Vive Proの使い勝手や対応コンテンツはどうなのか? 体験会レポート

Vive Proの使い勝手や対応コンテンツはどうなのか? 体験会レポート
 2018年3月1日,都内VR ZONE SHINJUKUでHTCの新型VRヘッドセットVive Proを使ったコンテンツ「ギャラガフィーバー」のプレス向け体験会が開催された。コンテンツの詳細については,こちらのプレイレポートなども参考にしてほしいのだが,ここではVive Proのハードウェアと使用感など交え,体験会で得た情報をまとめていきたい。

 Vive Proについては,こちらでも紹介しているように,HTCのVRヘッドセットViveを高解像度化し,ヘッドフォンを一体化するなどさまざまな改良が行われたバージョンとなる。

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●ピクセル数78%アップの画面
ピクセル数の比較。有機ELパネル自体の大きさは従来と同じ
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 Vive Proの最大の特徴として推されていたのはビジュアルの進化だった。VRヘッドセットで解像度が重要とする人は多いとのことで,従来比でいうとピクセル数で78%アップ,ピクセル密度(ppi)でいうと30%向上しているという。
 もともとViveやRiftは,SIEがいうところの,全ピクセルRGBの素子を持った配列ではないため,解像感はともかくドット感の残る画質になりがちだった。Rift DK2以来の伝統的有機ELパネル仕様なわけだが,DK2(1920×1080)からVive・Rift(2180×1200)になった時点でかなり軽減されていた「網目感」が,今回のVive Proではさらに軽減されていると考えればいいだろう。

解像度アップのイメージ。左から300ppi,Vive相当の448ppi,Vive Pro相当の615ppi
※HTC NIPPONからクリアな画像を入手できましたので差し替えました
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 実際に使うとドット感がまったくないわけではないが,試用して気になったのは装着した直後だけで(一番違和感を覚えやすい),プレイ中はほとんど気になることはない。今回プレイしたギャラガフィーバー(※後述)では,画面中に無数のギャラガが飛び回っていたのだが,そのディテールも十分に表現されていた。画像の緻密さが上がっており,ViveやRiftを使っているほとんどの人が感じていたのではないかと思う,解像度の「もう一声」が実現されているデバイスだと言っていいだろう。

 VRでどのくらいの解像度がいいのかは難しい問題だ。これまでに他社の4Kや8Kのデバイスを試用したこともあるのだが,解像度が上がると画面は綺麗になるのものの,それは表現力が上がることを直接には意味しない。たとえば,2Kから4Kになるとレンダリング能力は4倍が要求される。普通の4KゲームがちゃんとプレイできるGPUは,NVIDIAではGeForce GTX 1080Ti以上とされている。4Kで60fpsをキープできる性能という意味だと考えていい。VRではそれを,90fpsをキープしてレンダリングする必要があるのだ。描画アルゴリズムの進歩でかなり高速にレンダリングできるようになってきているものの,最新ゲームと同じクオリティの画面を4KVRで出すのは,ハイエンドGPUを使っても簡単ではないだろう。
 かつて8Kデバイス(4K画面が2つ)で試遊したFruits Ninjaは非常にマットな質感の綺麗な画面だったが,市場にある最高のGPUを使ってFruits Ninjaしかプレイできないことを悲しく思ったのも事実だ。業務用なら力技で解決できる問題かもしれないが,VRデバイスとGPUの歩調が合っていないと意味がない。そういう意味で,Vive Proの選択した解像度は順当なところではないだろうか。

●組み込み式ヘッドフォン
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 もう一つ,ぱっと見て分かる特徴として,ヘッドフォンが標準装備になったことが挙げられる。詳細は不明だが,ハイレゾ対応のヘッドフォンは単体で買うと3〜4万円相当の品が組み込まれているそうで,Vive Proの最終価格をちょっと不安なものにさせてくれる逸品だ。似たような構成のRiftと比べると(Riftのヘッドフォンも結構いいモノを使っていると言われている),同じオンイヤータイプのイヤーパッドでも,平らなスポンジ面で直接耳に乗せるRiftに対して,オーバル型のイヤーパッドを持つ(耳が収まるわけではない)Vive Proは,ドライバーを少し離すことでの音の広がりを重視していることが分かる。HTC NIPPONの西川美優氏によれば,3D音響での定位が非常に分かりやすいとのことだった。

丸印の部分に2個のマイク孔が設けられている
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 また,チャット用マイクもゲーマー向けヘッドセットの水準に近づいたようで,マイクがやや前方と下方の2か所になり,周囲の音の成分を打ち消すことで音声をクリアにするアクティブノイズキャンセリング機構が搭載されている。

 なお,Torxドライバーが必要になるものの,イヤフォン部はネジ1つで取り外しも可能だ。その場合,手持ちのヘッドフォンなどが使えるわけだが,音声はVive Proの本体部から取ることができる。本体の接続ケーブルの根元近くには,未使用のUSB Type-C端子が用意されており,そこからUSB-オーディオ変換ケーブルを試用してアナログヘッドフォンを接続できるとのこと。フェイスパッド部のスポンジをはずしての作業になるが,とくに難しいものではない。
 もちろん,単にアナログヘッドフォンをつなぐだけなら,3.5mmピンジャックを付けるほうがずっと簡単なわけで,おそらく将来的にこのUSB端子に装着されるデバイスも登場するのだろう。匂いデバイスやアイトラッキングなど,さまざまな可能性が広がる部分である。

●二眼式カメラ
 二眼式になったカメラは,発表時にはシャペロンシステム(障害物を輪郭線で表示してくれるシステム)で使われることしか明らかにされていなかったのだが,西川氏の話では,やはりARやMRでの活用も期待されているようだった。ただ,現時点では,ごく一部のスタジオにしかライブラリが提供されていないとのことで,Vive ProのAR/MR展開が明らかになるにはしばらく時間がかかるのかもしれない。
 カメラ機能についてはそういう状況なので,今回体験したコンテンツもカメラやシャペロンシステムは使用していなかった。

●ハウススケールVR
 トラッキングシステムなどは後方互換性を持っており,従来のVive用ベースステーションを使ったポジショントラッキングをそのまま利用できる。コントローラも同様である。
 ベースステーションを4台使えば最大10m四方のトラッキングが可能になる。これは「ハウススケール」と呼ばれていた。ただ,トラッキング2.0の提供はやや遅れそうとのことであった。一般発売のときには間に合うのだろうか(日本の家屋だと5×5mを確保するのも簡単ではないかもしれないが)。

 トラッキング2.0による10×10m四方のハウススケールは,主に産業用などでの活用が期待されているという。5×5mでは狭いという声が多かったのだそうだ。国産の普通車だと全長4.5mくらいが普通だと思われるので,周りを囲んで眺めるなどの用途ではかなり手狭だったはずだ。応接間全体をエリアに入れたいといった要望もあるそうだが,トラッキング2.0とシャペロンシステムを組み合わせれば,部屋全体を無理なく動作範囲に入れることができそうだ。

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 なお,Vive Proに付属するケーブルの長さはViveと同じであり,あくまでルームスケールを対象としたものである。ハウススケールでは,基本的にバックパックPCでの運用が前提とされているという。ただ,Vive Pro用に用意されているワイヤレスモジュールは,40GHzや60GHzなどといった周波数帯を使用するものであり,現時点に限って言えば,日本では利用できない。現在,技術提供元のIntelが総務省に認可申請をしているものの,ワールドローンチのタイミングでは日本で発売されない可能性があるとのことだった。ハウススケールはロケーションベースでの運用や,産業用などで非常に有用な要素なので,早期の解決を望みたいところだ。

●重量と装着感
 現時点でVive Proの重量は明らかにされていない。
 HMD本体部分は従来より軽くなっているそうだが,ヘッドフォンやバンド部などを含めると全体的には重くなっているとのことだ。旧Viveは実は何度もリビジョンアップされており,初期の製品と最近の製品では15%の軽量化が行われているという。現在テスト運用されているバージョンも,製品販売時には少し軽くなっているのではないかと思われる。
 なお,後方にやや重量配分を移したことで,前方への重さの集中というのはほぼ感じられなかった。CEDEC 2017でのVRHMD関連の講演でも,全体の重さが重くなっても,重量配分がよいほうが疲れにくいなどの研究が紹介されていたように思う(参考URL)。PSVRなどはわざわざ後部に錘を入れてあるくらいだ。

 今回テストプレイを行ったギャラガフィーバーでは,ボスの発射するレーザーを避けるシーンがあるのだが,かなり大きく動いてもヘッドセットは非常に安定していたのが印象的だった。
 こういったVRコンテンツの体験では,最初にきっちり位置合わせをしていても,プレイを進めるとずれてくるというのは多々あることだった。Vive Proの場合は後頭部の下にある支えの部分が非常によい仕事をしていたように思う。


●互換性
 従来のVive用のコンテンツはVive Proでもそのまま動作する。視野角・解像度などは変わらないが,ドット感の少ない綺麗な画面で楽しむことができるという。Vive ProをViveとして使うことについては,ほぼなにも問題はないようだ。
 また,Rez Infiniteなどのさまざまな解像度に対応できるコンテンツでは,Vive Proでゲームを起動するだけで,Vive Pro本来の解像度でのプレイが楽しめるとのことだった。現在Vive用にゲームを開発しているような人が,Vive Proの導入を躊躇するとは思えないので,おそらくVive Proの正式発売の頃には,両対応ないしフレキシブルな解像度に対応したコンテンツが増えてくるものと思われる。

●アップグレードキット
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 Vive Proの一般発売はまだ先の話になるが,従来製品のViveとの併売が予定されている。
 また,パッケージとしてはVRヘッドセット部のみのアップグレードキットと通常版の2種類が用意されるという。旧Viveを使っている人ならベースステーションやコントローラはそのまま使い回せるのだ。現在Viveを使っている人は割安で導入可能だ。


VR ZONEの新アトラクション「ギャラガフィーバー」とは


 テストプレイしたVR ZONE SHINJUKUの新アトラクションについて軽く説明しておこう。簡単に言えば,二人一組で,編隊を組んで襲い掛かってくるギャラガを銃で撃ちまくるゲームである。
 突然地球に襲い掛かってきたギャラガの大群に対し,プレイヤーたちは,マッド博士が「そんなこともあろうかと」建てていた地上150mのエレベータを使って,上空から銃で迎え撃つことになった。
 舞台は地上150mとのことだが,足場がしっかりしているのとあまり下を見ることがないので,高所恐怖SHOWのような「これ無理」感はない。ギャラガの発光映えがする夜が舞台なのも関係しているかもしれない。足場はギャラガがぶつかると破壊されてだんだん狭くなっていき,足場がなくなるとゲームオーバーとなる。その場合,150mを一気に落下するそうで,ぜひ一度は試してみたいと思ったのは内緒だ。
 使用する武器は単発銃からだんだんとグレードアップしていき,次第に激しくなるギャラガの編隊をとにかく撃ちまくる。最終的に巨大なボスギャラガを倒せばクリアとなる。ただし,ボスギャラガが放つレーザービームに当たると,その時点で二人ともゲームオーバーになるので気をつけたい。


 なんとなくエヴァンゲリオンVRに似ていると思った人もいるかもしれない。個人的には,エヴェンゲリオンよりは撃っている感が強く,敵の攻撃の理不尽さもないと感じた。女性でも気軽に遊べるコンテンツを目指したとのことなので,難度も低めな感じだ。人気コンテンツになるのではないだろうか。

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 ゲーム筐体(?)だが,足場となるのはそれなりに広めの台である。エレベータの上昇時などはかなり振動するギミック付きだ。手には両手持ちの銃を抱えて,トリガーで発射だ。銃はかなりずっしりと重く,ストラップで肩にかけるようになっている。
 前方には,穴の開いたなにやら奇怪なギミックが配置されている。これは16個穴から空気の塊を射出するデバイスで,爆発などと同期してその衝撃を伝えるものだ。俗に空気砲と呼ばれる類のものだが,ドラえもんが手にはめている奴のほうな威力は出ない。
 下にある3つ並んだ細い送風口は,エレベータが上昇するときなどに風を吹き出して体感を高めている。

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 で体感だが,正直言って,グラフィックスの質について述べるのは難しい。ちゃんと比べると分かるのかもしれないが,アクションゲームではプレイが始まると画面の粗さとかはあまり気にしている余裕がなくなる。
 滑らかに宙を舞うギャラガの編隊や撃破時の破片などはきっちり描かれていて綺麗だが,どこまで高解像度化の恩恵を受けてのことなのかの判断は難しい(世界初公開のコンテンツだし)。
 じっくり見る系のコンテンツでない限りは気にしている暇がないというのが実情だとは思う。360度映像などのほうが,Vive Proの性能を確認しやすいのではないだろうか。

 音についても,稼働中のゲームセンター内でオンイヤータイプのヘッドフォンの音質を語る度胸はないので,小さめのわりには音圧高めでかなりよい感じだった,程度でまとめたい。ヘッドフォン以外の振動や風などを加味しての評価となるが,十分な臨場感を出していたように思う。空気弾の衝撃については,あとで思えばあったかなあという程度だろうか。プレイ中は撃つのに夢中になるので,細かい分析をしている余裕はない。こういうのは体感が自然だと逆に気づきにくいものなのだ。事前に聞いてなかったのが敗因か。


●ロケーションベースVRとVive Pro
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 Vive ProはViveの豪華版といった高品質版であるとともに,運用のしやすさ,Viveとの互換性の高さなどからして,これまでViveを使っていたようなロケーションベースVRの現場で多く使われるようになると思われる。その第1弾がVR ZONE SHIJUKUだ。
 VR ZONE SHINJUKUは世界で唯一,Vive Proのテスト運用施設に選ばれているわけだが,それにはすでに旧Viveを100台以上使ってきていることやロケーションVRで世界的に実績のあることなどから選定されたそうだ。ここでのテスト運用結果を見て,また製品にフィードバックされていくものと思われる。

 ギャラガフィーバーは,もともと旧Vive用に開発していたゲームをVive Pro用に調整したとのことだが,非常に簡単に対応できたとのこと。ゲームを動かしているPC自体も,ほかのアトラクションのものと変わっていないそうだ。とはいえVR ZONE SHINJUKU開設時点でのいちばんいいGPUだそうなので,2017年7月だとおそらくGeForce GTX 1080 Tiが使われているのではないかと思われる。最低でもGeForce GTX 1080だろう。なのでハードはそのままでも大丈夫だろうと判断したそうだ。
 バンダイナムコでは,これ以外にもVive Pro用のコンテンツをすでにいくつも開発しているという。前述のように,Vive用のものからそれほど手を加えずに対応できるからだろう。

 VR ZONEのコンテンツは今後Vive Proに機材を切り替えていくのかと聞いたのだが,従来のコンテンツはViveのままで運用していくようだ。理由はいくつかある。まず世知辛い話だが,VR ZONE SHINJUKUができたときに入れた機材の償却がまだ済んでないようだ。しばらく使う予定で入れているだろうからそれはしかたない。また,ゲームは開発時のままのシステムで運用されているそうで,現状で運用しているシステムのバージョン(古い)ではVive Proに対応できず,新しいバージョンでビルドし直すとなると,いくらか調整が必要になるだろうとのことだった。解像度指定だけ変えれば済むというものでもないようだ。今後の新規タイトルについてはVive Proに置き換えていく予定だという。

 現場のオペレーションについては,Vive Proのほうが少し楽になるだろうという見通しだった。旧Viveでは,メガネを付けたままでの装着に難があったのだが,Vive Proはヘッドセット部の横幅が拡大されたほか,フェイスパッド部もメガネ用に切り込みを入れられているなど,メガネ対策が進んだものとなっている。ヘッドフォン一体型なのもひと手間減らせる要素かもしれない。

フェイスパッドの一部がメガネ用に切り抜かれている
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 少なくともしばらくの間はVive Proを体験できるのは,世界でVR ZONE SHINJUKUだけだ。いち早く体験したい人は,3月9日から公開されるギャラガフィーバーに合わせてチケットを確保しておこう。

ギャラガフィーバーはVR ZONE SHINJUKUの4色チケットでは「赤」のグループに組み込まれ,羽根チャリなどと排他になる。ちなみに,リピートが多いというボトムズと釣りVRは3月1日より,どの色のチケットでもプレイできるようになったとのこと。つまり,4色チケットを買えば1日4回釣りをすることもできるようになった
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VR ZONE公式サイト

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