分はほかの会社にコントロールされているという事実の板挟みでフラストレーションがありました。もう長いこと,自分たちでゲームを作ってそれを100%コントロールするということに関して自信と我欲があります」

 ゲーム制作にかかるこの創造的な欲望は長いこと燻っていたかもしれないが,一番のきっかけは間違いなく,Xbox向けに同社が長年開発してきた新しいファンタジーIP「Scalebound」の開発をMicrosoftが中止したことだろう(関連英文記事)。Microsoftによるこの動きの影響は甚大だ。その数か月後にリリースされ大ヒットを飛ばした「Nier: Automata」がなかったら,プラチナゲームズは倒産していたかもしれない(関連英文記事)。

 だが,ここでもまた「Nier: Automata」は別のパブリッシャ(これはスクウェア・エニックス)が所有する資産であり,次のステップに関してプラチナゲームズに発言権はなかった。これは同社が物事をコントロールできないという直近の例だが,「Scalebound」の開発中止と同様,同社がIPの完全な所有を追求するという稲葉氏の決意を固くするきっかけとなった。

Reboot Develop 2018で,プラチナゲームズの歴史と,アクションというジャンルの現状に関するディスカッションのために登壇したに稲葉敦志氏(中央)と神谷英樹氏(右)

 「なにか一つの出来事がきっかけになったわけではなく,いろいろ積み重なっての結果です。もしあなたがクリエイターで,ディレクターにすべてのコントロールを与えたいと思っているなら,そして,もしディレクターが100%制約のないものを作ることを本当に望んでいるなら,唯一の方法はこれ(自己資金で開発)です。誰かのカネでやろうとする以上,例え何が起ころうと,条件や制約がありますから」

 しかし,プラチナゲームズは,パブリッシャとの関係を完全に切り離すことについては慎重だ。同社はゲーム業界最大のIPをいくつかを任されており,コナミの「メタルギア ライジング リベンジェンス」,任天堂の「スターフォックス ゼロ」を生み出している。そして,ライセンスされたタイトルへのたゆまぬ努力は,「トランスフォーマー THE GAME」「TMNT (Tenage Mutant Ninja Turtles)」「ザ・レジェンド・オブ・コーラ」につながっている。これらについて稲葉氏は引き続きオープンでいたいとしている。

「さまざまな異なるビジネスモデルやゲームの種類を扱うためには,デベロッパとして多様性を持つ必要があります。それが将来のために備えることになります」―稲葉氏

 「ライセンスされたゲームの制作に反対するつもりはまったくありません。ただ,私たちが好きなライセンスでなければならないということです。当社のメンバーは皆それぞれ開発に携わってみたいと思うような本当にクールなゲームを心にいくつか持っていますよ」

 「もし物事がうまくつながり,機会があれば,私たちは間違いなくライセンスも追求していきます。進化させたり拡大できたり,これまでやったことがないことをできるライセンス,とはいえ,ライセンスというものは多くの制限があるのでかなり難しいでしょうが,もしそういうものがあるなら,私たちがライセンスでやっていくという方向を取るクリエイティブな面での理由にはなるでしょう」

 当面,プラチナゲームズは,DeNAと提携して開発するF2Pのモバイル向けアクション「World of Demons」に特化する(関連英文記事)。「大神」を感じさせるこのゲーム,稲葉氏や神谷氏を含むプラチナゲームズの中心人物たちが「大神」を開発したクローバースタジオに在籍していたことを考えると類似性は偶然ではない。

 パブリッシャが所有するタイトルからF2Pのモバイルタイトルに移行するという選択肢は,過去にプラチナゲームズが取り組んできたものから劇的に変化することになるが,間違いなくより安全ではある。モバイルタイトルは,非常に異なるモデルであり,ローンチ時に集中するのではなく,より長い期間をかけてプレイヤーから売上を得て収益化するように設計される。さらに,スマホの高い普及性は,プラチナゲームズが以前制作していたプラットフォーム向けのものと比較してはるかに広いオーディエンスにリーチできる。

F2Pのモバイルタイトル「World of Demons」はゲームプレイの面ではお馴染みの料金体系でも,ビジネスモデルとしてはプラチナゲームズが過去にやってきたこととは異なる

 ということは「World of Demons」は安全弁なのだろうか?プラチナゲームズに資金をもたらすため必要に迫られて作られるタイトルなのだろうか? 稲葉氏は否定する。

 「『やりたいことをやる』ために,『やりたくないことをやらなければならない』という考えはありません」と稲葉氏は言い切る。「私たちは,やりたくないことはやりません。私たちから見れば,このプロジェクトで誰が何をやるのか明らかでした。私たちは私たちが得意とすることをやっています。DeNAも同じです」

「車のように部品や設計図に基づいて組み立てるのではありません。ゲームにそうなってほしくありません」―神谷氏

 「さまざまな異なるビジネスモデルやゲームの種類を扱うためには,デベロッパとして多様性を持つ必要があると感じています。それが将来のために備えることになります」

 「ゲームとしての楽しさがあるなら,絶対に取り組む価値があります」と神谷氏も語る。「モバイルだから,F2Pだからという理由だけで,ファンにアピールしたり,良いゲームを作ったりできるとはまったく感じていません」

 モバイルではまだ稀だが,「World of Demons」がこれまでのプラチナゲームズのタイトル同様,アクション重視なのは驚くことではない。プラチナゲームズは主に,激しくかつ流動的なバトルシステムや,世界中のプレイヤーをワクワクさせるバトルを供してその名声を確立してきた。

 これは「Nier: Automata」の成功に大きく貢献したが,我々がそのゲームの主任デザイナーである田浦貴久氏に聞いたところによれば,ジャンル自体が古くなったとしたうえで,「ゼルダの伝説 時のオカリナ」(1998)や「デビルメイクライ」シリーズ1作目(2001)からほとんど変わっていないと答えてくれた(関連英文記事)。神谷氏が手がけたタイトルの多くが当てはまるが,はたして彼は同意するだろうか?

 「そう聞くと,なんだか,自分に試練を課す若くて,熱いクリエイターみたいに聞こえますね。3Dアクション空間で進化がそれほど進んでいないと思っていることを克服して,実現できるものがあればクールですね」

 「ゲームは大量生産製品ではないと思います。芸術であり,開発者の個性の一部でもあります。車のように部品や設計図に基づいて組み立てるのではありません。ゲームにそうなってほしくありません。ゲームは各人の個性を反映したものであってほしい。だからこそプレイヤーはゲームディレクターの個性からくる創造性を感じることができると思うのです」

 「そういう観点でゲームを見たいと思いますし,ゲームはそうやって作られるべきだと思います。明らかに,高くつきます。リスクもあり,物事を反復してやる必要があります。かつてなされたことがないことはすべて,突然中止になったりボツになったりする可能性があります。何かを一人の人に任せてしまうと,正しい方法でやり遂げられないかもしれません。なんでも起こりえるわけですが,もしそのディレクターのカラーを出すことができないなら,そして,革新的なことができないのなら,最終的には負けです」

 Rebootでこのプラチナゲームズのデュオは,アクションジャンルを超える,もしかするとまったく新しいタイプのゲームプレイを定義することさえ可能かもしれないタイトルの計画について大枠の議論を展開した。だが,プロジェクトがまだきわめて初期の段階にあるため,詳細が公開されることはなかった。

 可能な限り最高のゲームを作りたいというプラチナゲームズの想いは,ほんの短い会話からでさえ窺える。そして,己の運命をコントロールするという同社の決意は極めて理解できるものだ。だが同社の歴史を知っている人たちからすれば警戒感を呼び起こす野心でもある。批評家の称賛の数々にも関わらず,いくつかのゲームは商業的な競争で敗北を喫してあわや倒産しそうになったり,また,「ベヨネッタ」ではセガが任天堂にバトンを渡すという結果をもたらしたりした。

 だが,いくつかの例では簡単に説明できる。例えば「スターフォックスゼロ」は,Wii Uの販売不振のあおりを食った。だが,プラチナゲームズの13のタイトルのうち9タイトルはメタスコア75点以上を獲得している(加えてあと二つ,数ポイント低いだけのものもある)。そうすると同社が破綻寸前まで追い込まれたのは不可解だ。おそらく稲葉氏はこの矛盾した状況を説明できるだろう。

 「誰かに教えてほしいくらいですよ。もし知っていたら大儲けしていましたから」と彼は笑った。「結局のところ何なのかよく分かりませんが,少なくとも,ゲームが良ければ大ヒットにつながる可能性は一段高まります。私たちのゴールは,やはりゲームなんです。いいゲームを作ること。それが変わることはありません」

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら