Mad Catzはなにをしくじったのか?

一時は世界で最もパワフルな周辺機器ブランドだったこともあった,しかしいまMad Catzは破産している。

 Mad Catsの名がビデオゲーム周辺機器市場と同義だったときもあった。

 カリフォルニアの巨人は28年前に生まれた。ゲームパッドやメモリカード,その他の周辺機器の製造で,低品質だが公式のファーストパーティ製品より圧倒的に安いという評判を固めていった。

 数年をかけた一連の買収によって, Mad Catzは周辺機器王国を築き上げた。ダンスパッドやフライトスティック,チートディスク,そしてプレミアムアーケードコントローラなどで,同社はプラスチック製周辺機器市場のリーダーとなった。

 今年3月,残念な決算の知らせに続いて,同社は破産申請を行った。

 「たくさんの賭けに負けました」とLucidSoundの共同設立者であるAaron Smith氏は語った。Smith氏はほぼ6年間にわたってLucidSoundのパートナーであるChris Von Huben氏とともにMad Catzで過ごしていた。彼らは共にMad Catzが2010年に買収したTrittonから参画していた。

 「ゲーム機Mojo計画には多くの投資が行われましたが,それはまったくもってうまくいきませんでした。Rock Bandはうまくいかなかったものでも最大の案件でした。最初に同梱されたRock Band 3でさえ,初年度は成功に見えたにも関わらず,翌年には,小売チャネルの在庫は返品されるか割引せざるをえない状況になりました。これは本当にその後の財政状況を悪化させるものでした」

ゲーム機Mojoは誰にも望まれていなかった

 Rock BandとMojo Androidデバイスは,Mad Catzを栄光の座から引きずり降ろした失敗作の代表である。さらに同社は競合がひしめく周辺機器分野への適合に苦戦していた。

 同社はニッチな分野で迅速なビジネスを展開していたが,ますます儲かるようになったゲーマー向けヘッドセット部門を維持するのに苦戦していた。そこでMad Catzは外部で才能を見つけ買収するという賢い選択を行った。そうして100万ドルで買収されたのがTrittonだ。

 「我々はリーズナブルなプレミアムブランドでした」とSmith氏は説明した。「我々はまともなサウンド品質と,(ローエンドの)Turtle Beachと(ハイエンドの)Astro製品との間の価格で,洗練された工業デザインを持っていました。ですので,Astroより100ドル少ない金額で,それに匹敵するようなものを手にすることができました。それに対して,我々より50ドル安いTurtle Beachでは,彼らのデザインのほとんどは少しプラスチック感が目立ち一般的なものでした。

 「それが我々のブランドの位置づけでした。ではMad Catzはというと,本当に高品質だったアーケードスティックを除くと,プレミアム感の低いブランドとして知られていました。彼らはあなたがファーストパーティ製品を買うだけのお金を払いたくないときに買う安っぽいコントローラで知られていたのです。しかし,彼らはMad Catz のブランドをTrittonブランドの上にしようとしていました。彼らはだんだんと安いTritonヘッドセット ―100ドル以下といったものを― 発表し続け,彼らはFREQという300ドル以上以上する独自のヘッドセット製品ラインを作りました。彼らはMad CatsというブランドがTrittonブランドの品格を示せないという事実を見誤っていたようです」

Rock Band 4はMad Catsで大きな失望となった
Mad Catzはなにをしくじったのか?
 「フォルクスワーゲンがアウディを買収したときと似ています。同社はフォルクスワーゲンのセダンとして8万ドルのPhaetonを発売することを決めましたが,誰も買いませんでした。なぜならフォルクスワーゲンだったからです。本質的に,それはアウディA6であり,誰もが乗りたいと思うようなクルマでした。しかし,フォルクスワーゲンにその金額を喜んで払うような人はいなかったのです」

 Mad Catzは競合がいないような分野でのマーケティングにも気をつけていた。

 「我々はWarheadのような2種類のクールなヘッドセットを提案しました。これはXbox 360で最初の完全にワイヤレスなヘッドセットになるものでした」とSmith氏は語る。「Mad Catzはそのマーケティング展開にまったく本腰を入れてくれませんでした。彼らは彼らのマーケティングチャネルにそれを投入するので,どうなるか見てくれといいました。そして我々は1年間で7000万ドルという,まずまずの収益を上げました。しかし同時期にTurtle Beachが同社の未公開株の投資を使ってどのように展開したかを見ていたらどう思うでしょうか。彼らは1年間に3億ドル以上を売り上げたのです」

「彼らはRock Bandはダメで,Mojoもダメで,一貫して利益を上げているのはヘッドセットビジネスしかないことを悟ったのです」

 Smith氏とVon Huben氏はヘッドセットに,直感的なボリュームコントロールを持った流線型のミニマルなコンセプトの新機軸を打ち出した。しかしMad Catzは浅はかなSF調の(フラッシュライト仕上げの)ものを好んだのだ。それはウェールズのマゴーにあるかつてのSaitekの開発者たちによってデザインされていた。意見の違いが見られ,Smith氏とVon Huben氏はLucidSoundを立ち上げ,そこで彼らのヘッドフォンコンセプトを作り上げた − Mad Catzはそれを許容していた。

 Turtle Beachの爆発的な成長には及ばないとはいえ,ヘッドセットはMad Catzにとって数少ない採算部門の一つとしてあり続けた。同社がビジネスに待ったをかける直前に,同社はTrittonをもう一度押し出した。しかしそれは遅すぎた。

 「Tritton買収後の最初の1年間,Trittonヘッドセットは彼らの売り上げの50%を占めていました」とSmith氏は結んだ。「そして,最後まで一貫してそのレベルの状態を保っていました。しかし,彼らがTrittonに再注目すると言い出すことは去年までなかったのです。彼らは事業を停止する直前にArkシリーズを出してきました。その時点で,彼らはRock Bandはダメで,Mojoもダメで,一貫して利益を上げているのはヘッドセットビジネスしかないことを悟ったのです。そこで彼らはヘッドセットに注力することに決めました」

 「築き上げてきたものが終わりを迎えるのを見るのはいつも悲しいものです。私は誰かがTrittonブランドを拾ってくれることを希望しています。私は買収に興味を持っている人たちがいることを知っています。(Mad Catzは)倒産時に真っ先に売ろうとしていました。負債なしでなら人々はそれを拾ってくれるでしょう。彼らは物理的な資産を手に入れられないかもしれません。なぜならMad Catzがそれに支払ったかどうか私は知らないのです。しかし彼らはブランドとその下で作られた製品を手にすることができるでしょう」

 「私はChrisと,我々がそれを買ってTrittonブランドをもう一度偉大なものにすべきだと冗談で言っています。しかし具体的な計画があるわけではありません」

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら