EA:サブスクリプション型ストリーミングがゲームにおける「破壊者」になるだろう

「過去45年間よりも,この先5年間で起きる変化のほうが大きいだろうと確信している」とAndrew Wilson氏が語る。

 Electronic Arts(以下EA)の第1四半期の決算発表後のアナリスト向けテレビ会議で,同社最高経営責任者(CEO)Andrew Wilson氏と最高財務責任者(CFO)Blake Jorgensen氏は,同社の成長戦略,とくにテクノロジーの変化と小売対オンライン販売の組み合わせについて詳細に語った(参考URL)。

 前者についてWilson氏は,ストリーミング技術のおかげで業界はかなり大きな見直し時期に来ていることを強調した。クラウドについて多くの話があり,また,過去に「ゲームのNetflix」とでもいうべきサービスを導入しようとして失敗したがそれは今後実現すると信じていることも語られた。

 「多くのことに投資しています。過去45年間よりも,この先5年間で起きる変化のほうが大きいだろうと確信しています。そして,我々は,その変革と新たな価値創造の最前線にいたいと考え,投資にしっかり集中しています。この種のプロジェクトに何百人もの人員を配置していませんが,どこにどのように投資すれば最大のリターンが得られるかを精緻に計算してターゲットを定めています」

 「多くの投資計画は実際のところ約5年強の期間で考えていますが,クラウドとストリーミングのようなものはもっと短く,2〜5年で考えています。サブスクリプションについて考えると,すでにリターンが出始めており,その短い時間軸でのサブスクリプションとストリーミングの組み合わせは,収益に追加が出るという点で非常に意味があります」

「サブスクリプション型ストリーミングの盛り上がりは,最終的に我々のビジネスにとって大きな『Disruptor』になると考えています
-Andrew Wilson氏

 さらにWilson氏は,「過去5年間のメディア消費量を考えると,ストリーミングとサブスクリプションの組み合わせが最大の『Disruptor』(破壊者:既存のものを凌駕し新たな価値やサービスを提供するもの)になっていると思います。それはテレビの見方を変え,音楽を聴く方法を変え,所有権対アクセスの関係の考え方を変えました。サブスクリプション型ストリーミングの盛り上がりは,最終的に我々のビジネスにとって大きな『Disruptor』になると考えています。我々がそこにもう何年も投資をしているのをご覧になっているでしょう。何年か前にストリーミングテストを開始しており,今後も継続します。また,将来的に我々のビジネスにとってストリーミングがどのように役立つ可能性があるかについて,ほかの大規模な主要パートナーと引き続き取り組んでいます。EA AccessとOrigin Accessをローンチしましたが,サブスクリプションとその周辺での機会を増やし,両方のベクトルでプレイヤーにとってより多くの価値を提供していくことをご期待ください」と語った。

 EAが短期的な視点ではそれほどエキサイトしていないものの,引き続き追求しているもう一つのテクノロジーは,バーチャルリアリティだ。そうは言うものの,Wilson氏は,AR経験がより多く採用される可能性が高いことを認めている。

 「我々にも,そして業界にも,VRに関する新しいニュースはさほど多くありません。消費者の皆さんがあらゆる種類のエンターテイメントとインタラクティブするのに信じられないくらい素晴らしいイノベーションであると,VRという概念に賛同したように見えますが,マスマーケットに浸透するのに少なくともあと数年はかかるでしょう」とWilson氏は話す。

 「我々はまだこれまでと同じポジションにいます。ゲームエンジンFrostbiteのコアVR機能を有効にし,家庭用ゲーム機のエクスペリエンスを提供しつつ,モバイルのエクスペリエンスも提供しようとしている段階にあります。我々は引き続き「VRの中ではスポーツゲームはどのようなものか? VRのファーストパーソンシューティングゲームはどんなものか? VRのアクションアドベンチャーゲームはどのようなものか?」といった部分で境界を押し広げようとしています。それは実際にはデザインレベルの話でありこれから何年かかけてマーケットで現れ始めるものです」

 「ARはもっと面白いと思います。プレイヤーのゲームエクスペリエンスを強めたり拡大したりするために,プレイヤーに関する興味深いものや大事なもの,すなわちロケーションやゲームプレイ,友人のデータをゲームに利用させる,モバイル,家庭用ゲーム機,PCゲームへのデータオーバーレイという概念は,今後思ったよりも早く出て来そうですし,プレイヤーがバーチャルワールドを拡張するために,リアルな世界のどういったデータを使いたいか,現在,我々のクリエイティブチームが熟考を重ねていますので,今後数か月,数年のうちに,もっとお見せできると思います」

 Jorgensen氏は,本会の冒頭で,EAがデジタル画像の進化についてどのように見ているかについて明らかにした。NPDグループが最近我々GamesIndustry.bizに語ったのと同様に(関連英文記事),同社はデジタル販売のさらなる成長を予測しているが,小売業態は私たちの多くが思っていたよりもずっと長く存在し続けるだろうとのことだ。以前EAはフルバージョンのダウンロードは60%の閾値を超えたいと話していたが,同社のグローバルなあり方が実際のところそれを押しとどめてしまっている。

「我々のマーケティングは,メッセージを伝えるために伝統的なメディアからはどんどん離れ,世界中のインフルエンサーたちに舵を切っていきます」
-Blake Jorgensen氏

 「まず最も大事なことは,我々が極めてグローバルであるということです。米国で,また英国やフランス,ドイツなどの主要国では帯域幅の高速化が進んでいますが,ヨーロッパ全土や東ヨーロッパ,アジアなどでは一貫していません。ですから,これがおそらくゲームをフルバージョンでダウンロードする際の最大の障害でしょう」とJorgensen氏は指摘する。

 「次に大事なのは,米国やおそらく北欧などでも同じだと思いますが,キャッシュレスな取引方法がかなり整備されています。しかし,世界のほかの地域ではそこまで発展しているとは言えません。ですから,クレジットカードやPayPalなどあらゆる種類の電子決済の利用にはまだまだ道のりがあります。これら二つがフルバージョンのダウンロードにおける最大の障害だと私は思っています。一度でもゲームをフルバージョンでダウンロードした消費者はいかにそれが簡単で,ゲームを管理するためにいかに効率的かを理解するので,抵抗は見えません。実際のところは,帯域幅に関する問題とキャッシュレスで支払えるかどうかに尽きるのです。これらは長期間を要する入り混じったモデルであると考えています」

 フルバージョンのダウンロードにはいくつかの障害があるが,EAにとっての事実は,デジタルライブサービスのインパクトが同社の運営方法の多くを変化させており,よって,それが,マーケティング計画にも大きな影響を与えているとJorgensen氏は説明する。本質的に,オンライン製品のサポートのようなマーケティングは,年間を通じての取り組みとなる。

 「マーケティングコストのために過去のパターンを使用しているのであれば,時間の経過とともに考え方を変え始めるべきです。なぜなら,我々が言ったように,ライブサービスの世界にいて,モバイルビジネスがますます大きくなるにつれて,タイトルの打ち上げに合わせてではなく,日々,ビジネスの運営や管理をしているのですから」とJorgensen氏は続けた。

 「よって,我々のマーケティングコストは年間に渡ってもっと均一化していくと思います。大きなタイトルがローンチされる第二四半期,第三四半期は引き続き突出して多くなるでしょうが。しかし,我々はFIFAやMaddenに何か月か前から費用を割き始めましたし,11月まではマーケットに出てこないスターウォーズへの支出を開始しています。これに対して,旧来型のマーケティングモデルでは,製品を出荷する3〜4週間前に支出のピークが来ていました。映画に似ていると言えるでしょう。我々は,ROI(Return on Investment - 投資利益率)に基づいたマーケティング体制を構築していっており,それが機能するようになったら継続して資本を投入していきます。我々のマーケティングは,メッセージを伝えるために伝統的なメディアからはどんどん離れ,世界中の「インフルエンサー(影響力ある人)」たちに舵を切っていきます」と語った。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら