バイオハザード7:批評家たちのコンセンサス

バイオハザードシリーズ10年の系譜で最も恐ろしいゲームと口を揃えて絶賛。

 新しいResident Evil(以下,バイオハザード)が発表になったが,ゾンビだけが足を引きずって登場してきたのではない。ここ数週間,ゲーム業界のWebサイトや雑誌などの媒体がこぞって,今となっては伝統,いやもはや誰もが経験する通過儀礼ともいえそうな,それぞれにとってのバイオハザードシリーズ最高の時代の記憶を掘り起こしつつ,生まれ変わった新作について論戦を繰り広げている。

 バイオハザード4はもちろん画期的なタイトルだったが,時の経過とともに,ネガティブな面も見せるようになってきた。それは,カプコンの成功を阻むものであり,または批評家たちがその高みに及ばない(実際のところすべての)後続作品を叩く杖のようなものだ。

 発売されて11年経つバイオハザード4に対して感傷的になってしまう傾向は,明らかにそこに希望があるからだ。このゲームが当時のシリーズ前作に対してそうであったように,新鮮で閉所恐怖症的で挑戦的な,別の新しいバイオハザードが,いつかまた出てくるという希望だ。AAAタイトルのラインアップが次第に減っているように思えるが,カプコンも,間違いなく同じことを感じているはずだ。

「一人称視点へのシフトによりバイオハザード7はこの10年超でリリースされたシリーズより,さらに根幹的な部分に近づきました」

 シリーズ7作めとなるこのゲームは,最終的に,シリーズ最高作と謳われたバイオハザード4の伝説に終止符を打つのに十分かもしれない。一人称視点へのシフト,広く宣伝を行ったPlayStation VRへの対応,20年以上前に始まったこのシリーズの日本語タイトル「バイオハザード」と,この10年の保守本流でないバイオハザードシリーズからカプコンがはっきりと一線を画そうとしてきたのはかなり前から自明だ。

 バイオハザード7はリブートとして設計されているが,リブートは常に一定の危険性を伴う。しかし,本作では,リスクはすでに払われた。新しい方向性を打ち出すことでシリーズ中核としての価値を取り戻した続編を,批評家たちはほぼ全員一致で賞賛している。Polygonのレビューでは,10点中9点を与えられ,デザインのチョイスとしては「バイオハザードシリーズの系譜との共鳴」だが,新しい視点の設定で,一時的に長年のファンを分かつ可能性が多いにありそうとコメントされている。


 「一部のファンは,この変化をカプコンが道を見失っているさらなる証拠だと非難していますが,それは事実とまるでかけ離れています。一人称視点へのシフトによりバイオハザード7はこの10年超でリリースされたシリーズより,さらに根幹的な部分に近づきました。完全に制御可能な一人称視点はオールドスタイルのバイオハザードの静的な三人称視点とはかなり異なりますが,限定視点という重要な要素を共有しています。バイオハザード7ではターニングスピードを極めて遅くすることで,さらに視点を制限しています。これによってプレイヤーの探索には膨大な緊張感が加わります」

「重層的なエフェクトは,最終的に恐怖,疲労,吐き気のどれかを引き起こします」

 バイオハザード7ではまた,舞台がいくつかの前作にあったような広大な景観の代わりに単一の場所に切り替わった。ルイジアナ州の湿原にある朽ち果てた邸宅という,バイオハザード一作めとそっくりな設定に納得するPolygonのコメントの続きはこうだ。「武器などのリソースを集めるために,邸宅の隅々まで確認しなければなりませんでした。加えて,秘密の通路を覚え,後ろに隠れることができるドアを見つけなければならず,どの廊下が一番安全かを把握する必要がありました」

 「とくに安全な場所を把握することが重要です。恐怖感と救いのなさでは,本作がこれまでのシリーズで一番ですので」

 ガーディアン誌もまた,その恐怖の虜になり,その試練と引き換えに5つ星をつけた。バイオハザード7は「芳醇な恐怖と驚愕」を最前面に強調するサバイバルホラーであり,一人称視点に切り換えることでそれはさらに増幅されるのだ。

 「アドレナリンを誘発させるような重層的なエフェクトは,最終的に恐怖,疲労,吐き気のどれかを引き起こします。あなたは新しいドアを軋ませつつ開けるときにその金切り音を避けたり,反対側から顔を掴まれてスクリーンが揺れないようにするためにちらりと携帯電話を見下ろすことを学ぶでしょう。ゲームデザイナーはそのような回避策に賢明であり,予測できない間隔で恐怖を配置しています」

 実際,ガーディアン誌は,バイオハザード7でもって,カプコンはついに過去のめざましい成果の数々と同等のゲームをリリースしたと結論づけた。「本質的な部分を維持しつつ,技術の進歩に合わせて古いゲームシリーズを再創造するのは,ゲームデザインにおいて最も偉大なチャレンジと言えます」事実,これまでバイオハザードのクリエイターたちはその点がうまくいってなかった。しかし,バイオハザード7は非常に新鮮でありながらも,バイオハザードシリーズの過去の輝かしい作品と肩を並べる素晴らしいものとなった。

「バイオハザード7をカジュアルなサバイバルホラーだとまでは言わないが,方向性としてはそちらを向いている」

 バイオハザード7を取り巻く総じて高い評価の中では明らかに少数派だが,異議を唱える声も聞こえてくる。例えばタイム誌は,カプコンが閉じられた邸宅内という環境で見出した微妙なバランスを崩壊させるゲーム後半の愚かな選択を嘆いていた。周辺の沼地を通るのが「機械的な手順での最終章」であるわけだが,プレイヤーの「戦闘能力」を恣意的にに奪う展開は「いやらしい」と評されており,最終的に必要以上の弾薬やセーブポイント,パワフルすぎる防御アイテムが提供されているのだ。「バイオハザード7をカジュアルなサバイバルホラーだとまでは言わないが,方向性としてはそちらを向いている」とし,多くの肯定的なクオリティにもかかわらず,わずか50点に相当するスコアをつけた。

 Eurogamerは,「Recommended(おすすめ)」や「Essential(神ゲー)」をつけるほどのインスピレーションを得ていないようだったが,もう少し肯定的だった。ゲームの環境デザインと雰囲気には大きなメリットがあるとするものの,頻繁な「お膳立てされたような急激な恐怖」や「より高いクラスの怪物」がいないことが,せっかく全方位的に素晴らしいゲームになかけているのに足を引っ張っているとした。


 「(バイオハザード7の)根底は割とよくあるタイプのゲームです。ちょっとしたプレイの連続,各々密接に関連がある環境の中にばらまかれた銃撃戦,作りとして不足はありませんが,本当の意味でのイマジネーションというものでもない……。一度バイオハザード7が仕掛ける策に慣れてしまえば先に何が潜んでいるかを恐れる必要はほぼないと言えるでしょう」

 もしPlayStation VRを持っているなら,上記のような批評が本当かあなた自身で試せるはずだ。バイオハザード7に関するほとんどのレビューはVRでの体験ではなく,もしそうだとしてもゲームの本質的な部分から外れたものに終始しがちだ。そしてその少数のコメントの中でさえ,さまざまな意見が飛び交っている。Eurogamerは,意図しない面白さを生む技術的な不完全さがあるものの「控えめに面白い」とした。PolygonはVR酔いに悩まされ,ゲームの最も静かな部分以外は「VR版で遊ぶのは理想的ではない」と評した。一方,ガーディアン誌は,このような恐ろしいゲームを,さらに没入感のあるフォーマットでプレイしたいと思わない人がいるだろうかと讃えた。

 Ars Technicaは,はっきりした批判を述べる前に,不快,不安感,不安定さを抱いていたことを喜んで認めた。「ナイフが顔に突きつけられている。視界を劇的に変える敵,最後のグロテスクな一撃を実行する殺戮の瞬間。こういった楽しいシーンはテレビで見るとクールですが,VRだとより一層リアルで素晴らしいのです」

 「この新しいゲームは,人々がVRでどのようにホラーをやるか考え始めたタイミングと同時に登場しました。バイオハザード7は,その質問には答えておらず,勝利を収めた血みどろの手でテーブルを叩くのです。挑戦的な態度のポーカーのチャンピオンのように。公平を期して言っておくと,バイオハザード7は,とくにハンドトラッキング対応のコントローラや部屋での空間感覚などについて,まだVRを開拓しきっていません。しかし,快適に動くことができ,実体験感があり,飛び上がるほどの恐怖の仕掛けをもたらす洗練されたハンドリングにおいて,右に出るものはありません」

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら