Epic Gamesは“games-as-a-service”に移行する

Unreal Engineの製造元のワールドワイド クリエイティブ ディレクターを務めるDonald Mustard氏は,ビジネスモデルの変更がいかに競争の仕方を変えるかについて考察した。

 10年前,Epic Gamesは全然違った会社だった。Unreal Engineの面でいうと,そのビジネスはまだ,デベロッパがその技術に接するために渋々何百万ドルも支払うというAAA作品に依存していた。ゲーム開発の面からいうと,同時に1作を制作するスタジオで,Unreal TournamentとGears of Warに特化して10年間の半ばまで引き伸ばされた作業を行っていた。

 現在では,Epic Gamesはまったく変わっている。Unreal EngineのビジネスモデルはAAAマーケットと盛り上がりつつある小規模デベロッパの統合に対応している。いまやロイヤリティベースの収益モデルによって無料で利用できるのだ。ゲームでは,Epic Gamesはモバイルにも展開し, Infinity Bladeシリーズで成功を収めた。Microsoftに売却することでGears of Warと関係を絶ち,同社にとっての新領域に幅広くオリジナルIPのポートフォリオを連ねている。PCではVR格闘のRobo Recall,モバイルではタクティカルRPGのBattle Breakersだ。

 ゲーム分野の移行を監督するのは新たにEpicがワールドワイド クリエイティブ ディレクターに任命したDonald Mustard氏だ。氏はEpicの子会社とInfinity Bladeを作ったChair Entertainmentでクリエイティブ ディレクターを務めた人物だ。先月のGame Developers ConferenceでMustard氏はGamesIndustry.bizにこの変化に対する洞察を語ってくれた。

 「5年ほど前から,業界が伝統的なパッケージ製品から大規模に移行する気配を見せていることに気づいていました」とMustard氏は語る。「そして,我々はその変化が起きる前に,自身が変わっておきたいと思ったのです。そしてこの5年ほど我々は,会社をもっとgames-as-a-service(サービスとしてのゲーム)とengine-as-a-service(サービスとしてのエンジン)にフォーカスしたものに変えていたのです」

 移行による最初の成果は昨年店頭に並んだParagonのローンチだった。それはPCとコンシューマゲーム機用のMOBAでありながら,このジャンルの標準であるLeague of Legendsよりもアクションと動き回ることに関してゲームスキルを強調したタイトルだ。この作品は少なくとも部分的にはMOBAにインスパイアされたであろう“Hero Shooting”の有名ゲーム2作品,BlizzzardのOverwatchとGearboxのBattlebornとほぼ同時期に発売された。ご存じのように,Overwatchは一種の社会現象のようなものを引き起こている(関連英文記事)。Call of Dutyが期待外れだったにも関わらず(関連英文記事),Activision Blizzardに記録的な結果をもたらし,DICEとGame Developers Choice AwardsでGame of the Yearの栄誉に輝いたのだ。しかし,往年の大ヒットであったCall of Duty: Modern WarfareやWorld of Warcraftはそのジャンルの競合タイトルから太陽を覆い隠すような傾向があったのだが,Mustard氏は今回に限ってそれはないと語っていた。

 「Paragonは素晴らしいことをやっています」と氏は語る。「Paragon以上の成功は味わったことがありません」

「我々はLeagueとDOTA,Overwatchの成功を見てきました。それに対して『なんてことだ』と言う代わりに,それはこれまで聞いた中で最も勇気付けられるニュースだと言いたいですね」

 Mustard氏はいくつかの数字を共有してさえくれた。それは12月初めの月間アクティブユーザー数が60万人に達したときのものではなく,Monolithアップデートが継続的な成長の引き金となり,いまや月間アクティブユーザー数85万人を誇るまでになったというものだった。

 「我々はLeagueとDOTA,Overwatchの成功を見てきました。それに対して『なんてことだ』と言う代わりに,それはこれまで聞いた中で最も勇気付けられるニュースだと言いたいですね」とMustard氏は語る。「なぜなら,それらはこのゲームジャンルが大きな注目を集めていることを示していたからで,我々のその分野への投資熱はさらに上がりました。あまり誇張したくはないのですが,我々はゲームの黄金期にいるような気がしています。これほど幅広くディープな観衆がビデオゲームをプレイすることを望んでいるのですから。もしあなたが観衆に向けてなにかゲームを作れば,彼らはやってきて,それをプレイし,それを愛して,留まるでしょう。Overwatchの成功ほど嬉しかったものはありません。なぜなら,それはこのジャンルが成熟に向かっていることを示していたのですから」

 これはgames-as-a-serviceが業界に定着しつつある証拠だとMustard氏は語る。もはやパブリッシャは成功させるために爆発的なローンチとか大規模な牽引は必要ない。ゲームのローンチ以降はコミュニティの初期フィードバックに耳を傾け,それをプレイヤーが望む体験に形成していく。これが長期ヒット作を作る秘訣だとEpicは信じているのだ。

 「この業界が20年以上にわたってゲームを作ってきたようなもっと伝統的な手法はたぶん映画業界に似ています」とMustard氏は語る。「あなたがゲームを作ったとして,それが成功したらあなたは続編を作ります。それが成功したらあなたは別の作品を作るでしょう。これはgames-as-a-serviceと似ています。予見可能な将来にわたっては,少なくとも市場の大半はおそらくもっとテレビに似ているでしょう。誰かがパイロットフィルムかショーの第1期を作ったら,それはないですか(と手を振る),『さあエピソード10までは続いてくれよ,でないとヤバいんだ』彼らは長期間にわたって観客を保持できるような数年がかりの作品を作りたがります。私は,これが現在ゲームをデザインするのに必要な手法だと考えているのです。あなたは非常に長期にわたって観客を構築するゲームをプレイしているのです。観客を保持しつつ,何年にもわたって楽しませながら」

 games-as-a-serviceのビジネスモデルは単にEpic Gamesの寿命を延ばしただけでなく,すでに同じアプローチを採用したほかのパブリッシャにも同じ効果をもたらしている。そして,デベロッパは同時期に発売された同ジャンルのゲーム以外に近年の大ヒット作や何年も遡った業界の永遠の巨人たちともプレイヤーの時間とお金を巡って競争繰り広げている。

「人間の頭の中には同時に何本のゲームが入り込めるんでしょうか? 一つ? それとも二つ? そのうち1本はコンシューマゲームでもう1本は携帯ゲーム? どういう割合なんでしょうか?」

 「これはゲーム業界にとって新しくユニークな挑戦です」とMustard氏は語る。「基本的に,人間の頭の中には同時に何本のゲームが入り込めるんでしょうか? 一つ? それとも二つ? そのうち1本はコンシューマゲームでもう1本は携帯ゲーム? どういう割合なんでしょうか? 私には分かりませんし,まだ誰も答えを見つけていないでしょう。将来における競争というのは「現在プレイしているゲームがある人をそこから引き離して,あなたのゲームに引き付けることができるか?」といったものになります」

 Mustard氏はこの難問を解決する鍵は,これまでその分野のリーダーが提供していたものとはまったく違ったものを提供できるかに掛かっていると信じているようだ。

 「私はDestinyの大ファンです。一つの例ですが」とMustard氏は語り「もし私がDestinyをプレイしていて,Destinyに似た別のゲームがやってきたとしましょう。私はそのゲームよりも,Destinyとはまったく違ったゲームのほうが,私をDestinyから引き離せそうな気がしています。おそらく,Destinyに似たSFシューターよりもRed Dead Redemptionのほうが効果がありそうです」

 Epic Gamesにとってそれは,Mustard氏がいうところのさまざまなジャンルにわたって“革新的で明確で,デザインにフォーカスした製品”を提供することを意味している。それにも関わらず,氏はGears of Warや Unreal Tournamentといったシューティングゲームは“まだ我々の骨身に染み付いている”と氏は主張している。この会社がこれまでと同様に,一つか二つの似たような製品に頼ることがあるとは考えてはいけない。

 「我々は,今後乗り出すどんなジャンルであれ,プレイヤーを楽しませる凄いゲームを作りたいと思っているだけです」とMustard氏は語る。「しかし,どんな形であれ,特定のジャンルやスタイルで型にはまった企業にはなりたくありません。我々はそういったものより遥かに多彩なのです」

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら