「Warframe」成功秘話「プレイヤー間の口コミに勝るものはない」

記録的な成功を成し遂げた「Warframe」だが,すでにローンチされてからすでに3年半が経過している。その成功の理由はなんなのか,その開発を行ったDigital ExtremeのMeridith Braun氏が,自分たちの作品の健康をどのように維持していくべきかについて語った。

 つい先日のことだが,Warframeの拡張パックとなる「The War Within」が11月11日にリリースされたことを受けて,Digital ExtremeがFree-to-PlayでリリースしているオンラインシューティングゲームWarframeは,その週末のSteamランキングではトップ3に入り,最大6万8530人もの同時接続プレイヤー数と,その3日間だけで120万時間もプレイされるという大きな偉業を成し遂げた。2013年にリリースされたPC版と,その後に追加されたPlayStation 4およびXbox Oneプラットフォームには現時点で2600万人分ものプレイヤーアカウントが作成されているが,このうち100万人が11月中にプレイをしており,今後2週間ですべての月間自己記録を次々と塗り替えようとしている。

 実際に素晴らしいのは,ゲームサービスが沈静化していても誰も問題視しないであろう,ローンチから3年半も経った時期に,このような数字を達成していることだ。しかも,突然多くのプレイヤーが戻ってきたというわけでもない。実際,SteamSpyのデータベース(参考URL)を見てみると,プレイヤー数は徐々に増えており,アップデートやパッチ,そのほかのコンテンツの投下もしっかりとしたスケジュールで行われている。サービスが円熟することで,現在でもプレイしている熱狂的なファンたちからプレイ料金を毟り取ろうというのではなく,その強みをしっかりと活かしている様子だ。

 Digital Extremeのパブリッシング副社長Meridith Braun氏は,この成功は,Warframeという同社の社運をかけた実験が予想を超えて大きな成果を得たことからの,綿密な戦略の折衷案であったと説明する。重要なのは,これが慎重なファン獲得のプロセスであり,現存するプレイヤーに対する長期的なキュレーションとエンゲージメントを犠牲にしたものではないことだと言う。

 「やはり,獲得した新しいプレイヤーと昔からプレイしているベテランプレイヤーの双方にサービスを展開するというのは微妙なバランスの上に成り立っているのは間違いありませんね」と語るBraun氏は,「しかし,3年半もの間,ゲームの中核となる部分は大きく成長しており,参入したばかりのプレイヤーにとっては,ベテランプレイヤーたちに追いつくのに。何百時間にも及ぶミッション,クエスト,キャラクターのカスタマイズ要素,そしてゲームシステムの探求が必要です」と語る。

 「もちろん新しいコンテンツやゲームシステムの改良はベテランプレイヤーに向けたものを中心にアップデートしますが,2016年初めには新しいプレイヤー向けのゲーム体験について見直して,チュートリアルやユーザーインタフェースを一新し,クエストをつなぎ合わせてストーリーの流れを明確にしたり,マーケットをより機能的にしました。The Second DreamやThe War Withinのような目立ったアップデートではありませんが,まだWarframeを未体験というプレイヤーでも分かりやすいゲームにするという,ロングテールな視点でゲームシステムを整備したのです。コンテンツが増えたことで手一杯になりがちなゲームの中でプレイヤーがナビゲートしやすいようにして,長期間皆さんに楽しんでもらえるゲームにすることが目的でした」

「より多くのファン層を獲得するために。多くの予算を使わないといけないほかのFree-to-Play型ゲームと比べると,それほどマーケティング費用をかけているわけではありません」

 槍の先を磨き上げるようにゲームを研ぎ澄ましたものにしていくことは,これまでにも何度も試され,テストが繰り返されてきたベテラン層を定着させるためのテクニックであるが,新しいプレイヤーを獲得するためには開発コストが分散してしまうことからも,多くのゲーム企業が採用する処置ではない。しかしながらWarframeのマーケティング手法は必要に迫られて生み出されてきたものであって,しかも一時は予算さえない状態であったという。その結果として,Digital Extremeは収益を悪化させずにユーザー獲得チャネルを最大化することを学んでいったが,ゲームが成功していくにつれてマーケティング費用にも余裕が出てくるようになったとのこと。

 「より多くのファン層を獲得するために。多くの予算を使わないといけないほかのFree-to-Play型ゲームと比べると,それほどマーケティング費用をかけているわけではありません」というBraun氏は,「Warframeは我々の情熱から生まれたプロジェクトであって,いわば乾坤一擲の一作でした。当初はゲームのアカウントサーバーを購入する予算もなかったくらいで,マーケティングにお金をかけることなどできませんでした。このゲームのことを知ってもらうためには,ライブストリーミングからソーシャルメディア,Reddit,ファンフォーラム,メディアへの広報活動,そしてプロモーションを行える機会があればパートナーには何度もアプローチをかけましたね。そうしてオープンβテストが始まり,ファンの間でも話題になるようになって,自分たちのプロジェクトは魅力のあるものだと手応えを感じるようになったのです。それからというもの,プレイヤー獲得のための我々の戦略は,アップデートの定期的なリリースやコミュニティを巻き込むことにフォーカスを置いてきました」と続けた。


 「ゲームプレイを大きく変更させるアップデートやコンテンツの強化,そしてコミュニティ向けに開発状況の透明化を図るといった定期的なアップデートで,新しいファン層も獲得できるということを,我々はかなり早い段階で発見しました。マーケティング費用にもそれなりの資金を投入できるようになってからは,CPAにフォーカスしたバナー広告やソーシャルメディア,ストリーミングなど一般的なチャンネルも利用してきましたが,友人と一緒に遊ぶために口説いてくれる,オールドファッションなファンたちの口コミほど良いマーケティングはなく,それが良い連鎖を起こしている状態なのです」

 非常に好調なWarframeにとっても非常に不思議なことが,ここしばらくは不調なタイトルの多いAAAゲーム市場の混乱期と,まったく逆流する動きを見せていることだ。「Battlefield」や「Call of Duty」などの年末の伝統とも言える人気シリーズが投入され,「Titanfall」や「Dishonored」の新作が良いメディア評価を得ているこの時期に,ローンチされてから数年を経たWarframeがピークを迎えているのである。

「Warframeは我々の情熱から生まれたプロジェクトであって,言うなればスタジオでフリーパスの特別待遇を受けているようなものなのです。当初はアカウントサーバーを購入する予算もなかったくらいで,マーケティングにお金をかけることなどできませんでした」

 Braun氏は,こうしたライバルでもあるAAAタイトルが経験している問題は,Free-to-Play型タイトルが大きく影響していると見ている。
 「F2Pのビジネスモデルが,これまでの大きな開発予算によるパッケージ型のモデルを破壊しているのだと我々は見ています」という彼女は,「AAAタイトルとの同等のクオリティを持ったF2P型のゲームが市場に何本も投入され,年次間隔でリリースされる,より著名なIPのゲームが作り出しているギャップにうまく嵌り込んでいるのです。今年はParagonやPaladinsといった,ファンに強くアピールできるF2Pゲームがいくつもリリースされ始めていますし,Warframeと同様に既存の市場に何らかの影響を与えているのは間違いないでしょう」と解説した。

 「無料と競合するのは難しいことです。我々が提供するエンターテイメントに対して,ゲーマーから直接収益を上げるのも一つの方法ではありますが,彼らには彼らの意思で,AAAタイトルと同等のゲームエンジンで開発された質の高いものを,自由に無料でゲームを体験していただきたいとも考えています。その上で,彼らがお金を投じる価値があると考えたのであれば,それはF2Pゲームに競争力があるからなのです。パッケージ型のAAタイトルは小回りも利かず,発売後にはマーケットの変化にうまく対応することも難しいのです。無料のゲームというものは,継続的にアップデートされて改良されていくべきものですから,長期的なエンターテイメントとしての価値は非常に高いものであると考えます」


 Blizzard Entertainmentだったら,長期的にゲーマーたちを没入させたり定期的にゲームシステムを改善していくための最高の手法がF2P型のビジネスモデルであるという主張には異議を申し立てるであろう。実際,Braun氏も「Overwatch」のようなゲームは,ビジネスモデルは違うといえどもファン目線の同じストラテジーを持っていると話す。しかし彼女によると,Warframeはそれ以上の何かを持っているのだという。Blizzard Entertainmentのゲーム作品とは違って,Warframeは当初から綿密に設計されてほぼ完全な状態でリリースされたために,大きな問題にぶつかることなく多くのアーリーアダプタたちが満喫できていたと主張するのだ。

 「ローンチされた当時のWarframeは今と比べると随分と小規模なゲームでしたし,その時に参加したプレイヤーたちの多くは現在に至るまで我々の成長とともに歩んでいます。我々と一緒に進化し,一番前の席に座ってゲームの開発プロセスを眺めていただいているのです。もし,ゲーム開発者が長期的なファンとの交流をゲームの企画時点で想定せず,ゲームデザインの中心にあるべきゲームサービスの未来を見据えていないというのであれば,まだ作りっぱなしの古いゲームビジネスの形態から抜け切れずにいるということを示唆していると思います」とBraun氏は締めくくった。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら