インディーズのためのDIY的PR5つのヒント

インディーズのためのDIY的PR5つのヒント
小規模なデベロッパが自力でゲームをPRしようとする場合の基本をVIM GlobalのAlex Van Lepp氏が説く。

 インディーズのゲーム開発は厳しい。とくに,初めてのゲームをローンチするのは大変だ。時は金なりだが資金は不足,成功裡にゲームを世に出すためにデベロッパは何でもやらなければならない。これは,ゲーム開発とはまるで畑違いなPRやマーケティングについてまでも責任を負うことを意味する。

 年間に何千ものタイトルがリリースされているが,メディアは同じサイズ感のままで(または減少している),また,インフルエンサーは遊ぶゲームの数を制限しているため,PRとマーケティングはインディーズのデベロッパにとってさらに難しくなっている。とりわけ自力でPRをやっていて,有力なコンタクト先を知らなかったり,PRに何が効果的で何がそうでないかをあまり知らなかったりすると,目立つことは難しいかもしれない。

 インディーズゲームが世間の注目を得る方法について無数の情報があふれているが,VIM Globalのチームや私は,DIYでPRを行うデベロッパが効果的にゲームをプロモーションできていないという現実を何度も見ており,もっと多くの皆さんに成功してほしいと思っている。これから書くDIY的PRのヒントは,ゲームのマーケティングに役立つはずだ。一般論でもあるが,ゲームの認知度を高めることの重要性を理解するのに役立つだろう。


メッセージを確固たるものにする


 メッセージを固めること,これがPRでまず取り組むべきことだ。なぜなら,メディアやインフルエンサーの注目を集めるだけでなく,資金調達の際にほかのゲームと何が違うのか差別化することが大事だからだ。ほとんどのパブリッシャや投資家は,延々と売り口上を聞いている時間はない。

「ターゲットとするオーディエンスを適切に特定し,つながる方法を知ることは大きなプラスとして働く」

 つまり,ゲームについて一文で明確に説明すること,また,ジャーナリストたちに向けて,彼らのオーディエンスであるゲーマーたちがプレイしたがるだろうと思わせる特徴や機能があることを示さねばならない。「2Dパズルのプラットフォーマー」などというありふれた言い方ではなく,ゲームについて明確に他と異なる部分に焦点を当てることをおすすめする。

 例えば,我々がAsteroid Baseのゲーム「Lovers in a Dangerous Spacetime」の仕事をしていたとき,プレイヤーが友達と宇宙船内をさまざまに動かしながら協力型のゲームプレイをさせるということだけでなく,ユニークなアートやチームワークの機能も大いにプロモーションした。そういうものも比較するのに役立つことがある。そして,「Lovers in a Dangerous Spacetime」の場合は,ゲームプレイと(スター・ウォーズの)ハン・ソロとルーク・スカイウォーカーがミレニアム・ファルコン号を操縦しつつ,銃撃戦の間,互いに怒鳴り合うというシーンと比較した。このタイプの比較は,とくに大きなメディアに対して非常に役に立った。


オーディエンスを知る


 インディーズのデベロッパがしばしば苦戦することの一つは,ターゲットとするオーディエンスを知ることだ。彼ら・彼女らを適切に特定し,つながる方法を知っていれば,メディアやインフルエンサーに働きかけようとする際に時間を節約できるため,大きなプラスとして働く。ゲームがどのようなところにハマるかリストアップし,どういう人たちがコアなオーディエンスなのかを見極めてくことをお勧めする。

「全員にコンタクトすることはできないし,間違った相手をターゲットにしていたら努力の無駄使いだ」

 ゲームを作っていると,販売店やインフルエンサーが最優先するターゲット層になるだろうが,ゲームによってはより広範なオーディエンスにリーチすることができる。協働ゲームしか扱わない販売店があるかと思えば,格闘ゲームに特化するものもある。探せばもっとニッチなものに特化した販売店があるだろう。


リサーチ


 自力でPRをやろうとすれ当然時間が限られるだろう。しかし,誰かにコンタクトする前にまずメディアやインフルエンサーについて調べる時間を取ることは成功の可能性を高める。闇雲に彼ら全員にコンタクトすることはできないし,間違った相手をターゲットにしていたら努力の無駄使いだ。ゲームを購入する可能性が高いコアなオーディエンスにつながる小規模な販売店やインフルエンサーに集中してコンタクトすることのほうが理にかなう場合もある。VRではとくにそうだ。

 やらなければならないことは,ゲームの重要なターゲットになるオーディエンスに影響力があるプレスに焦点を当てることだ。似たようなジャンルのゲームをカバーし,定期的に特定のトピックについて書いているメディアやインフルエンサーのリストを作成するのがお勧めだ。例えば,Game Informerには毎週SFのコラムがある。もしSF好きもゲームのターゲットオーディエンスであるならば,その記事のライターをコンタクトの対象にするのがいいだろう。

 メディアのリストで見たから,というだけの理由だけで連絡するのは一番ダメだ。きちんと相手を調べ,ローンチしようとしているのと同じジャンルのゲームやプラットフォームについてカバーしているか確認しよう。Rock Paper ShotgunのようなPC専用のメディアに家庭用ゲーム機コードを送ってはいけない。時間とコードの無駄になるだけだ。


メディアとインフルエンサーへのコンタクト


「関心をどれくらい高められるかは,PRのプロセスにどのくらいの時間と労力を費やすかによって変わってくるだろう」

 ジャーナリストやインフルエンサーには1日に何百ものメールが来て,とても全部に目を通している時間はない。メールを開いてもらうには,ほかのゲームと区別すべくインパクトある件名をつけることをお勧めする。なるべく短くして,さらにほかの有名なゲームと比較してみよう(「コール オブ デューティとロケットリーグのいいとこ取り」など)。事前に調べておけば,似たようなゲームをカバーしているのが誰か把握し,それをベースに説得力のある件名を作ることができる。GDC Best in Play賞など,過去に受賞したことがあれば明記するのがいい。また,送る相手が,あなたが開発した過去のゲームをカバーしたことがあるのであればそのことにも言及しよう。

 ジャーナリストに連絡するときは,タイミングが大事だ。夜間にメールを送ったり電話をかけたりしても,取り上げてもらえることはない。メディアには通常の業務時間中に連絡し,そのライターがどこを拠点にしているのか確認する必要がある。さらに,近日中に開催されるイベントがないかも注意しておこう。ゲームショウなどがある場合,そこに向けて編集者の受信トレイは,ますますメールであふれ返ることになるからだ。

 最後に一つ。返事がなくてもメディアやインフルエンサーに対してフォローアップするのをためらわないように。もしかすると彼らはあなたの最初のメールを見落としていたかもしれないし,メールの件名をもう少し目立つものに微調整する必要があるかもしれない。手間はかかるが,もしコンタクトすべき正しい相手なのであれば,大して面倒なことではないだろう。


いつローンチすべきかを見計らう


 インディーズ・デベロッパは,秋のリリースを回避すべきだろう。一連のAAAタイトルのローンチとタイミングが重なってしまうからだ。だがしかし,最近はメディアが「遅い」ということはほとんどない。競合するゲームのリリースが少ないタイミングで日付を選び,PAX,E3,GDCなどのゲームショウがいつ開催されるかにも留意しておこう。家庭用ゲーム機でのローンチの場合は,最適なリリース日を選んでもらうためにも(ハード側の)担当者と協業するべきだ。

 さらに言うと,もしゲームに特定のテーマがある場合は,記念日や文化的なイベントなどに合わせるのがいい。我々がPS4で「Lovers in a Dangerous Spacetime」をローンチしたときは,ゲームのテーマである「愛」と絡めてバレンタインデーのタイミングでリリースすることにした。その結果,成功しただけでなく,ストリーマーとメディアの両方からバレンタイン特集としてのカバレッジを獲得することもできた。

 全体的に見て,開発したゲームに対する関心をどれくらい高められるかは,PRのプロセスにどのくらいの時間と労力を費やすかによって変わってくるだろう。せっかく膨大な時間をかけて素晴らしいゲームを作っているのだから,人々にその存在を知ってもらうために労力を費やすことは実に意味があるのだ。

Alex Van Leppは,独立系のマーケティング・PRの戦略コンサル「VIM Global」のパートナーであり,ゲーム,家庭用電化製品および技術に関するサービスを提供している。同社はこれまで「Guacamelee!, Severed 」のDrinkBox Studios,「Runbow 」の13AM Games,「Lovers in a Dangerous Spacetime」のAsteroid Baseなどのインディーズを顧客にしており,最近では予算が限られたインディーズデベロッパ向けにPRサービスを提供する新しいサービスGameBoostを立ち上げた。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら