UnityとUniversalがインディーズゲーム開発者にハリウッド映画IPへのアクセスを与える理由

MicrosoftとIntelがサポートする新しいコンテストが「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「ジョーズ」などをゲーム化するチャンスを開発者に提供する。

 世界中の開発者はUnity Tecnologiesがローンチするコンテストのおかげで,銀幕の最高傑作のいくつかにアクセスできるようになる。

 サンフランシスコで開催されているGDC 2018でUnityは人気映画作品を持つNBCUniversalと提携し,世界規模のゲーム開発コンテスト「Universal GameDev Challenge」について解説した。この構想をサポートするのは,MicrosoftとIntelで,参加者のための技術サポートとメンタリングを行う。

 このコンテストでは,ユニバーサルがIPを保有する人気映画作品,「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「宇宙空母ギャラクティカ」「ジョーズ」「ボルトロン/レジェンダリー・ディフェンダー(Dream Works)」「テュロック」の5つから1つを選んで,新しいゲームコンセプトを作ることが課題になっている。

 参加する開発チームは,ゲームコンセプトのデザインドキュメントと動画を提出するまでに1か月しかないが,その最初の審査で6チームが選出され準決勝に進出する。選ばれたスタジオは,その後,今年後半に開催される決勝に向けてコンセプトのバーティカルスライス(完成品の一部を切り抜いたもの)を作り上げなければならない。

 最優秀賞の受賞チームには賞金25万ドルと,ゲームとして完成させ製品化するためにUniversalとのコンサルティング契約が得られる。

UnityのKatrina Strafford女史
 賞金や副賞は言うに及ばず,あまりのビッグネームな企業たちとの驚くべきコラボレーションということになるが,Unityのマーケティング担当バイスプレジデントKatrina Strafford女史によれば,今回のコンテストはUniversalがゲーム業界とより緊密な関係を築くことを希望していたことに端を発していたとのことだ。

 「金字塔的な作品と交流する機会を開発者に提供するというアイデアを持ってUniversal側から私たちに話がありました。その後,Universal同様,ゲーム開発のコミュニティに多くを提供できるだろうと考え,私たちからMicrosoftとIntelに参画を持ちかけました」とStrafford女史は我々GamesIndustry.bizに語った。

 「私たち全員が素晴らしい機会を開発者コミュニティに提供することに全力で取り組んでいますから,このコンビネーションがしっくり来るのは当然のことでした」

 Universalのゲーム・デジタルプラットフォーム部門のエグゼクティブ・バイス・プレジデントであるChris Heatherly氏は次のように付け加える。「これは,今までであれば我々のレーダーに見当たらなかったかもしれない開発者を探す手法であり,また,それがどのくらいうまくいくかを見極める新しい方法です。アイデアを引っさげてアプローチしてくるデベロッパは常にいますが,これはるかに組織化された方法です」

 「また,まとまることで,本来であれば各関係者が個別にやるようなプロセスの多くを省略できているので,各所で発生する契約や交渉を関係者ごとにやり直す必要はなく,魅力的なゲームアイデアの発掘に集中することができます。論より証拠と言いますから,『話す』段階をスキップして,直ちに,『じゃあ見せてもらおうか』という段階に入ることができます。どの開発チームが一番いいかすぐに分かるわけです」

 このように,世界的に有名なIPへのアクセス(または少なくともアクセスの可能性)をあらゆる開発者に与える大胆な動きではある。「テュロック」はゲーム業界ではすっかり確立されているが,「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「宇宙空母ギャラクティカ」のようなものはこれまでほとんどゲームスタジオに提供されたことはない。歴史的に見ても,このような超大作のライセンスは常に大規模なデベロッパやパブリッシャの手に渡る。小規模な開発チームに提供することは,Universalにとってリスキーではないのだろうか?

 最近のインディーズゲーム開発スタジオや新興企業の多くは,業界で最も経験のある開発者を抱えていることが多いが,実のところ,そうでないほうが業界に新鮮なアイデアをもたらすことも多い。そういう開発チームを発掘することがまさにUnityとUniversalがこのコンテストで挑戦したいことなのだとStrafford女史は語る。

 「これら5つの作品は,愛されるブランドであり物語です。人々やゲームプレイヤー,開発者たちの心に驚きとイマジネーションを抱かせます。これらのブランドのパワーがユニークな創造性を呼びさますこと,そして,世界中の開発者たちがそれらのストーリーや世界観に新しい息吹を吹き込んでくれることを私たちは期待しています」と彼女は続ける。


 人気が高いSFのテレビテレビドラマシリーズ・映画作品「宇宙空母ギャラクティカ」は世界的に有名な今回提供される5つのIPの1つで,開発者はコンテストに際して無料で使用できる。

 UnityとUniversalの両社は,参加する開発チームがIPの使用に関して完全なクリエイティブ・フリーダム(創造的自由)を持つことを強調している。結局のところ,まずもってこれは単なるコンセプトの売込みでしかない。このような大作には,すでに定着したルールや哲学があるかもしれないが,そのような既成概念にとらわれることなく思考をこらすことが奨励されている。

 「既存のIPを使って作業することは,誰にとっても難しいことです」と,Strafford女史は言う。「リスペクトされるブランドとそのファンがいる一方で,イノベーションも要求されるわけです。大変なことですが楽しいこともでもあります。ハイクオリティなプロブレム,とも言えるでしょう」

 最初のゲームコンセプトの審査では,ブランドの創造的使用,ゲームプレイとナラティブのデザイン,機能,そしてUnity,Microsoft,Intelが提供する技術のインテグレーションという四つの要素に基づいて判断される。Strafford女史は,このコンテストが「可能な限りオープンで創造的」になるように意図されていることを強調し,選んだ作品に関するアート(イラスト)が提供されることもないという。

 「応募作品のアート・スタイルやクリエイティブの方向性に影響を与えたくないと思っています。金字塔的な映画作品のブランドをどのように生き生きとしたものにしてもらえるのか,とてもワクワクしています」

 そしてHeatherly氏は次のように付け加える。「最終的に私たちが探しているのはコアなゲームプレイです。初期段階のゲーム・プロタイプはすっかり見慣れているので,必ずしもアートや洗練されているかの部分を見ているわけではありません。私たちが探しているのは,ゲームのコンセプトが一度だけではなく,何度もプレイしたいと思うほど楽しいかどうかです。そしてそれが映画作品のコアにある意図に合致しているかどうかということなのです」

 かと言って,開発者がゲームのアート・スタイルに取り組むことを思いとどまらせようというものではない。コンセプトによっては(Heatherly氏は8bitのレトロなスタイルのゲームの例を挙げる),ビジュアルがクリエイティブなビジョンの中心にあってもよい。だから芸術的な表現方法は開発スタジオのアイデアを売るのに役立つ。しかし,氏は再び強調する。「楽しいゲームでなければなりません」

 このコンテストは経験豊富な開発者だけでなく,すべての開発者に公開されていることをUnityは繰り返し述べており,準決勝の副賞がこれを裏付けている。ロサンゼルスで行われる3日間のVIPメンタリングだ。選ばれたチームはカリフォルニアへ飛び,そこで,Universal,Intel,Microsoft,Dream Worksの専門家からアドバイスとサポートを受けられる予定だ。

 「開発者が困難な問題を解決するのを支援することに重点を置いていますが,私たちはこれを行うための比類なきメンタリングを提供します。私たちの目標は,チームが最終審査にでき得る限り最高の作品を提出できるようにすることです」

 もちろん,Unity,Intel,Microsoftの三つのハイテク企業にとっての主な利点は,彼らのプロダクトやサービスを利用する開発チームとつながることだ。改善のためのフィードバックを収集するだけでなく,それらリソースを最大限に活用してもらえるよう支援する。

 Universalにとっては,賞品を獲得したラッキーな開発スタジオが作る一つのゲームプロダクトだけではなく,より多くのものが得られることになる。同社はこのコンテストがゲームに一層積極的に関わっていく基盤となり,それがUniversalが保有するブランドにさまざまな機会を作り出すきっかけにとなることさえも期待している。

 Heatherly氏は次のように語り,締めくくった。「長期的なパートナーシップに取り組むことができる新しいデベロッパとのリレーションを作り,完全なゲームを作っていける魅力的な新しいコンセプトが作れればと思っています。前者だけでも我々にとっては成功ですが,理想的には後者も起きてほしいと思っています」

 「我々は完全なゲームを開発するためのする手段と決意があります。ですから大事なのはやはりアイデアということになります。Universalはこのコンテストに100%コミットしており,このコンテストから何らかのゲームがマーケットに出ていくことを確信しています」

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら