ファン訴訟を起こしたDigital HomicideのゲームをSteamが削除

インディーズゲームのDigital HomicideはSteamプレイヤーからの嫌がらせに対して1800万ドル(18億円超)の損害賠償を求めて提訴した。Valveの対応に関して同社に対しても法的措置を取ることを検討している。

 Digital Homicide StudioがSteamのプレイヤー100人に対する新たな訴訟を起こしたあと,ValveはSteamから同社のゲームを削除した。これを受け,同社はValveに対する訴訟も辞さない構えだ。

 (業界情報を発信するサイト)Polygonに送られた声明で,Valveは「Steamに敵対的であるため,Digital Homicideとの取引を停止した」と説明した。これはDigital Homicideが,同社とそのゲーム,またゲームに正当な利害関係を有するほかの消費者をターゲットとして「嫌悪し嫌がらせを行うグループ」を形成したとするSteamのプレイヤーの100人(Digital Homicideによる概算)に対する訴訟を受けてのValveの直接的な回答であった。

 (ニュースやゴシップのブログサイト)「Kotaku」が入手した法的文書によれば,そのグループのメンバーは1人につき1〜21か月の期間にわたり,同社に対して「継続的かつ,たび重なる攻撃」を行い,10〜2000のSteamコミュニティに投稿したと主張している。同文書ではまた,「Digital Homicideクソゲー」グループが合計20000にのぼる投稿を行ったとし,これは「たび重なる匿名による迷惑行為」に該当すると同社が確信していると記載されている。

 この訴訟では,ストーカー行為,嫌がらせ,犯罪的な成りすましを含む一連の罪に基づき,Steamのプレイヤー100人に対し1800万ドル(18億円超)の損害賠償を請求している。Digital Homicide創設者のJames Romine氏がオフィシャルサイトで「法定代理人を求める」というタイトルの投稿でValveを強く非難しており,これがValveがSteamからDigital Homicideのゲームを削除するという決定を下した核心にあるようだ。

 Romine氏は「私たちだけでなく,私たちのゲームに興味を持つSteamの顧客に対しても行われた個人攻撃,嫌がらせ,それ以上のことを行った人々に関する報告と複数のメール」に対してValveが対応を怠ったことを告発している。「最近申し立てた訴訟は単に,攻撃を行った個人に対するものです。事業をするにあたって安全な環境を提供すべきSteamから,解決策を得られなかったからです」

 投稿ではまた,Romine氏とDigital Homicideの従業員に対する脅迫(殺人に関するものも含め)や,Romine氏の妻や子供にまで侮辱が及んだ実例を挙げている。「私たちをSteamから削除することで,ValveはSteamのプレイヤーが私に迷惑行為を行い,自殺せよと言い,そのうえ,私の家族を侮辱する権利があるという立場を取りました。先に挙げた数々の犯罪的な行為から自身を守ろうとするなら,私は家族の収入を失ってしまいます」

 「もしSteamと定期的なビジネスを行ってきた経験が2年にわたるものでなかったら,Valveのこのうんざりするスタンスは,私にとって衝撃的なものだったでしょう。長いリストになりそうな契約違反の数々,営業妨害と不信感を伴う出来事に対して弁護士を立てることをためらわせた唯一の理由は,家族の収入を失うという恐怖でした。その恐れがなくなった今,法定代理人を探しています」

 本件は,Digital Homicideが脅迫であるとしたことに対する初めての法的措置ではない。今年のはじめ,「攻撃,名誉毀損,および中傷」のかどでゲーム評論家のJim Sterling氏に対し1,000万ドル(10億円超)の損害賠償請求訴訟を起こしている。

 他方,Valveにとっても本件はSteamのコミュニティの言動が度を越さないよう適切な対応をしなかったことで告発された初めてのケースではない。実際,GamesIndustry.bizのエディター,Rob Faheyが今年5月にSteamのプラットフォームにおける毒気ある雰囲気を調べた際「Valveがそれを気にかけているとは思えない」と結論した。

 「Steamはまったくと言っていいほど節度がない。プラットフォームでのプレイヤーの言動が明らかに違法である場合を除き,Valveは統治する努力をほとんど何もしていないということが問題です。結果として,そこは最悪な振舞いと戦術を繰り広げるインターネット上の不満分子にとっての狩場となってしまうのです。ネット上の肥溜めから,選んだ武器で武装した軍隊のような膨大な数のプレイヤーが送り込まれ,反対票を投じたり,酷いレビューを書いたり,単にページを不機嫌なモードで埋め尽くしてしまうのです」

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら